アレルギー・免疫 25巻6号 (2018年5月)

特集 血管炎とアレルギー疾患 -内因性・外因性アジュバントの関わり-

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 21世紀に入って急速に進んだ自然免疫学の成果により,アジュバントの作用機序が徐々に明らかになってきた。特に病原体だけではなく,組織損傷などで細胞から放出される内在性分子にも自然免疫を活性化する作用があることがわかり,アジュバントに内因性と外因性という概念が定着しつつある。本特集では,内因性・外因性アジュバントの関連性が注目されているアレルギー疾患,自己免疫・自己炎症性疾患,神経系疾患,さらに新たなアジュバントによるワクチン療法のトッピックスを解説する。

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 近年,大気中に存在する微細粒子による健康被害が懸念されている。これらの微細粒子は,吸入により肺の深部に到達し,アレルギーをはじめとする慢性炎症を引き起こすと考えられている。アレルギー性疾患は過剰な免疫応答が引き起こす疾患であるが,吸入された微細粒子がどのような機序で免疫応答を惹起して,アレルギー性炎症を誘導するのかについては不明な点が多く残されている。最近になり,微細粒子が様々な免疫学的機序で炎症性サイトカインであるIL(interleukin)-1を誘導し,肺の炎症反応を惹起するということが明らかになってきている。

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 腫瘍関連抗原が1990年代に同定されて以来,癌ワクチン療法の研究が急速に進んだが,多くの臨床試験において抗原蛋白やペプチドのみを投与しても期待される程の効果は得られなかった。ワクチンによる腫瘍特異的T細胞の誘導には免疫応答を活性化するアジュバントの使用が重要であり,副作用が少なく抗腫瘍免疫応答を増強するアジュバント開発を目指して多くの研究が行われている。本稿では,ペプチドワクチンにおける免疫アジュバントの併用に関して,Toll様受容体リガンドを中心に概説する。

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 感染症を予防するために使用されるワクチンには,標的となる抗原のみならず,投与する抗原特異的免疫応答を増強するアジュバントが加えられている。現在のところ,ワクチンに含まれるアジュバントが自己免疫応答を惹起するという確証はないが,病原体感染が自己免疫疾患の発症機序に関与しているとの報告が多い。病原体に感染すると,様々な組織の炎症や,内因性アジュバントとなりうるサイトカインや細胞内構成タンパク質が放出され,慢性的に組織や細胞を破壊することが自己の組織を傷害する機構に大きく関与していることが示唆される。本稿では病原体感染による内因性アジュバントと自己免疫疾患との関連性について概略した。

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 好酸球性副鼻腔炎の病態は解明されていないが,黄色ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌が産生する外毒素の関与が示唆されている。エンテロトキシンやα毒素などの外毒素は鼻茸細胞からの2型サイトカイン産生を誘導する。エンテロトキシンはスーパー抗原活性を有するが,2型サイトカイン産生についてはスーパー抗原としての働きは否定的であり,ICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)を介した免疫応答と思われた。一方,外毒素の曝露で誘導されるIL(interleukin)-10やIL-22の産生不全が好酸球性炎症の増悪に関与する。

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 中枢神経系(CNS)の血管には,特別な構造,血液脳関門が存在し,免疫細胞や高分子の侵入を制限してCNSの恒常性を維持している。しかし,CNSにも少数であるが免疫細胞が存在している。これら免疫細胞が特異的な侵入口(ゲート)を介してCNSに侵入するのか否かは最近まで明らかではなかった。我々は,多発性硬化症のマウスモデルを用いて,血液脳関門に特異的ゲートがあることを証明し,その形成機構を「ゲートウェイ反射」として報告している。また,その分子基盤として血管内皮細胞におけるケモカイン大量発現機構「炎症回路」を明らかにした。これらの研究から,神経伝達物質は血管に対して内因性のアジュバント的な効果があり,血管の状態を変えて臓器特異的な炎症性疾患を誘導することが分かった。本稿では,主にゲートウェイ反射の観点から神経-免疫相互作用とCNS病態に関して議論する。

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 HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種後に多彩な症状を呈する副反応症例の解析により,症候学的に,① 生命機能,② 高次脳機能・辺縁系,③ 感覚機能,④ 運動機能の4つの機能の恒常性の破綻が推定され,HPVワクチンのL1抗原とアジュバントによる視床下部・脳室周囲器官の病変が原因と推定された。一方,ASIA(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants)症候群は,アルミニウム塩,シリコンのアジュバント作用に由来し,自己免疫疾患はアジュバントによる慢性刺激が原因であると推定された。いずれも症候を詳細に検討する余地が残されており,今後,一般的症候との差異を明らかにする必要がある。

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 アジュバント誘発自己免疫症候群(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants:ASIA)は,器質的疾患が明らかでない頭痛,慢性疲労,自律神経障害,全身性疼痛などを呈する機能性身体症候群(FSS)の原因に踏み込んだ新しい概念である。ASIAにおけるアジュバント物質は自然免疫の活性化物質を広く包括しており,ワクチンのみでなくシリコン症におけるシリコンなどの異物,さらにはシックハウス症候群における室内空気汚染の原因となる有機溶剤や揮発性有機化合物など多岐にわたる。上咽頭は活性化リンパ球が豊富な部位で,吸入した空気が通る免疫学的関所であると同時に,アジュバント物質の影響を受けやすい部位である。そして,同部位の病的な慢性炎症は免疫系のみならず上咽頭の解剖生理学的特性から神経内分泌系に障害をもたらす。FSSにおける慢性上咽頭炎の関与についてはこれまで注目されなかったが,ASIAの概念に慢性上咽頭炎という新しい視点を加えることで,FSSの病態に関する新しい地平が見えてくる。

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 糖鎖異常Ig(immunoglobulin)A1および糖鎖異常特異的抗体の産生亢進により,高分子の免疫複合体が形成されることがIgA腎症の病態に深く関与している。一部の糖鎖異常は扁桃由来であると考えられ,扁桃摘出により血中糖鎖異常や免疫複合体が低下する。扁桃を主とする粘膜面での細菌やウイルス抗原刺激により,TLR(Toll-like receptor)9活性化を伴う粘膜免疫応答異常や,APRIL(a proliferation-inducing ligand)・BAFF(B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)による糖鎖異常産生細胞の制御異常に関連していると示唆される。

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 ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(=IgA〔immunogloblin A〕血管炎),紫斑病性腎炎,IgA腎症は,糖鎖不全IgA1の過剰産生を特徴とする血管炎である。鼻咽頭関連リンパ組織(ワルダイエル輪)におけるIgAを介する粘膜免疫応答異常が関与し,小児においては治療の一環として行われる口蓋扁桃摘出術±アデノイド切除術が早期根治をもたらす。粘膜免疫応答は,捕捉した病原微生物や有害な自己組織が持つ特定の構造を樹状細胞が認識することにより始まる自然免疫応答と,樹状細胞に提示された抗原情報に基づきT細胞の活性化やB細胞の抗体産生へとひきつがれる適応免疫応答により成る。本稿では,小児IgA血管炎患者の背景にある鼻/副鼻腔・口腔・咽頭の感染症を示し,病原微生物の影響下に置かれた鼻咽頭関連リンパ組織の樹状細胞が,微生物DNAや炎症性サイトカインをアジュバントとしてIgA粘膜免疫応答異常をもたらした可能性について考察する。

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 掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis:PPP)は掌蹠に繰り返す無菌性膿疱を主徴とする慢性炎症性皮膚疾患である。疫学的に,女性,喫煙者,扁桃炎などの病巣感染を伴う例が多いといった特徴がある。種々の治療法のなかでも口蓋扁桃摘出術の有効性は高い。患者扁桃リンパ球,血清,病変部皮膚などを用いた基礎的・臨床的研究から,PPP扁桃では口腔内常在菌に対する免疫寛容が破綻しているために,過剰な免疫応答や自己免疫反応が誘導されることが明らかになっている。PPP病態形成において,扁桃病巣感染は重要な役割を担っている。

連載 記憶に残る症例(40)

重症喘息治療の変遷 山内広平
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 気管支喘息治療はこの半世紀で大きく変化してきた。吸入ステロイドの導入により治療効率の大きな飛躍があった。しかし少数ではあるが,重症喘息患者は存在し,その治療法には患者の生活の特殊事情や重症喘息病態の理解が必要である。

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基本情報

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アレルギー・免疫
25巻6号 (2018年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6932 医薬ジャーナル社

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