臨床整形外科 35巻12号 (2000年11月)

視座

100年を越えて残るもの 吉川 秀樹
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 20世紀もあと数カ月となり新世紀が間近に迫りましたが,19世紀末になされ,すでに100年を経た,ある医学・物理学界の大発見について,ここに紹介し,100年を越えて残るものとは何かを考えてみました.

 物理学者ウィルヘルム・コンラッド・レントゲン(当時50歳)は1895年の暮,ドイツのビュルツブルグ大学の研究室にて,未知の線(X線)が物質を透過し,本やアルミは透過するが,鉛は透過できないことを発見しました.即ち,この未知の線を使うことにより,その透過度の差により目に見えない体内の構造を像として写し出すことに初めて成功したのであります.妻の手の骨のX線写真を添えて,『新しい種類の線に関する研究,第一報』と題した論文を投稿し,1896年1月1日に出版されました.肺の写真ではなく,手の骨のレントゲンが最初の論文に掲載されたことは,われわれ整形外科医にとって感慨深いことであります.このセンセーショナルな発見に,『驚嘆すべき科学上の大発見』と称賛する学者,『神を冒涜するものである,人類を死の恐怖に陥れるものである』と中傷する者,『私は,もっと以前に実験中にX線を観察していた』といった妬み,様々な称賛,非難が世界中を交錯しました,新しい大発見というものは,いつもこのような経過をたどるのは避けられないようです.

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 抄録:過去10年間に当科で人工股関節全置換術を施行し追跡調査可能であった症例を脱臼群と非脱臼群に分類し,その臨床像を調査し,治療上の問題点について検討を行った.対象は79例87関節(男性7例,女性72例)で,手術時年齢は42~80歳(平均64歳)である.脱臼率は8.3%であった.術後可動域,ソケットの側方開角,引き下げ距離、骨頭中心位置に有意差は認められなかったが,ソケットの前方開角において,後方脱臼群と前方脱臼群および非脱臼群との間に有意差がみられた.手術進入路別にみると,脱臼率は前外側進入群,後方進入群それぞれ6.0%,16.2%で有意差は認められなかったが,後方進入群に多い傾向がみられた.また,後方進入群には極端な前方開角の異常を認める症例が含まれていた.後方進入の時は側臥位となり術中の骨盤の傾きが把握しにくいため,ソケットの設置(特に前方開角)に注意する必要があると考えられた.

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 抄録:椎間板変性に由来する脊椎変性疾患で頚椎の手術的加療を行った83例について,頚椎病変のみの群,腰椎にも変性疾患を合併するが腰椎手術を施行しなかった群、および腰椎に変性疾患があり腰椎手術も施行した群に分けて,画像および臨床的特徴について比較検討した.この際,病態の異なる靱帯骨化症や石灰化症は除外した.重複病変群は頚椎のみならず,腰椎にも多椎間の変性変化を認めた.頚椎または腰椎のどちらかに3椎間以上の椎間変性がある場合,他の部位にも病変を有している可能性が高かった.腰椎病変を合併した頚椎症性脊髄症は,合併のない群と比べて,術後JOA点数が低く,臨床症状の回復が悪かった.また,腰椎病変合併群では,術前下肢に髄節性の神経症状を呈する症例が多く,診断に有用である.治療方針としては,頚部脊髄症状に加え,下肢髄節性の神経症状が明らかな例では頚,腰椎同時手術も考慮される.

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 抄録:胸腰椎部における屈曲伸延損傷と破裂骨折の複合損傷の発生機序には定説がない.当科にて手術を施行した20例を対象に,損傷椎体の形態からその発生機序を検討した.破裂椎体はT12:7例,L1:12例,L2:1例であった.anterior columnは20例全例で減少しており,上下隣接椎の34.5~79.0%(平均58.3%)であった.middle columnは15例では減少していたが,5例では不変または増加しており79.4~104.3%(平均95.2%)であった.middle columnの高さが減少するほど骨片占拠率が大きく両者には負の相関があったが,middle columnが100%を越えて増加する例では,逆に骨片占拠率は増加していた.このことから,本症の発生機序は第一相に垂直圧縮力が,第二相に屈曲伸延力が作用する複合メカニズムが主体であると考えられた.

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 抄録:解離性運動麻痺の手術を施行せずに追跡した症例の臨床経過を調査した.23例を対象に徒手筋力テストで麻痺を経時的に評価し,臨床経過と年齢,麻痺の局在(近位型,遠位型),筋力,筋萎縮の有無との関係を調査した.MRIでは脊髄圧迫高位の分布,圧迫形態と麻痺の局在の関係を調査した.23例中,改善10例,不変12例,悪化1例であった.改善例は発症後平均10カ月(最長18カ月)で改善を示した.不変例は発症から20カ月以上追跡したが上肢麻痺に変化がなかった.悪化の1例は,発症から15カ月で索路症状が出現した.統計学的に改善不良な因子は筋萎縮を伴うものであった.脊髄圧迫高位の分布では,C3/4で圧迫を認める症例が近位型6例・遠位型なし,C6/7で圧迫を認める症例が近位型1例・遠位型8例であり,これら2椎間が両型の差を示していた.圧迫形態は多彩な像を呈し,本症に特異的な所見は見出せなかった.

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 抄録:1998年から1999年までの2年間に腸腰筋膿瘍4例に対するCTガイド下ドレナージを経験した.内訳は男性2例,女性2例で年齢は52~84歳であった.基礎疾患は糖尿病1例,慢性関節リウマチに合併した化膿性脊椎炎1例,腎細胞癌の腸腰筋浸潤1例,子宮癌摘出後の放射線照射1例であった.CTガイド下ドレナージ後,全例で腸腰筋膿瘍の消失が得られたが,糖尿病に合併した1例は併発したMRSA肺炎のため死亡した.起炎菌は黄色ブドウ球菌が2例,β溶連菌が1例であった,CTガイド下ドレナージの利点は,1)局所麻酔下に低侵襲で行える,2)エコー下よりも安全に,確実に穿刺できる,3)持続吸引用チューブの留置もできる,などがある.欠点は,1)腹部大動脈,下大静脈,腸管など重要臓器の損傷の危険性がある,2)放射線被曝がある,などがあるが,慎重に繰り返しCT撮影を行いつつ穿刺すれば臓器損傷は避けられる.

シリーズ 関節鏡視下手術―最近の進歩

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 抄録:われわれの施行している手関節ガングリオン根治術の手術手技とその成績について報告する.症例は23例(男性10例,女性13例)23関節(右14関節,左9関節),年齢は12~83歳(平均43歳).全例手関節背側中央に腫瘤を触れ運動痛を訴えていた.6カ月以上再発を繰り返した例は11例,初発例は9例,観血的に治療後再発した例は3例であった.術前検査としてMRIを行い,ガングリオンが舟状月状骨関節背側に接しているのを確認した.鏡視はⅠ・Ⅱ portalから行い,プローブやシェーバーはⅣ・Ⅴ portalから刺入する.ガングリオン例では舟状月状骨靱帯背側関節包付着部にガングリオンの基部が存在する.治療は関節鏡視下に確認したガングリオン基部を背側関節包と周囲の軟部組織を含めてシェーバーで切除した.全例にガングリオンの基部の切除が可能で経過も良好であった.手関節鏡の応用はガングリオンの発生部位がほとんど一定なことと,portalを工夫することで十分な視野が得られたことも有利な点であった.

整形外科philosophy

整形外科日常診療雑感 竹光 義治
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 医師になって44年,夢中で走ってきた整形外科号の車内で,近頃気づいたことの2,3を,自戒をこめて述べさせて戴きたい.独断と偏見,我田引水の誹りは覚悟である.

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 第26回日本整形外科スポーツ医学会は2000(平成12)年5月19日(金),20日(土)の2日間にわたって,東京・有楽町駅の側,東京国際フォーラムにおいて開催された.

 参加者は550名,4会場に分かれて活発な討議が繰り広げられたが,本医学会は毎年スポーツ医学の進歩と国民の健康や身体機能の向上のために開催されており,今回のテーマはまずスポーツ外傷と障害の予防,そして高齢者のスポーツ,身体障害者のスポーツ,学校スポーツを取り上げた.1つのシンポジウム,3つのパネルディスカッション,4つの教育研修講演に加え,潜水医学およびスポーツドリンクの効用についても討論し,一般口演も含め計140題の演題が発表された.初日には昨年に引き続きジョイントミーティングとしての第2回スポーツ用装具を考える会,また今回は,本医学会初の試みとして,2日目土曜日の午後を利用して市民公開講座を開催した.この中からいくつかのトピックを紹介する.

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 第33回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会は,ミレニアム2000年7月14日,15日の2日間,熊本市のニュースカイホテルを会場に開催した.

 学術集会が目指したことは,整形外科腫瘍学の20世紀の業績を踏まえて,21世紀へ向けての新しい展開の引き金とならんことであった.20世紀の業績とは,臨床病理学の進歩(骨・軟部腫瘍病理診断学の確立),画像診断学の進歩(治療効果判定を含めて),集学的治療法の確立と生命予後の向上(本邦での骨肉種5年生存率では,概ね70%までに向上してきたと報告されている),そして身体機能を保持した患肢温存手術法の普及などである.

整形外科/知ってるつもり

神経幹細胞 小川 祐人
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【はじめに】

 人間の脳には,1000億個以上の神経細胞,ニューロンが存在している.これらのニューロンは胎児期にその大部分がすでに形成されている.ニューロンには分裂能がないため,つい最近まで成人の脳においてはニューロンは決して補充されないものと教科書的には考えられてきた.従って,変性疾患や血管障害,外傷などによりニューロンが失われた場合,成人の脳においてはニューロンが再生されないため,脳機能をもとに戻すことは絶望視されていた.しかし,近年になり最初は齧歯類で,次いでサル2)や人間1)においても,成人の脳でも限られた場所のみではあるがニューロンの新生が起きていることが明らかとなった.また,1990年代に入り神経幹細胞の選択的培養法が確立され5),本来成人においてニューロンを新生していない脊髄にも神経幹細胞が存在することが報告された7).これらの報告を受けて,以前は絶望視されていた失われた脳機能の再生が内在性の神経幹細胞を活性化したり,外来性に補充することで可能になるのではという考えのもとに,神経幹細胞の生物学的性質や中枢神経系疾患に対する応用についての研究が近年盛んに行われるようになってきた.

 本稿では,このように将来の臨床応用という面で注目されている神経幹細胞について解説してみたい.

境界領域/知っておきたい

ゲノム解析 大河 昭彦
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【ゲノムとは】

 ゲノムとは,生物がその生体機能を維持するのに必要な最小限の遺伝情報のセットであり,生物の一組の染色体上の全塩基配列を指す.2倍体の真核生物では1個の細胞に含まれるDNA量の半分量に相当する.ヒトでは22本の常染色体と性染色体の上のDNA全塩基配列であり,3×109塩基対と推定されている.このゲノム上に約8~10万個と推定される遺伝子(実際にmRNA―メッセンジャーRNAに転写され,アミノ酸配列に翻訳されて,タンパク質としてはたらく部分)が散在する.ひとつひとつの遺伝子もいくつかのエクソンと呼ばれるmRNAに転写される部分に分かれて存在し,エクソンとエクソンの間にはイントロンと呼ばれる転写されない部分が存在する.ゲノムDNAに占める遺伝子の割合は,およそ5~10%と考えられる.

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 第16回Cervical Spine Research Society (CSRS)Europian Sectionが平成12年6月21~23日まで,イギリス,ロンドンのShaw Park Plaza Hotelで開催された.

 本学会はヨーロッパ各国の主要都市やリゾート地で行われるためか,参加者はヨーロッパ各国のみならずアメリカ,オーストラリア,インド等々世界各国から参加しており,世界各国の頚椎・頚髄疾患の治療について知ることができる.

整形外科英語ア・ラ・カルト・93

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●spondylitis (スポンディライティス)

 これはご存知のように脊椎炎である.脊椎はギリシャ語で“spondylos”であり,ラテン語は“vertebra”(ヴァーテブラ)である.病名や症状名の横文字は伝統的にギリシャ語を用い,解剖名はラテン語を用いる.そのため,脊椎炎は“spondylitis”となる.しかし,整形外科雑誌には,“vertebritis”を用いた文献もときどき見ることがあるという.このような誤用は一般外科の分野でも見られる.

 例えば,虫垂炎の炎症がひどく,盲腸にも炎症が波及しているとき,この徴候を盲腸炎という.盲腸は“cecum”(スィーカム)であるから,“cecitis”(スィカィティス)でよいという人もある.また,権威あるドーランド(Dorland)の医学用語辞典にも,この“cecitis”が記述されている.ところが,盲腸のギリシャ語は,英語読みで“typhlon”(ティフロン)であり,盲腸炎は“typhlitis”(ティフライティス)である.

ついである記・51

Cambridge 山室 隆夫
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 衆知のように,Cambridgeは英国でOxfordと並ぶ大学都市であるが,両都市の雰囲気はかなり異なる.Oxfordはmotor way (高速道路)が町のすぐ近くを走り,その近郊は近年急速に工業化が進んでいるが,Cambridgeはやや隔離された地理的条件にあるために今も田舎町ののんびりとした雰囲気を残している.

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 抄録:手指に生じた石灰化を伴った血管平滑筋腫の1例を報告する.症例は51歳,男性.左環指DIP関節掌側に無痛性の長径35mm弾性硬の半球状隆起性腫脹を認めた.単純X線像では左環指DIP関節掌側に境界鮮明な分葉状の石灰化像,骨シンチ像では,同部に集積があり,MRIではT1強調画像にて不均一な低信号,T2強調画像にて低信号と高信号の混在した境界明瞭な腫瘍陰影を認めた.以上の画像所見より骨外軟骨腫を疑い腫瘍の摘出を行った.手術所見では,腫瘍は指動脈の分枝が入り込み薄い線維性被膜に覆われ淡黄色を呈し,骨様硬で内部は分葉状構造を呈していた.病理組織所見は,血管壁の平滑筋束に連続して異型性を認めない平滑筋細胞が結節性に増生し,石灰化を伴う血管平滑筋腫であった.手指の指動脈から発生し石灰化を伴った血管平滑筋腫の報告は少なく,稀な症例であったと考えられた.

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 抄録:症例は16歳,男性.左手の脱力・シビレ,左手指伸展時のふるえを主訴に当科を受診した.左前腕以下の筋萎縮,左手指伸展・屈曲・外転筋力の低下を認めたが,他の神経学的異常はなかった.前屈位頚椎MRI像ではC4~6レベルで脊髄後方部分の拡大と脊髄の圧迫像を,脊髄造影では頚椎前屈時,同レベルの硬膜管の狭小化と後壁の前方移動を確認したが,これらの所見は頚椎後屈位では認めなかった.以上の結果,平山病と診断し,C5左椎弓切除とC4~6の後方固定術を行った.術中・硬膜外血管の増生・拡張がみられ,血管の病理組織所見は動静脈奇形であった.

 平山病では頚椎前屈により硬膜管が過剰に前方へ偏位し,慢性的な脊髄の圧迫が,脊髄前角に虚血性壊死をもたらすと報告されている.しかし,本症例から硬膜管の前方偏位の機序として,硬膜外血管異常の関与が示唆された.

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 抄録:腸腰筋膿瘍に併発した髄膜炎の1症例を経験したので報告する.症例は63歳の男性で糖尿病を治療中である.下腹部から鼡径部の痛みと発熱を主訴に受診,CTおよびMRIから腸腰筋膿瘍を早期に診断しえた.抗生剤投与,ドレナージなどにて治療を行い改善傾向にあったが,入院約2カ月後に意識レベルの低下と頚部硬直を認め,腰椎穿刺の所見から細菌性髄膜炎と診断した.抗生剤投与により治癒したと思われたが,約4カ月後,腰痛とともに髄膜炎を再発した.髄液中に多量の膿を認め,抗生剤に反応せず死亡した.腸腰筋膿瘍から髄膜炎をきたすことは稀で,過去の報告でも医原性のものや診断,治療の遅れによることが多い.また,髄膜炎を併発した場合,死亡率が高いため,腸腰筋膿瘍の早期診断と適切な治療により髄膜炎への移行を防止することが重要である.

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 抄録:発生部位が極めて稀な遠位橈尺関節に限局した滑膜骨軟骨腫症を経験した.症例は67歳,女性で,左手関節部の疼痛を訴えて来院した.症状は7年前よりあったが,放置していた.初診時,左尺骨遠位端に小豆大の腫瘤が触知され,同部に圧痛が認められた.手関節掌屈,前腕回外で疼痛が誘発された.単純X線像で尺骨遠位端周囲に計5個の腫瘤状陰影が認められ,遠位橈尺関節造影像により,腫瘤は遠位橈尺関節のみに限局していると診断した.手術は背側侵入で遠位橈尺関節包を切開し,遊離体の摘出と滑膜切除術を行った.組織診断は滑膜骨軟骨腫症であった.術後1年4カ月を経て再発はなく,機能的にも良好である.

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 抄録:骨に著しい骨欠損をきたした人工膝関節に対する再置換術の工夫を述べた.症例は71歳,女性.1983年,前医で変形性膝関節症に対し両側人工膝関節置換術を受けた.右膝の痛みと不安定性のため,1999年5月,再置換術目的で当科を受診した.X線写真では,右膝人工関節は大腿骨,脛骨側ともに完全に緩み,脛骨側は,顆部から骨幹部にかけての著しい骨吸収と骨セメントの破壊,約55mmの巨大な骨欠損を認めた.手術は,伸展機構を傷害せず広い展開を得るために,Whitesideのアプローチを用いた.大腿骨下端は,脛骨上端を形成しうる形態かつ良好な骨質であったため,これを90mm切除し脛骨に反転移植したうえ,京セラ社製Physio Hinge Kneeをセメント固定した.術後ROMは伸展0°,屈曲95°で疼痛なく歩行可能となった.骨欠損の補填法,展開,使用機種について考察した.

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 抄録:28歳の男性に発生した特発性骨粗鬆症を経験した.原発性骨粗鬆症は一般的に閉経後や老年期に起こり,これに起因する脊椎圧迫骨折は日常の診療でよく遭遇する疾患である.しかし,青年期の骨粗鬆症は非常に稀である.若年性骨粗鬆症の大部分は,性腺機能低下症や下垂体腫瘍などの内分泌疾患に続発した二次性の骨粗鬆症である.しかし,本症例では各種ホルモンの測定,負荷試験などを含む血液生化学的検査で異常はなく,また長期臥床やステロイド剤などの服薬の既往,タバコやアルコールなどの生活習慣などにも問題はなかった.ビタミンDやエストロゲン受容体遺伝子の多型性,免疫機構の関与などが推測されたが,現段階では続発性骨粗鬆症は否定的であり,特発性の骨粗鬆症であると考えた.

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 抄録:比較的稀な小児化膿性仙腸関節炎の1例を経験したので報告する.症例は12歳女性.腰部,左臀部,左股関節部痛を主訴に来院した.入院時の単純X線では腰椎,股関節に異常は認めず,6日目に施行したMRIにて左仙腸関節部にT1強調画像で低信号領域を認めた.7日目に施行した骨シンチグラフィーでは同部に異常集積像を認めた.化膿性仙腸関節炎は特徴的な臨床症状に乏しいこと等から,他の炎症性疾患との鑑別に難渋することが多く早期診断が困難であるとされている.発熱,腰部痛,臀部痛および股関節部痛を訴える患者の診断に本疾患も考慮に入れる必要がある.また,早期診断にMRIは骨シンチグラフィーに劣らず優れた感受性を示す検査法であった.

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 抄録:腱鞘線維腫による弾発手関節の1例を経験したので報告する.症例は36歳の男性.主訴は右中環指の痛み,右手使用時のひっかかり感である.右母示中指掌側の知覚低下を認め,手指の屈伸で激痛を伴い横手根靱帯部で轢音,弾発を認めた.矢状断のMRIにて,手指屈曲時にTl強調像で等信号,T2強調像で内部不整な高信号の紡錘状の腫瘍を手掌部に認めた.手術は手根管を開放し,中環指の深指屈筋腱に癒着している腫瘍を摘出した.摘出腫瘍の病理所見は腱鞘線維腫であった.術後速やかに症状は消失した.手指の運動による弾発手関節は,われわれが調べ得た限りでは自験例も含めて国内外で59例63手の報告があった.慢性滑膜炎によるものが30例と最も多く,腫瘍性疾患が24例で腱鞘線維腫によるものは11例と稀である.

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 抄録:足楔状骨に発症した骨端症の1例を経験したので報告する.症例は4歳の男児で,右足背部を打撲し当科を初診した.初診時の単純X線像にて、右中間楔状骨に濃淡陰影,辺縁不整像および扁平化を認めたため,骨折や骨端症などを疑い,MRI,骨・Gaシンチグラムを行った.MRI上,T1強調画像で中間楔状骨に一致して低信号領域を認め,シンチグラムでは同部位に異常集積像はなかったが,第3中足骨に高集積像を認めた.さらに,受傷後4週経過時の単純X線像では,中間楔状骨には変化はなかったが,第3中足骨骨幹部に仮骨形成を認めた.以上の結果より,右足背部の疼痛は第3中足骨骨折に起因するものであり,中間楔状骨のX線変化は,無症状の骨端症と診断した.このため,中間楔状骨に対しては定期的な経過観察のみ行ったが,骨修復は徐々に進み,2年6カ月後には単純X線およびMRIに認められた異常陰影は消失した.

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 抄録:稀な変形性距舟関節症の1例を経験したので報告する.症例は53歳女性で,誘因なく右足部痛が出現し徐々に歩行困難となった.初診時,外観上,扁平足を認め,右中足部背側に骨性の腫瘤を触知した.単純X線像では右足舟状骨外側1/2が著しく変形し,距骨頭部から頚部の骨硬化,距舟関節裂隙の狭小化,距骨と舟状骨の背側に隆起する骨陰影を認めた.断層撮影でも同様の所見と距骨,舟状骨,踵骨に骨嚢腫を認めた.骨シンチグラムでは病巣に一致した異常集積像を,MRI T1強調では距骨頭部から頚部に低信号領域を認めた.以上から変形性距舟関節症と診断し,腸骨からの骨移植による距骨楔状骨間固定術を行い良好な結果を得た.切除した距骨および楔状骨を病理組織学的に検索した結果,距骨頭部に骨壊死像を認めた.変形性距舟関節症およびその原因に関する報告は少ないが,われわれは本例に関しては病理組織的所見から距骨頭部壊死が原因と推察した.

基本情報

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臨床整形外科
35巻12号 (2000年11月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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