耳鼻咽喉科・頭頸部外科 89巻13号 (2017年12月)

特集 どこが変わった頭頸部がんTNM分類

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はじめに

 American Joint Committee of Cancer(AJCC)の“Cancer Staging Manual”ならびにUnion for International Cancer Control(UICC)の“TMN Classification of Management Tumors”第8版が発表された。近年の頭頸部がんに関する研究で解明されたことを反映し,より予後予測しやすく治療計画が立てやすくなるよう工夫したと述べられている。

 今回の変更のポイントは,咽頭がんにおいてHPV関連の有無で分類した点,N分類において節外浸潤の有無を追加している点,口腔がんのT分類において深さの概念DOI(depth of invasion)を加えている点である。

《各論》

口腔がん 朝蔭 孝宏
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POINT

●T分類にdepth of invasion(DOI)の概念が導入された。

●T4aから外舌筋浸潤の規定が除外された。

●N分類にextranodal extension(ENE)の概念が導入された。

●DOIは,外向型,内向型にかかわらず,プレパラート上で腫瘍の周囲の基底膜から腫瘍最深部までを計測する点に注意する。

鼻副鼻腔がん 坂下 智博 , 本間 明宏
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POINT

●N分類:リンパ節転移の被膜外進展(extranodal extension:ENE)による分類が加わり,臨床的N3を,N3a,N3bに,病理学的N2をN2a,N2b,N2cに,病理学的N3をN3a,N3bに分類することとなった。

●粘膜原発悪性黒色腫は,大きな変更点はないが,鼻副鼻腔がんとは異なる分類を用いる点に注意する。

●頭頸部原発の軟部肉腫の項目が新設された。組織学的グレード分類は,分化度,核分裂度,壊死の程度をスコア化して総合的に判断される。病期分類については現時点では設けられていない。

上咽頭がん 古平 毅 , 牧田 智誉子
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POINT

●T因子:側頭下窩の定義が変更された。T2に内外翼突筋浸潤,椎前筋浸潤が,T3に頸椎,翼状構造の骨浸潤が追加された。T4に耳下腺浸潤が追加となり,外側翼突筋の外側進展が定義された。

●N因子:N3a,N3bがN3に統一された。輪状軟骨尾側の下方進展がN3に定義された。

●病期(Stage)分類:旧ⅣAと旧ⅣBが新ⅣAとなり,旧ⅣCは新ⅣBとなった。

●解剖学的進展以外の予後因子の表が新設された。

中咽頭がん 中島 寅彦
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POINT

●HPV非関連(p16陰性)癌とHPV関連(p16陽性)癌が区別された疾患として記載された。

●HPV関連癌ではN分類,ステージ分類に大きな変更が加えられた。

●HPV非関連(p16陰性)癌のN分類に,節外進展(extranodal extention:ENE)が加えられた。

下咽頭がん 浅田 行紀
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POINT

●T,M分類の変更はなかった。

●N分類に関しては,臨床評価および病理評価ともに,大きさに加え,節外浸潤が評価基準に組み入れられた。

●臨床的なN分類では,臨床的節外浸潤ありの場合はN3bに分類され,病理学的なN分類では,単発性の節外浸潤のあるリンパ節転移がN2aに分類されることとなった。

喉頭がん 藤井 隆
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POINT

●T分類に関しては大きな変更点はない。

●他の部位と同様に,T0が削除された。

●N分類に関しては,他の部位と同様に,節外進展を考慮した分類となった。

●臨床的N分類と病理学的N分類に,相違点があることに注意が必要。

甲状腺がん 門田 伸也
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POINT

〈T分類〉

●T3のなかで甲状腺被膜内に限局し4 cmを越えるものをT3a,甲状腺被膜外へ微小進展(前頸筋のみ)するものをT3bと細分化した。

〈N分類〉

●上縦隔リンパ節への転移がN1aへ分類された。

〈病期分類—乳頭癌・濾胞癌〉

●基準となる年齢が45歳から55歳へ変更となった。

●T2 N0M0はⅡ期からⅠ期に変更となり,T3やN1(N1a・N1bともに)はすべてⅡ期に分類された。T4aはⅣA期からⅢ期へ変更となった。

●M1はⅣC期からⅣB期へ変更となった。

〈病期分類—未分化癌〉

●ⅣA期に分類されるのはT4a N0/1M0からT1/2/3a N0M0へ,ⅣB期に分類されるのはT4b N0/1M0からT1/2/3a N1M0もしくはT3b/4 N0/1M0へ,それぞれ変更となった。

唾液腺がん 大月 直樹
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POINT

●大唾液腺がんのAJCC/UICC新分類について解説した。

●T分類,M分類の変更はない。

●N分類に節外浸潤の有無が反映され,臨床的な節外浸潤のあるリンパ節が認められればN3bに分類される。

●病期(Stage)分類に変更はないが,N分類の変更により,臨床的に節外浸潤のあるリンパ節が認められればStage ⅣBに分類される。

原発不明がん 別府 武
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POINT

●頸部リンパ節から組織学的あるいは細胞学的に癌が証明されており,かつ組織検査にてHPV関連癌,EBV関連癌が否定された場合に原発不明頸部転移がんと定義された。

●N分類は,臨床的・病理学的にも転移リンパ節の節外進展を予後不良の強力な因子として捉えたものに変更された。

●被膜外浸潤(extra capsular spread:ECS)は節外進展(extranodal extension:ENE)に統一された。

●頸部郭清術を行う前に,理学的所見と画像所見からENEを判定することが必要となった。

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はじめに

 浅側頭動脈瘤症例は,国内外で約300例の報告がある。その多くは脳神経外科や皮膚科からのものであり,耳鼻咽喉科医には十分認識されていない。しかし,頭頸部外科の概念が定着した現在,頭頸部腫瘤を扱うわれわれにとって,本疾患についての認識をもつことは重要である。

 本疾患は,その発生原因から外傷性と非外傷性に分類されているが,その判断は病歴聴取のみでなされることが少なくない。病理学的に真性動脈瘤と診断されれば非外傷性であることが確定できるが,病理学的検査を行っていない報告や,病理学的検査と病歴聴取との照合が行われていない報告も多い。

 今回われわれは,稀な非外傷性側頭動脈瘤と確定診断できた1症例を経験したので,手術を含む臨床経過の詳細と,診断根拠となる病理所見について報告する。また,本症例に併存した腹部動脈瘤についても考察を加えた。

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はじめに

 Nerve integrity monitor(NIM)は,電気生理学的メカニズムによる筋収縮を指標に運動神経の同定を行うための機器で,昨今頭頸部領域での手術に頻用されている。筋強直性ジストロフィー症例は多系統疾患であり,全身麻酔の術中および周術期に循環器系,呼吸器系などにおいて多くの注意すべき点が指摘されている1)。そのため,筋強直性ジストロフィー患者の手術報告自体は散見される。今回われわれは,術前に筋強直性ジストロフィーが疑われた症例で,NIMによる術中顔面神経モニタリングで反応が得られなかった1例について若干の文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 唾液腺導管がん(salivary duct carcinoma:SDC)は,1978年Kleinsasserら1)により初めて報告されたが,乳がんに発生するductal carcinomaに類似しているといわれている。SDCは,唾液腺腫瘍WHO分類の1991年改定2)の際に腺癌から独立し,同分類の俎上に載った。臨床病理学的には高悪性に分類されており,一般に5年生存率は50%以下と報告されている3)。しかし,当科での治療経験を振り返ると比較的予後良好な症例も認められたため,その予後因子を模索してきたところ,HER-2(human epidermal growth factor 2)過剰発現と予後についての報告が認められた4-8)

 今回われわれは,当科で一次治療した唾液腺導管がんについて臨床病理学的に解析し,さらにHER-2過剰発現と生存率を後方視的に統計解析し,HER-2発現の違いが予後の予測に有用か否かを検討した。

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はじめに

 下咽頭梨状陥凹瘻は,第三咽頭囊,第四咽頭囊あるいは第五咽頭囊由来とされ,梨状陥凹から生じる先天性の内瘻である。化膿性甲状腺炎や頸部膿瘍の感染経路となると考えられており,繰り返す化膿性甲状腺炎や頸部膿瘍を認めた場合には梨状窩瘻を疑うべきとされている1)。化膿性甲状腺炎での甲状腺機能は正常であることが多いといわれている2-6)が,北野ら7)は,甲状腺機能の亢進を呈した下咽頭梨状陥凹瘻に伴った化膿性甲状腺炎症例を報告している。今回われわれは,下咽頭梨状陥凹瘻による化膿性甲状腺炎を伴った症例での甲状腺機能への影響を検討した。

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 近時,世の中は不安定でストレスが多く,生活習慣病も多く,そのうえ高齢者社会になり,めまい・平衡機能障害患者が増えている。これらの患者への対応として,病歴をよく聴いて自覚症状を知ると同時に平衡機能検査を行って他覚的所見を把握し,診断と治療をすることが必要である。検査には体平衡検査と眼運動(眼振)検査がある。前者で平衡障害の特徴を知り,後者で眼振や異常眼運動が出現すれば,それらの所見は病巣局在診断,病状の推移や治療効果判定に貢献することが大きい。

 従来,眼球運動異常は肉眼観察が主であったが,他覚的に記録することにより,記録として残るのみではなく定量的な検討を加えることが可能となった。この記録法として電気眼振計(electoronystagmography:ENG)がある。

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次号予告

あとがき 丹生 健一
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 「茹でガエルの法則」ってご存知ですか? カエルをいきなり熱湯に入れると驚いて飛び出すけれど,水に入れてゆっくりと熱すると水温の変化に気づかないうちに茹で上がって死んでしまうという寓話です。経営環境の変化に気づかず致命的な状況に陥ることへの警句としてビジネスの世界でよく用いられていますが,科学技術者や研究・医療に携わるわれわれにとっても重要な教訓です。長年,同じ組織に属していると次第に価値観・倫理観が茹で上がり,不正や規則の逸脱を繰り返しているうちに不誠実に鈍感になってしまう。神戸製鋼の検査データ捏造や使い捨て医療機器の再利用がよい例ですね。皆様の職場でも当てはまることはないですか? 茹で上がらないためには,いつも「家族に胸を張って話せますか?」と自分自身に問い掛けることだそうです。是非,お試しください。

 さて,今月号の特集テーマは「大きく変わったTNM分類」です。今回,舌がんのT分類に深部進展が加味され,p16陽性中咽頭がんが独立した疾患として取り上げられ,p16陽性とEBER陽性の原発不明がん頸部リンパ節転移がおのおのp16陽性中咽頭がん,上咽頭がんとして取り扱われることになるなど,UICCのTNM分類が大幅に変わりました。これに併せてわが国の『頭頸部癌取り扱い規約』も改訂され,2018年1月から院内がん登録や日本頭頸部癌学会が行っている癌登録は,新たなTNM分類に従って行われることになります。本特集では,各原発部位について,本邦を代表するエキスパートの皆様に改訂の要点とその意義や問題点について解説していただきました。日常臨床で頭頸部がんを取り扱われる先生方,専門医試験の準備をされている専攻医の皆様に是非,お目通しいただきたいと思います。

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基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
89巻13号 (2017年12月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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