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Anesthesiology
Article:
Zapol WM. Nitric Oxide Story. Anesthesiology 2019;130:435-40.
今回取り上げるのは,Dr. Zapolによる,一酸化窒素の研究から臨床応用に至るまでの話である。
■Dr. Warren Zapolはどんな人?
一酸化窒素(NO)と聞いて,Dr. Zapolのことを思い浮かべる人も多いのではないかと思う。Dr. Zapolは伝説の人であるとともに,親しみやすい身近な人でもある。
私がマサチューセッツ総合病院(MGH)で麻酔科レジデントや集中治療フェローをしていた時は,臨床においては呼吸器手術や食道手術を行う胸部外科の麻酔・集中治療室における指導をしていた。Dr. Zapolはマサチューセッツ工科大学(MIT)を1962年に卒業後,Rochester大学医学部を1966年に卒業している。外科レジデント終了後,3年間,米国国立衛生研究所(NIH)でDr. Kolobowの指導のもとに体外式膜型人工肺(ECMO)の研究に従事した。1970年にMGH麻酔科のレジデントを開始しているが,同年には未熟児の呼吸不全の治療法にECMOを使用している。麻酔科レジデント時代には,冷戦中であったソヴィエトに渡り,ECMOを用いて要人の娘の治療をしたというエピソードももっていた。南極にキャンプを張り,アザラシの酸素化についても研究を重ねていた。ICUには,彼や,同行したMGHの仲間たちの真っ黒に日焼けした写真が飾られていたのを覚えている。南極の氷河には,彼にちなんで命名されたZapol Glacierがある。私のレジデント時代には,長時間潜水をする日本や韓国の海女の酸素化に興味をもち,来日して研究をしていた。
Dr. Zapolからは,急性呼吸促迫症候群(ARDS)やECMO,アザラシの潜水時の酸素化などについての講義を受けた。そのうちに「Dr. Zapolは,患者に有毒ガスをかがせる研究をしているらしい」という笑い話のようなうわさがMGHで広がった。その有毒物質こそ,NOであった。Dr. Zapol自身もその笑い話が気に入っているようで,自らもジョークに使っていた。
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