作業療法ジャーナル 51巻13号 (2017年12月)

特集 精神科デイケア—現状とこれから

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特集にあたって

 本邦で1974年(昭和49年)に精神科デイケアが医療保険の対象となり,40年以上が経過した.この間,ナイトケアやショートケア等の機能や早期加算等に関して診療報酬がマイナーチェンジされることはあったが,集団を対象とする人員配置等は精神科作業療法同様に変更なく経過し,時代や対象者に適切な実践は,それぞれの運用方法に任されてきたのが実情である.現在の病院および診療所の精神科デイケアは1,000カ所を超えるといわれている.それぞれがそれぞれに必要なかたちで存在し,必要な実践をしているはずだが,旧態依然として昭和の時代から変わらない内容を漫然と提供しているデイケアも存在している.

 障害者総合支援法による日中活動・就労訓練等の施設も増え,そのサービスの質も問われている.従来,精神科デイケアが担ってきた部分と重なる点もあるだろう.その中で,精神科医療機関が提供するリハとしての精神科デイケアはどのようにあるべきだろうか.本特集をもって現状を概観し,精神科デイケアのこれからについて考える機会としたい.

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Key Questions

Q1:現在の精神科医療にマッチしたデイケアとは?

Q2:精神科地域サービスの中でのデイケアの役割は?

Q3:今後デイケアスタッフに求められるスキルは?

精神科デイケアの歴史

 精神科デイケアの歴史は長く,欧米では1930年代にさかのぼる.当時施設収容が中心だった精神科医療において,リハは施設・病棟での生活機能維持のためのもので,地域生活の中で精神障害者に対する治療サービスを展開することは,かなり画期的な取り組みであったと思われる.その後,1970年代に欧米諸国で精神医療の脱施設化が進み,精神医療は入院から地域ケアに大きく変換した.それに伴いリハも,施設で生活するための機能維持から,地域生活,社会復帰のための治療と,その目的が変わった.

 米国では,デイケアを「部分入院:partial hospitalization」と呼び,診断や急性期治療を在宅ベースで行うデイホスピタルや,慢性期の心理社会的治療や維持療法に焦点を当てたデイトリートメント,当事者活動を主体とするソーシャルクラブと,その機能によって分類されていた.日本においては,主にデイトリートメントに当たるサービスを担う場所としてデイケアの導入が始まった.

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Key Questions

Q1:統合失調症中心のデイケアはどうあるべきか?

Q2:具体的なプログラムはどのようなものか?

Q3:どのような点に配慮して実施すべきか?

はじめに

 精神科デイケアは,運営母体のスタイルや,地域からの要請等によって,さまざまな役割が期待されて存在している.どういった役割であれ,リハ施設としてのデイケアは患者さんの役に立つものでなければならない.患者さんの主観的幸福と真摯に向き合うこと,精神科医療に対してjusticeという視点でモニタリングし続けることが重要だと筆者は感じている.人は慣れることができる生物であり,OTも習慣化することで日々の作業(業務)を容易に行えるようにもなる.しかし,ややもすれば無批判にルーティン業務を実施することにもなってしまう.自分が作業療法として行っていることが,何につながり,どうなっていくのか,患者さん個人だけでなく,組織だけでもなく,これからの精神科医療の未来を考えていく中で,どのようにしていくべきなのかのメンテナンスを欠かしてはならない.

 今回は,統合失調症を主な対象としたデイケアである京都府立洛南病院(以下,当院)精神科デイケアの実践を紹介し,いわゆる「移行型」や「通過型」と呼ばれる精神科デイケアを実施していくポイントを考えたい.

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Key Questions

Q1:精神医療における早期介入の潮流は?

Q2:早期介入の意義は?

Q3:デイケア「イルボスコ」における介入の実際は?

はじめに

 近年,精神疾患に罹患した方への早期リハが重要視され,関心が高まっている.統合失調症をはじめとする慢性化しやすい精神疾患は,いったん罹患すると学業の中断や就業等の社会参加の遅延,家族や仲間等,集団における社会的スキル不足等,社会生活上のさまざまな困難を抱え込んでしまうことがある.さらには精神疾患に罹患したという自己に対するスティグマが自己評価の低下につながり,速やかな回復をいっそう困難なものにしている1)

 これらを克服していくために,東邦大学医療センター大森病院精神神経科では,10年前に15〜30歳の若者に特化した通所型早期精神病ユニット「イルボスコ」を開設し,若者にとって受診しやすく継続的な治療が可能な環境の整備を進めている.今回はその実践を紹介する.

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Key Questions

Q1:リワークプログラム(医療リワーク)とは?

Q2:リワークの現状〜復職準備・判定におけるポイントと課題とは?

Q3:リワークフィールドにおいてOTが果たすべき役割とは?

はじめに

 昨今,“リワーク”という言葉をメンタルヘルスの分野で耳にされた読者も少なくないのではないだろうか.秋山ら1)によると,リワークについて英語ではre-workと書き,return to workを略したものとしている.つまり,「うつ病等の病気のために休職に至った患者が再び労働(職場)に戻ること,病気を再発させることなく労働を継続していくこと」を意味しているといえる.そしてその支援のための種々の取り組みを“リワークプログラム”と呼ぶ.

 周知の通り,1998年(平成10年)に急増した自殺者数は以降,年間3万人を超える高い水準で推移する時代が続いたが,2012年(平成24年)に入ってようやくその数を減らしはじめている.しかしながら,なおも年間2万人以上の自殺者が存在し,そのうちの有職者(自営等含む)は4割に迫るともいわれる2).このような情勢を背景に,2015年(平成27年)12月には50人以上の職場におけるストレスチェック制度もスタートしたが,その影響も相まって精神科受診者の増加も予測される等,これまで以上にリワークに大きな期待が寄せられることになると思われる.

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Key Questions

Q1:居場所型デイケアの機能とは?

Q2:居場所型デイケアのかかわりで重要な視点は?

Q3:居場所型デイケアの今後の課題は?

はじめに

 近年,精神科デイケアでは,疾病や目的,アプローチの特徴を明確にした取り組みが注目されている(例:思春期デイケア,リワークのためのデイケア等).その一方で,疾病や病気が多様な通所者に対して,支持的精神療法を中心として継続的に地域生活支援を行っている,いわゆる“居場所型”のデイケアもある.デイケアはそもそも居場所の機能を内包した集団を用いた外来治療である1).また,多様な見方,機能をもつことが自然なのである2)との主張もあった.島松病院(以下,当院)精神科デイケアも居場所型デイケアの一つといえるが,通所者中心の支援に重点を置き,“居場所”としての機能を基盤にもちつつも,就労支援や入院対応等,通所者個別の必要性に応じて支援してきた.本稿では地方都市における“居場所型”デイケアの取り組みについて症例を通して振り返り,多様なデイケア機能や支援遂行の視点,今後の課題を再考する.

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点と点をつなぐということ

 スティーブ・ジョブズ氏(1955-2011)が,2005年に米スタンフォード大学卒業式で行った有名なスピーチ1)の中に,次のような一節があります.

 Again, you can't connect the dots looking forward;you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.(繰り返しですが,将来をあらかじめ見据えて,点と点をつなぎあわせることなどできません.できるのは,後からつなぎ合わせることだけです.だから,我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない)

あなたにとって作業療法とは何ですか?・第36回

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OTと患者様とのキャッチボール

 「OTと患者様とのキャッチボール」と説きます.OTは患者様のミットをめがけて,渾身の一球を投げます.やがてその一球は,患者様からOTのミットに向かって,精いっぱいの力で返球されます.

 私はOTになって40年が過ぎましたが,この間多くの患者様とキャッチボールをしてきました.OTが球の速度や投げ方を変えながら何回も投げ続けると,患者様は少しずつ球を返してくれるようになりますが,OTのミットまではなかなか届きません.いかにしたら,患者様がOTのミットまで返すことができるかを,OTは常に考え続けます.

中村会長がゆく

むつみ庵探訪記 中村 春基
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 「むつみ庵」は,如来寺住職の釈 徹宗先生が代表を務める,認知症高齢者のグループホームである.本誌上での協会長対談で釈先生が語られたエピソードの数々をご記憶の読者もおられることと思う.中村春基先生も強い関心を覚えられ,今回あらためてむつみ庵を見学させていただくこととなった.(編集室)

講座 リーダー論—組織をつくるOTたち・第4回【最終回】

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はじめに

 県士会活動が楽しい.つくづくそう思う.埼玉県作業療法士会(以下,当士会)の仲間は常に前向きで,アイデアとエネルギーに満ちあふれている.一人ひとりの発想と行動が,相互に作用して大きなうねりとなり,想像もしなかった体験を供与してくれ,世界がすさまじい勢いで広がっていく.身体が疲れていても,時に気持ちが落ち込んでいても,当士会の仲間と話し,一緒に作業をすると不思議と元気になり,楽しくなる.これは会長を拝命してからさらに強く感じるようになった.

 本稿は,「都道府県作業療法士会長としての組織づくりとリーダーシップのあり方を教示してほしい」という依頼に基づくものである.県士会長として,日々の本来業務を共にしていない,職場も立場も違うOTたちと,何を目指し,どう協働しているのかについて述べねばならない.これはむしろ筆者自身が教示を受けたいもの,というのが正直な思いであり,「とにかく楽しくやる!」ことくらいしかコツとしてお伝えできるものがないのだが,当士会の活動がどうして楽しいのか,どのようにして楽しめるようにしているのかを振り返ってみることは,いまだ判然としない筆者自身のリーダーシップと,何よりも当士会のこれからについて考察する好機になるだろう.そう割り切って筆を進めることにする.

連載 ユーモアと笑い・第4回

ユーモアの諸相 柏木 哲夫
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ユーモアは立場を超える

 カウンセリングという場面においては,ユーモアのもつ親密性,人間味,そして直接性という特徴により,セラピストと患者は打ち解けた関係を築くことができるといわれている.

 どうしても「医師と患者」は,上下関係,強者・弱者の関係になってしまうが,どちらかがうまくユーモアのセンスを使うことができれば,お互いに平等な関係であるという意識をもつことができると思う.ユーモアはその意味で重要な働きをする.

学会・研修会印象記

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 2017年(平成29年)8月25日(金)〜27日(日)に,弘前大学医学部保健学科にて開催された,第5回全国作業療法学系大学院ゼミナールに参加する機会をいただきました.

 今回,私は運営に当たり,当番校の学生として,北は北海道,南は広島と幅広い地域から,また日本作業療法士協会会長である中村春基先生をはじめとし,作業療法に情熱を注ぐ大学の先生方,大学院生,大学院OB・OG等の幅広い方々をお迎えしました.本ゼミナールは今回60人を超える参加者があり,また,開催日程も計3日間と過去最長の日程となりました.

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Abstract:全身性強皮症(SSc)患者は,皮膚硬化や皮膚潰瘍等により家事動作が制限されるが,その影響を詳細に調べたものはない.そのためリハ場面において,SSc患者に家事動作等の生活指導を行う指針は明確となっていない.今回,SSc患者に対する生活指導法を確立することを目的に,女性患者40例の調理動作の活動制限を調査した.調理動作の活動制限の評価は,10項目50動作の自作評価表を使用した.評価結果より,缶詰の蓋や瓶の内蓋,パッケージ等の開封が困難であった.動作障害は,皮膚硬化が強く,手指の拘縮や皮膚潰瘍を有するとより困難となり,握力やピンチ力の低下によっても困難となることが示された.また今回の評価とHAQとの間に高い相関があり,QOL全般に反映することが示された.SSc患者に対する生活指導では,ハサミ等の道具の紹介の他に,調理中のお湯の利用が有用と考えられた.

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Abstract:慢性痛を有する患者に対し,痛み行動日記を用いた介入を行った.患者は60代男性で,事故により全型の右腕神経叢損傷を受傷し,患側上肢に自発痛を生じるようになった.在宅生活では部分的な介助を必要とし,仕事も退職を余儀なくされた.今回,受傷より1年以上経過した患者に対し,週1回の外来作業療法に加え,痛み行動日記を用い,自宅生活での様子を共有しながら介入を実施した.3カ月の介入の結果,7日平均の疼痛強度が減少し,破局化,自己効力感,QOLの改善が得られた.また,日中の活動性も向上し,屋外で過ごす時間が増えたと記述した.

 痛み行動日記を導入し,自宅生活での様子を共有しながら介入を行うことで,日中の活動量が増し,疼痛強度,心理的評価に改善が得られた.本症例においては,妻や他者を意識した目標設定を取り入れたことが,心理社会的側面に影響を及ぼし,疼痛強度の軽減に至ったのではないかと考えられる.

昭和の暮らし・第12回

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 北名古屋市では,全国に先駆けて回想法を2002年(平成14年)に導入し,15年間継続してさまざまな取り組みを積み重ねてきた.

 回想法と呼ばれる方法は,健康増進,認知症の予防,仲間づくり,そしてまちづくりにも発展している.地域で行うという意味を込めて「地域回想法」と呼ばれている.

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表紙のことば/今月の作品

次号予告

わたしたちの作業療法

第53巻表紙作品募集

学会・研修会案内

研究助成テーマ募集

編集後記 香山 明美
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 雨が続いた夏はあっという間に過ぎ,秋晴れも少なく台風の季節となった.各地の被害が報道される中でも,今年も綺麗な十五夜の月を見ることができた.月を仰ぎながら,ただ見られたことに感動を覚えた.店には梨や柿,栗,秋を彩る季節の食べ物が並んでいるが,何かこれまでとは違う自然の大きな変化を感じるのは筆者だけだろうか.人間は大きな間違いをしているのではないかと思ってしまう.

基本情報

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作業療法ジャーナル
51巻13号 (2017年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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