耳鼻咽喉科・頭頸部外科 90巻1号 (2018年1月)

特集 こんなときどうする? 術中・術後のトラブル対応

《耳領域》

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●こんなとき…

【症例】72歳,女性。小児期より中耳炎を繰り返していた。

 数年前より耳漏を反復し近医を受診したところ,鼓膜の異常を指摘され当院を受診した。癒着性中耳炎の診断で,薄切軟骨を使用した鼓室形成術ⅢCを行った。術後1か月半後に長期留置用鼓膜換気チューブを鼓室前上象限に留置した。数日後より耳漏が出現し,鼓膜上に肉芽を形成した。チューブは確認できなかった。抗菌薬の点耳,内服加療により,鼓膜の肉芽は消失した。2か月後,鼓膜の透過性が回復すると,鼓膜直下に青いチューブと思われる異物を視認した。

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●こんなとき…

 幼少時期より繰り返す左慢性中耳炎に対し,左鼓室形成術を施行した。穿孔の大きさは中穿孔,炎症所見がひどく,CTで中耳腔から乳突洞にかけて充満する肉芽が認められた。耳小骨周囲の肉芽を徹底清掃するため,いったんI-S jointを離断して,キヌタ骨を摘出後にアブミ骨周囲の清掃が必要と判断した。I-S joint付近の操作のため鼓膜輪を挙上して肉芽清掃しようと試みたが,肉芽で鼓索神経の同定が困難であった。

アブミ骨がはずれた 奥野 妙子
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●こんなとき…

【症例】32歳,女性。両側耳硬化症で,純音聴力検査では右47dB,左37dBの聴力であった。自覚的にも聞こえの悪い右耳の手術を予定した。全身麻酔下に鼓膜を翻転し耳小骨の動きを確かめた。ツチ・キヌタはよく動くが,アブミは動かず,耳硬化症と診断して,stapedotomyを行った。アブミ底に0.8mmのsmall perforationを作成してアブミ骨筋腱を切断し,脚を骨折させてアブミ上部構造を取り出そうとしたところ,アブミ底も上部構造と一緒にとれてしまった。

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●こんなとき…

 真珠腫性中耳炎にて鼓室形成術と乳突削開術を施行した。真珠腫が広範囲におよび,炎症も強く出血が比較的多い症例であった。乳突削開術中にドリルが顔面神経の一部に接触し,損傷させてしまった。

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●こんなとき…

【症例】11歳,男児

 左の先天性真珠腫に対して外耳道後壁保存型鼓室形成術第一段階を施行し,1年後に第二段階手術を行った。鼓室を開放したところ,正円窓窩〜鼓室洞にクローズドタイプの遺残を確認した。病変を明視下に置くために,鼓室側から外耳道後壁の骨削開を開始した。術前のCTで高位静脈球であることがわかっていたため,顔面神経に注意しながら鼓室洞より浅い部分での骨削開を行っていたが,真珠腫の足側端付近で静脈性出血を認めた。

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●こんなとき…

 右真珠腫性中耳炎に鼓室形成術を施行した。乳突蜂巣を削開し,外側半規管隆起前方の肉芽を剝離するときに,隆起よりも内側に手術道具が入らないように気をつけながら病変を剝離した。ところが術後,右向きの水平回旋性眼振が出現した。一方,右慢性穿孔性中耳炎に対し,局所麻酔にて鼓膜閉鎖術を行った症例は,左方向の水平回旋性眼振が出現した。

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●こんなとき…

 【症例】46歳,男性。右緊張部型真珠腫性中耳炎

 外耳道後壁削除・乳突非開放型鼓室形成術Wo・段階的手術(第1次)術を施行した。真珠腫は上鼓室〜乳突洞口,さらには下鼓室,鼓室洞へと進展し,顔面神経鼓室部は広範に露出していて,前庭窓に大きくoverhangしていた。慎重な操作によって顔面神経より真珠腫は無事に剝離摘出できた。術後経過は良好で,入院中には顔面神経麻痺は認めていなかった。退院後の術後9日目より右顔面麻痺が出現し,40点法スコアは32点であった。

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●こんなとき…

【症例】48歳,男性

左弛緩部型真珠腫stage Ⅱ PTAMの診断で鼓室形成術を施行した。中頭蓋窩の天蓋骨が真珠腫により広範に破壊され,上皮が露出した硬膜に強く癒着していた。病変の剝離操作中,少量の髄液の漏出を認めたため,同部位を筋膜で被覆しフィブリン糊で固定した。術中髄液は停止したため,二期手術を計画し手術を終了した。術後3日目より,前屈時に左外鼻孔から漿液性の液体がポタポタと流出するようになった。

《鼻領域》

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●こんなとき…

【症例】76歳,女性

 10年以上前から鼻閉症状が持続するため当院当科を受診した。併存疾患に気管支喘息,高血圧があり,内科で治療中であった。鼻内所見は両側鼻腔にポリープが充満しており,末梢血好酸球は12.2%,副鼻腔CT像で前頭洞,篩骨洞,蝶形骨洞,上顎洞に軟部陰影の充満と骨肥厚像を認めた。好酸球性副鼻腔炎の診断基準案であるJESRECスコアが17点で好酸球性副鼻腔炎の重症群と診断し,完全単洞化手術を行ったところ,前頭陥凹は骨肥厚と軟部組織の充満のため,手術前半の時点では前頭洞排泄路を確認できなかった。

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●こんなとき…

【症例】65歳,男性,右内反性乳頭腫

術前のCTより,蝶形骨洞前壁の分類ではInfra-sella type(図1)であり,Onodi cellの下方に蝶形骨洞が存在していると予想した。また上鼻甲介が後方で右外側に偏倚しているため,右蝶形骨洞自然口も直剪包交よりやや外側方向にあると考えた。そこで視神経を確認してOnodi cellを同定し,蝶形骨洞自然口を開大したのち,外側に蝶形骨洞を拡大開放するプランとしたが,蝶形骨洞が見つからなかった。

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●こんなとき…

【症例】40歳,白人男性

 繰り返す副鼻腔炎のためESSを施行した。術前の水平断CT所見で篩骨洞は「くびれ型」を呈していた(図1a)。ESSでまず鈎状突起を除去し,次に篩骨胞を処置しようと上向き截除鉗子で篩骨胞と思われる部位を鉗除したところ,黄白色の軟部組織が露出した(図1b)。そこで眼球を押すと軟部組織が動いたため眼窩脂肪と確認できた。

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●こんなとき…

【症例】22歳,男性。主訴 鼻閉,嗅覚障害

既往:気管支喘息,アレルギー性鼻炎,口腔アレルギー。両側中鼻道と嗅裂にポリープがみられ,JESRECスコア17点,好酸球性副鼻腔炎疑いにて手術を行った。

 ボスミン®外用液(0.1%)で鼻粘膜を収縮させたのち,10%コカイン液をベンシーツを用いて両側鼻粘膜に広範囲に塗布し,蝶口蓋動脈付近,嗅裂前方の前篩骨神経管付近と鼻堤に当たるように留置した。鼻中隔矯正術,右粘膜下下鼻甲介骨切除術を行い,下鼻甲介前方の切開部分の粘膜断端とneurovascular bundleはバイポーラで焼灼した。中鼻道および嗅裂後方のポリープをマイクロデブリッダーで除去,鈎状突起切除,鼻堤蜂巣を開放し,前頭洞口を確認した。篩骨胞を切除し,中鼻甲介基板を切除する頃には術野は常に血液がある状態となった。截除鉗子とマイクロデブリッダーでポリープと残存隔壁を除去してゆき,上鼻甲介・蝶形骨洞自然口を確認のうえ,蝶形骨前壁を可及的に除去した。術野には常に血液が湧き上がってきており,吸引付きの道具を使っていないと操作が困難な状況になった。手術開始後約3時間,当初70bpm程度であった心拍数が徐々に100bpm程度に上昇し,麻酔科医がフェンタニルを数回追加投与したが,心拍数は低下しない。

ESS中に髄液漏が生じた 中丸 裕爾
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●こんなとき…

 副鼻腔炎にてESSを施行した。炎症が強く出血が多い症例であったが,手術時間の制限があったためデブリッダーを使用し,出血を吸引しながら手術を続けた。手術終盤で出血が少し収まったところで髄液の漏出に気がついた。よく観察すると篩骨洞内側壁(篩板側壁)の骨が広範に欠損し,硬膜にも15mmほどの瘻孔が存在していた。硬膜の瘻孔より拍動性に漏出する髄液が確認できた。

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●こんなとき…

 5年前に慢性副鼻腔炎に対してESSを施行した。数か月前から鼻閉と粘性鼻漏が徐々に増悪し,鼻内所見では両側中鼻道を越えて鼻茸が充満していたため,再手術を行った。術中に篩骨洞天蓋から出血があったが,ガーゼタンポンによる止血処置を行って手術を終えた。リカバリー室で右眼瞼周囲の皮下出血と発赤腫脹,結膜浮腫,眼痛を生じた。

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●こんなとき…

 好酸球性副鼻腔炎にて全身麻酔下にESSを施行した。デブリッダーにて左前篩骨洞天蓋の病的粘膜を処置している際に動脈性出血を認めたが,ボスミン®ガーゼの圧迫とバイポーラーによる焼灼にて止血されたため,手術を続行した。終刀時に視診上,眼窩や眼球に異常がないことが確認された。帰室後,本人より左目が見えにくいとの訴えがあった。診察すると,左眼瞼と眼球結膜の出血斑が確認された。

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●こんなとき…

【症例】52歳,男性。やや肥満で高血圧

脳梗塞予防で内服していた抗血小板薬を術前10日間休薬した。鼻中隔彎曲症と両側鼻茸,慢性副鼻腔炎に対し,全身麻酔下に内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型,両側内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型を施行した。手術中に大きな粘膜損傷なく,終了時点では軽度の静脈性出血のみで,中鼻道に創傷被覆材(ソーブサン®)を充塡し終了した。経過順調で,抗血小板薬を再開し術後5日目に退院した。術後14日目に突然左鼻出血があり,救急受診した。

《咽頭・喉頭・頭頸部領域》

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●こんなとき…

【症例】40歳,女性

既往:高血圧,糖尿病,睡眠時無呼吸症候群

生活歴:飲酒なし,喫煙なし

 習慣性扁桃炎に対する手術目的に当科へ紹介された。扁桃肥大はマッケンジー分類Ⅲ度であり,睡眠時無呼吸症候群の一因と考えられ,全身麻酔下に両側口蓋扁桃摘出術を施行した。局所注射に血管収縮薬を使用した。扁桃被膜に癒着を認めたが,適宜索状物をバイポーラで焼灼しながら切離し,下極を3-0 Vicryl®で結紮し扁桃を摘出した。術後出血なく経過し,術後6日目に退院となったが,退院同日に誘因なく出血をきたした。

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●こんなとき…

【症例1】71歳,女性。左口蓋扁桃扁平上皮癌(p16免疫染色陰性),中咽頭癌T2N1M0 Stage Ⅲ

 画像検査では,腫瘍の舌根方向への浸潤がみられた(図1a)。

 経口挿管で全身麻酔を導入した。アクアプラストで上歯を保護しFK-WOリトラクターで術野を展開して,オリンパス5mmビデオエンドスコープ下にTOVSを行った。3%ヨウ化カリウム溶液の不染帯を参考に,上方は一部軟口蓋,咽頭後壁,舌根部まで含み,外側方は翼突下顎縫線から内側翼突筋や副咽頭間隙脂肪織,茎突舌骨筋までを深部マージンとして原発巣を切除した(図1b)。

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●こんなとき…

【症例】42歳,女性

 甲状腺乳頭癌cT2N0M0の診断で甲状腺右葉切除・傍気管部郭清を施行した。皮下脂肪が多い症例であった。甲状腺上極の処理を行った後,下極で下甲状腺動脈を確認し,その背側で反回神経と思われる索状物を確認した。神経刺激装置を用い,やや弱いものの声帯の後筋の可動性を確認できた。この索状物は若干細い印象であったが喉頭へ進入することを確認できたため反回神経は温存できたと考えた。傍気管部の郭清の際に,下甲状腺動脈周囲から出血があり索状物を結紮した。しかしその後から,声帯の後筋の可動性は消失してしまった。結紮した索状物を追跡すると,喉頭に進入しており,反回神経が分枝していることがわかった。

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●こんなとき…

 耳下腺腫瘍の術前検査において,穿刺吸引細胞診で悪性所見がなく,顔面神経麻痺もなかったことから,良性腫瘍の診断にて耳下腺腫瘍手術を施行した。顔面神経本幹は同定できたものの,神経が腫瘍に癒着していた。神経を温存しながらの腫瘍の摘出を試みたが,癒着が強く,神経を切断せざるをえなかった。

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●こんなとき…

【症例】35歳,男性,右頸部リンパ節腫脹

右後頸部のリンパ節腫脹の診断のため,外来の処置室にて右頸部リンパ節摘出術を行った。その際,摘出したリンパ節に接して走行していた頸神経を結紮処理した。10日後の外来受診時に,患者は右肩周囲の痛みや重たい感じを訴えたが,経過をみるように説明した。病理結果は幸い反応性リンパ節であった。患者は,その後,徐々に右肩周囲の疼痛を感じ,筋力低下も悪化して,仕事に支障をきたすようになり,3か月後に再び当院外来を受診した。右肩の下垂,僧帽筋萎縮,翼状肩甲,右上肢外転障害(90度)などを認めた。

皮弁の血流が悪い 三谷 浩樹
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●こんなとき…

 下歯肉がん肩甲骨皮弁再建,第2病日に看護師よる皮弁ピンプリックテストでの色調異常の報告を契機にただちに開創した(図1a)。皮弁筋体は全体が既に黒色調であり,内頸静脈・肩甲下静脈吻合部に血栓を確認したため血管をカットして血栓を取り除いたところ,勢いのある還流血の流出がみられた。再度血管吻合を試み,その後徐々に筋体色調が改善して完全回復した(図1b)。

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●こんなとき…

【症例1】53歳,男性,喉頭扁平上皮癌(声門上:T2N2cM0)

既往歴:特記すべきことなし

生活歴:喫煙60箱/年,ウイスキー2杯×20年

現病歴:6か月前に同時併用化学放射線治療を施行した。照射範囲は,前頸部+鎖骨上窩40Gy+両全頸部30Gyの70Gyであり,左静脈角付近は60Gy照射されていた。化学療法はTPF(ドセタキセル50mg/m2,シスプラチン60mg/m2,5FU 1000mg/body)1コースを施行した。

 一次治療効果は,局所完全奏効(CR),頸部リンパ節は部分奏効(PR)であった。造影CTでは,左上内深頸,中内深頸にリング状造影効果を呈する長径10〜20mmの遺残リンパ節を認めたため,根治的頸部郭清術を施行した。レベルⅡ〜Ⅴ郭清術を行い,内頸静脈,副神経は温存したが,胸鎖乳突筋は切除した。レベルⅡ,Ⅲに最低5個の腫大リンパ節を認め,最大径24mm,複数リンパ節の癒合所見も認めた。上中内深頸リンパ節に遺残を認めた(図1a)。手術時間3時間15分,出血19mLであった。術後,頸部腫脹がみられ,滲出液は黄白色で多め(術後3〜6病日40〜50mL/日)であったが,術後8病日には25mL/日へ減少したためドレーンを抜去し,術後13病日に退院した。退院後に頸部腫脹が再燃し,18,20病日に外来処置を行ったが軽快なく,頸部腫脹,穿刺にて50mLの黄白色の貯留液を認めた。

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●こんなとき…

 喉頭全摘後に頸部皮膚に強い発赤と波動を認め,残存咽頭の縫合不全による頸部膿瘍が疑われたため,皮膚の縫合部を一部開創したところ膿汁と唾液の流出を認めた。

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●こんなとき…

【症例】61歳,男性。気管膜様部へ浸潤を認める頸部食道癌(cT4N2M0)に対してFP併用CRT 70.2Gyを行い,いったん完全奏功(CR)となった。しかし,治療終了後5か月で原発巣再発rT3N0M0をきたしサルベージ手術を行う方針となった。

 腫瘍下端は胸骨上縁を超えて下方へ進展しており,咽頭喉頭頸部食道摘出術(気管8リング切除),両側頸部郭清術,遊離空腸再建術と併せて縦隔気管孔造設術を行った。当科では CRT後のサルベージ縦隔気切孔の造設に際し,気管壁の血流を保つために残存気管を極力剝離せず,移動(腕頭動静脈間などに)させない,無理に引き出さないことを基本としている1,2)。また,大胸筋弁への筋体を気管と大血管の間に充塡し,胸骨鎖骨の切断面を完全に被覆する形で手術を行うことにしている。本症例もこの方針で縦隔気管孔の造設を行った(図1a〜c)が,術後10日目,気管断端の6時から10時方向で気管壊死を認め,創部が離開し腕頭動脈の露出を認めた。再手術を行い,大胸筋皮弁を外し,壊死した気管を,血流が十分に確認できるまで1リング程度除去した。大胸筋皮弁の血流は良好であったため,再度筋体を気管と腕頭動脈間に充塡する形で閉創した。その後,気管や大胸筋皮弁の壊死所見なく,感染兆候も出現せず良好に経過していたが,再手術後15日目の気管孔処置時に突如縦隔気管孔から大出血をきたした。

頸動脈から出血した 小村 豪
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●こんなとき…

【症例1】69歳,女性,甲状腺乳頭癌

術前CTにて,右総頸動脈は腫瘍により全周性に取り囲まれていた。切除組織を右総頸動脈の癒着部位に集めたのち,右総頸動脈上下端を確保した。頸動脈癒着部を鋭的に剝離途中で動脈損傷した(図1)。

【症例2】42歳,男性,下咽頭癌

咽喉食摘術+術後化学放射線療法後,左頸部に再発をきたしたため,サイバーナイフ治療を行った。退院後,左頸部よりの出血があり救急搬送された。救急外来にて大量出血した(図2)。

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●こんなとき…

【症例】65歳,男性,やや肥満気味

 咽頭癌の手術目的に入院した。手術が長時間であったことと,術後頸部の腫れが予想以上に強かったため,術後2日間は気管挿管による人工呼吸器管理とした。創部出血の懸念があったため深部静脈血栓症予防は間欠的空気圧迫法のみとしていた。術後3日目に抜管し,リハビリテーションを開始した。術後4日目にリハビリテーションで歩行を開始した際に,突然の呼吸困難とSpO2低下,頻脈がみられた。

術後に誤嚥が続く 中平 光彦
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●こんなとき…

 【症例】50歳,男性。左頸部の原発不明扁平上皮癌頸部リンパ節転移

 治療前頸部造影CTにて,左頸部に頸動脈を完全に腫瘍内に巻き込む転移性リンパ節腫脹を認めた(図1)。初回治療として,ドセタキセル・シスプラチンおよび5フルオロウラシル(TPF)による導入化学療法を行ったが治療効果を認めなかった。そのため,頸動脈再建を伴う左根治的頸部郭清術を施行した。術後,脳梗塞は認めないものの,病変内での脳神経合併切除により左混合性喉頭麻痺(脳神経Ⅹ,Ⅺ,Ⅻ麻痺)を認め,誤嚥のため経口摂取が困難となった。

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はじめに

 Laryngoceleは本邦においては稀な疾患で,喉頭室より上方に伸びた喉頭小囊が空気を含み囊状に拡大した疾患である。気囊胞の占拠部位により,①喉頭内にとどまる内側型,②側頸部に限局する外側型,③喉頭内から側頸部へ連続する混合型,の3型に分類される1)。今回われわれは内側型laryngoceleの1例を経験したので報告する。

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はじめに

 梨状窩瘻(以下,本症)は繰り返す頸部蜂窩織炎,頸部膿瘍,化膿性甲状腺炎の原因となる下咽頭の先天性瘻孔1)である。本症の治療は瘻管・甲状腺半側合併切除2),瘻管切除術3),トリクロール酢酸液4-7)や硝酸銀液8,9)による化学的焼灼術などが報告されているが,その手術法は必ずしも確立していない。また手術時の瘻管の確認には喉頭直達鏡や内視鏡が用いられているが,瘻管の同定が容易でないこともある。そして繰り返す感染や切開排膿のため,頸部からの瘻管切除が難しいこともある。今回,切開排膿を繰り返し行った本症に対し拡張式喉頭直達鏡を使用し,瘻管の同定および焼灼術が容易に行えた1例を経験したので報告する。

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はじめに

 Costen症候群は顎関節機能障害に起因するとされる顎関節部の疼痛,頭痛,顔面痛,耳痛とともに難聴,耳鳴,耳閉感,めまいなどの耳症状が咀嚼により誘発される症候群であり,1934年に耳鼻咽喉科医James Bray Costen1)により最初に報告された。また,近年,噛み癖は顎関節症患者の7割に認められ,その要因と考えられている2)

 今回,噛み癖の修正により改善したCosten症候群例を経験したので報告する。

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 上田剛士先生(洛和会丸田町病院救急・総合診療科)は数多くの文献から重要なメッセージを抽出し,わかりやすい表やグラフにして説明してくれる。評者と同様,『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院,2014年)を座右の参考書としている臨床医は多いであろう。これは臨床上の問題点に遭遇したとき,そのエビデンスを調べる際に非常に重宝している。

 『日常診療に潜むクスリのリスク』は薬の副作用に関する本である。高齢者はたくさんの薬を飲んでいる。私たちは気がついていないのだが,薬の副作用により患者を苦しめていることは多い。「100人の患者を診療すれば10人に薬物有害反応が出現する」(序より),「高齢者の入院の1/6は薬物副作用によるもので,75歳以上では入院の1/3に及ぶ」(p.5より)という事実は決して看過すべからざることである。「Beers基準」や「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」は存在するが,高齢者への適切な処方への応用は不十分だ。

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欧文目次

あとがき 小川 郁
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 2017年11月22〜24日,パシフィコ横浜で第27回日本耳科学会総会・学術講演会を開催させていただきました。本学会は毎年1回,耳科学に関する研究ならびに診療の進歩・普及を図ることを目的に開催されている学会で,日耳鼻学会の関連する学会のなかでも最大の学会の1つです。今年の日本気管食道科学会が第69回,日本聴覚医学会と日本音声言語医学会はいずれも第62回ということを考えますと新しい学会のような印象を受けますが,実は1961年に発足したOto-microsurgery 懇話会の流れを汲む日本臨床耳科学会と,同じ年に発足した内耳生化学懇話会の流れを汲む日本基礎耳科学会の画期的な合併により,1991年に発足したという経緯があります。第1回,第2回は,秋に臨床学会と総会,春に基礎学会が開催されましたが,第3回からは総会・学術講演会を年1回開催するようになり,名実共に日本耳科学会が誕生しました。このように第27回の総会・学術講演会ですが,前身の懇話会も含めると大変歴史のある学会ということができます。近年,耳鼻咽喉科学の領域では学術展開の広がりと細分化によって16の関連学会が学術活動を行っています。このため学会シーズンには毎週のように学会が開催され,臨床・研究活動と学会活動との両立が困難になっています。画期的な合併で誕生した日本耳科学会ですので,今回も他学会との同時開催や会期短縮を試みました。残念ながら同時開催は実現しませんでしたが,学術講演会会期を2日に短縮して開催しました。11名の海外ゲストを招いて行った特別企画講演80題,一般演題197題,ポスター演題136題(計413題)に加えてインストラクションコースを設定するなど,少し窮屈なプログラムになりましたが,2日間各会場は会員で溢れ,コンパクトでかつ活気のある充実した学術講演会になったと思っています。今後,学会の合併や同時開催で臨床・研究活動がさらに活性化することを期待したいと思います。

 さて,今月の特集は「こんなときどうする? 術中・術後のトラブル対応」です。術中・術後に遭遇しうる身近なトラブルに対するエキスパートの対応法を学ぶ絶好の機会です。また,症例報告の原著3編も力作揃いです。新春の1月号です。新たな気持ちでお読みいただければと思います。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
90巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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