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はじめに
急激な少子化,異次元の高齢化により超高齢社会が進展するわが国では,quality of life(QOL)の充実と健康寿命の延伸に向けて,介護予防の推進が希求されている。大田1)は,超高齢社会を乗り切るキーワードは介護予防であり,介護予防は,① 健康づくり(生活習慣病対策,元気アップ運動),② 疾病やケガの予防(健診・転倒対策),③ 要介護になることの予防(フレイル,サルコペニア対策),④ 要介護状態の進行予防(閉じこもり,廃用症候群対策),⑤ 最期まで介護困難になることの予防(介護期,終末期のリハ,ケア)のように包括的階層的にとらえ,段階的な対応を考えるべきであると述べている。
団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて,国は,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的にできるまちづくりの実現により,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続ける姿を目指す「地域包括ケアシステムの構築」に向けた体制づくりを急務としている2)。この地域包括ケアシステムの中で介護予防を推進するまちづくりや,地域のさまざまな組織・団体が自主的に介護予防の活動を展開できるように市町村が地域資源の掘り起こしや支援を行い,高齢者が気軽に参加できる機会や場を身近に作り出すことで,介護予防の取り組みが増えることが期待されている3)。平成27年に新たに施行した介護予防・日常生活支援総合事業(以下,新しい総合事業)では地域における支え合いの体制づくりを推し進め,要支援者などに対する効果的かつ効率的な支援を可能とするために,市町村が中心となって地域の状態に応じながら住民などのさまざまな主体が参画した多様なサービスの充実を図ることを求めている3)。そのような中,厚生労働省の「地域づくりによる介護予防推進支援事業」として,平成26年度から取り組んだ「住民運営による通いの場」(以下,通いの場)づくりでは3年間で約300市町村が参加し,北海道から沖縄まで全国的な広がりを見せており,地域づくりによる介護予防の展開は総合事業における基盤である4)と報告している。こうした通いの場における住民主体型の介護予防事業は,ボランティア活動が中心となる。芳賀5)は,ボランティア活動とは,本来,自発性・主体性にもとづくもので,行政が担うべきサービス不足を補うための手段と位置づけたり,高齢社会における「社会的要請」としてとらえたりせず,高齢者の役割や社会関係形成の場とする重要性を説いている。ボランティア活動を通して自らの健康やQOLへの寄与(自助)のみならず,他者や地域の介護予防へ働きかける新たな担い手(互助)としても期待されている3)。
介護予防への取り組みとして,ここ数年全国各地で産声を上げてきた通いの場などの住民主体型の介護予防事業は,今後地域の基盤として醸成していくために継続的,発展的な要素が必要になってくると思われる。現行の新しい総合事業において行政は,地域介護予防活動支援事業にて,住民主体の介護予防活動を推し進めるためにボランティアの育成・支援を図っており1),効果的な地域展開のためには地域リハ支援体制を積極的に活用し専門職からの定期的な支援などを推奨している。
しかし,現状として,各地の住民主体型事業において新たなリーダーの発掘方法,取り組みを充実させるための住民育成方法,虚弱高齢者への対応方法,モチベーション維持の方法,専門職の活用方法などの課題があり4),継続性と発展性を持つ支援方法は明確には確立できていない。
そのような中,茨城県では現在の国の流れに先んじて超高齢社会は行政や専門家のみでは乗り切れないという認識のもと,住民参加型の介護予防事業を平成16年からモデル事業として,平成17年からは本格的にシルバーリハビリ体操指導士養成事業(以下,当事業)を開始し,シルバーリハビリ体操の普及・啓発を展開してきた。開始から12年が経過し,住民主体型の介護予防事業としてのシステムは整い,介護予防,地域づくりにおいてさまざまな成果を残している。本稿では,当事業が12年以上にわたり継続性と発展性をもたらしてきたポイントとなる事業のシステムを概説する。
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