地域リハビリテーション 12巻11号 (2017年11月)

特集 スポーツで活き活きと!

渡邉 愼一
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 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて,障害者スポーツ推進の機運が高まっているが,競技人口の減少や一般への周知など,まだ課題は多い。本来,パラリンピックの成功のみが障害者スポーツの目的ではないが,一方でその盛り上がりがさまざまな障害者スポーツの興隆のエンジンになることも期待される。国もスポーツ庁設置に伴い,健常者も障がい者も共にスポーツを通じて健康で豊かな社会をつくるための施策を開始している。

 本特集は障害者スポーツ推進の施策や取り組みを整理したほか,2020年をきっかけにした新しい活動や代表的な障がい者スポーツを紹介した。スポーツがより身近になり,障がい者のみならずすべての人が一生涯スポーツを楽しめることを願っている。

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はじめに

 2020年の東京パラリンピック開催にむけて,障がい者スポーツの発展が期待されています。パラリンピックは身体障がいと視覚障がい,一部の知的障がいを対象にした競技スポーツの祭典であり,聴覚障がい者を対象としたデフリンピックや知的障がい者のためのスペシャルオリンピックスが開催されています。このようにパラリンピックが障がい者スポーツのすべてを包摂するわけではありませんが,障がい者スポーツを実際に身近で目にすることや彼らの活躍が,パラリンピック種目のような競技スポーツだけでなく,さまざまな障がい者スポーツの理解と興隆のエンジンになることが望まれています。

 本稿では公益財団法人日本障がい者スポーツ協会の取り組みを中心に,日本の障がい者スポーツの現状と展望について考えてみます。

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はじめに

 「失ったものを数えるな,残った機能を最大限に活かせ!!(It's ability, not disability, that counts)」,というルードヴィッヒ・グットマン博士のメッセージと共に近代の障害者スポーツは始まった。それから70余年が経過した現在,わが国では2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定を契機として,障害者スポーツへの関心が高まると同時にさまざまな取り組みも進められている。

 さて,障害者リハの大きな目標は「QOLの向上」であるが,スポーツ活動への参加は「生きがい」「他者との交流」「体力や機能の維持・向上」「社会参加機会の増加」などにつながり,結果として「QOLの向上」を図ることができると考えている。

 また,障害者のスポーツ活動がその裾野を広げ,さまざまな組織や施設との連携が進むにつれて,ノーマライゼーション社会の実現に近づくという効果も期待できる。

 筆者の勤務する障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下,横浜ラポール)においても,さまざまな事業を通して,スポーツによる障害児・者の「QOL向上」や「ノーマライゼーションの推進」に取り組んでいる。

 そこで,本稿では「スポーツで活き活きと!」という特集テーマを踏まえつつ,横浜ラポールにおける取り組みを紹介する。横浜市というローカルなエリアでの取り組みのため,本誌読者の皆様がお住いの地域に対し,どの程度有益な情報なのかは疑わしいが,少しでも参考となれば幸いである。

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はじめに

 学生団体「おりがみ」とは「おりンピック・パラリンピックを がくせい みんなで盛り上げよう」を意味しており,2020年東京大会開催を機に結成された,オリンピック・パラリンピックに向けて活動する学生団体である。

 メンバーは現在,都内近郊の34大学115人と多分野にわたる学生で構成されている(図1)。明治大学と千葉大学でそれぞれ支部化されており,その活動範囲を広げ続けている。

 学生が軸となり,「ひとりでも多くの人がかかわれるオリンピック・パラリンピックをつくる」ことを理念に掲げている。これは,2020年東京大会が東京の一部だけで盛り上がるのではなく,日本全国のひとりでも多くの人がかかわることによって,オリンピック・パラリンピックを成功させたいという想いが込められており,2020年だけでなくそれ以前も,その先も見据えて歩みを進めている。

 活動内容としては主に二段階に分かれており,一つ目が内部研究,二つ目がイベント企画および運営である。内部研究では,長野オリンピック・パラリンピックの跡地に見学に行き,現地の方に話を聞いたり,内部でプレゼンテーションの大会を開いて知識を深めるなど,知識の“インプット”を行っている。イベント企画および運営では,その知識を社会に発信する“アウトプット”を行う(図2)。「パラスポーツフェスタちば」という大規模なパラリンピック競技体験会の企画に携わり,当日はパラリンピック競技体験会の運営ボランティアだけでなく県内の大学を集めたシッティングバレー対抗戦を主催したのもその一例であり,さまざまな分野をまたいで幅広い活動を行っている。

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ボッチャ

1.ボッチャの歴史と競技人口

 ボッチャは,ヨーロッパで生まれた重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツで,パラリンピックの正式種目になっている。ボッチャの起源は,古代ギリシャで行われていた玉投げとも言われている。6世紀のイタリアで現在のボッチャに近いルールが考え出された。そして,20世紀には重い障害を持った人でもできるようにルール改正がされ,ヨーロッパから世界中に広がっていった。1984年に行われたニューヨーク/ストーク・マンデビル競技大会(パラリンピック)で公開され,1988年のソウルパラリンピックから正式種目になった。

 日本ボッチャ協会によると,選手や介助者らの登録数は約460人になっている。東京オリンピック・パラリンピックの開催決定後,競技に関する問い合わせや指導者講習会への応募などが急増している。さらに日本各地ではボッチャに関するイベントを開催し,参加者は年々増加している。

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 皆様が,この巻頭言を目にされる頃には来年の診療報酬・介護報酬同時改定に向けての中央社会保険医療協議会(中医協),社会保障審議会での議論も大詰めを迎える頃かと思います。リハにおける医療保険から介護保険へのスムーズな移行に関しては,これまでもさまざまな試みがなされてきており,今回も大きなテーマの一つとなっていますが,残念ながら,まだまだ課題山積と言わざるを得ない状況です。

 一般的に回復期の後は,医療保険では「維持期リハビリテーション」,介護保険では「生活期リハビリテーション」と呼称されています。「維持期・生活期」と併記されている資料,文献も散見されるようになりましたが,併記にはやはり玉虫色の印象が伴います。

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 スズキ福祉車両は,身体の不自由な方,高齢者の方が介助者と共に容易に自動車へ乗降できる車いす移動車「スペーシア車いす移動車」「エブリイ/エブリイワゴン車いす移動車」及び,昇降シート車「ワゴンR/ワゴンRスティングレー昇降シート車」といったウィズシリーズと,身体の不自由な方やご高齢の方自身が乗車して操縦できる電動車いす「モーターチェア」「セニアカー」を開発,販売しています。

 電動車いすは1974年の「スズキモーターチェアZ600型」の発売に始まり,1985年には電動3輪車「スズキセニアカーET10」,その後4輪電動車いす「セニアカーET4A」や都市型4輪セニアカー「タウンカート」を追加発売して,電動車いすは43年の歴史とともに今も継続しています。

連載 訪問リハに役立つフィジカルアセスメント—“気づき”と“療法士判断”・第11回

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はじめに

 さて,10回の連載を通じて訪問リハのフィジカルアセスメントについての概論を記しました。“気づき”は情報と観察から,でしたね。今日の訪問リハをどうするかの直感的判断,そして倫理的配慮とともに生活機能全体の予後予測を行い,情報共有に始まるに地域力を駆使してのこれからを作っていく方向付けを,ここでは療法士判断として紹介してきました。

 ここからは,疾患特性に基づいた療法士判断について考えます。今回は廃用症候群をテーマにしました。今回は,訪問した時,利用者さんがこんな様子だったらと想定して皆さんも考えながら読み進めてください。足りない情報はそれぞれ想定していただいて構いません。

 山田さん(仮名)72歳,後縦靭帯骨化症(OPLL)による不全四肢麻痺。独居。要介護4。無口で怒りっぽい性格だがコミュニケーションは可能。介護保険を利用して生活されている。近隣に息子さんと娘さんが在住。金銭的な面は息子さんが援助,身の回りのお世話の手伝いにお孫さんを連れて娘さんが週に1回程度訪問していた。先日まで皮膚疾患のため2カ月入院していた。退院後訪問したヘルパーさんから,それまで介助で可能であった座位・移乗動作が不可能になっていると報告を受けていた。入院中は一時食欲低下もあったが現在は戻り,ほぼ全量食べられている。療法士が訪問時,座位を促すと「苦しいから嫌だ」と強く拒否された。現症は体温36.5℃,血圧110/80mmHg,脈拍120回/分,整,SpO2 95%,呼吸数20回/分であった。

連載 高次脳機能障害児を地域で育む—高次脳機能障害児のすこやかな未来づくりを願って・第11回

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はじめに

 千葉県千葉リハビリテーションセンター(以下,当センター)では小児期に発症して高次脳機能障害の診断を受けた後,学校生活を送る子どもたちフォローを外来で続けてきました。彼らは,高校を卒業すると青年期を経て,自立した生活を目指す成人期に至ります。この時期は,社会参加の場が学校から職場へと変化していく時期で,障害を持たずとも青年期は自分がどう生きていきたいか,自分には何ができるのか,希望と現実をすりあわせながら,成人してからの自分の居場所をつくることに試行錯誤していきます。今回はこの時期の小児期発症者の現状と課題を見ていきます。

連載 攻めの地域介護予防—健康生成論に基づいた地域リハビリテーション・第11回

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現代の人の生活・活動範囲

 人の生活範囲はどれくらいでしょうか? 皆さんもご家族,ご友人,時には一人で旅行に出かけませんか? 知らない場所で新しいものを見聞きしたり,新しいことにチャレンジしたり体験したりすることで,毎日の活力を得ることができます。心の休暇や,ストレス解消,大事な人との思い出づくりなど,さまざまな目的で旅行をしてきたと思います。先天的な障害のある方でも,学校や施設などのイベントとして,旅行をしていたと思います。

 人の人生における生活範囲は,自分が住んでいる場所に限定されていません。時には自分の領域から出ることで,自分のリラクセーション,いわゆるストレス解消をしています。逆に言えば,自分の住んでいる領域に居続けることはストレスなのです。もちろん,すべての人がそういうわけではなく,自分の家,自分の街が大好きで,そこから出ると逆にストレスを感じてしまう人もいます。この人が本心ではどう感じているかは,前回までの記事を参照していただければ聞き出せると思いますので,本稿では,ストレスを感じる人を対象にお話をしたいと思います。

連載 今,地域で歯科は何をしているのか?・第11回

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はじめに

 経口摂取ができない患者のもとに歯科医師や歯科衛生士が訪問すると,「口から食べないのに,なぜ?」と怪訝な顔で迎えられることが以前はありました。しかし今日では,その必要性が関係者に知られて,定期的な口腔機能管理の依頼が増えています。今回は経口摂取ができなくなった場合の口腔とその周囲器官の変化について解説します1)

連載 ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座 慢性疼痛編・第2回

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私は整形外科ナース1年目のあいか.

今日も私の職人技が炸裂しますよ!

連載 当事者,支援者に聞く 高次脳機能障害を生きること—家族・専門職との関係を通じて・第11回

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 本連載で順次紹介する6名の方々は,いずれも受傷後,長期にわたって地域で暮らす高次脳機能障害の方々です。NPO法人VIVIDでは彼らが受傷からこれまでどのような変化があったのか調査してきました(2008〜2014)。本連載では,調査結果を踏まえながら,本人にとって転機になった出来事やかかわりについて,支援者と一緒に振り返ってもらいます。(2017年3月30日:於北海道紋別市)

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要旨 【目的】訪問リハの初回プログラム内容と,3カ月以内の目標達成終了者の特徴を明らかにすること。【対象と方法】訪問リハ事業所3施設で3年間に作成された初回実施計画書を対象に,テキストマイニング手法を用いて分析し,脳血管疾患と骨関節疾患のプログラムの割合を計量した。【結果】265件の初回プログラムは49カテゴリに分類された。中止者を除外した214名のうち,目標達成群は31名で未達成群は183名だった。目標達成群は,脳血管疾患のプログラム〔治療介入/訓練・練習/IADL訓練〕,骨関節疾患のプログラム〔治療介入/訓練・練習/ADL訓練〕〔評価/環境評価〕〔評価/他〕で未達成群より有意に多かった(p<0.05)。【結語】対象者の活動と参加にかかわる目標達成には,リハ専門職のスキル向上や目標を実現するための体制を構築することが求められる。

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 自閉症スペクトラムの3歳の女の子と遊具に一緒に乗った際,横に座った女の子が指を絡ませてきた。いわゆる「恋人つなぎ」である。恋人ではないので,不安? いつも? なぜそうしたのか…。手の使い方でいろいろなことを想像させ,意味を持ち,気持ちがより通じ合うこともある。食事を作るときは包丁やフライパンを操り,適度な手加減で調味料をふりかけ,家族の団らんに一役買う。舞踊家は手の先端まで神経を使い美しさを表現する。「ばいばい!」と言うとき,手を振らないことは稀なように,手は発する言葉よりも重い意味を持つこともある。近年はボタンだけを操作してディスプレイ上のスポーツを楽しむ。人は手を使い,道具を操ることによって日常生活を営み,さまざまなものを創り出すことができる。手は単なる運動器官ではなく人間らしく生きるために文化的で社会的な意味を持つものである。「出会った人の,その人らしさを追求する」ことがOTだと恩師に教わった。筆者のOT観の根幹にある言葉である。「上肢・手」はその人らしさに欠くことのできない大きなテーマである。

 本書はテーマごとに成人と小児の領域から執筆していることが最大の特徴である。その執筆者の顔ぶれがなんと豪華なことだろう。この人は何を書いているか? 見逃せない顔ぶれである。

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基本情報

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地域リハビリテーション
12巻11号 (2017年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1880-5523 三輪書店

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