胃と腸 50巻6号 (2015年5月)

今月の主題 知っておきたいまれな胃疾患

序説

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 月1回東京で開催されている早期胃癌研究会では,しばしば“まれな病変”が提示される.しかしその多くは,“まれな疾患ではないが非典型的な形態を示す病変”,あるいは“疾患の知識や経験がないために珍しい病変にみえるが,知っている人にとっては容易に診断できる比較的頻度の低い疾患”である.疾患を正しく診断できないことは,取り返しのつかない事態に発展したり,長期にわたって患者に苦痛を強いる結果になりかねない.そのため,消化器病を専門とする医師は,消化管の“common disease”だけでなく,比較的まれな疾患やまれな病態に対しても正しく診断できる実力を身につける必要がある.しかし,一人の医師が頻度の低い疾患のすべてを実際に経験することは不可能である.そのためには日頃から症例検討会に参加したり症例報告に目を通したりして,提示されているさまざま疾患を数多く記憶にとどめて“疑似体験”しておくことが大切である.

 筆者は1981年より早期胃癌研究会へ参加するようになり,多くのまれな症例を“疑似体験”するとともに,画像所見を表現する言葉の言い回しを学んだ.参加して間もないころ,Cronkhite-Canada症候群の胃病変が提示されたことがあり,その数か月後に“スキルス胃癌か悪性リンパ腫のようにみえるが,生検しても診断がつかない”という症例が他院より紹介され,学内の症例検討会で提示された.出席した医師はそろって首をかしげていたが,筆者は早期胃癌研究会でみた症例とよく似ていたため,“Cronkhite-Canada症候群の可能性があるが,脱毛,爪の変形,低蛋白血症などはありませんか”と発言したところ,提示した医師は“たしかにあります”と答えた.周りにいた医師が誰も知らなかった疾患を言い当てることができ,大変気をよくした記憶がある.その後も何度か同様の経験をし,消化管形態学というのは疾患を知っているかどうかで大きく差が出ると痛感している.

主題

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要旨●まれな胃疾患は,病理学総論の立場から,腫瘍性と非腫瘍性に大別される.臨床的には,これらは胃に限局するものと全身性疾患あるいは他臓器疾患の部分症に亜分類される.まれな胃疾患の病理診断には,病理形態学的所見の他,さまざまな臨床情報が必要である.したがって,臨床医と病理医は緊密な連携および十分な意思疎通が不可欠である.

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要旨●まれな病変の中には,(1)本当にまれな疾患,(2)まれな疾患ではないが非典型像を示す病変,(3)疾患に対する知識や経験がないためにまれにみえる病変,の3つがある.初学者にとっては多くの病変が“まれ”に感じられるが,上級者になるほど“まれ”な疾患と感じる病変をみる頻度は低くなる.一人の医師があらゆる疾患を経験することは不可能なため,学会や研究会に積極的に参加したり,日頃から論文や雑誌を読んだりしてさまざまな疾患を“疑似体験”しておくことが大切である.自分自身が直接経験した疾患でなくても,“疑似体験”したことのある疾患であれば比較的容易に診断することができる.初めてみたような珍しい形態の病変に遭遇した場合,その多くは前述の(2)ないし(3)に相当する.さまざまなモダリティーを駆使して診断に迫ったり,上級者にコンサルトしたりする謙虚さが必要である.本当にまれな疾患に遭遇する機会は,極めて“まれ”である.

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疾患の概念

 一般的に,スキルス胃癌は,びまん浸潤性胃癌,4型胃癌,LP(linitis plastica)型胃癌などとほぼ同じ意味で用いられていることが多いが,スキルス癌とは,そもそも胃癌のみならず,病理組織学的に癌組織の間質に線維性組織増生が顕著な癌において用いられる用語である.すなわち,癌実質細胞に対して線維性組織から成る間質量が多い癌組織は視覚的にも硬さを感じさせるものであり,また実際に触っても硬いため,“scirrhous(英),skirrhos(希):硬性”と表現されている.また,4型胃癌とは,「胃癌取扱い規約」1)の肉眼型分類の中で,「びまん浸潤型:著明な潰瘍形成も周堤もなく,胃壁の肥厚・硬化を特徴とし,病巣と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの」と定義されている.一方,LP型胃癌については,中村ら2)が,病理組織学的表現であるスキルス胃癌の中に早期診断が困難で,肉眼的にleather bottle状(皮革製水筒状)あるいは胃全体が鉛管状狭窄状態となって発見されている極めて予後不良の一群の癌をLP癌であるとしている.

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疾患の概念

 低異型度分化型癌(超高分化腺癌)は,正常上皮に近い分化,もしくは腺腫に近い分化を示す癌,つまり超高度に分化した癌と定義される1).岩下ら1)は,低異型度分化型癌を,分化形態や形質発現の観点から,Table 1のように分類している.病理組織学的には細胞異型,構造異型に乏しく,幼若な再生上皮,腸上皮化生,過形成腺窩上皮,胃固有腺および腺腫との鑑別に注意を要する癌であると言える.肉眼的には,病変自体やその境界が不明瞭であったり,腺腫様であったりと,その組織像をよく反映していると言える.

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疾患の概念

 胃癌の中には,正常上皮に近い分化を示し,細胞異型や構造異型に乏しく,幼若な再生上皮や腸上皮化生,腺窩上皮や胃固有腺などとの鑑別が難しい癌が存在し,低異型度分化型腺癌や超高分化腺癌などと言われている.低異型度分化型腺癌は,形質発現の観点から胃型(胃腺窩上皮型,胃固有腺型),腸型,胃腸(混合)型に分類されるが,胃固有腺型のうち,胃底腺への分化を示すものを胃底腺型胃癌と呼んでいる.胃底腺型胃癌は2000年代後半になって初めて報告された新しい疾患概念で,まだ多数例での検討はないが,Helicobacter pylori(H. pylori)陰性胃癌のひとつとして,注目を集めている1)2)

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疾患の概念

 異所性胃腺(heterotopic gastric gland,heterotopic gastric mucosa)は粘膜固有層にあるべき胃腺組織が異所性かつ粘膜下に,切除胃の3.0〜20.1%で認められる.基本的には良性変化であるが,まれに悪性化しうる病態とされている1).先天説と後天説があり,後天説(H. pyloriによる慢性炎症など)が有力とされる.小児の切除胃では異所性胃腺が認められないのに対して成人の切除胃では20.1%に認められたという報告もあり2),単発性異所性胃腺なのか,びまん性なのかで成因が異なる可能性も考えられる.異所性胃腺が生じる機序として慢性炎症に加えてびらんと再生が繰り返されることによって粘膜筋板の破壊と乱れが生じ,再生した腺が粘膜筋板の間隙や欠損部を通って粘膜下層に波及するとされ,慢性炎症が癌化にも寄与している可能性が示唆されている3).病理学的には,(1)表層粘膜のびらん・再生性変化,(2)粘膜筋板の断裂,(3)粘膜筋板の断裂を通じた異所性胃腺と粘膜固有腺との連続性,(4)異所性胃腺周囲の平滑筋線維の粘膜筋板との連続性,が特徴的とされている4)5)

 Gastritis cystica polyposaはLittlerら6)により報告された切除胃に認められる腺窩上皮の過形成,腺の囊胞状拡張などを特徴とした吻合部病変であり,前癌病変であると考えられている.また,Franzinら7)はその後,粘膜下層に及ぶ囊胞状の拡張腺管を特徴的とする慢性炎症をgastritis cystica profundaと提唱した.その多くが切除胃,特にBillroth-II法再建術後に発生するとされてきたが,最近では非切除胃の報告例も増えている.切除胃における両者の発生機序としては吻合部の慢性炎症が成因と考えられてきたが,EBV(Epstein-Barr virus)陽性例がgastritis cystica profunda併発胃癌の発生に関与している可能性も指摘されており,極めて興味深い8)

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疾患の概念

 著明なリンパ球浸潤を伴う胃癌については1921年にMacCartyら1)により報告され,1968年に浜崎ら2)は“リンパ球浸潤を伴う髄様癌”と呼称した.1976年にはWatanabeら3)によってgastric carcinoma with lymphoid stromaとして報告されている.

 リンパ球浸潤癌(gastric carcinoma with lymphoid stroma ; GCLS)は「胃癌取扱い規約第14版」4)で低分化腺癌充実型から独立し,新たに特殊型のひとつとして取り扱われるようになった.取扱い規約では“癌細胞が,著明なリンパ球浸潤を背景にして,充実性,腺房状,あるいは腺腔形成の明らかでない小胞巣状に増生する低分化腺癌である.胚中心を伴ったリンパ濾胞の増生も特徴的である.粘膜内病変は分化型であることが多い”と定義されている.

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疾患の概念

 他臓器の悪性腫瘍が胃に転移することはまれな事象である.しかし,近年の悪性腫瘍に対する治療法の進歩はめざましく,今後は長期生存症例が増加していくことが予想され,転移性胃癌の臨床所見の特徴を理解しておくことは非常に重要であると考えられる.

 転移性胃癌の原発巣としては悪性黒色腫,乳癌,肺癌などが多いとされている1).本稿で解説する腎細胞癌は全身に転移を来しやすい疾患ではあるが,その転移先としては肺,肝,骨,脳などが多いとされており,腎細胞癌からの胃転移は極めてまれで,転移性胃癌全体の0.65%と報告されている2)

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疾患の概念

 他臓器原発の悪性腫瘍が胃に転移する転移性胃癌は比較的まれであり,国内の報告では剖検例の2.3〜5.9%に認められるとされる1)2).転移性胃癌の中では悪性黒色腫,肺癌,食道癌,乳癌からの転移が多いとされるが,日常診療において乳癌の胃転移を経験することはまれではある.一方で,乳癌(特に小葉癌)の胃転移は原発性胃癌と内視鏡的に鑑別が難しいことがあり,その場合,組織学的にも乳癌と診断することは極めて難しい.原発性胃癌と乳癌胃転移では治療方針が全く異なるため,乳癌胃転移を正しく診断することは非常に重要である.

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疾患の概念

 びまん浸潤型悪性リンパ腫は,腫瘍細胞が限局性腫瘤や明らかな潰瘍を形成しないまま,胃壁の広い範囲に全層浸潤した病態であり,特徴的なX線・内視鏡所見を呈する.胃悪性リンパ腫の肉眼分類として,佐野の分類(表層型・潰瘍型・隆起型・決潰型・巨大皺襞型)1)や八尾の分類(表層拡大型・腫瘤形成型・巨大皺襞型)2)が用いられることが多いが,びまん浸潤型は巨大皺襞型のうち広範囲に浸潤したものにほぼ合致する.中村ら3)による文献報告の集計によれば,びまん浸潤型悪性リンパ腫はMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫509例中62例(12%),高悪性度リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)261例中30例(11%)であり,比較的まれな肉眼型と言える.

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疾患の概念

 低悪性度リンパ腫には,MALTリンパ腫,濾胞性リンパ腫,マントル細胞リンパ腫の3種類があり,組織学的にはいずれも小型異型リンパ球の均一な浸潤を認めることが特徴である.しかし,マントル細胞リンパ腫の予後は,MALTリンパ腫や濾胞性リンパ腫に比較して一般に不良であり,“低悪性度”とはいえない.したがって,初回診断時には,各種免疫組織染色を行って,3者を正確に鑑別しておくことが重要である.胃に発生する低悪性度リンパ腫の大部分はMALTリンパ腫であり,濾胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫は比較的まれである.

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 成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma ; ATL)は,ヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I ; HTLV-1)が原因で発症する成熟型(末梢性)T細胞腫瘍である.ATLは末梢性T細胞リンパ腫であるが,容易に白血病化するので,白血病として報告された1).ATLは,Shimoyama2)によって急性型,リンパ腫型,慢性型,くすぶり型の4つの臨床病型に分類されている.

 ATLにおける消化管浸潤の頻度は高いものの,病変が消化管に限局するATLは,非常にまれである.そのため,ATLの臨床病型分類には他の非Hodgkinリンパ腫のような節外性リンパ腫の概念が取り入れられていない.消化管病変を有するATLは,白血病化しているときは急性型に分類され,白血病化がなくリンパ節病変と消化管病変の場合はリンパ腫型に分類される2).一方,胃などの消化管に原発するATLもまれに報告3)されているが,リンパ節病変がなければShimoyama分類2)では急性型に入る.

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疾患の概念

 髄外性形質細胞腫は骨髄以外の軟部組織にモノクローナルな形質細胞が増殖した状態であり,腫瘍性の形質細胞以外のリンパ系腫瘍細胞を混じないものと定義されている1).髄外性形質細胞腫は形質細胞腫(plasmacytoma)のうち3〜4%とまれであり,このうち胃原発性形質細胞腫は5%程度である2).一方,胃MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫は形質細胞へ分化する直前の辺縁層細胞由来のリンパ系腫瘍であり,約30%は形質細胞への分化を示すため,胃形質細胞腫と胃MALTリンパ腫は類縁疾患と考えられている3).形質細胞への分化を示す胃MALTリンパ腫は胃形質細胞腫と標準治療が異なるため鑑別が必要ではあるが,その鑑別は組織診断をもってしても難しく,両疾患はしばしば混同されている.

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 Kaposi肉腫(Kaposi sarcoma ; KS)は,HHV-8(human herpes virus-8)の感染によって生じる血管性腫瘍である.HIV(human immunodeficiency virus)感染者における悪性腫瘍で最も多く,CD4値の低下とともに好発するが,CD4値が500cell/μlと比較的高値でも発症することがある.また,HIV感染者におけるKS発症例の大半は男性の同性愛者である.KSは,HHV-8の生体内でのリザーバーであるB細胞から血管内皮細胞への感染によって発症するとされる.発生部位としては,皮膚が最も多く,全消化管,肺,リンパ節などに生じる.

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 グロームス腫瘍は,局所の血流や体温を調節する役割を持つ動静脈吻合叢から成る神経筋装置に由来する.一般に四肢末端の皮下に発生する有痛性の良性腫瘍として知られているが,まれに胃,食道,小腸の消化管にも発生する.医中誌で調べた結果,本邦では2014年末までに94例の報告がある,比較的まれな疾患である.

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 梅毒は性感染症のひとつで,感染から3か月までの第1期では,陰茎・外陰部の初期硬結,硬性下疳,所属リンパ節腫脹を来す.感染から3か月〜3年経過した第2期では,第1期の症状が消退し,皮膚紅斑やバラ疹の他,胃腸炎などが出現する.感染から3〜10年経過した第3期では,結節性梅毒疹,ゴム腫,大動脈炎が出現し,感染から10年以上経過した第4期では大動脈瘤,進行麻痺,脊髄癆,難聴,視力障害を来す.

 第2期ではスピロヘータ血症と,その代謝産物に対する血管アレルギーにより皮疹が形成される.これと同様の機序で,胃粘膜に粘膜疹が形成されると考えられている1)2)

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 肺外結核はHIV陽性の結核患者の約50%,HIV以外の結核患者の20%に生じるとされる.肺外結核の中でも消化管の結核は6番目の頻度とされ,比較的まれである.また,結核菌がリンパ組織に生着することから想像されるように,消化管での主な罹患部位は,大半がリンパ組織に富む回盲部である.胃は生来リンパ組織を欠いており,胃結核は消化管結核のなかでも非常にまれとされている.症状や内視鏡像は多彩で生検診断によるところも大きく,胃癌と誤診され手術を受けた報告が散見される.胃結核の典型例は幽門前庭部の小彎を中心とする難治性・多発潰瘍であり,進行すると幽門狭窄や壁肥厚を生じ,スキルス胃癌と鑑別を要する病変とされている.

 胃結核の感染経路は以下の4つが想定されているが,比較的結核の少ないわが国では(1)に由来する病変が多いものと思われる.

(1) 肺結核患者が感染痰を嚥下

(2) 粟粒結核での血行性転移

(3) 汚染された乳製品の摂取

(4) 直接浸潤

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 サルコイドーシスはリンパ節,肺,眼,心臓などの多臓器を侵す非感染性,原因不明の全身性疾患であり,病理組織学的には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とする.患者の90%以上は肺病変を有し,消化管病変は食道,胃,小腸,虫垂,大腸,直腸で報告例があるがまれである.消化管病変の報告例の大部分は胃病変であり,欧米では1936年にSchaumann1),また本邦では1960年に長村ら2)により初めて報告されたが症例数は少なく,筆者らが「医中誌」で検索(会議録を除く)しえた限りでは,2014年までの本邦での報告例は98症例である.

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疾患の概念

 胃蜂窩織炎はびまん性あるいは限局性の非特異的化膿性疾患で,広義には胃膿瘍も含む.成因により原発性,続発性および特発性に分類される.原発性は胃炎,胃潰瘍,胃癌あるいは異物に起因するもので,胃壁の損傷が関与すると考えられている.続発性は他臓器の感染巣から直接あるいは血行性,リンパ行性に炎症が波及するもので,心内膜炎,骨髄炎,膵炎,胆囊炎,中耳炎などに続発する.特発性は胃や他臓器に特別な病変を認めないものである.

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 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)はこれまで,術後の回腸囊炎やbackwash ileitisを除いて大腸に限局した炎症性腸疾患と考えられてきた.しかし近年になり,胃や十二指腸など上部消化管にも病変を合併した報告が増加している1)〜4).これらの病変はDUMI(diffuse ulcerative upper-gastrointestinal mucosal inflammation)5),UGDL(ulcerative gastroduodenal lesion)6)7)やGDUC(gastro-duodenitis with ulcerative colitis)8)などと呼ばれ,大腸炎に類似した胃・十二指腸粘膜のびまん性炎症で,UCと共通の免疫学的機序が発症に関与していると考えられている.さらにカプセル内視鏡(capsule endoscopy ; CE)や小腸バルーン内視鏡の発達により小腸病変の報告も散見されるようになっており9),UCや術後pouchitisの病態解明に向け関心が高まっている.

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 アミロイドーシスは,線維構造を持つ特異な蛋白であるアミロイド物質が諸臓器に沈着することによって臓器障害を来す疾患群である.沈着様式によって,全身性アミロイドーシスと限局性アミロイドーシスに分類される.

 沈着するアミロイドの種類から,消化管への沈着は主に全身性アミロイドーシスで認められ,消化管に沈着するアミロイド蛋白は,AL(amyloid light-chain)型,AA(amyloid A)型,TTR(transthyretin)型,Aβ2M(amyloid β2-microglobulin)型の4種類とされている.

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疾患の概念

 Cronkhite-Canada症候群(Cronkhite-Canada syndrome ; CCS)は1955年にCronkhiteとCanada1)によって初めて報告された,消化管ポリポーシスに脱毛,皮膚色素沈着,爪甲異常など外胚葉系の消化管外病変を伴う非遺伝性疾患である.その頻度はまれであるが,本邦からの報告が多く,全世界の3/4以上を占める.発症は中年以降に多く,やや男性が多い2)3)

 CCSの病因は不明であるが,発症誘因として身体的疲労,精神的ストレス,感染,薬剤や自己免疫疾患などが想定されている3).病態としては,消化管ポリポーシスと炎症性変化によって蛋白漏出性胃腸症と吸収障害が惹起される.本疾患は初発症状から,I型:下痢,II型:味覚異常,III型:脱毛・爪甲異常,IV型:食欲不振・全身倦怠感の4型に分類されるが,下痢を主徴とするI型が約60%と最頻であり,重度の栄養障害を伴うことが多い4)

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 若年性ポリポーシス(juvenile polyposis ; JPs)は,消化管に過誤腫である若年性ポリープ(juvenile polyp ; JP)が多発するまれな疾患である.1964年にMcCollら1)が大腸に多発する若年性ポリープを認める症例を報告して以降,本疾患は現在,大腸限局型(juvenile polyposis coli),胃限局型(gastric juvenile polyposis),全消化管型(generalized juvenile polyposis)に分類されている.

 弧発性の症例の報告2)もあるが,常染色体優性遺伝を示す家族性の症例が報告されており3),遺伝子変異としてはSMAD4もしくはBM-PR1A遺伝子変異の関与が知られている.特に,SMAD4遺伝子変異を認める症例では形質発現が顕著となることが知られている4)5).胃限局型のJPsでは高率に胃癌を合併することが知られており6),慎重な臨床対応を要する.

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 collagenous gastritisは,粘膜上皮下に10μm以上の肥厚したcollagen bandが存在し,粘膜固有層内に炎症細胞浸潤を有する疾患で,1989年Collettiら1)により初めて報告された.

 胃に限局し,小児・若年成人に多く,無症状あるいは心窩部痛,消化管出血による貧血を認めるタイプと,中高年に多く,慢性下痢を認めるcollagenous colitisと合併するタイプがある2).非常にまれな疾患であり,本邦での報告は7例3)〜5)のみで,いずれもcollagenous colitisとの合併は認めていない.

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疾患の概念

 IFP(inflammatory fibroid polyp)は,全消化管に発生しうる良性の非腫瘍性ポリープであり,胃では幽門腺領域(幽門前庭部)に好発する1).病理組織学的には,粘膜固有層深部から粘膜下層に及ぶ好酸球浸潤と小血管増生を伴う線維芽細胞類似の紡錘形細胞の増殖巣と要約される2).発生原因は不明であるが,腫瘍説,アレルギー説,炎症説が報告されている1)

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疾患の概念

 サイトメガロウイルス(cytomegalovirus ; CMV)はヘルペスウイルス科のDNAウイルスである.多くが幼少期に感染し,不顕性感染の形で生涯宿主に潜伏感染する.本邦では欧米に比べてCMV抗体陽性者が多く,成人の約90%が抗CMV抗体陽性と言われ,不顕性感染の割合が高い1)2).担癌患者や免疫抑制剤投与中の患者,AIDS(acquired immune deficiency syndrome)患者など易感染性宿主における日和見感染症として一般的であり,全身の臓器に感染症を惹起しうるが,消化管においても多彩な病変を呈することが知られている.消化管病変としては大腸,胃に多いとされるが,小腸炎や食道炎の報告もみられる3).一方,近年少数例ではあるものの,なんら免疫学的異常を持たないと考えられる健常成人においてもCMVによる上部消化管病変を発症したとする報告もあり,日常診療において念頭に置くべき疾患である.本稿ではCMV胃病変について概説する.

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要旨●患者は73歳,男性.早期胃癌ESD後の経過観察目的の上部消化管内視鏡検査で,胃体上部小彎に径6mm大の不整形陥凹性病変を認めた.辺縁隆起を有し,領域性のある不整形陥凹性病変であることから,癌と診断した.NBI拡大観察では,陥凹部と辺縁隆起部でそれぞれ異なる不整な表面模様が観察された.生検では,粘膜内に管状腺癌を認め,その腺管間に免疫染色像でchromogranin Aとsynaptophysinが陽性を示す小型異型細胞がみられたことから,endocrine carcinomaと診断し,ESDを施行した.最終病理診断は,endocrine carcinoma,6×4mm,Type 0-IIc,pT1b2(pSM2,600μm),ly1,v0,HM0,VM0であった.陥凹部では,内分泌細胞癌成分で占居されており,辺縁部では,腺癌成分と内分泌細胞癌成分が共存する所見を認めた.追加外科手術を施行したが,腫瘍の遺残はなく,リンパ節転移は認めなかった.

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はじめに

 胃潰瘍性病変を来す疾患は,良悪性含め幅広い.本稿では潰瘍だけでなく陥凹を呈する病変を含めて,早期胃癌,胃癌以外の悪性疾患,良性疾患の順でそれぞれの鑑別ポイントを提示する.

早期胃癌研究会

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 2014年9月の早期胃癌研究会は2014年9月17日(水)に笹川記念会館2F国際会議場で開催された.司会は丸山保彦(藤枝市立総合病院消化器内科),田中信治(広島大学大学院医歯薬保健学研究科内視鏡医学),海崎泰治(福井県立病院臨床病理科)が担当した.また,セッションの間に,第20回白壁賞,および第39回村上記念「胃と腸」賞の授与式が執り行われた.

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 2014年11月の早期胃癌研究会は2014年11月19日(水)に笹川記念会館2F国際会議場で開催された.司会は小山恒男(佐久総合病院佐久医療センター内視鏡内科)と永田信二(広島市立安佐市民病院内視鏡内科),病理は江頭由太郎(大阪医科大学病理学教室)が担当した.また,画像診断教育レクチャーは,大川清孝(大阪市立十三市民病院消化器内科)が「消化管疾患:診断と鑑別の進め方 大腸潰瘍性病変の診断と鑑別─2」と題して行った.

2015年1月の例会から 斉藤 裕輔
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 2015年1月度の早期胃癌研究会は1月21日(水)にニューピアホールで開催された.司会は斉藤裕輔(市立旭川病院消化器病センター),病理を八尾隆史(順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学講座)が担当した.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集

早期胃癌研究会 症例募集

学会・研究会ご案内

次号予告

編集後記 二村 聡
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 まず,本号の読後の印象はいかがですか.読者諸兄諸姉のなかには,いったいどこが稀有な疾患なのかとあきれ果てた方,言われてみれば確かに稀有な疾患ばかりだと思われた方,あるいは,自分が担当していたならそのようなアプローチはしないだろうと思われた方,もっとましな特集はないのかと不満を感じた方もいらっしゃるでしょう.

 タイトルに“知っておきたい…”とわざわざ付けた真の理由は,消化管疾患診療を標榜する限り,せめて,この程度は把握していただきたいという願いからです.本号に掲載された疾患は,この道数十年のベテランにとっては,さほど珍しくないかもしれませんが,消化管疾患診療に従事して間もない若手にとっては,未経験のものも数多く含まれていると推察されます.

基本情報

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胃と腸
50巻6号 (2015年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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