耳鼻咽喉科・頭頸部外科 90巻12号 (2018年11月)

特集 見逃してはならない耳鼻咽喉科疾患—こんな症例には要注意!

《耳領域》

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 患者は51歳,女性。縦隔腫瘍の精査のため他院でPET/CTを撮影したところ,左外耳道に集積を認めた。耳漏もあるため精査目的で紹介となった。

 1年前から左耳内を綿棒で掃除すると耳漏が付き,痛みもあった。軽快と増悪を繰り返していた。

 初診時,外耳道全周性に発赤,表面不整を認め,耳漏も認めた(図1)。外耳道から生検を行ったが,病理診断は異型上皮(atypical epithelium)であった。耳漏の細菌検査ではMSSA(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus)のみ検出された。オフロキサシン(タリビッド®)の点耳など,保存的治療を行ったが外耳道の病変は改善を認めず,3か月後に再度生検を行ったところ扁平上皮癌(squamous cell carcinoma:SCC)の診断となった。

 CTでは外耳道全周性に軟部組織の肥厚を認め,造影効果を認めた(図2a,b,d)。鼓室内,乳突蜂巣への進展はなかったが,外耳道の骨表面が一部不整であり,Pittsburgh分類のT2と判断した。MRIでは顎関節包との境界が不明瞭であった(図2c)。

 外側側頭骨切除術を行い,顎関節包も一部合併切除した。

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 患者は60歳,女性。右難聴を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診した。急性中耳炎として抗菌薬の内服加療を行ったが改善せず,鼓膜切開術を施行したが難聴は改善しなかった。骨導閾値上昇の進行を認めたため,内耳炎を疑いプレドニゾロン(PSL)20mgを追加処方したところ,鼓膜所見,難聴の改善を認めた。ところが,1か月もすると再び右難聴が出現した。この際,再度抗菌薬とPSLを投与すると改善を認めた。

 半年後,右顔面神経麻痺が出現した。このとき抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)は陰性であった。10日間のPSL内服加療にて,麻痺の改善を認めた。しかしそこから1か月後,右難聴が再燃し,37℃台後半の発熱と盗汗がたびたび出現した。右鼓膜発赤,右混合難聴(図1)と,CRP高値(15mg/dL),myeloperoxidase(MPO)-ANCA陽性を認めた。

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 患者は片側の中耳炎を反復する16歳,男性。

 20XX年1月頃から月に1回の頻度で右中耳炎を繰り返し,近医耳鼻咽喉科に通院していた。右鼓膜に換気チューブを挿入され経過観察されていたが,同年7月下旬から頭痛が出現し,8月上旬に頭部MRIを撮影された。当院に紹介予定となったが,頭痛の増悪があり,受診予定日前に当院救急外来を受診した。耳鼻咽喉科診察にて上咽頭右後壁を中心に腫瘍性病変(図1)と両頸部リンパ節腫脹を認めた。後日の生検の結果,上咽頭癌と診断され,画像検査にて上咽頭右側に39×28×33mmの腫瘤性病変を認めた。病変は正中を越え左側にも及び(図2),右蝶形骨洞に骨破壊を伴いながら浸潤,蝶形骨や斜台にも浸潤していた。頭蓋底を破壊し頭蓋内にも浸潤,また右椎前間隙と頸動脈間隙にも浸潤を認めた。口蓋帆挙筋浸潤も伴い,右中耳・乳突蜂巣炎も確認された。さらに両側頸部に一部で壊死・変性を伴う多発する転移性リンパ節があったが,遠隔転移を疑わせる所見は認めなかった。これらよりT4N2M0:Stage Ⅳと診断され,同年8月下旬に入院のうえ交替療法が行われた。

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 患者は45歳,男性。

 数日前からの右難聴,耳鳴を主訴に前医を受診し,ステロイド投与を数日行ったが改善傾向がないため,当院を紹介され受診した(図1)。入院のうえ,ステロイドを中心とした点滴投与を行ったところ,聴力の改善傾向がみられ,外来にて経過観察を行っていた。その後,再度の聴力悪化の訴えがあり,頭部MRIを撮影したところ右小脳橋角部腫瘍が認められ(図2),聴神経腫瘍による反復性感音難聴と診断された。

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患者:72歳,女性

主訴:回転性めまい,歩行困難

既往歴:2型糖尿病,高血圧

現病歴:朝食摂取後より上記主訴が出現し,頻回の嘔吐があり救急搬送された。救急外来で頭位性の回転性めまいと,フレンツェル眼鏡で方向交代性背地性眼振を認めた。構音障害や四肢運動失調などの神経症状はみられず,頭部CTで脳出血などの頭蓋内病変は認められなかった。末梢性めまいと診断し,点滴安静でも症状が改善しないため,入院管理となった。

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 患者は49歳,男性。

 1週間前からの左顔面麻痺を主訴に神経内科より紹介され受診した。前医での脳MRIで異常なしとされ,ベル麻痺と診断されていた。初診時麻痺スコアは22/40点。純音聴力検査結果は左右差なく正常であった。アブミ骨筋反射は両側ともに反応があった。外来通院にてハイドロコルチゾン点滴を行い,発症後2か月で完全治癒した。

 その1年5か月後,めまいを主訴に再初診した。その10日後には左顔面神経麻痺の再発を確認したが(20/40点),発症日時ははっきりしなかった。聴力検査にはやはり異常なかった。メコバラミン内服で経過をみるも,不全麻痺にもかかわらず,その後2か月までに麻痺の改善は認められなかった。

 この時点で腫瘍性顔面神経麻痺を疑い造影MRIを撮影したところ,左膝部を中心に腫瘍性陰影を認めた(図1a)。また,順序は逆になるが,側頭骨CTも撮影し,迷路部〜膝部顔面神経の腫大,中頭蓋窩底の骨欠損を確認した(図1b)。

 不全麻痺であったためいったんはwait & scanの方針とし,その後,麻痺は30点程度まで改善したものの頭打ちとなり,一方で腫瘍の確実な増大を認めたため,手術的治療を選択した。手術は経乳突的アプローチにて行った(図2)。不全麻痺であり,中枢側の顔面神経断端確保の困難が予想されたため,意図的に神経移植は避け,顔面神経刺激装置を用いながら被膜内減量のみ実施した。術後の麻痺スコアはやはり30点程度と変化を認めなかった。

《鼻領域》

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 患者は70歳,女性(図1)。

 1か月前から右頰部痛が出現した。近医歯科・口腔外科を受診し,歯科用コーンビームCTにて歯には問題がない右上顎洞炎と診断され,紹介受診した。既往症としてリウマチ,骨粗しょう症があり,メトトレキサート,ビスホスホネート製剤を内服中であった。

 一側性の副鼻腔炎で,歯性副鼻腔炎ではないことから,腫瘍の除外診断が必要と判断し,MRI(単純)検査を予約した。MRIにて右上顎洞自然孔付近にT2強調画像で低信号,T1強調画像で等信号の陰影を認めたため,改めて鼻腔内視鏡検査を行ったところ,中鼻道に分葉状のポリープを認めた。ポリープの一部を生検したところ,生検結果は鼻茸であった。MRIの陰影から,深部には乳頭腫などの腫瘍性病変が存在する可能性もあると考えて,2か月後に手術を予定し,1か月後の上級医の診察を予約した。ところが2週間後,右頰部の腫脹と疼痛の増悪を訴えて予定外受診した。造影CTを撮影したところ,上顎洞前壁,内側壁に骨破壊を含む腫瘍を認めた。外来にて,下鼻道側壁の骨破壊部位から上顎洞内の腫瘍を再生検し,扁平上皮癌の病理診断となった。

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患者:中年男性

主訴:両側鼻閉,後鼻漏

現病歴:中学生の頃から副鼻腔炎を指摘されていて,上顎洞穿刺洗浄や抗菌薬内服にて治療されていたが,鼻汁,鼻閉感は続いていた。当科受診のおよそ半年前に他院内科で気管支拡張症を指摘され,クラリスロマイシンを投与されていた。副鼻腔炎の精査目的で当科を紹介となった。主な症状は鼻閉,後鼻漏で,嗅覚障害や味覚障害はない。気管支喘息の既往や合併はない。

既往歴:30歳代に肺炎

家族歴:特記すべきことなし

嗜好歴:〔喫煙〕10本/日×20年間

身体所見:鼻中隔は右に凸で右下鼻甲介と接していた。両側鼻内に粘性白色鼻汁がみられた。

検査所見:末梢血白血球数5830/μL,好酸球1.4%であり,血清中特異的IgE抗体は,アルテルナリア,クラドスポリウム,ムコール,アスペルギルス,ヤケヒョウヒダニ,ペニシリウム,カンジダ,黄色ブドウ球菌・エンテロトキシンA,黄色ブドウ球菌・エンテロトキシンB,スギ,ヒノキ,カモガヤ,ブタクサのすべてで陰性であった。

 術前の副鼻腔CT(図1)では,左上顎洞に粘膜肥厚,両側上顎洞に少量の液貯留がみられた。蝶形骨洞にも少量の液貯留がみられ,篩骨洞には軽度の粘膜肥厚がみられた。前頭洞には特に所見がなかった。

 胸部単純X線写真(図2a)では,右肺中葉の透過性低下がみられた。

 胸部単純CT(図2b)では,右肺中葉に気管支拡張を認め,右下葉末梢側にも同様の所見と,分泌物貯留を疑う所見を認めた。

 両側鼓膜は菲薄化し,色調は褐色であった(図3a,b)。両側の軽度伝音難聴を認め(図3c),ティンパノグラムでは両側C1型であった(図3d)。

その後の経過:以上よりJESRECスコア3点の非好酸球性副鼻腔炎,鼻中隔彎曲症と診断された。マクロライド療法で鼻に効果なく,難治性と考え,両側鼻内内視鏡下汎副鼻腔根治術と鼻中隔矯正術が予定された。

 術前のインフォームド・コンセントでは,これまでの経過,症状から原発性線毛運動不全症(primary ciliary dyskinesia:PCD)の可能性が高いことを説明した。このとき患者から,不妊治療の際に精子の鞭毛は動いていなかったとの情報提供があった。

 手術では,まず電子顕微鏡での線毛の観察のために下鼻甲介粘膜生検を行った。両側蝶形骨洞を開放したところ,なかに粘稠度の高い白色の膿性貯留液を認めた。左右の蝶形骨洞中隔も切除して単洞化させた。左鼻腔内には鼻茸は認めなかった。左上顎洞後壁は黄色の肥厚性粘膜で覆われていた。右鼻腔内にも鼻茸は認めなかった。

 下鼻甲介粘膜の線毛の電子顕微鏡検査の結果,中心微小管が欠損している線毛が観察され(図4c),PCDと診断した。常染色体劣性遺伝であること,禁煙,ワクチン接種が大切であることを併せて説明した。

 その後,1日3回の自己鼻洗浄を勧めた。術後7か月を経過した時点では,鼻の調子はよく,副鼻腔はよく開放されていた(図5)。近医の内科からクラリスロマイシンの処方は継続されていた。

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患者:46歳,女性

主訴:くしゃみ,鼻汁

病歴・経過:数年前より早朝に強い水様性鼻漏とくしゃみ症状があり,近医内科でアレルギー性鼻炎と診断され,抗ヒスタミン薬を処方されていた。最近,食事時や外出した際などに症状が強くなってきたため,かかりつけ医を受診したところ,耳鼻咽喉科での精査を勧められ当科を受診した。詳細な問診を行うと,症状は数年前より出現し,季節による変化はないという。初診時の鼻鏡所見は,下鼻甲介粘膜の浮腫様腫脹と,水様性鼻漏を認めた。鼻副鼻腔X線検査では明らかな異常陰影は認められなかった。本人が原因精査を希望したためにアレルギー検査を行った。鼻汁好酸球テストでは有意な好酸球増多は認めず,血清特異的IgE抗体定量検査は陰性で,鼻粘膜誘発テストでも明らかな原因抗原の同定には至らなかった。

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患者:47歳,男性

主訴:頭痛と後鼻漏

現病歴:約半年前より上記症状が出現し,近医耳鼻咽喉科を受診した。抗菌薬の内服と局所処置にていったん改善したが,症状が頻回に再燃した。精査ならびに手術適応の有無に関して判断するため当科へ紹介となった。

既往歴:線維筋痛症,6年前に鼻中隔矯正術,粘膜下下鼻甲介骨切除,後鼻神経切断術(当科)

検査所見:両側中鼻道に鼻茸(サイズ 右3,左1)を認めた(図1)。末梢血好酸球0.3%,アレルギー検査ではHD陽性(他院施行)。副鼻腔CT画像では右副鼻腔全洞がほぼ軟部陰影で充満していた。左副鼻腔も一部,粘膜肥厚と粘液貯留像が認められた。

手術所見:両側内視鏡下副鼻腔手術(ESS)Ⅳ型を施行した。中鼻道は右鼻腔を中心に浮腫状ポリープで充満していた。肥厚した粘膜をマイクロデブリッダーで鉗除したところ,右側の副鼻腔には非常に粘稠な貯留液の塊が存在していた。定型的に副鼻腔各洞の隔壁除去を行い自然孔を大きく開放し,ヘパリン加生食にて洗浄し,手術を終了した。

病理所見:副鼻腔粘膜の被覆上皮は中等度の再生性変化を示し,上皮下組織には浮腫と肉芽組織増生を伴った高度の好酸球浸潤,炎症細胞浸潤を認めた。同時にPAS陽性のフィブリン様物質(アレルギー性ムチン)の沈着を認め,グロコット染色でムチン中に真菌が認められた(図2)。術後に測定した総IgE値は4733 IU/mLと高値であり,真菌アレルギー検査ではアスペルギルス,アルテルナリア,カンジダがクラス2と陽性であった。

術後経過:上記の所見よりアレルギー性真菌性副鼻腔炎(allergic fungal sinusitis:AFS)と診断し,術後は内服ステロイドの漸減療法と自宅での鼻洗浄を指導した。

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 患者は82歳,女性。

 数か月前から右鼻閉,右鼻漏を自覚していた。ときどき鼻漏に血液が混じるようになり,近医耳鼻咽喉科を受診した。副鼻腔CTにて右後部篩骨洞,蝶形骨洞に混濁陰影を認めた(図1)。精査加療目的に当科を紹介され受診した。既往歴として,74歳時に右腎細胞癌に対して右腎臓摘出術を施行されている。その後,81歳時に肝転移に対し,肝切除術を施行されている。

《口腔・咽喉頭・頭頸部領域》

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 患者は83歳,男性。

 6か月来の頸部腫瘤を自覚して受診した。左中頸部に長径45 mm・弾性軟の腫瘤を触知した。CT・MRIでは囊胞性腫瘤が疑われた。口腔・咽喉頭に特記所見はなく,唾液腺・甲状腺にも明らかな異常は指摘されなかった。腫瘤内容液の穿刺吸引細胞診では悪性所見を認めなかった。側頸囊胞の診断で頸部腫瘤摘出術を実施したところ,病理結果は甲状腺乳頭癌頸部リンパ節転移であった。

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 患者は73歳,男性。

 約1か月前に左耳下部腫瘤を自覚した。自発痛,圧痛が出現し,増大してきたため受診した。既往歴・家族歴に特記すべき事項はなかった。嗜好歴は,喫煙歴20〜30本/日×45年(3年前禁煙),日本酒1合/日であった。理学所見では,左顔面神経麻痺を認めた(図1)。穿刺吸引細胞診は良性で,細菌培養検査も陰性であった。造影CTでは,左耳下腺内に境界明瞭で内部壊死を考える低吸収域(LDA;図2),および散在性にリンパ節腫大を認めた。

 悪性が否定できず左耳下腺切除術を施行した。レベルⅡAリンパ節をサンプリングし,術中迅速病理診断に提出したところ,炎症所見のみで悪性所見はなかった。耳下腺実質内に小結節状の硬結を触れるが被膜は存在せず,実質自体が硬くなっていた。耳下腺下顎縁枝は肉芽組織内に一部走行しており,可及的に剝離を行った。摘出標本は,膿汁や壊死物質を内部に認めた(図3)。病理組織では,上皮細胞で2層性の好酸球増生があり,表皮には炎症細胞浸潤を認めた(図4)。壊死性ワルチン腫瘍の診断を得た。術後の創部や全身状態は良好であったが,下顎縁枝の麻痺は残存している。

〔実症例を一部改変〕

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 患者は65歳,男性。

 2年前からの左耳下腺部腫脹と左閉眼困難を主訴として当科に来院した。初診時の顔面神経麻痺スコアは柳原法の30点であった。穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology:FNAC)では2回とも「陰性」の結果であった。MRIで腫瘍は深葉に存在し,辺縁整,分葉状,T1強調画像低信号,T2強調画像高信号であり,多形腺腫に合致する所見であった。ただ,T2強調画像で内部が低信号であり,神経鞘腫の可能性も考えた(図1a,b)。以上より,耳下腺深葉多形腺腫を第一に,そのほかに耳下腺癌や神経鞘腫を念頭に置き,耳下腺部分切除術を予定した。術中,顔面神経本幹の同定に際し,本幹が本来存在するはずの部位に,表面平滑で弾性軟の腫瘤を認めた(図2a)。MRIを見返すと,腫瘍が顔面神経管に陥入するような所見(図1c)や,顔面神経が腫瘍に移行する所見を認めた(図1d)。

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患者:73歳,男性

主訴:嗄声

現病歴:当科受診日の2か月前に突然嗄声が出現した。近医内科を受診したが咽頭炎との診断で,抗炎症薬のみで経過観察されていた。数週間経過しても改善しないため近医耳鼻咽喉科を受診した結果,左の声帯麻痺を指摘され,精査目的に当科へ紹介となった。

既往:高血圧,糖尿病

家族歴:特記事項なし

生活歴:〔喫煙〕20本/日×50年,〔飲酒〕ビール700mL/日×30年+泡盛2合/日×25年

初診時現症:嗄声は気息性嗄声であり,GRBAS分類でG3 R0 B3 A0 S0であった。その他,鼻・口腔および頸部に異常所見はみられず,また自覚症状も嗄声以外の訴えはなかった。

喉頭内視鏡所見:左声帯は開大位で固定しており,声帯遊離縁の弓状変化が認められた(図1a)。声帯粘膜に炎症や腫瘤性病変はみられなかった。

画像所見:頸部超音波検査では甲状腺に腫瘤性病変などはみられず,また頸部リンパ節の腫大もなかった。胸部単純X線写真において,心陰影の左第1弓の拡大が認められた(図1b)。この時点で肺あるいは縦隔の悪性腫瘍を疑い,胸部造影CTが施行された。ところがCT画像上,大動脈弓部の血管壁の膨隆および,周囲への血栓形成が確認された(図2)。

診断:弓部解離性大動脈瘤

治療:準緊急的弓部人工血管置換術

経過:全身状態は術前の状態に復したが,声帯麻痺の回復はみられていない。ただし嗄声は若干の改善がみられた。今後,音声改善手術が予定されている。

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【症例1】患者は64歳,女性。

 1か月前より嗄声が出現した。咳はなく痰が出て,抗菌薬内服と吸入治療を行ったが改善しなかった。左仮声帯が腫脹し,一部潰瘍を認めた。声帯は正常で,頸部リンパ節腫脹はなかった。喉頭癌を疑い入院となった。胸部X線で上肺野陰影増強と右肺門に結節性リンパ節を認めたが,陳旧性結核と考えられた。擦過細胞診は陰性,抗酸菌塗抹検査陰性であり,呼吸器外科より陳旧性結核と診断された。入院8日目にラリンゴマイクロサージェリーを施行した。左仮声帯に硬い潰瘍があり,一部は瘢痕様であった。検体の細胞診では悪性所見陰性,細菌陰性であり,特殊感染症を疑った。ツベルクリン反応は中等度陽性で結核が疑われた。13日目に呼吸器科より結核疑いと診断され,患者を個室に移動し,14日目に生検の病理結果にて結核と診断された。粘膜組織内に類上皮性肉芽と多核巨細胞を含み,Ziehl-Neelsen染色で好酸性桿菌を少数認めた。その後16日目に呼吸器科にて気管支鏡を施行した。排菌はなく外来内服治療となった。治療後の喉頭所見は,左声帯から仮声帯にかけて瘢痕様のひきつれがみられた(図1)。

【症例2】患者は90歳,女性。

 2か月前から嗄声が出現した。時折咽頭痛と咳嗽あり。声帯と喉頭蓋喉頭面に隆起性の白色病変を認めた(図2a)。頸部リンパ節腫脹はなかった。喉頭ストロボスコピー検査で病変部の粘膜波動はなかった。喉頭癌を疑い,ラリンゴマイクロサージェリーの予定で入院となった。ファイバー下擦過細胞診はclass Ⅱ,生検は炎症を伴う肉芽であった。胸部X線は両肺に多数の粒状影を認めた(図2b)。ツベルクリン反応は弱陽性で,胸部CTでは両肺に結節多数,一部石灰化を伴うが,活動性の否定は困難とのことであった。喀痰検査でまず非定型抗酸菌が検出された。これは反復することで確定診断となるため,検査を繰り返し,さらに病変部抗酸菌検査の結果,結核が確定した。ガフキー2号であった。その後,患者は結核専門病院に転院のうえ治療を受けた。

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患者:6歳,女児

主訴:右頸部腫瘤,頸部痛,発熱,咽頭痛

 4日前に38℃台の発熱,頸部・耳の痛みが出現した。翌日に咽頭痛も出現し,近医を受診し,セフジトレン ピボキシルの内服を開始するも改善せず,夜間診療所でA群溶連菌検査,アデノウイルス迅速検査を行ったがともに結果は陰性であった。経口摂取不能となり,当院へ紹介され,入院となった。

 圧痛著明な右頸部リンパ節腫脹,右鼓膜発赤,右耳下部発赤を認め,頭部は斜頸位で固定し,開口障害,軽度の流延を認めた。

 WBC 21800/μL(seg 88%),CRP 27.1mg/dL。造影CTで,咽後間隙右側に長径約1.6cmの辺縁が淡く造影される腫瘤陰影と,咽後間隙に一部辺縁が造影される低吸収域を認めた(図1)。頸部リンパ節炎,咽後膿瘍を疑い,セフォタキシム(CTX)の点滴を開始した。翌朝解熱したが,夕方には再度発熱した。さらに眼球結膜の充血が認められ,入院3日目に足指の硬性浮腫が出現し,川崎病の主要症状が5/6となった。川崎病の診断で,免疫グロブリン静注療法(IVIG)2g/kg単回投与とアスピリン(ASA)30mg/kg/日を開始し,CTXは中止した。その後,解熱して症状は改善し,斜頸に対し環軸椎回旋固定の診断となり,保存的治療を行い32日目に退院となった。経過中,心臓超音波検査,心電図に異常はなかった。

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患者:11歳,女児

主訴:頸部腫脹,頸部圧痛

現病歴:20XX年1月末,小児科でマイコプラズマ肺炎と診断され治療された。その頃から前頸部腫脹と圧痛を認めたが,テトラサイクリン系抗菌薬の内服で一時頸部症状が軽快した。2月中旬に小児科で,頸部症状の再燃が認められ,血液検査上CRP 8.3mg/dL,TSH 0.017μIU/mL,FT3 5.3pg/mL,FT4 3.6ng/dL,TRAb<1.0IU/Lであり,亜急性甲状腺炎と診断され,ステロイドによる治療を受けた。5月に入り再燃を認め,増悪するため当科へ紹介された。

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はじめに

 頸部を構成する骨や軟骨の形態異常によって,頭頸部領域にさまざまな症状を呈する疾患の一群が知られている。

 患者は76歳の男性で,頸部左回旋時の疼痛を主訴に受診した。CT画像で喉頭斜位,左舌骨大角の過長が確認され,症状と併せて舌骨症候群と診断された。過長舌骨大角および甲状軟骨上角が切除された結果,頸部痛は間もなく消退した。結果的に診断と治療が妥当なものであったことが示唆された。

 以上の症例について文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 anaplastic lymphoma kinase(ALK)陽性・未分化大細胞型リンパ腫(ALK anaplastic large cell lymphoma:ALKALCL)は,特異な核形を示す大型細胞のびまん性増殖,CD30抗原の発現,染色体転座によるALK融合遺伝子とALKキメラ蛋白の発現などを特徴とし,20〜30歳代の若年者に好発する1)。成人非Hodgkinリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma:NHL)中の1.5〜3.0%,小児リンパ腫の10〜15%にみられる稀な疾患である1,2)。耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域では,2編3,4)の総説にわずかにその概略が記載されている以外,渉猟した限り詳細な報告は1例も認めなかった。

 今回われわれは,16歳女性の鎖骨上窩に発生した腫瘍の試験切除を行い,診断が確定したALKALCLの1症例を経験したので,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医への啓蒙の目的も含めて,若干の考察を加え報告する。

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 『耳鼻咽喉・頭頸部手術アトラス』の上巻(耳科,鼻科と関連領域)の第2版が,上梓された。本書の初版は1999年に刊行され,今でも多くの耳鼻咽喉科・頭頸部外科医にとって欠かせない手術書として読まれている。しかし,日進月歩の手術法,手術支援機器などの目覚ましい進歩に伴い,改訂された手術書が待ち望まれていたところである。このたび,監修者の森山寛先生,編集者の岸本誠司先生,村上信五先生,春名眞一先生の手により,19年をかけてようやく改訂版が刊行された。世紀をまたにかけた待望の手術書である。

 初刊の序で小松崎篤先生は,手術解剖や手術の実際を理解しやすく模式図化し,術前の準備の重要性や手術のポイントを強調すること,インフォームドコンセントに配慮し,新しい分野をできるだけ取り上げることを基本方針として監修したと述べられているが,第2版では,この点を踏襲しつつ,一層充実した手術書となっている。

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目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

あとがき 鴻 信義
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 立冬の候,皆様いかがお過ごしでしょうか?

 今月号のあとがきを書いているのは9月後半,やっと涼しくなってきたところです。今年の夏は連日の熱暑・猛暑・酷暑に加え,強力な台風や地震で甚大な被害が各地で発生しました。自分の身内にも自宅が床上浸水となり避難を余儀なくされたものがいます。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。1日も早く復旧されることをお祈りしています。そんな大変な日々が過ぎ,最近元気づけられたのが大坂なおみ選手のテニス全米オープン優勝でした。気迫溢れるプレーで女王ウィリアムズを破って世界の頂点に! それだけでも凄いのに,試合後のインタビューでみせた謙虚さと無邪気さにとっても癒されました。まだ20歳ですよ! どうやったら,あんなに人の心を掴む立派な振る舞いが自然にできるのか……。やっぱりスポーツっていいなあ。11月は日暮れが早く肌寒くもなりますが,皆様どうぞ適度な運動で健康を保ってください。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
90巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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