特集 職業・環境アレルギーの最前線
Ⅲ.環境因子中エンドトキシンとアレルギー
杣知行
1
Tomoyuki Soma
1
1埼玉医科大学呼吸器内科/アレルギーセンター准教授
pp.1464-1472
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201711032
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エンドトキシンは喘息の罹患リスクや病態を修飾するとした知見が集積されてきている。農村部では比較的高濃度エンドトキシンに接触吸入する機会が増えることから,小児の喘息関連症状のリスクを低下させる。一方都市部では農村部ほど高濃度ではないが,住居内でのエンドトキシン濃度は増加し,喘息関連症状のリスクを高くする。その機序としてマウスモデルでは低濃度リポポリサッカライド(LPS)によりアレルギー性気道炎症が促進される。エンドトキシンはTLR4を介してアレルギー免疫応答を誘導していくと推測されている。最近になり,TLR4-NF-κB系をA20酵素が制御することがマウスモデルで示され,A20酵素が欠損するとエンドトキシンによるアレルギー炎症が促進することが示された。農村部の小児ではA20の責任遺伝子であるTNFAIP3の発現が高く,喘息患者では低いことも臨床的にこのメカニズムを支持している。 エンドトキシンの促進的作用として,喘息患者にハウスダスト(House dust mite:HDM)とLPSを同時に気道散布すると,アレルギー性気道炎症が増強することが報告されている。重症喘息では気道サンプル中のエンドトキシン濃度が高く,IL-8などと相関し,ステロイド反応性に関連する。エンドトキシンの病態への寄与を説明する機序として,好中球活性化による好酸球基底膜通過遊走能の誘導が1つ想定される。