訪問看護と介護 19巻6号 (2014年6月)

特集 Buurtzorg(ビュートゾルフ)との邂逅―何を学び、どう活かすか

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高齢化に直面し“持続可能なケア”のあり方を模索する世界先進各国が注目しているオランダの在宅ケア組織Buurtzorg(ビュートゾルフ)。看護師を中心とする小規模な自律型チームで、ケアマネジメントから訪問看護・介護までを一体的に提供し、利用者・地域と協働する「地域看護」の取り組みは、利用者・従業員双方の満足度を高め、オランダの「在宅ケア」の約60%を占めるまでに急成長。利益率も8%と高く、利用者あたりのコストはほかの在宅ケア組織の約半分と、効果的かつ効率的なケアへの社会的支持を集め、オランダの制度にも影響を与えています。

これを「在宅ケアのルネサンス(復興)」と喩え、日本に紹介した堀田聰子さん(労働政策研究・研修機構研究員、ビュートゾルフ・イノベーター)は、これはひとつの「ムーブメント」でもあると言っています。患者と専門職という関係も超えた、共に地域で暮らす住民としての「よりよく生き、よりよい社会を実現したい」という思いが響き合うことでイノベーションが生まれ、自分や家族、地域、社会を変えていくムーブメントになるのだと。

Buurtzorg解体新書 堀田 聰子
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 オランダの小さな町で「地域ナース」が仲間とともに起業した在宅ケア組織が、いま世界の注目を集めています。

 1チーム・4人から始めた組織が、わずか7年でオランダ全土約750チーム・従業員約8000人に。利用者は年間約6万人で、今やオランダの在宅ケアの6割以上を担っています。利用者満足度はオランダトップ! 従業員満足度も高く最優秀雇用者賞を連続受賞。就職を希望する看護師が引きも切らないといいます。これを、ほかの在宅ケア組織の約半分のコストで実現しているとあって、オランダ政府はもちろん、高齢化に直面して持続可能なケアのあり方を模索する各国からも熱い関心が寄せられています。

 質の高いケアと経営効率を両立し、利用者にも専門職にも選ばれるビュートゾルフ。その秘訣はどこにあるのか、徹底解剖しました。

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 筆者は、近年世界的に大きな話題となっているオランダの在宅ケア組織Buurtzorg(ビュートゾルフ)財団について、堀田聰子氏(労働政策研究・研修機構)の紹介のもと、主宰のJos(ヨス) de(デ) Blok(ブロック)氏とその協力者による講演を数回にわたって聞く機会を得た。また、そのたびごとに、講演後の彼らと面談し、数々の質問をすることもできた。さらに、ヨス氏本人*1や最近注目されている経営学者*2によるビュートゾルフについての著作も読んでいる。

 現在、日本が直面する最大の課題のひとつは、超高齢社会に向けて、可能なかぎり「在宅」でケアを提供するという理念を、いかに確立していくかという点である。そのために、ビュートゾルフの理念と実践はおおいに参考になると感じた。そこで本稿では、ビュートゾルフの活動について、その日本への適用可能性を議論したい。以下の論考は、長年にわたって日本の医療・介護制度を学んできた者の1人として、以上で得た情報をもとに、ビュートゾルフについての感想を述べながら、日本の在宅ケアのあり方への示唆を探ろうとするものである。

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 「なぜオランダのBuurtzorg(ビュートゾルフ)を視察に行ったか」と問われたら、その答えはこうです。まず、(1)日本の訪問看護の今後の発展・推進を展望するには「世界的な視野」が必要だということ。そこで、日本の訪問看護事業の団体である当協会の役員が、自ら視察し自ら勉強しながら今後の方向性を考えていこうと「海外視察」を計画しました。では、「どの国に行くか」を検討した結果、(2)世界中から注目され、日本でもさまざまに紹介されているビュートゾルフが「実は訪問看護事業である」ことから、行き先をオランダに決めました。日本の当事者である私たちが現地で学び、正確に理解して「日本に応用できることはしていこう」ということになったのです。

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 「地域包括ケアシステム」の英語表記は、Community based Integrated Care Systemが最もふさわしい。なぜなら、地域包括ケアシステムのコアに置かれるべきは、職種・組織を超えた規範的統合のもとに展開される「日常生活圏域(Community)」ごとの各種ケア機能の「統合(Integration)」だからである*1。この点で、オランダの在宅ケア組織Buurtzorg(ビュートゾルフ)財団は、1つのモデルを示してくれている。

Buurtzorgに出会ってここを学んだ!こう進化した!

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 私がBuurtzorg(ビュートゾルフ)に出会ったのは、当ステーション(常勤換算7人)を開設した2012年のことでした。当時、同法人の桜新町アーバンクリニック(以下、当クリニック)の看護師だった私は、往診同行だけでは十分な看護を提供することができず、かといって地域のステーションでは看護師によってケアの質にばらつきがあり、他事業所との連携をさらに強化していく難しさを痛感していました。そこで、クリニックとの連携を密にとりながら、「医療」から「看護」までを一体的に提供できるよう、同法人内にステーションをつくろうということになったのです。そのほうが、看護師自身の学びも多く、ケアの質向上も期待できると考えました。

 当ステーションでは、現在「オレンジプラン」による認知症初期集中支援チームのモデル事業に取り組んでいます。当クリニックの総合診療医と認知症専門医との連携を密にもち、認知症だけに注目するのではなく、医療面・生活面を総合的に支えるプライマリ・ケアの理念を共有し行なっています。しかし一方で、生活支援など「介護」の面では、やはり他事業所との連携が不可欠であり、ここでも日本の“分業文化”の弊害を感じているところです。

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 私がBuurtzorg(ビュートゾルフ)の活動に関心をもったのは、地区看護師(p.441)が起業し、自律した専門職がチームとして活動する、ケア提供システムの運営とケアの質管理です。

 ビュートゾルフの起業は、私が独立して訪問看護ステーションを開設したのと同じ2006年です。私たちのステーションも、順調に成長してはいるものの、8000名のスタッフを抱えるビュートゾルフには、遠く及ばない規模です。短期間で大組織に成長したビュートゾルフでは、理念を継承したチーム運営をどのように行ない、ケアの質を管理しているのか知りたいと思いました。これらの疑問に、代表であるJos(ヨス) de(デ) Blok(ブロック)氏は、「徹底したICT活用」と答えており、それはどのようなものか、現地に行ってみるしかない!と思いました。

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 私たちが訪問看護事業を始めたきっかけは3.11、東日本大震災だ。被災地支援をするなかで、地域医療の崩壊と、そこから派生した孤独死という現実に直面した。これは被災地だけの問題ではなく、今後の超高齢化社会における日本の縮図である、と背筋が凍る思いをした。そして、2012年5月から東京都中野区にステーションを開設し、翌年3月から足立区にサテライトを設置(それぞれ常勤換算8.0、7.0)、訪問看護をスタートした。

 以来、「看護師10名のチーム」を基本に24時間365日の訪問看護を提供してきた。“看取り難民”を1人でも減らすために、新卒・新人訪問看護師応援サイト「Can-go.com」や聖路加国際大学との新卒訪問看護師教育セミナー(きらきら訪問ナースの会)の運営も行なっている。また当社は、もうひとつ「ワンコイン健診」という予防事業も手がけており、Buurtzorg(ビュートゾルフ)と共鳴する部分は多い。

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 「オランダの方に、日本の訪問リハビリについて説明してほしい」。2012年10月、地域の在宅医療連携会議後に、あるメンバーから突然の依頼を受けました。「なぜオランダの方に? なぜ私が?」という疑問も解けないまま、その2週間後、Buurtzorg(ビュートゾルフ)のJos(ヨス) de(デ) Blok(ブロック)代表らが、わが町・金沢を訪れたのです。訪問リハビリテーション(以下、訪問リハビリ)や行政に関わる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を中心とする地域の有志で一行を迎え、懇談会を行ないました。私は、当ステーションでの訪問リハビリの業務内容や、他職種と連携した事例などをプレゼンテーションし、その後、全体でのディスカッションも行ないました。

 これが、私のビュートゾルフとの出会いです。ヨスさんらの話から、ビュートゾルフの魅力や、スタッフが楽しそうに働いている雰囲気がとてもよく伝わってきました。しかし、オランダの医療・介護・福祉にも1990年代に“暗黒時代”があったと言います(p.442)。ビジネス志向の制度改革により、細切れで継続性なく提供される質の低いケアが問題となっていたのです。今の日本の状況に似ていると知り、その状況を抜け出しつつある今のオランダの姿は、日本にとって非常に参考になると感じました。これをきっかけに私は、なかでも訪問リハビリのあり方を見直し始めました。

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 当ステーションがサービスを提供しているのは、夕張市内全域です。夕張市の高齢化率は45.5%、人口1万34人のうち前期高齢者1847人、後期高齢者2718人という状況にあります(市役所介護保険係調べ、2013年7月末現在)。

 2012年4月、当ステーションでは、「住み慣れた自分のまち、自分の家で、自分らしく暮らしていきたい」という利用者の気持ちに寄り添い、「看護・介護・医療を通じて在宅での暮らしを支えていきたい」という思いから、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を始めました。当初は「一体型」でしたが、2013年5月からは「連携型」へと移行し、現在の利用者は9名(平均要介護度2.00)です。一体型時代を含め、これまでの利用実人数は22名(平均要介護度2.82)になりました。

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 Buurtzorg(ビュートゾルフ)を知り、実際にJos(ヨス) de(デ) Blok(ブロック)氏とお話をして、当法人がめざしているチーム医療がすでにシステムとして実践され、世界的な広がりをももって発展し続けていることに、たいへん驚きました。

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 在宅医療の推進と地域包括ケア体制の構築が急がれるなか、「訪問看護」に期待される役割はますます大きくなっています。しかし、その役割を果たすためには、さまざまな課題があるのが現状です。それに対して私たちは、Buurtzorg(ビュートゾルフ)の仕組みもヒントに、「エリア制訪問看護システム」の構想の実現に取り組んでいます。

 訪問看護ステーション「クローバー」(常勤換算6.5名)は、高齢者に限らず、新生児や重症心身障がい児・者、精神疾患や難病まで、すべての在宅療養者が安心して暮らせるように24時間365日にわたって支援しています。一方、NPO法人「木もれび」では、介護保険制度によるディサービスやショートスティ、軽度者への予防といった直接的なサービス提供事業を中核に、できるかぎり最期まで在宅で暮らせる地域づくりにも積極的に取り組んでいます。

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 私は、千葉県と埼玉県で訪問介護事業所を経営する社会福祉法人で働いている。言うまでもなく、ケア現場では人材確保が喫緊の課題となっているが、これは、いまだに介護を含む「ケア」が、あまり裁量の余地のない単純労働のように考えられているからだろう。ケアワーカーが自律し「やりがい」を感じられるような組織や仕組みをどのように整えるかが重要な課題である。

 2013年2月に、オランダ・Buurtzorg(ビュートゾルフ)を視察した。代表のJos(ヨス)によるセッションから看護師との同行訪問まで、幅広く勉強させてもらった。ここでは、2つの視点に着目し、その学びからの、私の小さなアクションを報告する。

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 わが国の医療政策の今後の方向性である在宅への流れと病床機能の分化・明確化など、いわゆる2025年問題に向けた準備はしているものの、その実像はあまりにおぼろげで判然としない。これまでに何度も海外の医療機関や福祉事業所の見学をしたが、それでも実感が湧かない状態であった。そんなとき、Buurtzorg(ビュートゾルフ)に出会った。実践者として自信に満ちた彼らの様子は、われわれの地域の将来像にかかった靄(もや)を少しずつ晴らしてくれるように感じた。

連載 マグネットステーション インタビュー・46

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看護師を中心とする小規模チームで、ケアマネジメント、訪問看護・介護等を一体的に提供する(p.444)オランダの在宅ケア組織Buurtzorg(ビュートゾルフ)。2006年の創業から瞬く間にオランダ全土を席巻し、今では約750事業所・約8000人の一大組織に急成長。「就職したい!」と400人の応募があった月もあるほどで、離職率は5%と低く、まさにマグネットステーションです。

とはいえ、1つひとつのチームは最大12人と大きくはありません。学士レベルの看護師を多く含む自律型のチームで、地域密着型の質の高い統合ケアを効率よく提供しています。その効果は、非常に高い利用者満足度と従業員満足度、さらには医療費削減にまで及び、国の制度にも影響を与えています。

成功の鍵は、看護師の「自律性」を引き出すフラットな組織づくりとアカウンタビリティ。その理念を着実に現実のものとしてきたシステムについて、Jos(ヨス)代表ほか、ビュートゾルフで働く看護師のYvonne(イヴォンヌ)さん、ICT責任者Ard(アート)さん、そしてビュートゾルフと協働する家庭医のWilbert(ウィルバート)さんの4名に聞きました。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・57

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 オランダ・Buurtzorg(ビュートゾルフ)の代表のJos(ヨス) de(デ) Blok(ブロック)さん(p.00)たちが中国に行く途中で日本に1日だけ立ち寄ることになったため、原宿のJNAホールで緊急講演会「在宅ケアのルネッサンス」を開催したのは、忘れもしない2012年4月11日です。この日は綱渡りのような1日になりました。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第35回

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 滋賀県甲賀市の「やまなみ工房」におじゃました。

 やまなみ工房は、知的障害のある方々がさまざまな作業を行なう施設だが、なかでも絵画や陶芸、刺繍などさまざまな創作活動を行なう工房をいくつももっているところに特徴がある。現在、60数人の利用者の方々が、日々さまざまな作品に取り組んでおられる。

連載 一器多用・第37回

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 気づけば、街の写真店をあまり見かけなくなりました。デジタルカメラと高画質プリンターの普及によるものです。そんななか、世界最大の写真用品メーカーだったアメリカのイーストマン・コダック社は経営破たん。近年、技術の進歩やグローバル化により、このように本業が丸ごと消えてしまうような事態も珍しくなくなりました。その代表例が写真業界です。

 ところが、もう一方の雄であった富士フィルムといえば、そんな危機的状況を乗り切り、新たな事業を展開しています。それも、女性にはすでにお馴染みの「化粧品事業」です。フィルムの主原料であるコラーゲンや、写真の色褪せを防ぐ抗酸化・ナノ化など、これまで培ってきた技術を化粧品に活用し、肌への浸透力など技術面での質の高さを積極的にPRし、アンチエイジング市場で大きな話題となりました。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第39回

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杏里 私はまだ育児歴4か月の新米ママだけど、介護経験があるからこそ、育児をしていて思ったことがあるんだ。父さんを介護するようになってから、「介護する人をサポートする社会的システムがもっとあったらいいな」って思い続けているし、ここでも語ったことがあるけど、やっぱりまだまだ整っていない気がするんだよね。

母さん 現在の介護保険では限度額いっぱいまで使っても、まだまだ介護者は肉体的にも精神的にも負担を背負うことが多くある。その「介護者本人のため」の社会的サポートはないに等しいよね。

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日本在宅看護学会第4回学術集会(本年11月15日、東邦大学看護学部)は、初めて現場管理者2名が学術集会長を務めます。例年以上に現場的な学会になりそうです。

でも、現場からは「学会なんて行ったことない」「なんだか難しそうだし、いいことあるの?」「だいたい、忙しくってそれどころじゃない!」なんて声も?

でも本当は、現場の人にとってこそ、学会はおもしろいんです。

学術集会長を含む4名の現場管理者と2名の研究者が、切っても切れない「学会」と「現場」の関係を語り合ううち見えてきたのは、「地域包括ケア」の時代だからこそ、現場からの学会参加がいっそう意義深くなっていること。

さて、学会いつ行きますか?

読者の声

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情報シートにICFを入れたら世界が変わった

松平康子 兵庫・ケアマネジャー、看護師

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ニュース―看護と介護のこのひと月

INFORMATION 学会・研究会情報

今月の5冊

投稿規定

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 杉本 , 栗原
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ビュートゾルフにはいろいろスゴイところがありますが、最も感銘を受け、これぞ最大のポイントだ!と思ったのは、ヨス代表の「看護師という職業人への揺るがぬ信頼」です。看護師なら、利用者さんの幸せを願う。看護師なら、地域と人々、仲間たちの幸せを願う。そして、看護師は幸せであるべきだ(もちろん、看護師以外もみんな)。ビュートゾルフのシステムの1つひとつは、理にかなったシンプルなもの。そう目新しくはないと言ってもいいものです。でも、そのどれもが、利用者さんのために、そして看護師が看護師であるためにある。心の中にあるものを形にしたところがスゴイのです。私の雑誌づくりの核心にあるのも、日本の在宅ケア実践者への尊敬と信頼です。これからも形にしていきます。…杉本

はじめまして。この春から小誌を担当させていただきます、栗原と申します。これまでは助産関係の雑誌を編集していたため、180度(?)違う世界に日々驚き、勉強させていただいています。本号の巻頭・ビュートゾルフのインタビューと、特別記事・「そうだ、今こそ学会へ行こう!」座談会は、本誌の編集になって、1回目と2回目の仕事でした。いきなりすごいお話を聞かせていただいたのだなあと、編集しながら改めて感動しています。特に学会座談会では、「誰にでも伝わる言葉で現場の実践を伝えていくこと」の大切さに深く頷かせていただきました。専門誌の役割もそこにあるのだと思っています。学会に参加された後は、ぜひ小誌にもご投稿ください!…栗原

基本情報

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訪問看護と介護
19巻6号 (2014年6月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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