血液フロンティア 27巻1号 (2016年12月)

特集 多発性骨髄腫の臨床 ~現状と展望~

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 多発性骨髄腫における診療の進歩は著しい。2016年9月に日本骨髄腫学会から「多発性骨髄腫の診療指針 第4版」が発刊された。4年ぶりの改訂である。この間,IMWGから改訂多発性骨髄腫診断基準が提唱され,骨髄腫の治療開始時期についても新たな提言がなされた。また,国内では4つの新規薬剤が保険適応となり,治療戦略も変化しつつある。さらに微少残存腫瘍(MRD)測定の重要性が認識され,今後はMRD陰性化を目指した治療戦略が展開されるなど,骨髄腫治療は新たなステージに入ったと考えられる。

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 多発性骨髄腫の臨床像は極めて多彩であり,診断基準に関しては,これまで様々な診断基準が提唱されてきた。2003年に世界各国のmyeloma expertsによって構成されたInternational Myeloma Working Group(IMWG)より提唱された診断基準である高カルシウム血症,腎不全,貧血,骨病変(CRAB)は簡潔であり,幅広く用いられてきた。その後,2014年にIMWGによる基準が改訂され,新たなバイオマーカーが骨髄腫診断事象に追加され,臓器障害を発症する前のハイリスク患者に対する治療が推奨されている。

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 多発性骨髄腫の治療成績は新規薬剤の登場により劇的に向上したが,65歳未満の重篤な臓器障害のない症候性骨髄腫患者では,現在も自家末梢血幹細胞移植が治療の中心である。移植適応患者では診断時より寛解導入療法,幹細胞採取,自家移植,地固め・維持療法による一連の治療計画を立てる必要がある。また,65歳以上の高齢者においても全身状態が良好であれば自家移植の適応となる場合があるため,症例ごとに臓器機能を含むFrailtyを評価し,慎重な検討を行う必要がある。

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 移植非適応患者に対する寛解導入療法としては,melphalan+prednisolone+bortezomib(MPB)療法もしくはlenalidomide+dexamethasone(Ld)継続療法が主に検討されており,melphalan+prednisolone(MP)療法やmelphalan+prednisolone+thalidomide(MPT)療法との比較において,無増悪生存期間のみならず全生存期間における延長効果が示されている。MP療法など従来の化学療法は,病勢がプラトーに到達すると一旦治療を中止していたが,新規薬剤については至適治療期間を検討した臨床試験はなく,MPB療法では9サイクル,Ld療法では18サイクルまで継続することが推奨される。また,寛解導入療法後の維持療法については全生存期間における有用性は確立しておらず,患者毎にリスクとベネフィットを考慮して決定すべきである。

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 新規薬剤によって多発性骨髄腫の完全寛解(CR)達成率が著明に上昇してきている。そのため,CR症例をさらに層別化できる可能性のあるMRD検査の重要性が増している。遺伝子検査をベースにしたMRD検査法にはアリル特異的PCR(ASO-PCR)と次世代シークエンサー(NGS)があるが,検査可能症例数,感度の点からはNGSが優れているため,今後のMRD測定ではNGSが主流になるように思われる。なお,骨髄中の骨髄腫病変は不均一に分布するため,一回の骨髄穿刺では偽陰性になるという問題がある。このため,骨髄検体を使用するMRD測定には限界があることを認識し,画像診断も併せて施行していく必要がある。

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 多発性骨髄腫に対する治療の進歩に伴い,微小残存病変(MRD)測定の意義が認識されるようになってきた。Multiparameter flow cytometry(MFC)を用いたMRD測定は,骨髄腫細胞において異常な発現(aberrant expression)を示す複数の表面抗原を解析し,骨髄腫細胞と正常な形質細胞を区別することによって行う。MFCにおいて多色(8色以上)かつ多数の細胞を解析する方法はNext-generation flow cytometry(NGF)と呼ばれ,現在Euroflowによって世界的な標準化が図られている。この方法により10-5レベルのMRDが検出可能であり,自家移植後のみならず,自家移植非適応の高齢者においても予後の予測に有効であることが示されている。また,比較的簡易かつ安価で導入しやすいこと,検査所要時間が短いこと等よりMRD測定手段としての汎用性が高く,日常臨床への早期導入が期待されている。

4.新規薬剤開発の現状 柴山浩彦
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 近年,多発性骨髄腫(MM)に対し有効な治療薬が登場し,MM患者の予後は著明に改善している。しかし,依然としてMMは不治の病であり,一旦,ある薬剤に効果を示しても,やがて抵抗性を示すようになる。これら既存の薬剤に対し抵抗性を示すようになったMM患者の生命予後は極めて不良であり,新たな治療薬の登場が待たれる。本稿では,わが国では未承認であるが,米国においてはすでに実臨床で用いられている新規プロテアソーム阻害薬のIxazomibと抗体薬のDaratumumabについて,臨床試験の成績を中心に概説する。

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 ここ1年余りの間に多発性骨髄腫に対する新規薬剤が3種類保険承認・発売され,再発・難治性多発性骨髄腫に対する治療の選択肢が大きく広がっている。現時点では,3薬剤ともにプロテアソーム阻害薬もしくは免疫調整薬との併用が必要であり,薬剤選択に当たっては症例個別の詳細な検討が必須である。現在,各薬剤の用法用量の検討や併用薬剤選択肢の拡大などを目的とした臨床試験が進行中であり,その結果が期待される。また,今後1年でさらに2種類の新規薬剤が保険承認・発売される予定であり,作用機序の異なるこれらの新規薬剤を効率よく投入した治癒指向型治療戦略の構築が期待される。

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 この10年で,多発性骨髄腫(MM)の治療は大きく変化した。新たなプロテアソーム阻害剤や免疫調節薬,抗体薬などの新規薬剤の試験が進行しており,目覚ましく進化している領域である。治療効果判定法にも変化が生じ,stringent CRは通過点であり,stringent CRよりさらに深いレベルまで骨髄腫細胞を減らした微小残存病変(MRD)陰性の状態を目指した治療を検討する時代に至った。MRD測定法としてはMFC・ASO RQ-PCR・NGSなどがあるが,骨髄腫病巣の不均一性から,全身MRIやPET-CT等の画像も含めた総合診断が必要である。特に若年者では開発中の薬剤を上手に組み合わせた併用療法を行うことでMRD陰性を目指し,MMを“延命”から“治癒”へと変えていくことが目標となる。

小特集 骨髄線維症(MF) ~分子病態の解明から新規治療薬の開発まで~

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 Ph染色体陰性古典的骨髄増殖性腫瘍に分類される真性多血症,本態性血小板血症,原発性骨髄線維症は共通の遺伝子変異であるJAK2V617F(V617F変異)が2005年に発見されたのを契機に,ここ10年の間に相次いでJAK2exon12変異やMPL変異,CALR変異が発見され,分子病態の解明が進んだ。2016年にはこれらの遺伝子変異を組み込んだ新たなWHO分類が発表され,原発性骨髄線維症では前線維化期と線維化期にそれぞれ診断基準が設けられた。治療薬としてルキソリチニブが開発され,脾腫と生活の質(QOL)の改善を認め,生存期間の延長が期待されている。現在,モメロチニブやNS-018などのJAK2阻害薬,テロメレース阻害薬,ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬,ペグ化インターフェロン,ルキソリチニブと他の治療薬との併用などの臨床試験が進行中である。

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 原発性骨髄線維症(PMF)は,骨髄増殖性腫瘍の1つで,造血幹細胞レベルで生じたJAK2,CALR遺伝子などの変異により骨髄中で巨核球と顆粒球系細胞がクローナルに増殖し,骨髄の広範な線維化,骨硬化を来す疾患である。WHO 2016による慢性骨髄増殖性腫瘍の分類では,骨髄生検による病理所見の重要性が強調され,PMFでは,前線維化期PMFと線維化期PMFに分けて独立した診断基準が記載されたこと,JAK2,CALR,MPL遺伝子変異の検索が大項目に記載されたことなどが,大きな変更点である。

2.骨髄線維症と臓器障害 杉本由香
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 骨髄線維症の臓器障害の主な原因として,髄外造血,血栓症,慢性炎症の3つが挙げられる。この3つは互いに関連しており,種々の臓器障害を起こし,骨髄線維症の病態の進展や予後,患者の生活の質(quality of life:QOL)にも大きな影響を与えている。本稿では,これらについての概説と,骨髄線維症による血栓症や炎症性サイトカインの増加が原因であると考えられている臓器障害,なかでも骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)関連糸球体腎炎について詳述したい。

3.骨髄線維症の治療 桐戸敬太
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 骨髄線維症の治療は,生命予後の改善を目指した同種造血幹細胞移植と全身症状の改善と生活の質の向上を目指した治療の2つに大別される。同種造血幹細胞移植をどのような症例に,どの時期に,どのような方法で行うべきかについては様々な意見があるが,一般的には65歳未満でかつ予後分類で中間リスク-2以上の場合と考えられている。移植非適応例では,貧血や脾腫あるいは全身症候への対応を検討する。このうち,脾腫と全身症候については,ルキソリチニブの登場により従来の治療と比較し,改善が期待できるようになった。一方,貧血の改善や,生命予後を改善するような薬物療法は確立されておらず,今後の課題であると言える。

連載 私のこの一枚(151)

連載 臨床研究,私の思い出(173)

Topics「身近な話題・世界の話題」(154)

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 2008年に発表されたWHO分類による白血病・リンパ系腫瘍の病態学第4版が2016年に改訂された。この8年の間に,骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)の分野では,CALR変異が発見され,日本ではJAK2阻害薬やアナグレリドの使用が認可されるなど,診断・治療において大きな進歩があった。その一方で,MPNに対して古くから使用されているインターフェロン-αの投与によって遺伝子変異の消失がみられる症例や治療中止が可能な症例の報告もあり,インターフェロン-αは再度MPNの治療薬として脚光を浴びている。

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血液フロンティア
27巻1号 (2016年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6940 医薬ジャーナル社

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