地域リハビリテーション 12巻10号 (2017年10月)

特集 地域を支える多職種協働

渡邉 愼一
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 高齢化,人口減少,社会保障費の増大等に対応するため,地域包括ケアシステムの構築が推進されています。現状では介護保険を中心に,医療,生活支援・予防,住まい等のサービスが拡充されるとともに,多くの地域で新たな取り組みが実践され始めています。これらのサービスは地域住民にとって包括的なサービスでなければならず,提供機関や専門職の協働は不可欠です。リハビリテーションでは,これまで医療の分野でのチームアプローチを実践してきましたが,今後は,地域社会においてもっと広い職種との協働をより一層推進する必要があります。本特集では,さまざまな職種の立場から,高齢者・障害者を支える制度の現状と今後の地域包括ケアを見据えた取り組みを紹介していただきました。

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日本介護支援専門員協会について

 日本介護支援専門員協会(以下,当協会)は,平成17年11月3日に設立し,現在は一般社団法人として公正中立なケアマネジメントを確立し,介護支援専門員の資質および社会的地位の向上に努めることをもって,国民の健康と福祉の向上に寄与することを目的として設立された介護支援専門員の職能団体である。

 近年の社会構造は,家族単位の縮小に伴う生活様式の個別化,人権意識を重視する社会の変革,ICTの発達に伴う多様な情報源の変化などが要因となって,国民の生活形態は個別化および多様化していると言える。これは要援護者も同様であり,その支援においてもパッケージ化されたサポートだけでは,多様化により困難な状況になっている。そういった状況の中で個々の利用者に寄り添い多角的な視点で,多様な生活課題の解決のために支援を行う介護支援専門員の役割は,これからも大変重要と考えている。

薬剤師の役割と多職種連携 有澤 賢二
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はじめに

 わが国における薬剤師は,明治時代に制定された「医制」「薬律」による医薬分業の構築とともに,約1世紀を通じて現在の普及に至っている。国家資格である薬剤師は,薬局(医薬品販売,調剤),病院,診療所だけでなく,医薬品メーカー,医薬品卸売業,行政機関等,医薬品にかかわるすべての分野にわたって活躍しており,薬剤師養成教育は進歩する薬物療法や,より高く求められる臨床能力を培うため,平成18年より教育年限が4年制から6年制に延長された。

 全国47都道府県の薬剤師を束ねる職能団体として日本薬剤師会(以下,日薬)では,薬剤師としての責務である医薬品の供給を通じた国民の健康な生活を確保する役割を果たすべく各種事業に取り組んでおり,現在の会員数は10万4,024人(平成28年10月末)である。2025年の地域包括ケアシステムの構築に向けての現状と課題,多職種との連携のあり方について,日薬としての取り組みなどを紹介する。

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歯科衛生士の就業状況と歯科衛生士を取り巻く環境の変化

 歯科衛生士の就業者数は12万3,831人(平成28年12月現在)であり,主な就業場所は「診療所」が11万2,211人と圧倒的に多く,次いで「病院」「市区町村」「介護老人保健施設等」の順に多い(図1)。一方,高齢化の進展に伴い,歯科診療所に通院できない高齢患者が増加するとともに,地域包括ケアシステムの構築が急がれている。これらの状況から,歯科衛生士の大多数を占める診療所の歯科衛生士が,診療所から地域や生活の場に視点を広げ,医療・介護との連携による歯科衛生活動のあり方が課題となっている。

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はじめに

 わが国では諸外国も経験したことのない超高齢社会を迎え,各地で地域包括ケアシステムの構築にむけた取り組みが求められている。特に,高齢者人口の急激な増加が予測される大都市部では,喫緊の課題である一方,地域の見えにくさの問題点が指摘されてきた1)。そして,システムの実態は,ネットワークであることが社会保障制度改革国民会議報告書などで述べられている2)

 医療ソーシャルワーカーは,医療と福祉,医療機関と地域をつなぐ社会福祉の専門職で,地域のネットワークづくりへの参画や多職種協働は重要な業務であり,医療機関が地域の一資源として貢献できるよう環境を変化させていくなど,果たすべき役割は大きい。

 本稿では,大都市部でつながる難しさをもちながらも,医療側から展開している活動例として,東京都新宿区の食支援を紹介し,多職種連携のあり方について述べる。

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はじめに

 介護保険制度は,要介護状態となった高齢者等(以下,利用者)に対し,自立支援の理念のもと,居宅サービス計画(以下,ケアプラン)に基づき,多様なサービスを組み合わせて提供しながら,利用者の日常生活を支えるための仕組みである。

 これは,各サービスを個別に提供するのではなく,可能な限り住み慣れた居宅において,その有する能力に応じ自立した日常生活が営めるようにするため,すべてのサービスがケアプランを核にその生活目標を共有し,多職種で認識を合わせることが必要不可欠となる。

 福祉用具サービスは,介護保険サービスの一つであり,利用者の心身の状態,希望およびその置かれている環境などを踏まえて利用目標を定めるとともに,適切な福祉用具を選定し,利用者がその目標に向けて福祉用具を活用した生活を送れるよう支援するサービスである。福祉用具専門相談員は,住環境整備の専門職としてその役割が期待されている。

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はじめに

 平成25年国民生活基礎調査の概況によれば,高齢者の要介護状態発生原因では「脳血管疾患」が18.5%と最も多く,続いて「認知症」15.8%,「高齢による衰弱」13.4%,「骨折・転倒」12.2%の順となっている。本稿では,このような高齢者を取り巻く問題の解決や,地域の障害者を支える観点から義肢装具士が行い得る貢献について,要介護状態の発生原因の第1位と第3位である「脳血管疾患」「高齢による衰弱」について検討し,併せて制度や多職種連携などに関する課題について論ずることとする。

巻頭言

広さと距離の壁 石合 純夫
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 かつての北海道には鉄道網が張りめぐらされていた。列車の本数こそ少なかったが,その着発の時間帯には,街の人が現れ会話が交わされた。鉄道と駅は街と街とをつなぐもの,また,人々をつなぐものとして機能していた。少し大きな街には,小さいながらも映画館などもあった。国鉄末期から1987年の国鉄分割民営化の後,鉄道の廃線が進んだ。自家用車の普及がそれを推し進め,人々は,列車の時刻に縛られることなく,自分の生活に合わせて必要な場所に赴ける便利な時代になった。

 道北のオホーツク沿岸,浜頓別町のバスターミナルには,天北線の記録を残す写真や駅の備品などが展示されている。「この町に電車(?)が走っていたんだ!」という女子高生の言葉に驚いたが,鉄道は忘れ去られていた。時が過ぎ,駅跡は一部で道の駅などになって,それとわかる形で残っているところもあるが,街の雰囲気はずいぶんと変わった。インターネットのGoogleストリートビューで,地図から記憶に残る場所に降り立ってみると,建物は新しく綺麗になり,当然のことながら,街道に沿って伸びる街並みとなっている。

連載 訪問リハに役立つフィジカルアセスメント —“気づき”と“療法士判断”・第10回

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はじめに

 前回の薬に関する情報の補足から始めます。

 最初に基礎知識として薬品名について説明します。

 先発品は商品名(ブランド名)+剤型+規格(含量)となっています。例えばアムロジン錠5mgです。現在,後発医薬品(ジェネリック)の使用促進のため平成28年には診療報酬も改定されました。後発医薬品とは先発医薬品の特許(薬によりますが5〜10年)が切れた後に,同一の有効成分であるとして,臨床試験などを省略して承認される医薬品のことです。一般名(成分名)+剤型+規格(含量)+会社屋号で示されます。例えばレバミピドOD錠100mg「杏林」という記載です。業界用語では後発品は昔「ゾロ」と呼ばれていました。後発品は次から次へとゾロゾロ出てくるところからのようです。かつては安かろう,悪かろうの製品イメージがありましたが,現在では経済的メリットを追求した先発品のコピー製剤と,先発品を改善・改良した付加価値型製剤があります。以上は医師・歯科医師の処方による医療用薬品ですが,一般の人が自らの判断で使用する一般用医薬品〔OTC(over the counter)薬〕もあります。ガスターやロキソニンSなどすでにおなじみかもしれません。

 表1には高齢者で特に注意が必要な薬剤についてまとめました。訪問リハで対応する患者さんへの与薬頻度が高いと思われる薬のみの記載です。薬に対しては基本的に高齢者は薬が効きすぎることがあると考えて対応してよいと思います。療法士の皆さんが処方するわけではありませんが,処方事情を知り対応することはしばしば状態像の改善につながります。高齢者においては訴えも非定型的で状態像の正確な表現ができない場面も散見されます。ですので,かかわる皆で生活状況の変化を読み取り,かかりつけ医に報告することが薬効評価判断の材料となります。認知機能低下のある場合,自分に起きていることを理解できず適切な時期に医療を受けられないことにより重症となるとされ,さらに薬効評価には配慮が必要になります。

連載 高次脳機能障害児を地域で育む—高次脳機能障害児のすこやかな未来づくりを願って・第10回

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はじめに

 2017年5月にハイリハキッズの会員へ,会員専用のメーリングリストでアンケート調査を実施しました。アンケートには追加回答として自由記載文が大変多く,これまでの苦労や努力,子どもへの深い愛情が込められたさまざまなエピソードがあり,どの方の回答にも胸が熱くなりました。会員の貴重な思い,経験をより多くの方々に知っていただきたいです。

連載 攻めの地域介護予防—健康生成論に基づいた地域リハビリテーション・第10回

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物理的な地域と精神的な地域

 よく地域包括ケアの話が出ると,向こう三軒両隣や顔が見える関係といった言葉をよく耳にします。古き良き日本や昭和の時代では,たしかに醤油を貸し借りする関係があって,困ったときはお互い様という関係性ができていました。

 ただ,現在ではどうでしょうか? マンションなど,隣に誰が住んでいるのかわからない,むしろ隣にいかに迷惑をかけずに生活するか,他人から干渉されない環境をいかに作るか,というような向こう三軒両隣になっていないでしょうか。

連載 今,地域で歯科は何をしているのか?・第10回

オーラルフレイル 廣瀬 知二
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はじめに

 最近,サルコペニア,ロコモ,そしてフレイルといった言葉をよく耳にするようになりました1)。いずれも高齢者を対象に使われる概念です。今回はそれぞれの意味と,その関係,そして口腔機能の低下である「オーラルフレイル」について解説します。

連載 ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座 慢性疼痛編・第1回【新連載】

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私は脳外科ナースの1年目のあいか.

おニューのパソコンが壊れてしまって修理に来ています.

連載 当事者,支援者に聞く 高次脳機能障害を生きること—家族・専門職との関係を通じて・第10回

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 本連載で順次紹介する6名の方々は,いずれも受傷後,長期にわたって地域で暮らす高次脳機能障害の方々です。NPO法人VIVIDでは彼らが受傷からこれまでどのような変化があったのか調査してきました(2008〜2014)。本連載では,調査結果を踏まえながら,本人にとって転機になった出来事やかかわりについて,支援者と一緒に振り返ってもらいます。(2017年4月15日:於NPO法人VIVID事務所)

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要旨 【目的】Spiderを用いた高齢者への理学療法介入がバランス能力に対する即時効果に及ぼす影響を検討した。【対象】通所サービス利用者22名(77.4±9.0歳),「要支援1」1名・「要支援2」3名,「要介護1」10名・「要介護2」7名・「要介護3」1名とした。【方法】Spider実施前後にFRとTUGを測定した。Spider使用時(Spider条件)の運動課題はスクワット10回,30秒間足踏みとし,機器を使用せず同様の運動課題をコントロール条件とした。各条件前後で2元配置分散分析を用いて分析した。【結果】Spider条件とコントロール条件でFRとTUGとも交互作用を認め,FRは実施前よりも実施後で有意に増大した(p<0.01)。TUGは実施前よりも実施後で有意に短縮した(p<0.01)。【結語】Spiderによって要支援1〜要介護2の虚弱高齢者のバランス能力に即時的な効果が示唆された。

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 本書の著者たちは,作業療法を愛し,後進となる作業療法を学ぶ学生たちが有意義な臨床実習を送るために熱い情熱をささげている。本書の中心となる目白大学では,クリニカル・クラークシップ(CCS)を導入するにあたり,『セラピスト教育のためのクリニカル・クラークシップのすすめ』(第1版:2007年,第2版:2013年,いずれも三輪書店)を編集し,日本のセラピスト教育において,CCSをいち早く導入した中川法一氏が講演を開催している。本書の中でも,中川氏がまとめた前述の書籍が数多く引用されている。本書が作業療法にかかわる臨床家・教員・学生向けに出版された書籍であるとすれば,中川氏がまとめた書籍はすべての療法士を対象とした書籍である。本書と共に,こちらもご一読されれば,本書の内容がさらに鮮明にイメージできることをまずはお伝えしたい。

 さて,本書は従来の臨床実習方式からCCS方式に移行してきた目白大学の教員たちの努力の結晶が詰まった一冊である。一実習施設の臨床教育者(clinical educator:CE)としてかかわってきた筆者には,同大学の教育にかける意気込みと,その熱さに感銘し共感していった各臨床実習施設のCEたちの思いが伝わってきた。はじめから最後まで実に読みごたえがあり,養成校の教員へぜひ一読をお勧めしたい。そして本書は,身体領域,精神科領域,老年期領域,地域生活支援と作業療法が実践される幅広い領域においての実践例が記載されており,これからCEになられる先生にもぜひお勧めしたい。そして,学生には,教員やCEがどういった教育で学生の成長を期待しているのか,ぜひ感じていただきたい。本書の中でも述べられているように,CCSは教員・CE・学生の三者が協働しなければ十分な教育効果が得られない。したがって,この三者が共通の認識を持つことが非常に重要であり,本書はこの三者に向けて十分な知識を与える内容になっていることを評価したい。

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基本情報

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地域リハビリテーション
12巻10号 (2017年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1880-5523 三輪書店

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