- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書の著者たちは,作業療法を愛し,後進となる作業療法を学ぶ学生たちが有意義な臨床実習を送るために熱い情熱をささげている。本書の中心となる目白大学では,クリニカル・クラークシップ(CCS)を導入するにあたり,『セラピスト教育のためのクリニカル・クラークシップのすすめ』(第1版:2007年,第2版:2013年,いずれも三輪書店)を編集し,日本のセラピスト教育において,CCSをいち早く導入した中川法一氏が講演を開催している。本書の中でも,中川氏がまとめた前述の書籍が数多く引用されている。本書が作業療法にかかわる臨床家・教員・学生向けに出版された書籍であるとすれば,中川氏がまとめた書籍はすべての療法士を対象とした書籍である。本書と共に,こちらもご一読されれば,本書の内容がさらに鮮明にイメージできることをまずはお伝えしたい。
さて,本書は従来の臨床実習方式からCCS方式に移行してきた目白大学の教員たちの努力の結晶が詰まった一冊である。一実習施設の臨床教育者(clinical educator:CE)としてかかわってきた筆者には,同大学の教育にかける意気込みと,その熱さに感銘し共感していった各臨床実習施設のCEたちの思いが伝わってきた。はじめから最後まで実に読みごたえがあり,養成校の教員へぜひ一読をお勧めしたい。そして本書は,身体領域,精神科領域,老年期領域,地域生活支援と作業療法が実践される幅広い領域においての実践例が記載されており,これからCEになられる先生にもぜひお勧めしたい。そして,学生には,教員やCEがどういった教育で学生の成長を期待しているのか,ぜひ感じていただきたい。本書の中でも述べられているように,CCSは教員・CE・学生の三者が協働しなければ十分な教育効果が得られない。したがって,この三者が共通の認識を持つことが非常に重要であり,本書はこの三者に向けて十分な知識を与える内容になっていることを評価したい。
Copyright © 2017, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.