われわれは,帝王切開瘢痕症候群の不妊原因は帝王切開子宮創部からのチョコレート囊胞の内容液に類似した出血が排卵期に子宮内腔に逆流するためと指摘してきた。出血は瘢痕深部にある内膜腺からであり,子宮内膜症(腺筋症)の関与が示唆される。
出血による子宮内膜への影響として,鉄の毒性や慢性子宮内膜炎が疑われるが定かでない。また,治療は内視鏡による切除であるが,腺筋症様の病態であり切除範囲の決定が難しい。そこで手術時に腹腔鏡用4 Kビデオシステムを硬性子宮鏡に接続し,帝王切開瘢痕症候群の子宮内膜・切除創部を観察した。通常の子宮鏡より精緻な画像が得られ,「内視鏡生体解剖学」というべき新たな手法により本症候群の解明・治療が進む可能性がある。