- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
パーキンソン病は,大脳基底核の黒質緻密部に分布するドパミン作動性ニューロンの変性と脱落により生じ,振戦,筋固縮,無動を主な臨床症状とする慢性進行性の疾患である。加齢に伴う疾患と考えられ,介護保険制度の特定疾患の1つとなっている。
パーキンソン病は,数ある神経変性疾患の中でLevodopa(3,4-dihydroxyphenyl)によるドパミン欠乏の補充が症状改善に結びついた唯一の成功例である1)。血液脳関門は,循環血液と脳の間にあり,脳の内部環境を保持するために物質の移動を制限する役割がある。ドパミンの前駆物質であるLevodopaは,この血液脳関門を通過することが可能である。Cotziasら2)は,Levodopa投与によるドパミン代謝低下に対する補充療法を開発した。Levodopaは,脳内でドーパ脱炭素酵素によりドパミンに代謝され,消失した内因性ドパミンにかわって運動機能情報の伝達に携わり,運動障害を改善する3)。
しかし,黒質神経細胞の変性を阻止することは現在不可能であり,Levodopaによる長期治療に伴って,薬効減弱,薬効不安定,幻覚,妄想,ジスキネジア(不随意運動)などの副作用が患者のQOLを低下させる4)。
長期治療に伴う副作用の1つであるon-off現象は,突然スイッチが切れたり(off;動けなくなる)ついたり(on;動ける)するように,症状が変化することをさす5)。on-off現象は服薬時間に関係なく現われ,薬効が切れることが予期できない。メカニズムは解明されていないが,薬の効いている時間が短くなり症状が変動するwearing off現象に,内服しても効果が現われないno on現象や,通常よりも遅れて効果が現われるdelayed on現象が絡み合ったものと考えられる。このため,その解決にはLevodopaの消化管からの吸収や血液脳関門の通過を促進する種々の方法が試みられる6)。
on-off現象は,患者がoff状態になると転倒したり外出先で急に動けなくなるなど,日常生活に影響を及ぼしている。患者会でon-off現象について話題になることも多い。パーキンソン病の療養生活を支えていくためには,on-off現象に焦点をあてて,日常生活の特徴を明らかにすることが必須であると考えた。しかし,介護支援専門員向けにon-off現象に対する介護上の注意を挙げている文献は見出せなかった。また,on-off現象がある患者の在宅での療養生活上のニーズは明らかでなかった。
このため,パーキンソン病患者がon-off現象の有無によってどのような支援を必要としているかを明らかにするために調査を行なった。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.