胃と腸 50巻5号 (2015年5月)

増刊号 早期消化管癌の深達度診断 2015

序説

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 通常内視鏡観察による深達度診断について,胃癌を中心に,私見を述べる.

 現在の深達度診断能を,ESD(endoscopic submucosal dissection)切除標本の病理診断レベルに近付けるには,以下の取り組みが必要であろう.

 (1)深達度診断には,見つけ出し診断や性状診断,範囲診断とは次元の異なる観察方法,考え方が必要である.ESD治療の可能性がある病変を発見したら,NBI(narrow band imaging)拡大観察終了後,もう一度,深達度診断のための観察を行う心構えが必要である.

 (2)臨床的立場からは現在の“ESD適応条件”には問題が多い.ESDの手技が向上し,多数のESD症例が蓄積された現在,診断に資する要因をもとに深達度診断ではなくESD適応条件の診断学の再構築が望まれる.

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要旨●早期消化管癌に対する深達度診断を行う際には,食道,胃,大腸という癌発生の場による違いを考慮して読影する必要がある.読影・診断すべき所見は,基本的には,隆起,びらん,潰瘍,粘膜の色調である.これらの基本形をもとに大きさと肉眼型を決定し深達度診断を行う.深達度診断の基本として,病変周囲の正常粘膜から読影を開始し,病変境界部の性状を読影した後に,病変の中央部に向かって順に読影を進めることが重要である.病変の中央部分からいきなり読影を開始することは,深達度診断を誤る原因のひとつとなる.(NBI)拡大内視鏡観察は通常観察による深達度の確定診断を目的として,または通常観察で疑問が生じた病変内の限局した部位の精査として行うべきである.同様に超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS)も通常観察や拡大観察を行ってもなお,確定診断が得られない場合に追加することが効率のよい深達度診断法と考える.

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要旨●消化管では癌の拡がりは解剖学的な壁構造である深達度で示される.深達度分類は,食道,胃,大腸のいずれも日本独自の分類が用いられていたが,現在ではTNM分類との整合性が図られている.また,早期癌では亜分類が行われ,浸潤距離の実測値による亜分類が用いられており,その変遷を概説した.浸潤距離という客観的な基準が示されたが,その測定にはさまざまな病理組織学的な問題点が残されている.浸潤距離を基準として用いるためには,計測方法をより明確にしていく必要がある.また,TNM分類との整合性をどのように図っていくのか,深達度に脈管侵襲を含めるかどうかについてもさらなる検討が必要と思われる.

各論 咽頭・食道

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要旨●食道表在癌の深達度亜分類の変遷について概観し,肉眼型と深達度との関連について,これまでに示された症例の蓄積から0-I型と0-III型は深く,0-IIb型は浅いという共通した結論を見い出した.これらはまた中・下咽頭表在癌についても同様の傾向がみられた.T1a-EPとLPMの間の線引きはシンプルで再現性のよい基準を用いる必要があるが,食道と中・下咽頭との整合性を考慮し,実臨床に役立つものという視点も重要と考えられ,病理と臨床との間で検討がなお必要と考えられる.拡大内視鏡観察による血管パターン変化について,病理組織像との対比は技術的に困難な点も多いが,病理と臨床の協力による今後の発展が期待される.

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要旨●当院における2002〜2014年の咽頭表在癌内視鏡治療例は,101例131病変であり,全例,上部消化管内視鏡検査中に発見された.発見方法は,最初の白色光観察が77病変(59%),NBI観察が45病変(34%),通常・NBI観察では不明で,別病変治療時のヨード染色による発見が9病変(7%)であった.咽頭表在癌131病変の病型は,0-I型 5病変(4%),0-I混合型2病変(2%),0-IIa型53病変(40%),0-IIa+IIb型 12病変(9%),0-IIa+IIc型5病変(4%),0-IIb型37病変(28%),0-IIc型14病変(10.5%),0-IIc+IIa型1病変(1%),2型類似2病変(1.5%)であり,隆起性病変が60%を占めていた.上皮内癌が106病変(81%),上皮下浸潤癌が25病変(19%)であり,上皮下浸潤癌のうち,0-I型2例と2型類似2例の計4例(15%)で脈管侵襲陽性であった.深達度診断の正診断率は,上皮内癌94.3%,上皮下浸潤癌では68%であり,平坦な0-IIb型,表面に凹凸のない0-IIa型,周囲に盛り上がりを伴わない0-IIc型が上皮内癌であったのに対し,上皮下浸潤癌は,丈が高い0-I型,隆起内に陥凹を伴う0-IIa+IIc型,辺縁隆起を伴う0-IIc型,2型類似など明瞭な凹凸を伴う症例であった.

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要旨●対象169病変のX線側面像所見を用いて食道表在癌の深達度診断における有用を検討した.(1)硬化像なし,(2)直線化,(3)陰影欠損に分けて,各深達度亜分類別の各側面像所見の頻度をみた結果,陰影欠損を指標としたpT1b-SM2,3癌の診断能は感度74.3%,特異度85.8%であり,従来の報告と同様に良好であった.さらに病型別に分けた感度,特異度は隆起型群が81.3%,78.6%,平坦・陥凹型群が68.4%,89.1%であり,両者の診断能に差はなかった.病変の側面像が管腔側へ凸にとなる伸展不良を示すか,直線化までにとどまるかを区別することは内視鏡的もしくは外科的治療方針の選択における有用な所見と考えられた.

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要旨●食道表在癌に対して内視鏡切除術(endoscopic resection ; ER)をした207例を対象に,通常内視鏡観察による深達度診断の精度について検討した.深達度亜分類別の正診率は,T1a-EP/LPM:91.2%(125/137),T1a-MM:66.7%(30/45),T1b-SM1:61.5%(8/13),T1b-SM2:83.3%(10/12)であり,全体での正診率は83.6%であった.浅読み例で最も多かったのは内視鏡診断:T1a-EP/LPMで病理診断:T1a-MMの61.1%(11/18)であった.浅読み例における病理組織学的所見は,粘膜筋板の圧迫や微小浸潤,またT1a-SM1では200μmまでのわずかな浸潤,脈管侵襲,導管内浸潤などであった.一方,深読み例で最も多かったのは内視鏡診断:T1a-MMで病理診断:T1a-EP/LPMの13例:81.2%(13/16)であった.肉眼型は,8例(61.5%)が0-IIa,IIcの混合型であった.深達度診断に画像強調観察,拡大観察が重視されるなか,通常観察による深達度診断精度の維持,向上も今後の重要な課題と思われた.

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要旨●食道表在癌の深達度診断に際し,さまざまなmodalityを駆使して行うことが重要である.井上・有馬分類を基盤に作成された日本食道学会拡大内視鏡分類による食道表在癌に対する深達度診断は正診率が高く,非常に有用な診断学である.特にB1血管は97.4%,B3血管は91.7%とともに正診率は90%を超え,特異度が高い.しかしB2血管の正診率は70%台であり,従来の通常観察に比べると高い傾向にあるものの,今後はB2血管の正診率をいかにして向上させるかが課題と思われる.さらに,B3血管の感度は40%台と低く,pSM2癌におけるB2血管の出現率が高いことを踏まえ,B2血管とpSM2癌との関連性を見い出すことが大切であると考える.また,病変内の血管形態の変化が最も高度な関心領域のほとんどが,病変全体の最深部を反映していたことより,拡大内視鏡による深達度診断は切除後の正確な病理診断,すなわち追加治療の適切な評価を行うために意義のある診断学と考える.

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要旨●高周波数細径超音波プローブ(以下,細径プローブ)による食道表在癌の深達度診断精度を,通常観察,拡大観察と比較検討した.通常観察,拡大観察,細径プローブによる深達度診断を行ったのち切除した52例を対象とした.EP/LPM癌では,通常観察と拡大観察で診断が異なる症例に細径プローブを加えると,深部浸潤の鑑別が可能となり有効であった.MM/SM1癌では,拡大観察は通常観察より感度がよいが,B2血管を示す症例に多数のSM2癌が含まれ,的中率が不良であることが問題である.細径プローブは拡大観察ほどの解像度はないが,massiveなSM浸潤を見逃さないことが特徴である.拡大観察はSM2癌の感度が低いことも弱点で,細径プローブは実際の腫瘍量を断面像として捉えることができるため正診率が高かった.細径プローブは表面構造と病変の形態に乖離がある病変,粘膜下腫瘍様の病変など,拡大観察が苦手とする領域を補完するものと考えられ,3者の特性を生かして用いることが大切である.

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要旨●Barrett食道癌において,術前深達度診断は治療方針の決定における重要な因子である.Barrett食道癌の深達度診断に用いるモダリティは,通常内視鏡検査,画像強調(IEE)拡大内視鏡,超音波内視鏡検査(EUS),X線造影検査などが挙げられる.通常内視鏡検査では病変の形態や大きさ,厚みや硬さ,色調などを観察する.凹凸のほとんどない0-IIb型や0-IIa型,基部に細いくびれを有する0-I型,浅く平滑な陥凹を有する0-IIc型は粘膜内癌を示唆する所見である.拡大観察では酢酸を用いたIEEが範囲診断や存在診断,組織型診断に有用である.EUSやX線造影検査も深達度診断の助けとなるが,本邦ではSSBE由来のBarrett食道癌が多く,食道胃接合部という局在のために詳細な観察が難しい症例も多い.

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要旨●内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)標本および手術標本の肉眼写真を用いて,早期胃癌の深達度診断に利用される肉眼所見の精度を検討した.いずれの肉眼型でも,粘膜下層浸潤を示唆する所見単独では特異度は高いが感度は低かった.しかし,所見を組み合わせて総合判断することで,特異度は高いまま感度が高くなった.特に特異度が高く粘膜下層への深部浸潤を示す所見は,隆起病変では“隆起頂部の陥凹”,癌巣内潰瘍のない陥凹主体病変では“台状挙上”であった.癌巣内潰瘍のある陥凹主体病変では“台状挙上”,“陥凹内無構造”,“ひだの癒合”で特異度が特に高かったが,所見の有無で腫瘍の粘膜下層浸潤距離には大きな差がなかった.早期胃癌の深達度診断は,用いる肉眼所見の特徴や限界を把握したうえで行う必要があると考えられた.

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要旨●胃癌の深達度診断をX線検査の視点から述べた.X線造影像による深達度診断では,癌浸潤によって生じた胃壁の肥厚と硬化といった癌浸潤に直接結びつく所見を“因果関係に基づく所見(癌浸潤の直接所見)”という.これ以外の画像所見で癌浸潤と統計的・間接的につながる所見を“相関関係に基づく所見(癌浸潤を間接的に推測する所見)”という.陥凹型胃癌では,胃壁の肥厚・硬化・粘膜ひだの形態などが癌浸潤との因果関係を示す所見である.隆起型胃癌は腫瘍が粘膜固有層で上方へ増殖し,因果関係に基づく所見を覆い隠すため深達度診断が難しい.そこで隆起型では,病変の大きさ・肉眼型(0-IIa型,0-I型あるいは1型)・組織型などの相関関係を示す所見も合わせて病変の深達度を推測する.X線造影像を用いた深達度診断には,描出された肉眼像と病理組織所見を関連づけることが重要である.

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要旨●早期胃癌の深達度診断において,白色光による通常観察は,必要不可欠な検査である.内視鏡による早期胃癌の診断は,スクリーニング検査による異常の拾い上げ,良・悪性の鑑別,精密検査による癌のstaging(範囲診断・深達度診断)の過程から成る.近年,普及している画像強調法による拡大観察は,良・悪性の鑑別,範囲診断に有用であるが,ハイリスク患者の絞り込み,スクリーニング検査での異常の拾い上げ,深達度診断において,通常観察は不可欠である.深達度診断は,通常観察とインジゴカルミン撒布による色素内視鏡検査によって,空気量を調整しながら,肉眼型,色調,病変の大きさ,表面・辺縁の性状を評価して診断する.隆起型(0-I型)では病変の大きさと基部の性状が重要な因子である.表面隆起型(0-IIa型)はM癌であることが多いが,大小不同の粗大結節や粘膜下腫瘍様の立ち上がり,丈の高い隆起を認める,中心陥凹がある,表面にびらん・発赤を伴う場合はSM浸潤を疑う.表面陥凹型(0-IIc型)ではSM癌の特徴として,深い陥凹,陥凹面の無構造化,陥凹内粗大隆起,台地状隆起,粘膜下膨隆が挙げられる.このうちUL(+)では,ひだの癒合と太まりがSM癌に重要な所見である.

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要旨●目的:拡大観察が深達度診断に応用され有用性が検証されているかを求めた.方法:一定のキーワードを用いPubMedで該当論文を検索し対象に用いた.対象文献のレビューを行いエビデンスレベルを求めた.さらに頻用されている所見について再現性を求めるために遡及的検討を行った.結果:3編の該当する論文が抽出された.拡大観察が深達度診断に有用であるということを高いエビデンスレベルをもって検証した研究成果を示した論文を認めなかった.コンセンサスも不十分であった.筆者らの遡及的検討の結果,再現性のある結果は得られなかった.結論:拡大観察の早期胃癌の深達度診断に対する有用性は未確立である.

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要旨●EUSによる正常胃壁の基本層構造と早期胃癌深達度診断の基本について述べ,さらに早期胃癌のEUS診断能について検討した.過去5年間に当センターで切除された早期胃癌1,601病変のうち,EUSが施行された568病変の描出不良率は11.6%(66病変)であった.また,描出不良例を除いた502病変でEUSおよび内視鏡検査の深達度診断能を肉眼型,深達度別に検討した.その結果,描出不良率はL領域で高かった.描出可能な病変では,EUSは7.2%で内視鏡診断の不一致を補正するのに有用であり,oversugeryを避ける観点からは,特に内視鏡診断SM2の病変にEUSを施行するのが有用と考えられた.

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要旨●十二指腸腫瘍性病変はまれな疾患であるため,十二指腸腺腫と早期癌との鑑別診断に関する知見は少ない.当院で経験した症例と既報を合わせた37例の内視鏡的所見を検討した.通常内視鏡観察による腺腫の特徴は,平坦〜隆起型の表面粘膜は微細顆粒構造を呈し,易出血性を伴う点であった.一方,癌では,結節状の表面構造を有した隆起性病変で,絨毛の白色化の分布が縮小化する点が特徴的であった.拡大内視鏡観察では,表面微細構造による鑑別は困難であるが,微小血管の不整像が癌に認められ,有効な鑑別手段であると言える.しかし,NBI拡大内視鏡観察に関する報告は少なく,現時点で両者を鑑別する手段はないため,さらなる知見の集積が必要である.

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要旨●pT1大腸癌363病変(陥凹型癌144病変,隆起型癌219病変)を対象として,肉眼所見とSM浸潤距離との関連を検討した.陥凹型pT1大腸癌において,SM浸潤距離と相関し,粘膜下層深部浸潤を示唆する有意な肉眼所見は,腫瘍径1cm以上,緊満感,2型進行癌類似形態,ひきつれ,台状挙上,粘膜下腫瘍様立ち上がり,深い陥凹,無構造化,強い発赤,平滑な陥凹縁,であった.一方,陥凹縁の不整はSM浸潤距離と有意な逆相関がみられ,浅い粘膜下層浸潤を示唆する有意な肉眼所見であった.隆起型pT1大腸癌において,SM浸潤距離と相関し,粘膜下層深部浸潤を示唆する有意な肉眼所見は,緊満感,ひきつれ,無構造化,白苔付着,強い発赤,であった.

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要旨●早期大腸癌の浸潤度を診断するためには,内視鏡検査と超音波内視鏡が主流になりつつある.ただし,従来行われてきた注腸X線造影検査は,病変の正確な大きさ,部位,全体像,側面像が描出可能であり,内視鏡検査にない利点を有している.さらに,デジタル化,flat panel detectorやCアーム装置の開発,バリウム製剤の改良などによりX線造影検査の描出能も向上しつつある.そこで,注腸X線造影検査を施行した早期大腸癌症例を提示し,注腸X線造影検査による深達度診断について肉眼型別に考察した.筆者らは,早期大腸癌の深達度診断において内視鏡検査で得られる情報と注腸X線造影所見を総合的に判断することが重要と考える.

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要旨●通常内視鏡観察による早期大腸癌の深達度診断において,大腸癌研究会「内視鏡摘除の適応」プロジェクト研究班の報告では,SM浸潤度1,000μm以上の指標となる内視鏡所見は,隆起型では,緊満所見,内視鏡的硬さ,凹凸不整,粗糙,皺襞集中,ひきつれ,弧の硬化である.表面型では,それらの所見に加えて,陥凹内隆起,陥凹内凹凸,強い発赤,台状挙上,空気変形なし,易出血性が指標となる.その他,深い陥凹,結節集簇様病変における陥凹などの所見もSM深部浸潤癌を反映する所見である.

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要旨●クリスタルバイレット染色下でのpit pattern観察による大腸腫瘍性病変の診断において,腺腫・Tis〜T1a癌鑑別質診断成績は正診率80%,癌診断の感度43.8%,特異度93.9%であり,癌の深達度診断に関しては正診率84.8%,T1b以深浸潤癌診断の感度77.4%,特異度89.6%であった.病変の洗浄や染色の必要性など,操作がやや煩雑であり,また粘液,病変からの出血などを原因とした染色不良により診断できない症例も存在するが,精度の高い診断手法である.通常観察やNBI拡大観察で癌が疑われ,何らかの治療を行う必要があるような病変に対してはpit pattern観察による質の精査および深達度診断を行うことが望ましい.ただし,pit pattern観察で得られた情報は病変表層という,ごく一部分の情報であることを念頭に置くことが大切である.

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要旨●NBI拡大診断(CP Type IIIB)のT1b癌に対する診断能は,pit pattern診断(invasive pattern)と比べて,感度は同等(84.8% vs. 85.6%)であるが特異度が低い(88.7% vs. 99.4%).これは臨床的観点からすると,NBI拡大診断(CP Type IIIB)はT1b癌と診断したときにoversurgeryとなりやすいことを意味しており,現状では,より特異度の高いpit pattern診断が深達度診断のgold standardと言えるだろう.

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要旨●EUSは病変の垂直断面を直接観察する方法で,癌の深達度を客観的に評価することができる.EUSを行う際には既に内視鏡による診断がなされており,通常EUSは内視鏡診断の確証作業となる.早期大腸癌の深達度診断に際して最も重要なポイントは,内視鏡治療が可能な病変かどうかを診断することである.SM浸潤度1,000μmを超える病変か否かを判定するのが理想であるが,基準となる粘膜筋板の描出が普遍的ではないため,実際にはM〜SM微小浸潤癌かSM深部浸潤癌かを診断する.SM深部浸潤癌かどうかを確定できない場合は,内視鏡治療の先行(病理結果をみて追加治療を決定)も選択肢のひとつとなるため,SM最外層が保たれているかどうかを判定できるEUSの意義は大きい.

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要旨●EC(endocytoscopy)では,約400倍までの超拡大観察により生体内で核や細胞が観察可能であり,ECを用いたNBI(narrow band imaging)観察(EC-NBI)では,血管内を流れる赤血球の動態など詳細な微細血管の観察が可能である.ECを用いた腫瘍血管の評価により,腫瘍の脈管侵襲の評価の可能性について検討を行った.腫瘍血管の評価に当たり,4本の異なる腫瘍血管の平均径を腫瘍血管径,単一血管における最大径と最小径の差を最大径で除したものを腫瘍血管径変化率と定義した.対象とした深達度T1〜T3の87病変のうち,静脈侵襲陰性腫瘍は51病変,静脈侵襲陽性腫瘍は36病変,またリンパ管侵襲陰性腫瘍は64病変,リンパ管侵襲陽性腫瘍は23病変であった.脈管侵襲の有無について,深達度別に腫瘍ごとの腫瘍血管径と腫瘍血管径変化率を検討したところ,T1での腫瘍血管径は静脈侵襲陰性腫瘍で30.4μm,静脈侵襲陽性腫瘍で39.3μm(p=0.01),リンパ管侵襲陰性腫瘍で32.2μm,リンパ管侵襲陽性腫瘍で37.0μm(p=0.045)であった.またT1,T2,T3のいずれの深達度においても,腫瘍血管径変化率は静脈侵襲陰性腫瘍より陽性腫瘍において大きくなる傾向がみられた.本検討では,特にT1腫瘍における脈管侵襲陽性腫瘍では,脈管侵襲陰性腫瘍と比べて腫瘍血管径が大きく,腫瘍血管径変化率が高い傾向がみられた.このことから,ECによる腫瘍血管径の詳細な評価が脈管侵襲のリスクを予測できる可能性が示唆された.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集

早期胃癌研究会 症例募集

次号予告

編集後記 山野 泰穂
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 今回の増刊号では「早期消化管癌の深達度診断2015」とのテーマで企画され,全消化管にわたって執筆された.

 深達度診断としては14年前にも36巻3号(2001年)「消化管癌の深達度診断」で企画され,X線造影検査,内視鏡検査,EUS検査に関して当時の先端を走っていた諸先生方が寄稿していた.またその後も42巻5号(2007年)「消化管の拡大内視鏡観察2007」,44巻4号(2009年)「早期胃癌2009」,45巻5号(2010年)「早期大腸癌2010」,46巻5号(2011年)「食道表在癌2011」などの各増刊号や通常号でも深達度診断に関して触れられてきた経緯があるが,本号はあらためて現時点での集大成ともいえる内容となっており,特に咽頭表在癌,Barrett食道癌,早期十二指腸癌にも言及していること,IEE拡大観察に関する知見が各臓器でも触れられていることが特筆される.

基本情報

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胃と腸
50巻5号 (2015年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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