連載 ディベート血液学 第4回 (つづき)
本態性血小板血症の血小板数のコントロールは必要か 予後スコアと遺伝子変異を基盤としたコントロールが必要である
猪口孝一
1
Kouichi Inokuchi
1
1日本医科大学 血液内科 主任教授
pp.860-864
発行日 2015年5月30日
Published Date 2015/5/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201506106
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本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)は造血幹細胞のクローン性疾患であり,最近ではJAK2 V617F遺伝子変異,MPL遺伝子変異に加え,CALR遺伝子変異がこのETの主たる原因遺伝子であることがわかってきた1)。JAK2 V617F遺伝子変異ET(JAK2-ET)は,CALR遺伝子変異陽性ET(CALR-ET)と比較して血栓症の頻度が有意に高く,生存期間(OS)も有意に短くなっている。さらに,JAK2-ETはCALR-ETと比較し,有意に血小板が低値であることも病型としてわかってきた。つまり,JAK2-ETとCALR-ETは違った疾患であると認識をしなくてはならない。ETを治療するにあたり,多数報告があるETリスク分類を基に治療すべきであり,最近のET国際予後スコア(IPSET:International Prognostic Score for ET)では白血球数11,000より高値は予後不良因子としていて,血小板数は予後不良因子とはならない(表1,2)2)。白血球数増多に視点を置く必要があり,危険因子とならなかった血小板数は,むしろ参考程度で経過を観察する時代となった。3種類の原因遺伝子変異が明らかにされた今日,JAK2-ETとCALR-ETは違った疾患であり,単に血小板数のコントロールを主眼において治療すべきかどうか,遺伝子変異解析と白血球数を考慮してET治療を進める新たな時代が到来している。