特集 血管炎とアレルギー疾患 -内因性・外因性アジュバントの関わり-
Ⅴ.ゲートウェイ反射 -神経系による部位特異的な血管の変容と病態誘導機構-
上村大輔
1
,
村上正晃
2
Daisuke Kamimura
1
,
Masaaki Murakami
2
1北海道大学遺伝子病制御研究所 大学院医学院分子神経免疫学教室講師
2北海道大学遺伝子病制御研究所 大学院医学院分子神経免疫学教室教授
pp.774-785
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201806774
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中枢神経系(CNS)の血管には,特別な構造,血液脳関門が存在し,免疫細胞や高分子の侵入を制限してCNSの恒常性を維持している。しかし,CNSにも少数であるが免疫細胞が存在している。これら免疫細胞が特異的な侵入口(ゲート)を介してCNSに侵入するのか否かは最近まで明らかではなかった。我々は,多発性硬化症のマウスモデルを用いて,血液脳関門に特異的ゲートがあることを証明し,その形成機構を「ゲートウェイ反射」として報告している。また,その分子基盤として血管内皮細胞におけるケモカイン大量発現機構「炎症回路」を明らかにした。これらの研究から,神経伝達物質は血管に対して内因性のアジュバント的な効果があり,血管の状態を変えて臓器特異的な炎症性疾患を誘導することが分かった。本稿では,主にゲートウェイ反射の観点から神経-免疫相互作用とCNS病態に関して議論する。