血液フロンティア 25巻6号 (2015年5月)

造血器腫瘍の予後と予後因子2015

特集 造血器腫瘍の予後と予後因子2015

  • 文献概要を表示

 造血器腫瘍の遺伝子異常がゲノムレベルで明らかになってきており,これまでの疾患の理解や分類も大きく影響される可能性がある。現在WHO分類の改訂が進められているが,これと並行する形で,LeukemiaNetのガイダンスも見直しが行われる予定である。患者にとって究極の“予後予測”とは,個々の患者ごとに高い精度で,代替案も含めて最適な治療法を指し示すことであろう。これからは医療もビッグデータの時代といわれるが,診療情報の利活用が進められ,予後研究におけるブレイクスルーを願うのは私だけであろうか。

  • 文献概要を表示

 急性骨髄性白血病(AML)は,染色体異常により,予後良好群,中間群,不良群に分類されてきた。遺伝子変異も,FLT3-ITDやc-KIT変異は予後不良,NPM1やCEBPA変異は良好であることが示され,予後分類に取り入れられている。良好群では化学療法,不良群では同種造血幹細胞移植が推奨されるが,中間群の治療選択は確立されていない。正常核型AMLを中心とする中間群は,遺伝子変異によるさらなる層別化により,選択すべき治療が明確になることが期待される。

2.急性リンパ性白血病 早川文彦
  • 文献概要を表示

 成人ALLを従来型で治療した場合の5年生存率は30~50%と報告されており,予後不良因子として,年齢,発症時白血球数,t(9;22),t(4;11)などの染色体異常,寛解到達までの期間などがあげられてきた。最近,ALLの治療は小児型の治療の導入などで大きく変わりつつあり,治療成績も予後不良因子も変化しつつある。それに伴い,同種幹細胞移植の適応も変化してきている。また,最近の検査技術の進歩により,MRD,Ph-like ALLなどの新しい予後因子が判明してきている。

3.慢性骨髄性白血病 高橋直人
  • 文献概要を表示

 Sokal scoreなどのリスクスコア,付加的染色体異常は,CMLの予後予測因子である。TKI治療3カ月の早期分子遺伝学的効果(EMR)と,12カ月の分子遺伝学的大効果(MMR)は,長期予後を予測するサロゲートマーカーである。最近,新たにBCR-ABL1 international scale(IS%)のhalving timeの重要性が報告されている。EMR, MMR, halving timeを日常診療に応用するためには,治療早期からIS%による定量PCRを行うことが推奨される。

4.骨髄異形成症候群 臼杵憲祐
  • 文献概要を表示

 骨髄異形成症候群の予後因子には,血球減少,骨髄の芽球比率,核型,輸血依存性,血清フェリチンレベル,血清β2ミクログロブリン,年齢,合併症がある。また,TP53,EZH2,ETV6,RUNX1,ASXL1,DNMT3A,IDH1などの遺伝子の変異などが報告されている。移植やアザシチジン治療,赤血球造血刺激剤治療などのそれぞれの治療における予後因子が報告されている。

  • 文献概要を表示

 中・高悪性度リンパ腫の予後因子として普及している国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)は,簡便かつ有用な予後予測システムである。IPIは予後予測因子として有用であるが,IPIに基づく層別化治療は確立せず,治療意思決定にIPIを適用するエビデンスは乏しい。一方で,遺伝子発現プロファイルや免疫染色に基づく分類が提唱されているが,近年,新規分子標的療法の治療効果と関連することが報告されており,新たな層別化因子として研究が進められている。

  • 文献概要を表示

 低悪性度非ホジキンリンパ腫は,大半をB細胞性リンパ腫が占める。今回,濾胞性リンパ腫とリンパ形質細胞リンパ腫/ワルデンストレーム・マクログロブリン血症の予後因子について紹介する。前者の予後予測モデルとしてFLIPIとFLIPI2が,後者の予後予測モデルとしてISSWMが提唱されている。さらに,前者では腫瘍を取り囲む微小環境が,後者ではMYD88およびCXCR4変異が,疾患形成や予後にそれぞれ関与している報告がされ,新たな予後因子や治療標的となる可能性がある。

7.ホジキンリンパ腫 永井宏和
  • 文献概要を表示

 ホジキンリンパ腫では,臨床症状などに基づき治療前に評価すべき臨床的予後因子が確立しており,限局期症例での予後良好群と予後不良群の評価は治療方針を決定する上で重要である。また,治療中間PET(interim PET)は治療反応性に基づいた治療関連予後因子となることが明らかになってきており,interim PET結果により治療法を層別する臨床試験が多く進行している。

8.多発性骨髄腫 奥野豊 , 畑裕之
  • 文献概要を表示

 近年のボルテゾミブ,サリドマイド,レナリドミドなどの新規薬剤の出現によって,多発性骨髄腫患者の予後は3.8年から6.1年と,ほぼ2倍に延長した。今後さらに新規薬剤が次々と本邦でも認可される予定であり,さらなる予後の改善が期待できる。予後規定因子としてISSなどの病期分類があり,さらに様々な染色体異常が報告されている。これらの予後因子によりリスク分類をすることによって,その予後を推測することができる。また,初期治療により完全寛解を得た症例や,その中でも微少残存病変(MRD)が少ない症例は,その後の予後が良好であることが知られている。

連載 私のこの一枚(132)

  • 文献概要を表示

 本態性血小板血症の分子病態解明および臨床病態との関連に関する知見が集積するにつれ,新たなリスク因子が抽出され,それに伴い新しいリスク分類が提唱されてきている。本疾患に対する最適な治療方針を明らかにするためには,prospectiveな大規模臨床試験が望まれる。

  • 文献概要を表示

 本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)は造血幹細胞のクローン性疾患であり,最近ではJAK2 V617F遺伝子変異,MPL遺伝子変異に加え,CALR遺伝子変異がこのETの主たる原因遺伝子であることがわかってきた1)。JAK2 V617F遺伝子変異ET(JAK2-ET)は,CALR遺伝子変異陽性ET(CALR-ET)と比較して血栓症の頻度が有意に高く,生存期間(OS)も有意に短くなっている。さらに,JAK2-ETはCALR-ETと比較し,有意に血小板が低値であることも病型としてわかってきた。つまり,JAK2-ETとCALR-ETは違った疾患であると認識をしなくてはならない。ETを治療するにあたり,多数報告があるETリスク分類を基に治療すべきであり,最近のET国際予後スコア(IPSET:International Prognostic Score for ET)では白血球数11,000より高値は予後不良因子としていて,血小板数は予後不良因子とはならない(表1,2)2)。白血球数増多に視点を置く必要があり,危険因子とならなかった血小板数は,むしろ参考程度で経過を観察する時代となった。3種類の原因遺伝子変異が明らかにされた今日,JAK2-ETとCALR-ETは違った疾患であり,単に血小板数のコントロールを主眼において治療すべきかどうか,遺伝子変異解析と白血球数を考慮してET治療を進める新たな時代が到来している。

連載 臨床研究,私の思い出(154)

Topics「身近な話題・世界の話題」(141)

  • 文献概要を表示

 我々が開発したヒトタンパク質発現リソース(HuPEX)および網羅的タンパク質合成技術によって,約2万種の網羅的なヒトタンパク質を合成し,これらのタンパク質を抗原としてプロテインアレイを作製し,血液中の自己抗体をプロファイリングすることが可能になった。シェーグレン症候群の血中の自己抗体マーカーである抗SSA抗体および抗SSB抗体の検出について,既存のアッセイキットとプロテインアレイとを比較した。

血液関連学会一覧

バックナンバー内容

7月号予告

基本情報

13446940.25.6.jpg
血液フロンティア
25巻6号 (2015年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6940 医薬ジャーナル社

文献閲覧数ランキング(
3月23日~3月29日
)