特集 血管炎とアレルギー疾患 -内因性・外因性アジュバントの関わり-
Ⅶ.Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants(ASIA)と慢性上咽頭炎
堀田修
1
Osamu Hotta
1
1堀田修クリニック(HOC)院長
pp.794-801
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201806794
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アジュバント誘発自己免疫症候群(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants:ASIA)は,器質的疾患が明らかでない頭痛,慢性疲労,自律神経障害,全身性疼痛などを呈する機能性身体症候群(FSS)の原因に踏み込んだ新しい概念である。ASIAにおけるアジュバント物質は自然免疫の活性化物質を広く包括しており,ワクチンのみでなくシリコン症におけるシリコンなどの異物,さらにはシックハウス症候群における室内空気汚染の原因となる有機溶剤や揮発性有機化合物など多岐にわたる。上咽頭は活性化リンパ球が豊富な部位で,吸入した空気が通る免疫学的関所であると同時に,アジュバント物質の影響を受けやすい部位である。そして,同部位の病的な慢性炎症は免疫系のみならず上咽頭の解剖生理学的特性から神経内分泌系に障害をもたらす。FSSにおける慢性上咽頭炎の関与についてはこれまで注目されなかったが,ASIAの概念に慢性上咽頭炎という新しい視点を加えることで,FSSの病態に関する新しい地平が見えてくる。