- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
自助具とは,動作を容易に自分で行えるように工夫された道具であり,作業療法士は障害の程度や状態に応じた自助具の提案や作製をし,自助具を用いた治療をすることで,対象者がよりよい日常生活を送れるよう支援することが求められる.また,自助具は対象者の失われた機能を補完し,目的とする動作を遂行できるよう提供することが大切である.対象者の身体特性を適切に評価し,使用する本人が納得できる(受け入れることができる)よう自助具を適応させなければ,せっかく提供しても使われずに棚の片隅に置かれてしまうことも少なくない.
回復期リハビリテーション病棟は,退院後に患者が在宅生活または療養生活において可能なかぎり自立した生活を送れるために,「ADLを向上し,寝たきりを防止し,在宅復帰を促進する」ことを目的に機能回復や代償手段の獲得を目指す場所である.入院期間は患者の状態や疾患によって異なるが,入院期間とFIM効率を参考値として計算されたリハビリテーション実績指数を指標として,決められた期限内に患者のニーズを具現化し,ADLを改善しつつアウトカムを出すことが求められる.患者は当然,病前の状態に戻ることを期待して入院するのだが,実際にはすべての患者が理想とする回復をみせることは難しく,時には代償手段としての自助具の導入や,環境としての福祉用具の導入を必要とすることも多く,その適応や選定には作業療法士が深くかかわることとなる.
原ら1)は,自助具は“一時的あるいは永久的にしろ,身体に障害をもったものが,その失われた機能を補って,いろいろな動作を可能ならしめ,または容易ならしめ,自立独行できるように助ける考案工夫をいう”と定義している.また,林2)は自助具を“自立したい気持ちを行動に表現する道具であり適切なものをうまく活用することで不十分な機能(能力)を補い,QOL向上に導く”ものと述べている.日本工業規格・福祉関連機器用語3)では“障害者が本来的にできないか,非常に困難な特有の機能的ニーズを達成するために作った道具の総称”と定義しており,本人が自身の機能を補足するために使われる道具である.そのため自助具は,介助者と要介護者双方が使用する福祉用具とはADL,IADLを向上させるという目的は一致していても,その仕様や補足する機能の範囲は異なっており,使用する本人のニーズに加えて身体特性をしっかりと把握して提供されることが必要である.
Copyright © 2024, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.