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疾患の概念
異所性胃腺(heterotopic gastric gland,heterotopic gastric mucosa)は粘膜固有層にあるべき胃腺組織が異所性かつ粘膜下に,切除胃の3.0〜20.1%で認められる.基本的には良性変化であるが,まれに悪性化しうる病態とされている1).先天説と後天説があり,後天説(H. pyloriによる慢性炎症など)が有力とされる.小児の切除胃では異所性胃腺が認められないのに対して成人の切除胃では20.1%に認められたという報告もあり2),単発性異所性胃腺なのか,びまん性なのかで成因が異なる可能性も考えられる.異所性胃腺が生じる機序として慢性炎症に加えてびらんと再生が繰り返されることによって粘膜筋板の破壊と乱れが生じ,再生した腺が粘膜筋板の間隙や欠損部を通って粘膜下層に波及するとされ,慢性炎症が癌化にも寄与している可能性が示唆されている3).病理学的には,(1)表層粘膜のびらん・再生性変化,(2)粘膜筋板の断裂,(3)粘膜筋板の断裂を通じた異所性胃腺と粘膜固有腺との連続性,(4)異所性胃腺周囲の平滑筋線維の粘膜筋板との連続性,が特徴的とされている4)5).
Gastritis cystica polyposaはLittlerら6)により報告された切除胃に認められる腺窩上皮の過形成,腺の囊胞状拡張などを特徴とした吻合部病変であり,前癌病変であると考えられている.また,Franzinら7)はその後,粘膜下層に及ぶ囊胞状の拡張腺管を特徴的とする慢性炎症をgastritis cystica profundaと提唱した.その多くが切除胃,特にBillroth-II法再建術後に発生するとされてきたが,最近では非切除胃の報告例も増えている.切除胃における両者の発生機序としては吻合部の慢性炎症が成因と考えられてきたが,EBV(Epstein-Barr virus)陽性例がgastritis cystica profunda併発胃癌の発生に関与している可能性も指摘されており,極めて興味深い8).
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