耳鼻咽喉科・頭頸部外科 90巻11号 (2018年10月)

特集 今さら聞けないかぜ診療のABC

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Point

●医学用語としての「かぜ症候群」は,上気道,すなわち鼻腔から喉頭までの急性炎症による症状を呈する疾患であり,特に同部位の非特異的カタル性炎症のことを指す。

●概して自然治癒傾向をもつものを指した病名であり,特別な医学的治療を必要とせず,比較的短期間で回復するものを同症候群と呼ぶことが多い。

●診断にはまず臨床所見が大切である。症状の確認や,来院時における周囲の流行状態も参考にする。かぜ症候群を初発症状とした特異的疾患の鑑別も大切である。

●対症的に治療を行い,ウイルスに効果のない抗菌薬の使用は慎む。

かぜの病型からの診断 山村 幸江
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Point

●かぜの病型は,①非特異性上気道炎型,②鼻炎型,③咽頭炎型,④気管支炎型に分類できる。

●非特異性上気道炎型は狭義のかぜで,鼻と咽頭症状,咳の3領域にわたる症状が急性かつほぼ同時に,同程度存在する。この型はウイルス性であり,抗菌薬は不要である。

●鼻炎型はアレルギー性鼻炎と細菌性鼻副鼻腔炎の鑑別が必要である。

●咽頭炎型はウイルス性が主体であるが,抗菌薬の適応があるA群β溶連菌性も小児で15〜30%,成人で10%程度を占める。

●気管支炎型は肺炎の鑑別が重要である。起炎微生物の5〜10%は抗菌薬の適応があるマイコプラズマ,肺炎クラミジア,百日咳である。

かぜ症状からの鑑別診断 竹内 万彦
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Point

●インフルエンザでは咳嗽と発熱が強い。

●マイコプラズマ肺炎では喘鳴を欠き,咳嗽は頑固で夜間に激しい。

●肺結核を示唆する症候は発熱と体重減少である。

●A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎に対しては,抗菌薬投与を行わない。

《かぜと耳鼻咽喉科診療》

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●感冒後嗅覚障害は嗅神経性嗅覚障害で,40歳代以上の女性に多く,自然回復する場合もある。

●感冒後嗅覚障害の治療として従来はステロイド点鼻,ビタミン剤,亜鉛製剤の内服が行われてきたが,今後,当帰芍薬散の内服や嗅覚刺激療法(olfactory training)が広まる可能性がある。

●感冒後の味覚障害では,嗅覚が障害された影響を受けて味覚が障害される風味障害の場合がある。

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Point

●鼻汁分泌は生理的な現象であるが,感冒罹患や副鼻腔炎に伴う産生異常と成分変化が臨床的に愁訴として認識される。

●感冒罹患による鼻汁分泌亢進には,神経原性炎症,鼻粘膜分泌細胞への刺激,副鼻腔炎合併による修飾反応などが関与している。

●感冒の原因の大半はウイルス感染である。続発する急性鼻副鼻腔炎では肺炎球菌,インフルエンザ菌,モラクセラ・カタラーリスが主な起炎菌である。

●後鼻漏(postnasal drip syndrome:PNDS)の発症機序としては,鼻閉の増強,鼻汁組成の粘弾性の変化,知覚神経の過敏性亢進,などが想定される。

かぜとアレルギー性鼻炎 近藤 健二
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Point

●かぜ症候群とアレルギー性鼻炎はともに罹患率が高く,しばしば合併する。

●ウイルス性上気道炎の初期とアレルギー性鼻炎の鑑別は困難な場合がある。

●生後早期にウイルス性上気道炎に罹患することはアレルギー性疾患の発症に抑制的に働く,促進的に働くなど,いろいろなデータがある。

●アレルギー性鼻炎の患者がウイルス性上気道炎に罹患すると,アレルギー炎症が悪化する。

かぜと中耳炎 林 達哉
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Point

●薬剤耐性(AMR)対策を理解し実践するために,かぜ(ウイルス性上気道炎)と急性中耳炎(AOM)の関係を正しく理解する必要がある。

●AOMの患者数はかぜの流行と同期して増減するため,かぜの発症後1週間はAOMの発症に注意が必要である。

●ウイルス性AOMから抗菌薬を必要とする細菌性AOMを鑑別するには詳細な鼓膜所見が必須であり,特に重要なのは鼓膜の膨隆所見である。

●鼓膜の膨隆を伴わないAOM軽症例はウイルス性の段階である可能性があり,3日間抗菌薬を投与せずに経過を観察することが推奨される。

かぜと音声障害 矢部 はる奈
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Point

●ウイルス性の急性喉頭炎による音声障害が多い。

●かぜによる音声障害は,上気道から下気道まで音声生成の過程のどこかに炎症が反映され,さまざまな要素が総合的に作用した結果生じる。

●急性喉頭炎による音声障害の治療は,対症療法に加えて声の安静と十分な加湿を促すことが重要である。

●対症療法で用いる薬剤の選択についても,患者背景を考えて慎重に行う必要がある。

かぜ後の長引く咳 上條 篤
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Point

●かぜ後の長引く咳は,感染後咳嗽と呼ばれ,遷延性咳嗽のなかで最も多くを占めるという報告もある。

●かぜ後に長引く咳嗽のなかで,感染後咳嗽は通常は乾性咳嗽であるが,鼻副鼻腔炎・後鼻漏による咳嗽は湿性咳嗽であることが多い。

●診断には感冒のエピソードが重要であり,また遷延性咳嗽の原因となる他の疾患と鑑別する必要がある。鼻副鼻腔炎のほかに,咳喘息(気管支喘息),アトピー咳嗽,胃食道逆流症などが代表的鑑別疾患である。

●治療のゴールデンスタンダードは存在しないが,抗ヒスタミン薬,中枢性非麻薬性鎮咳薬,麦門冬湯の組み合わせが有効であると報告されている。ただし,感染後咳嗽であれば通常は時間とともに自然消褪する。

《かぜを治す》

かぜの薬物療法 川野 利明 , 鈴木 正志
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Point

●かぜに対しては抗菌薬の投与を行わない。

●かぜは基本的にウイルス感染であり放置していても治癒するが,総合感冒薬はそれまでの間の症状を少しでも改善する役割がある。

●症状に応じた処方薬の選択を行う。

●妊娠15週までは薬剤による催奇形性の可能性があり,16週以降でも胎児への影響を考慮する。アメリカ食品医薬品局(FDA)による胎児危険度分類基準が処方の参考となる。

小児のかぜの薬物療法 阪本 浩一
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●感冒とは,上気道の急性のウイルス感染症と考えられ,「鼻汁と鼻閉が主症状のウイルス性疾患で,筋肉痛などの全身症状がなく,熱はないか,あっても軽度なもの(おおむね38.5℃未満)を指す」とされている。

●鼻汁,鼻閉を引き起こすのは,ウイルスによる鼻副鼻腔炎と考えられる。

●かぜの多くは自然治癒すること,抗菌薬の投与や対症療法に関するエビデンスでは,これらの有用性は必ずしも示されていないことを念頭におく。

●対症療法は,副作用を考えて適切な薬剤を,最低限使用するにとどめる。鼻汁の吸引は効果的な治療法で,家庭で実施可能である。

かぜに対するOTC薬の使い方 金谷 洋明
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Point

●かぜに対するOTC薬は,効能よりも安全性に重点が置かれた薬剤であるので,初期症状の緩和に用いられる。

●軽微な身体の不調を自分で手当てするというセルフメディケーションには有効であるが,稀に健康被害を生じる可能性がある。

●多数の品目があるが薬効成分が重複するので,1品目のみの服用とする。

●OTC薬の有効成分は,配合量は処方薬より少ないが成分的には同等なので,服用する際は用法・用量を厳守する。

インフルエンザの治療 増田 佐和子
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●抗インフルエンザウイルス薬はノイラミニダーゼ(NA)阻害薬4剤にウイルスmRNA合成阻害薬1剤が加わり,5種類が使用できる。

●患者の重症度などから抗ウイルス薬を選択する。

●抗ウイルス薬は発症後できるだけ早期に投与し,投与期間を遵守する。

●解熱鎮痛薬を併用する場合はアセトアミノフェンを用いる。

かぜに対する漢方治療 今中 政支
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Point

●かぜに罹患した患者が求めているのは,「速やかに症状を緩和してもらうこと」であって,「抗微生物薬適正使用の手引き」を遵守した「抗菌薬の投与を控えた処方」ではない。

●漢方は1800年前に編纂された『傷寒論』という「急性感染症に対する治療バイブル」的な成書に端を発しており,適切に漢方薬を処方すれば,発熱,頭痛,倦怠感,関節痛,咽頭痛,咳など,かぜの諸症状を迅速に治すことができる。

●「長く飲まないと効かない」のは慢性疾患のときであって,優れた即効性を有する漢方薬が多数存在する。

●本稿では浪速医科大学(架空)を舞台とし,医局員が漢方薬を導入することによって,いかなる恩恵を受けたのか,漢方薬ならではの服用法,発汗療法,傷寒と温病の違い,長引く咳嗽への対処などにスポットを当てつつ,わかりやすく概説した。

かぜの予防と生活指導 小林 一女
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●口腔内には常在菌が生息している。常在菌は外部から侵入する病原微生物による感染を防御しているので,予防目的のうがいには水が適している。

●鼻をかんだあと,帰宅後,食事前などには石鹸と流水で手洗いを行う。手洗い後はペーパータオルか個人用の乾燥したタオルで拭く。

●マスクはかぜ予防にならないが,睡眠時のマスク装着はかぜ症状の軽減効果がある。

●乳酸菌は宿主の免疫機能増強に働くことで上気道感染予防効果を発揮すると考えられている。

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Point

●高齢者のかぜは細菌性2次感染として肺炎を発症しやすい。

●また,発熱や咽頭痛,頭痛など,かぜに特徴的な症状が乏しい。

●合併する心疾患や呼吸器疾患などの慢性疾患の急性増悪に注意する。

●23価莢膜多糖体肺炎球菌ワクチンと13価蛋白結合型肺炎球菌ワクチンの使用が可能で,ともに肺炎球菌性肺炎の予防に有効である。

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 素晴らしい耳科手術書『TEES(経外耳道的内視鏡下耳科手術)手技アトラス:導入・基本手技からアドバンスまで』が中山書店から発刊された。まさにTEESの先駆者である欠畑誠治教授の卓越した見識と情熱とがこもった渾身のテキストである。

 欠畑教授は山形大学教授に就任して以来,一貫して新しい耳科手術手技であるTEESに取り組み,手術手技の改良や周辺機器の開発などTEESを大きくブラッシュアップするとともに,TEESに関わる耳科医の輪を広げてきた。

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はじめに

 水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は,通常,小児期の水痘罹患(初感染)後,三叉神経節あるいは脊髄後根神経節に潜伏感染する。加齢,精神的・肉体的ストレスや担癌状態,臓器移植後などの細胞性免疫能が低下した状態になったときにウイルスは再び神経節内で増殖し,いわゆる再活性化をきたし,帯状疱疹を発症する。耳鼻咽喉科領域では耳介にウイルス疹を起こし,第Ⅶ,第Ⅷ脳神経麻痺をきたすRamsay Hunt症候群がよく知られている。これに第Ⅸ,第Ⅹなどの下位脳神経麻痺を合併し,多発脳神経麻痺を呈する症例は多く報告されているが,第Ⅸ,第Ⅹなどの下位脳神経麻痺が単独で生じることは比較的稀である。今回われわれは,VZVの再活性化による舌咽・迷走神経麻痺をきたした症例を経験したので,その診断を中心に若干の文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 腎明細胞癌は血流に富んだ腫瘍であり,血行性に遠隔転移することが知られているが,副鼻腔への転移は稀である。今回われわれは,腎摘出後19年経過したのち副鼻腔に転移を認めた1例を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する。

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目次

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次号予告

あとがき 小川 郁
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 超高齢社会を迎え,認知症の増加が社会問題となっています。最近の同窓会やクラス会の話題の一つも親の認知症問題で,人ごとでは済まされない問題となっています。加齢性難聴をはじめとする難聴も超高齢化とともに急増しています。いわゆる団塊の世代が75歳に達する2025年には超高齢化が加速度的に進むものと予測されており,難聴者は1400万人にも達するといわれています。2015年,厚生労働省は「認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜」の戦略として新オレンジプランを発表しましたが,このプランのなかで認知症の危険因子に初めて難聴が加えられました。海外でも認知症と難聴との関係が検討され,そのレビューとして,昨年7月にLancetに発表された“Dementia prevention, intervention, and care”で,医学的介入が可能な危険因子として難聴が9%と最も影響が大きいと報告されたのを契機に,難聴と認知症との関係が医学的にのみならず社会的にも注目されるようになっています。

 一方,本邦における補聴器普及率は欧米に比べてきわめて低いと言われており,その理由の一つとして,補聴器購入に際しての公的補助制度や補聴器供給システムの問題が指摘されています。その解決策の一つとして,本年から日本耳鼻咽喉科学会認定の補聴器相談医が発行する「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」によって認定補聴器販売店などで補聴器を適合,購入した場合に,医療費控除を受けることができるようになりました。今後,この制度が浸透することによって補聴器供給システムも改善し,補聴器の適切な普及が進むことが期待されます。補聴器相談医の先生方にはこの新しい制度に是非ご協力いただきたいと思います。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
90巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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