半世紀前の事件をたどる
力道山の死因は,本当に麻酔事故だったか!?
宮坂 勝之
1
1聖路加国際病院 麻酔科
pp.823-828
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201456
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1963年に力道山が刺されて死亡する事件が起きた。死因は,下腹部刺創を契機とした腹膜炎とされてきた。しかし,死後30年を経た1993年に,開腹手術の麻酔時の筋弛緩薬投与がもたらした気管挿管不能,換気不能,無酸素状態が原因だとする「麻酔事故説」が唱えられた。麻酔科医による一般向けの著作の中の記述であり,科学論文ではなかったこともあって,特段の異論も出ないまま,現在までこれが繰り返し引用されてきている。
既知の情報と,当事者と直接関係のあった医療者の証言を検証したところ,この麻酔事故説を否定する根拠が多数存在していた。本稿では,それらの論拠を示して麻酔事故説を否定し,また,麻酔事故説流布の背景を考察する。
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