JIM 4巻1号 (1994年1月)

特集 失敗例から学ぶ日常医薬品の上手な使い方・1

Editorial

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 現在市販されている医薬品品目数は14,000を超え,病院および診療所の規模および診療内容により使用医薬品数は異なるが,大病院では2,000~3,000品目の医薬品が使用されていると考えられる.これだけ多くの医薬品について添付文書の内容をすべて知っていることは不可能である.そのため医薬品を安全,有効に使用するためにはどうしたらよいかが問題となる.

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 ■薬物の投与設計は,従来の投与量―効果関係に基づく理解から,薬物血中濃度―効果関係の理解に基づくものに変わらなければならない.

 ■臨床薬理学的な薬物体内運命の把握は,肝・腎臓障害病態下における薬物動態の変化,薬物相互作用の理解を通して,薬物血中濃度モニタリングの手法を用いた濃度―効果関係による薬物治療のアプローチを可能にするだろう.

抗不整脈薬 伊賀 幹二
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 ■心電図による不整脈の記録ができない症例でも,病歴により診断がある程度可能である.

 ■不整脈の原因を考慮し,かつ心臓以外に不整脈の増悪因子があれば可能な限り除去する.

 ■不整脈治療の長期的な目標,および抗不整脈薬の副作用を考慮する.

狭心症治療薬 江崎 宏典
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 ■狭心症治療の基本は薬物治療と冠危険因子のコントロールを中心とした内科的治療である.

 ■狭心薬の選択は発症機序や病因に応じて行う.

 ■治療薬の評価を行い,薬物治療の限界であれば冠血行再建術を考慮する.

強心薬 久代 登志男
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 ■高齢者に対するジギタリス処方は,服薬が確認できる方法も指示する.

 ■食欲低下はジギタリス中毒の前触れの可能性がある.

降圧薬 金井 美津
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 ■高齢者降圧治療に際して過剰降圧は心血管系疾患の発症に連なる.適正な薬剤を選択し,漫然とした治療に陥らぬよう留意したい.

利尿薬 前田 利朗
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 ■利尿薬は体液量を減少させることを主たる目的として用いる薬剤である.心機能,腎機能など循環系に与える影響と血清電解質の変動をモニターしながら投与することが肝要である.

抗高脂血症薬 小泉 順二
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 ■高脂血症治療のポイントは,どのようなリポ蛋白代謝異常で,血清脂質の何が増加しているかを考えながら,それに沿った抗高脂血症薬を使用することである.

抗血小板薬 渡辺 清明
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 ■抗血小板薬の投与は適応をきちんと知ることが重要である.したがって患者をよく検索し,適応範囲にあることを確認しながら投与すべきである.

 ■現状で説明できない異常を認めたら,専門医に早めに相談すべきである.

造血薬 天野 正道
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 ■経口的に投与されて血球を増やす作用があるのは鉄剤のみであり,一般的にはほとんどこれが造血薬の同義語として理解されている.

 ■非経口的投与によるビタミンB12や広義には蛋白同化ホルモン,最近のコロニー刺激因子も造血薬の範疇に含まれる.

抗不安薬,睡眠薬 斎藤 昌
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 ■抗不安薬:不安の質,程度,それに対する薬剤投与が必要であるのかどうか,必要である場合投与する薬剤の種類(majorかminor tranquilizerかも含め),量,投与期間を判断する.

 ■睡眠薬:睡眠障害の原因,質,程度を把握して,薬物依存,乱用に十分注意しながら,プラセボも含む適切な薬剤の種類,量,投与期間を考慮する.

NSAIDs 富井 正邦
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 ■NSAlDsは非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs)の略称である.選択基準で重要なのは抗炎症効果の強さと持続時間である.

 ■NSAIDsには共通する副作用と,個々の薬剤に特徴的な副作用が報告されている.それぞれについて知る必要がある.

 ■NSAIDsは他剤,特に抗菌薬と併用することが多い.新キノロン系との併用は禁忌と考えたほうがよい.

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 ■終末期にモルヒネを投与する時は副作用の対策を十分にする.

 ■できるだけ患者と家族の訴えに耳を傾け,必要があれば適時に鎮痛補助薬を使用して症状を緩和することが大切である.

抗うつ薬 本橋 伸高
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 ■まずは副作用の少ない第2世代の抗うつ薬を投与する.

 ■十分な量を用いても効果がない時は古典的三環系の抗うつ薬を用いる必要がある.

抗けいれん薬 山根 清美
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 ■抗けいれん薬投与の対象疾患にはてんかん,神経痛,不随意運動などがある.

 ■てんかんに対する抗けいれん薬は多剤併用療法よりも単剤療法が望ましい.

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 ■抗アレルギー薬はあくまで補助的な治療薬であり,アレルギー疾患のうち特に気管支喘息においては基本的な薬剤を重症度に合わせてきちんと投薬することが大切である.抗アレルギー薬と少量の抗喘息薬の併用では良好な症状のコントロールは得られない.

Key Articles 高橋 隆一
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 医薬品を有効かつ安全に使用するためには,臨床薬理の一般的基礎知識(血中濃度,吸収,排泄および代謝),医薬品の有効性および安全性についてよく理解して患者に適した医薬品を選択し,適切な使用法を考慮しなければならない.

忘れられない患者さんに学ぶ

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 医師が患者になると,治療に責任を負う医師は,立場上大変緊張する.そして疾患が悪性であったり,かなり難しい手術を要する場合であると,治療を依頼されたことに対しては有り難いと思っても,心は重い.

 また医師は,患者が医師,有名人,またはその家族であったりすると,検査・治療の最中に思わぬ合併症や事件が起こりがちであることを経験している.

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 われわれは,西洋医学と東洋医学を全人的医療という文脈の中で相互主体的に併用している.これは,より合理的かつ高いQOLを保証するためである.

 症例:10年以上前より,RSD (reflex sympathetic dystrophy)による左腕の痛みを訴えている男性.某大学病院にて交感神経ブロック,硬膜外ブロックなどの治療を受けていたが軽快しなかった.左腕,手指の筋肉は萎縮し触れるだけで痛み,常に手袋をしていた.左腕の循環が悪く,冷えると痛みが強くなるということを指標に,麻黄附子細辛湯を処方した.2週間で自覚症状が軽快し始め,2ヵ月後にはほとんど消失した.麻黄附子細辛湯は,麻黄,附子,細辛の3つの生薬からなる処方であるが,それぞれに鎮痛作用,循環改善作用などの薬理作用がある.また東洋医学的には,体力が低下している人(虚証)に用いられ,虚証の慢性疼痛であるこの症例には理にかなった処方と考えられた.

診療のまとめ 田中 地平
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 近年,POS(問題志向システム)が医療の現場に取り入れられ,患者中心の医療が行われるようになってきたことは喜ばしいことです.また,従来より閉鎖的であった診療録も,PO式診療記録(problem oriented medical record: POMR)の導入によりかなり開放的になり医師やナースなど全医療職(時には患者やその家族)が参加する形でより詳細な情報を得て,包括的医療が行われるようになってきました.しかし,患者の情報はまだ医療機関内にとどまり,患者へのフィードバックが十分にはなされていないのが現状です.筆者の診療所では,数年間の診療録を半チェック式の「診療のまとめ」に整理し,一部は患者にお渡しして,医療の継続のための情報源として,休日当番医や夜間救急病院などとの連携にも利用してもらっています.

 いつの日か,患者のためばかりではなく,患者とともに医療が行えたらと願って「診療のまとめ」を書き続けています.

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 開業小児科医が扱う疾患の約80%は感染症である.生後間もない乳児の発熱や,年長児でも発熱が長引く場合など,炎症の強さをすぐに知りたい時に,血算やCRP,血沈などの検査を診察室で行う.

 このうち最も簡単で有用なのはラテックス凝集法によるCRP定性検査である.検査キットさえあれば,耳朶採血の全血1滴で検査できる.2分後の凝集像で(-)(+)(++)を判定するが,CRPの量が多いほど早く凝集するので,凝集開始までの時間も参考にするとよい.そのために普段から陽性の場合に外注検査で定量を行い,例えば凝集開始まで約20秒なら定量で4~8mg/dl,約30秒なら2~4mg/dl,約1分なら約lmg/dlなどと把握しておくと,緊急時に役立つ.なお同じキットでも,ロットにより反応時間が多少違うことがあるので注意する.

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 皮膚の真菌検査は小児科でもよく行われる検査です.皮膚科の先生にとっては常識かと思いますが,他科の先生でご存じない方のお役に立てばと思い,筆者が行っている検体採取法を紹介させていただきます.

 ピンセットで容易に取れる場合は,成人と同じように直接採取します.乳幼児のように皮膚が薄く落屑が小さいと,ピンセットでうまく取れないことがあります.そのようなとき,メスの背などで出血しないように病変部をこすり,落屑を少しでも大きくかつ多くします.次に,スライドグラスに2cmくらいの両面テープをはり,それを病変部に押し付けます.後はズーム液(KOH液)を落とし,カバーグラスをかけて鏡検します.また,湿潤面でも同様の手技で検査できます.

鼻汁のとり方 財津 正博
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 赤ちゃんにとって,鼻づまりは,哺乳力減少,不眼不機嫌の原因となりやすいものです.私どもの施設では,家庭でだれでも簡単(?)にできる鼻汁のとり方を,母親に説明,指導いたしていますので,紹介いたします.ティッシュの角(かど)を先端にして10cmくらいの長さのこよりを作ります.そのこよりを鼻孔から,まっすぐに鼻腔内に挿入(根元まで)するだけのことです.少しなれたら簡単に挿入できます.赤ちゃんの両手と頭を固定するのがこつです.もう1つ,鼻孔入口の鼻くそを綿棒で除去しておくことも大切です.1人で行う場合は,バスタオルで両手を巻きこんで(図1)下さい.粘っこい鼻汁でも,サラサラの鼻汁でも結構とれるものです.哺乳直前や,眠らせる前に行うと非常に効果的です.外来で,実際にとって見せてから指導すると,なおいっそう効果的かと思います.一度お試し下さい.

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 人は熱が出たり,頭痛があれば「かぜをひいた」と言って受診する.事実,多くは単なる"かぜ"である.問題は,"かぜ"がしばしば無視できない疾患の部分症状ないし初期症状として発現することである.今回はジェネラリストか念頭に置くべき疾患とそのアプローチについて考えてみたい.

総合外来 こどもの診かた

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 ■最近の溶連菌性咽頭炎は小児科外来では過半数において特異的所見を欠いており,感染が見落とされがちである.

 ■この状況の中特に2次症の増加はみられていないが,一部では急性腎炎の多発が報告されている.

総合外来 当直医読本

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 医療薬品によるショックには,薬剤の過量投与や誤った使用に伴う中毒反応による場合と,アナフィラキシーショックによる場合がある.厳密な意味でのアナフィラキシーショックはlgE抗体が関与した即時型アレルギー反応l型に属するものであるが,アレルギー反応機序によらずにケミカルメディエータが遊離されて症状が出現するアナフィラキシー様反応も一般にアナフィラキシーショックに含める.初期治療が適切に行われれば予後は非常に良好であるが,処置のタイミングを失うと短時間で死に至ることもある.

和漢診療ケース・スタディ リフレッシャー・コース・13

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症例

 患者 66歳,男性.

 主訴 頭痛,発熱,関節痛.

一般医のための画像診断読影セミナー 急性腹症の画像診断・2

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 ■慢性便秘症の患者,特に寝たきりの老人や抗精神薬を内服中の患者が腹満・腹痛を主訴に来院した場合,S状結腸軸捻転の可能性を考慮しながら診察を行わないといけない.

 ■S状結腸軸捻転では腹満・腹痛が強く,腹部単純写真にて拡張したS状結腸を見る.注腸透視にて腸管の先細り像(bird beak sign)を確認すれば診断を確定できる.

イラストレイテッド臨床基本手技

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 ■きれいな心電図を撮るのに特殊な技術は必要としない.要は手順をていねいにかつ素早く踏むことである.本稿では主として医師が検者となることの多い緊急時および運動負荷心電図の撮り方について述べる.

 ■必要経験数:約50例

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 複数の医師の間で患者を紹介し合うことは,日常診療の中で頻繁に行われる重要な医療行為である1).このような患者紹介(コンサルテーション)が必ずしも効果的に行われていないことはしばしば指摘はされているものの2),研究テーマとして扱われることは比較的少ない.特にわが国では,コンサルテーションについての体系立った臨床教育すら行われてこなかった.医療が専門分化し細片化すればするほどコンサルテーションは必要となり,とりわけgeneralistにとっては重要な臨床技量となる.

 本稿では,これまでに蓄積されてきたコンサルテーションに関する知識をまとめ,わが国の現状を考える一助とする.

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[はじめに]

 質の良い医療と医療効率という両面を需要と供給の双方から満足するものとして,米国では,消費者の視点からみたマネージド・ケア(J1)への傾斜があり,医療従事者の視点からみたグループ診療の成長が目覚ましい.1914年のメイヨークリニック以来,約80年にわたるグループ診療の歴史で,その原則的方法論が確立している.翻って,日本では,院長は医師でなければならないという制約があり,医療管理を医師が行う慣習がある.医療管理の専門的な知識,技能,態度の教育,訓練がなされないままで,経験則で医療施設の管理をなさざるを得ない現状となっている.

 米国のグループ診療は,個々の医師は医療に専念し,専門の管理者が組織のマネージメントを行うという,日本でいえば大学病院や総合病院における外来部門のような形態を取ってきた.医師側は医療に専念できること,24時間制のオン・コールがないことを2大メリットとして挙げている.

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 1992年12月26日より1993年1月2日までベトナムを訪問してきました.作家で,われわれの医療法人財団健和会「友の会」の会長でもある早乙女勝元さんの呼びかけた市民レベルの友好訪問(37人)の一員として参加したものです.

 早乙女さんの書かれた「ベトナムのダーちゃん」などで紹介されたダーちゃんに会いたいという長男(小学4年生)の希望もありましが,ダーちゃん(今は既に34歳で3児の母親になっている)が働く,カンガイ省(Quang Ngai Province)ギアハン地区(Nghia Hanh District)病院への支援,健和病院・柳原病院との友好姉妹病院の提携が主な目的でした.同時にベトナム戦争の戦禍をこの目で見て,市民レベルの友好を深め,今後の支援のあり方を考える契機にすることも目的でした.

臨床医の産業医活動・6

職場巡視 林田 一男
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 産業医学の祖と言われるラマニッツイーニはその書(De morbis artific um diatriba, 1700)に「医師は現場に出向いて,医師として知るべきものは何かを見いださなければならない」と記している.

基本情報

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JIM
4巻1号 (1994年1月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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