LiSA 26巻9号 (2019年9月)

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超高齢化社会を迎えた日本では,手術療法を選択する高齢患者も増加しており,高齢者の心臓血管外科手術もまれではなくなった。患者背景としては,すでに循環器系の合併症を有する人や,脳神経障害,腎機能障害を合併する人も多い。今回,冠動脈狭窄に対し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行った既往をもち,さらに慢性腎不全に対し維持透析施行中の患者で,腹部大動脈瘤に対するY-graft置換術を行う際の麻酔方法を考察した。侵襲の大きい本手術では,術後の鎮痛と早期リハビリテーション,早期回復を目的として,全身麻酔に硬膜外麻酔を併用することが一般的であるが,抗血小板・抗凝固療法を伴う場合は,硬膜外血腫の発生を考慮し意見の分かれるところである。また最近では,超音波装置を用いた末梢神経ブロックも普及しており,麻酔方法の選択は一様ではない。患者背景のみならず,施設背景や麻酔科医の経験に合わせた麻酔方法が選択されるべきであり,より良好な周術期管理方法は何か,誌上議論してみたい。

予告編
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次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。

自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。

次回,各施設のPLANをお楽しみに!

徹底分析シリーズ 補助循環

巻頭言 吉谷 健司
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補助循環というと,重要性は理解しているが,ややとっつきにくいと感じている麻酔科医が多いのではなかろうか。補助循環を装着している患者に遭遇する機会はそれほど多くはないであろう。しかし,循環,呼吸管理を専門とする麻酔科医として,補助循環は避けて通ることができないものの一つである。

 補助循環と一口にいっても,大動脈内バルーンパンピング(IABP),経皮的心肺補助装置(PCPS),左心補助装置(LVAD),IMPELLA®など,種類は多岐にわたる。それぞれに特徴があり,それらを理解したうえで循環管理を行う必要がある。

 本徹底分析では,総論として補助循環を概観し,そのうえで個々の補助循環装置の特性,利点,欠点について心臓麻酔を専門とするエキスパートに執筆をお願いした。さらに,具体的にどういった症例でどのように補助循環を用いるのかについて,心臓移植のエキスパートである心臓外科医および周産期心筋症の専門家にも寄稿していただいた。

 本特集を通読することで苦手意識を解消していただき,補助循環の基礎から実践までの知識を,明日からの臨床に役立てていただければ幸いである。

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補助循環とは,急性または慢性の心臓のポンプ機能の低下に対して,最大限の薬物療法を行っても血行動態が維持できない場合に使用される,各種デバイスを使用した侵襲的な治療である。現在の日本で使用可能な補助循環のデバイスは,大動脈内バルーンパンピングintraaortic balloon pump(IABP),体外式膜型人工肺extracorporeal membrane oxygenation(ECMO),循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(IMPELLA®),体外設置型補助人工心臓,植込型補助人工心臓である。

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IABPとは,intraaortic balloon pumpの略であり,日本語では大動脈内バルーンパンピングと称される。大動脈の主要分枝をバルーンで閉塞させないように下行大動脈に留置して使用される。本徹底分析で取り扱うデバイスの中では,最も低侵襲で合併症の少ない補助循環である一方で,残念ながら最も有効性が不明確な補助循環ともいえる。IABPによる補助は,バルーンが拡張することによる機序と,収縮することによる機序に集約され,この2ポイントへの理解が,そのままIABPの適応疾患や使用方法の理解へとつながる。

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percutaneous cardiopulmonary support(PCPS)とは,「経皮的心肺補助装置」。読んで字のごとく呼吸機能と心機能を補助するデバイスである。心不全や呼吸不全において酷使された心臓や肺に休んでもらい,来たるべき復活の時に備えてコンディションを整えている間(もしくは新たな心臓や肺を待つまでの間),心臓と肺の代わりをしてくれる一時的な助っ人である。全身の酸素需要供給バランスを考えながら日々過ごしている麻酔科医には心強い存在だが,何事も助っ人に任せっきりはよくない。どんなに最強の助っ人でも,短所はある。その長所を最大限に発揮してもらうべく,麻酔科医が把握しておきたいPCPSの特徴について概説する。

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心室補助装置ventricular assist device(VAD)に関する手術は多様性に富んでいる。新規に左心補助装置left ventricular assist device(LVAD)を装着する症例以外にも,体外設置型VADから植込型VADへの変更手術や右心補助装置right ventricular assist device(RVAD)装着術,さらにその離脱術がある。VADの種類も複数あり,拍動流型と定常流型に分けられ,定常流型には軸流型と遠心型がある。このように複雑で多様性があることから,多くの麻酔科医が苦手意識をもっている分野ではないだろうか。しかし,押さえるべきポイントを理解すれば,思っているほど複雑ではない。

 本稿では,どのような病態生理学的特徴をもった重症心不全患者がVADを装着するのか,またLVAD装着後の循環管理のポイントとして右心不全の管理について述べる。

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2016年9月に日本でIMPELLA®(日本アビオメッド社)が保険収載され,各施設での使用数は増加している。IMPELLAは,迅速かつ低侵襲に左室循環補助が行えるというメリットがある一方で,特有の“ピットフォール”があるため,それを理解して管理にあたる必要がある。

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劇症型心筋炎は,原因不明の稀少致死的心疾患である。一般には,ウイルス感染などを契機に心筋組織に急性炎症反応が惹起され,それを主因として心機能が急激に低下した病態である。①血行動態的に心機能の低下による急性心不全,②心筋生検による心筋組織の急性炎症反応,から確定診断され,治療の対象は,急性心不全と心筋の急性炎症に大別されるが,その稀少性のために,特に心筋の急性炎症に関して明確なエビデンスに乏しいのが現状である。一方,急性炎症期を乗り越えると,心機能は回復し良好な予後が得られることもある。すなわち,本疾患は急性期治療の成否が特に重要である。

 本稿では,劇症型心筋炎の急性期治療ついて解説するとともに,心機能の回復が十分に得られず,心臓移植適応とされた症例を呈示する。

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周産期心筋症peripartum cardiomyopathyとは,心疾患の既往のない女性が,妊娠から産褥期に突然心不全を発症し,拡張型心筋症に類似した心拡大と心収縮力低下を呈する特異な心筋症である。本疾患は時に重症化し,致命的となることがあるため,その診療には注意が必要である。

 本稿では,急性期の心原性ショック状態に対して補助人工心臓(VAD)を用いた機械的循環補助を導入することで救命し得た周産期心筋症症例を提示し,本疾患の病態を解説する。

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はじめに

麻酔科医・集中治療医は,患者のバイタルサインを把握し,全身管理を行う職業である。ヒトの生命活動を反映するバイタルサインは,秒,分,時間,日,月さらには年単位で変化するが,われわれは,分単位で変化するバイタルサインを正確にとらえることがモニタリングであると考えがちである。しかし,生命活動とは,日内変動,季節変動もするものであり,さらに老化の影響も加わる。また,単に分単位の集合として日,月,年単位の経過を語れるものでもない。バイタルサインのプロが視野を広げれば,誕生から死の瞬間まで,ヒトのバイタルサインを長期間,連続的にモニタリングすることもできるのではないか。

 本稿では,呼吸というバイタルサインに焦点を絞り,ヒトにおける呼吸をどのようにすればモニタリングできるか,その成果をどのように社会に還元できるかを議論する。

半世紀前の事件をたどる

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1963年に力道山が刺されて死亡する事件が起きた。死因は,下腹部刺創を契機とした腹膜炎とされてきた。しかし,死後30年を経た1993年に,開腹手術の麻酔時の筋弛緩薬投与がもたらした気管挿管不能,換気不能,無酸素状態が原因だとする「麻酔事故説」が唱えられた。麻酔科医による一般向けの著作の中の記述であり,科学論文ではなかったこともあって,特段の異論も出ないまま,現在までこれが繰り返し引用されてきている。

 既知の情報と,当事者と直接関係のあった医療者の証言を検証したところ,この麻酔事故説を否定する根拠が多数存在していた。本稿では,それらの論拠を示して麻酔事故説を否定し,また,麻酔事故説流布の背景を考察する。

こどものことをもっと知ろう 第6回

小児の身体所見の取り方 児玉 和彦
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若手麻酔科医:こどもの身体診察って大人と同じでいいですか?

小児科医:だいたい同じですが,違うところがあるから説明しましょう。まず診察で使う道具は大人とちょっと違うのですよ。

連載 判例ピックアップ 第27回

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●Summary

脳腫瘍の部分切除術を受けた患者が,術後に頻脈や発熱・高体温などの症状を経て急変し,4か月後にくも膜下出血を起こして死亡した。患者側は,術後に発症した悪性高熱症に対して担当医が適切な治療を怠った過失があるとして損害賠償を請求したが,裁判官は術後悪性高熱症の発症は証明できないとして,患者側の訴えを退けた。

連載

THE Editorials
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Anesthesiology

Article:

Zapol WM. Nitric Oxide Story. Anesthesiology 2019;130:435-40.

今回取り上げるのは,Dr. Zapolによる,一酸化窒素の研究から臨床応用に至るまでの話である。

■Dr. Warren Zapolはどんな人?

一酸化窒素(NO)と聞いて,Dr. Zapolのことを思い浮かべる人も多いのではないかと思う。Dr. Zapolは伝説の人であるとともに,親しみやすい身近な人でもある。

 私がマサチューセッツ総合病院(MGH)で麻酔科レジデントや集中治療フェローをしていた時は,臨床においては呼吸器手術や食道手術を行う胸部外科の麻酔・集中治療室における指導をしていた。Dr. Zapolはマサチューセッツ工科大学(MIT)を1962年に卒業後,Rochester大学医学部を1966年に卒業している。外科レジデント終了後,3年間,米国国立衛生研究所(NIH)でDr. Kolobowの指導のもとに体外式膜型人工肺(ECMO)の研究に従事した。1970年にMGH麻酔科のレジデントを開始しているが,同年には未熟児の呼吸不全の治療法にECMOを使用している。麻酔科レジデント時代には,冷戦中であったソヴィエトに渡り,ECMOを用いて要人の娘の治療をしたというエピソードももっていた。南極にキャンプを張り,アザラシの酸素化についても研究を重ねていた。ICUには,彼や,同行したMGHの仲間たちの真っ黒に日焼けした写真が飾られていたのを覚えている。南極の氷河には,彼にちなんで命名されたZapol Glacierがある。私のレジデント時代には,長時間潜水をする日本や韓国の海女の酸素化に興味をもち,来日して研究をしていた。

 Dr. Zapolからは,急性呼吸促迫症候群(ARDS)やECMO,アザラシの潜水時の酸素化などについての講義を受けた。そのうちに「Dr. Zapolは,患者に有毒ガスをかがせる研究をしているらしい」という笑い話のようなうわさがMGHで広がった。その有毒物質こそ,NOであった。Dr. Zapol自身もその笑い話が気に入っているようで,自らもジョークに使っていた。

diary

鳥取県米子市 多喜 小夜
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米子市は鳥取県の西部に位置し,近くに大山(写真1)という独立峰があります。高層ビルがないので,市内のどこからでも大山が見えます。晴れた日には,空に描いた絵のように鮮やかで凛とした姿を見せてくれます。曇りの日には,霞の中に山影だけが浮かび上がり,実に神秘的です。大山の一番の恵みは美味しいお水です。米子市は水道水も美味しいです。隣の境港市には大きな漁港があり,近隣のスーパーには新鮮なお刺身がいつも豊富に並んでいます。米子市は人口が少ないので,市街地でもいわゆる「人ごみ」というものがほとんどなく静かなまちです。でも,そこそこ便利で,食べ物も美味しく,人も優しく,とても住みやすいまちです。

クラシック音楽談義 ゆるりと音楽の話をしませんか 第5回

白内障手術の歴史 仲西 未佳
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前回は,バッハとヘンデルが同じ眼科医ジョン・テイラーの手術を受けて失明した話を紹介しました1,2)。彼らに行われた「白内障倒下法」の有効性は現代では否定されていますが,起源はとても古いものでした。

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こんにちは!ワイン安部です。

ワインインポーターの仕事のなかで,生産者と消費者を直接つなぐことができる機会のひとつに「メーカーズディナー」というものがあります。

今回は,実は日本でも数多く行われている「メーカーズディナー」についてお話します。

Tomochen風独記

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ドイツ小児心臓センターDeutsches Kinderherzzentrum(DKHZ)における心臓麻酔について,これまで6回にわたって紹介し,ようやく人工心肺中の様子までたどり着きました。今回は,DKHZにおける非常に“ワンパターンな”人工心肺離脱時からです。

Medical Books 自薦・他薦

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目次

基本情報

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LiSA
26巻9号 (2019年9月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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