JIM 3巻12号 (1993年12月)

特集 下肢病変を診る

Editorial

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 静脈瘤,過度の皮下脂肪沈着などをも含めて下肢を整容的な面から診療することはあるにしても,下肢の本質的な機能は体重支持(weight bearing)と運動(motor activity)であろう.それだけに下肢疾患の臨床ではまず整形外科的疾患が連想される.実際いろいろな下肢の筋肉・骨(musculoskeletal)の疾患,すなわち骨折,関節・靱帯疾患,変形,奇形などは整形外科医によって診療されていることが多く,それらに対応するための解説,特集はこれまでもしばしば企画されてきた.

Key Articles 西尾 剛毅
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 今月号のテーマは「下肢病変を診る」ということで,下肢病変をいかに見逃さないかというのがポイントである.下肢の病変も多種多様で,参考となる文献も多くあるが,各々の疾患について1回は読んでおいたほうがよいだろうと思われる文献を挙げてみた.

訴えからのアプローチ

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 ■足が痛いという訴えには,問診,視診,触診が非常に大切である.

 ■皮膚や皮下組織の疾患を鑑別し,次いで整形外科的疾患や神経性疾患を考える.

 ■最後に血管の病気や,そけい部の腫れと痛みを来す疾患も考慮する.

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 ■「足の腫れ」の病態は様々であり,個々の患者において詳細な病歴と身体所見が必要.

 ■既往歴,月経との関連,薬剤の服用などをチェック.

 ■心臓,肝臓,腎臓,甲状腺疾患などの随伴徴候をチェック.

 ■頸静脈圧,pittingの性質,尿所見などを加えて病態を把握する.

下肢の皮膚病変の診断 小林 衣子
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 ■下肢は立位により静脈がうっ滞しやすい,ぶつけるなどの外傷を受けやすい,日々われわれの体重を支えている,などの特徴を有する.

 ■下肢に特徴的な皮膚病の大部分が以上の機能的特徴に由来し,他の部分に比べ非常に特異である.

 ■下肢の皮膚病は,特に下腿と足に分けて考えると整理しやすい.

そけい部の「腫れ」の診断 増田 進
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 ■診察時にそけい部の「腫れ」かある場合は,問診,視診や触診をきちんと行えば診断は難しくない.

 ■主訴がそけい部の「腫れ」ではないが,原因がそこにあるケースが少なくない.

 ■そけい部の「腫れ」の訴えがあっても,診察時に「腫れ」が見られない時は注意を要する.

 ■診療録に記載する際,左右を間違えないように.

外来マネージメントの要点

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 ■動脈硬化を原因とする末梢血管疾患症例が急増している.

 ■おっくうがらずにズボン,靴下を脱がせ,脈を触れる.

 ■虚血性心疾患(ischemic heart disease;IHD)合併の頻度が高い.

 ■確定診断,治療方針決定のためには血管造影が必要.

 ■患者のADL (activity of daily living)を障害し,QOL (quality of life)を著しく低下させている場合は高齢者といえども,積極的な手術適応とすべきである.

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 ■静脈性の下肢の腫れには逆流と閉塞による2種類がある.

 ■下肢静脈瘤は静脈疾患の中で最も多い.静脈が数珠状に盛り上がったもので,立たせてみればすぐにわかる.伏在静脈の逆流を証明し,症状がある場合は手術適応となる.ストリッピング手術,硬化療法などが行われ完治が望める.

 ■深部静脈血栓症は深部静脈の閉塞によるもので,急に発症し腫脹は著しく痛みを伴うことが多い.線溶療法・手術療法が行われているが完治は難しく,血栓後遺症となり腫れが残る症例もある.

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 ■原因不明の下肢浮腫は多いが,リンパ浮腫によるものも比較的多い.

 ■下肢浮腫をみたときは,問診をしっかり聴取すること.

 ■病態を考慮した全身にわたる注意深い診察が必要.腹部所見も見逃さない.

 ■臨床経過から,ほとんどのリンパ浮腫は診断可能である.

 ■治療は内科的保存療法を主体とする.

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 ■痛風は第1中足趾節関節の激烈な疼痛・発赤・腫脹,高尿酸血症の持続から診断は比較的容易である.治療は急性発作時はコルヒチンと大量非ステロイド系抗炎症剤併用.間欠期はユリノーム,ウラリットU内服と食事療法を行う.合併症の腎障害の予防が重要である.

 ■陥入爪の手術は爪母を鋭的に切除し,爪床に針糸を通す児島の方法がよい.

 ■鶏眼と足底疣贅は治療法が違う.後者はスピール膏禁忌である.

 ■外反母趾の保存的治療法は,裸足で過ごす時間を長くすること.

足部のentrapment neuropathy 宇佐見 則夫
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 ■足部のentrapment neuropathyは比較的まれで,時に腰椎性疾患との鑑別に苦慮することがある.

 ■知覚障害の部位・圧痛点・Tinel徴候などの所見,筋電図検査,MRIなどにより診断は可能である.

 ■手術は顕微鏡視下にて腫瘍切除・神経剥離を行うことにより良好な結果が得られる.

糖尿病に伴う足の潰瘍 山本 壽一
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 ■糖尿病患者診察時には必ず足をみる.

 ■原疾患の把握とコントロール.

 ■糖尿病患者は小さな傷から潰瘍を生じ難治性となる.原因を考え予防法を指導する(foot care).

 ■抗生剤の全身投与無効例がある.また,MRSAが起因菌の場合もある.

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■下肢静脈瘤の硬化療法

 1853年Cassaignacにより行われて以来100年以上の歴史を有し,本邦でも試みられたが,いつのまにか下肢静脈瘤の治療は手術一辺倒になっていた.

 優れた硬化剤の開発,手技などの技術改善が進み,欧米では既に下肢静脈瘤の治療法として広く認められ,数万例の症例蓄積がある.

日本靴医学会の活動状況 加倉井 周一
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■学会の成り立ち

 日本靴医学会という学会をご存じであろうか?最近履物・靴に関する国民の関心が高まっている.その背景には,生活様式に連れてどんどん変化するわが国の履物,外反母趾に代表される足趾変形の発生頻度が高まり,しかも窮屈でヒールの高い靴との因果関係が取り沙汰されていること,適切な履物を選択することが自分たちの活動に大いに関係するなど相対的な知識の向上がみられることを指摘したい.一方,変形が著明な場合には靴型装具と呼ばれる特殊靴が主として整形外科医により処方されている.

 靴に関するまとまった会合は鈴木良平教授(長崎大学整形外科)のもとに東京で開催された第1回日本靴医学研究会(1987)を嚆矢とする.鈴木会長はプログラム巻頭言の中で,これまで日本の医師が靴に対して無関心であったことを反省するとともに,今後の研究テーマとして,①よい靴の製作の基礎となる足の生体工学的な研究,②足の健康を守り増進するための履物の意義,③スポーツシューズ,小児靴などを幅広く取り上げることにより,この会が国民の健康と福祉に貢献することを期待したいと述べられた.

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 下肢の痛みを訴える症例を2例検討します.1例目は治療方針の決定が重要であった例,2例目はすぐに診断に飛びついてはいけないという教訓的な症例です.

Generalist and Specialist

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 GeneralistとSpecialistを日本語では,総合医と専門医とでも表現しておく.もともと医療は患者のためにあるもので,患者の立場からいえば呼称などどうでもよく,要するにキチンと早く治してくれればよい.ましてどちらが偉いかなど,どうでもよい.

 専門店の品のほうが,百貨店のものより上等であると錯覚している時もあれば,包み紙に尊敬の念を持っているのもある.品物は交換できるし,金で処分することもできる.しかし,医療ではたった1つの"命"をつかって,試用するしかない.

ミニテクニック

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 男性の尿失禁患者に便利な製品の紹介である.ブリストルマイヤーズスクイブ・コンバテック事業部が取り扱う製品で,図のようなゴム製品がある.まさしく,コンドームにそっくりであるが,先端に蓄尿バッグのチューブが接続できるようになっており,内側には糊が塗ってあるため,容易に脱落しない.必要に応じて剃毛すると脱着しやすい.2日ごとに取り替えれば,皮膚炎も起こさず,2年間継続使用した症例でもトラブルもなく,紙おむつと比べ介護者の手間が省け,経済的にも優れている.しかし,多少の違和感があるようで,自分ではずしてしまう患者には使用できない.

 サイズはS, M, Lあり,ほとんどの老人がSサイズで対応できる.1個250~300円程度である.

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 宮崎の井ノ口裕医師(日向内科医院)に啓発され,入院カルテのサマリーのコピーを患者に渡している.

 プロブレムリストとプロブレムごとに主な経過を記したこのサマリーは,個人の医学情報のエッセンスと言ってよく,これを患者の手もとにおく意義は大きい.第1に患者は自分の医学的問題点が何で,それがどう取り扱われたかを(その時々の口頭での説明のほかに),読んで知ることができる.「われわれが請け負った仕事の報告書」と考えればいい.また他の医者にかかるとき,紹介状がなくてもこれを見せれば事足りるので便利だ(私の患者さんたちは現にそうしている).こう決めると医者のほうもサマリーをより正確に,読みやすく書くようになるのは言うまでもない.実際に始めてみて,これが当たり前なのだということがわかった.今では紹介状も同じようにコピーして渡している.

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 待ち時間が少なくて済む,言い換えれば待ち時間が苦にならないというのは,患者が病院を選ぶ際の1つの要素となるであろう.

 開業の小児科診療所では,患者以外に親,兄弟,祖父母と1人の患者に何人もついて来ることも多く,待合室は混雑することが多い.また麻疹や水痘などの感染症の問題や,感染症だけでなく,高熱でぐったりしているなど,車で待つことを希望される方も多い.最初は車のナンバーを聞いておいてスタッフが呼びに行っていたが,雨の日などは大変であった.そこでトランシーバーを使うことを思いついた(図1).小さいほうを患者に持たせ車で待たせる.右側のトランシーバーは診療室に置いておき,順番が来れば呼ぶ.これであれば診療所から駐車場程度の距離なら問題なく使え,3台で4万円程度と値段も安く,非常に重宝している.また,休日には友人とのキャンプなどアウトドアでも活用しており,一挙両得である.

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 日頃われわれは高血圧患者に塩分を減らしなさい,体重を減らしなさいなどと指導し,糖尿病患者には1200kcalの食事で,体重を50kgまで減らしましょうなどと指導する.そして,これが守れない,達成できない患者は,言うことを聞かない患者,駄目な患者などと判断しがちである.しかし果たしてそうであろうか.患者の行動が変わらないのはわれわれの指導に問題があるのではなかろうか.今回は,患者の行動変容を導くための手法を考えてみたい.

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 専門別診療体制が整っている施設では,初診患者を早く,的確に振り分けることが望ましい.診察前に一定のスクリーニング検査を実施すると正診率は90%に達し,当日適正な患者指導が可能となりむだが省ける.

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 全国各地の炭鉱や鉱山が閉山する中,多くの元鉱夫が離職し,親戚などを頼り,働いていた町から遠く離れた所で過ごし,具合いが悪くなれば個々の病院,診療所に行くことになる.塵肺の診療経験の乏しい医師が,塵肺の診断をしなくてはならない機会が広く生まれている.1992年の塵肺管理区分で2以上とされた人は28,600人以上に達していることからも,その意義は大きい(J1~J5).

研修病院ガイド

聖隷三方原病院 後藤 幸一
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 当院は,浜松市郊外の三方原にある800床の総合病院である.全科合わせて22科,医師約110名が勤務する.

 本院は,むろん総合的医療をめざすが,とりわけホスピスによる末期癌緩和ケア,予防検診センター(「オアシス」)における疾病の早期発見,健康増進,さらに24時間体制による救命救急医療,また栄養クリニックでは,食事と運動からの健康増進活動に取り組んでいる.さらに歴史的に60年前,死に瀕する末期結核患者のお世話をする5人のキリスト教グループから始まり,現在は5万坪の敷地内に各種の福祉施設群を有し,病院はその集団の中核に位置している.専門各科は各々の特殊性を活かし,先端の診断,治療に取り組み,研修指定病院として研修医の指導に力を入れている.

当直医読本

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 四肢の痛みが動脈閉塞による虚血性疼痛ならmedical emergencyである.大動脈解離,および心原性塞栓(左房血栓,左室血栓,感染性心内膜炎,心臓腫瘍)を鑑別し,迅速に治療を進める必要がある.心臓腫瘍の発生頻度はまれであるが,心原性塞栓の原因として忘れてはならない.心臓腫瘍では良性の粘液腫が最も多い.

和漢診療ケース・スタディ リフレッシャー・コース・12

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血虚の症例

 患者 35歳,女.

 主訴 顔面皮疹.

Palliative Medicineを日常診療に活用しよう・5

浮腫への鍼灸 横川 陽子 , 平賀 一陽
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 ■癌患者の浮腫の治療法はいまだ確立されていない.

 ■鍼灸治療によって浮腫が消退する症例が多い.

 ■鍼灸治療を行っても浮腫が消退しない症例でも,つらさが軽減するからと鍼灸治療の継続を希望する患者が多い.

リアルタイムの内科診療・6

初診のカルテ 谷藤 正人
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 初診の方向が患者の先行きを決める.方向は広い視界の中でしか正しく定らない.その視界が基礎資料.

一般医のための画像診断読影セミナー 急性腹症の画像診断・1

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 高齢女性が腹痛・嘔吐を主訴に来院した場合,閉鎖孔ヘルニアによる腸閉塞の可能性も考慮に入れておかなければならない.

 閉鎖神経の圧迫による大腿部痛(Howship-Romberg徴候)を伴うことがあるのも特徴である.

 閉鎖孔ヘルニアの腸管脱出が大きいとそけい部エコーでも診断できるし,疑診例には閉鎖孔CTを撮ることにより確定診断が付けられる.

 腸管壊死を来す率が高いため,早期診断・早期治療が必要である

フライ先生の日常病レッスン・6(最終回)

腰痛 楢戸 健次郎
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どんな疾患か

 腰痛に悩まされたことがない人は少ない.これは人間が2本足で立ち,移動するようになった結果だとも言える.一般臨床で見る腰痛の原因としては,1)筋肉,関節,椎間板の急性捻挫や損傷,2)脊椎の骨関節症,3)悪性腫瘍や骨粗鬆症による椎体破壊,4)産婦人科などの骨盤内疾患からの放散痛,5)悪い姿勢に関連して起こって来る原因不明か心因性のもの,などが挙げられる.

イラストレイテッド臨床基本手技・2

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 ■動脈ラインは観血的動脈圧モニタリングを行う目的の他,血液ガスや生化学的検査値の経時的変化をみる場合の頻回血液採取を目的に行う.

 ■手技修得に必要な経験例数=各穿刺動脈で最低10例.

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基本情報

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JIM
3巻12号 (1993年12月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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