胃と腸 48巻8号 (2013年7月)

今月の主題 非腫瘍性大腸ポリープのすべて

序説

大腸ポリープ雑考 菅井 有
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大腸ポリープの分類

 大腸ポリープが病理学的に種々の疾患カテゴリーで構成されていることは消化器の専門医であれば誰でも知っている.そしてこれらに共通するのが,大腸内腔に向かって限局性に隆起する病変,という肉眼的形態であることもコンセンサスがとれているものと思われる.しかしながら,筆者がこの序説を書くに当たって,いくつかの書物を調べてみたが,“取扱い規約”にも“ガイドライン”にも“WHOのテキスト”にも独立して大腸ポリープの分類は取り上げられていない.

 一方,世界的なテキストである「Morson and Dowson's Gastrointestinal Pathology」1)には大腸ポリープの分類が提示されていた.その分類に若干の改変を加えた分類をTable 1に挙げた.この分類をみると,誠に多くの病変が大腸ポリープを構成していることがわかる.もちろんこの分類も完成されたものではなく,今後もいくつもの病変がこの中に加わることになると思われる.

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要旨 従来,単に非腫瘍性病変と考えられていた過形成性ポリープ(hyperplastic polyp ; HP)の概念は変遷し,TSA(traditional serrated adenoma)への移行やSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)を介して癌化する可能性があることがわかってきた.HPとSSA/Pは病理学的に明瞭に分けられ,SSA/Pのみを治療することが理想的であるが,実際の臨床において,両者の鑑別を内視鏡検査中にリアルタイムで行うことは,現状では困難である.そのため,HPおよびSSA/Pの治療は,病変の部位(右側,左側)と大きさで決定するのが簡便で実用的であり,具体的な治療指針を提示したい.

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要旨 大腸鋸歯状病変は現在のWHO分類(2010)では,(1) 過形成ポリープ(hyperplastic polyp ; HP),(2) 鋸歯状腺腫(traditional serrated adenoma ; TSA),(3) 広基性鋸歯状腺腫/ポリープ(sessile serrated adenoma/polyp ; SSA/P)に分類され,さらにHPはMVHP(microvesicular HP),GCHP(goblet cell-rich HP),MPHP(mucin-poor HP)の3型に亜分類されている.HPは男性に多く,S状結腸・直腸に好発する5mm以下の扁平隆起であり,癌化の危険はないと考えられているが,MVHPは高率にBRAF遺伝子変異を伴いSSA/Pの前駆病変と考えられ,GCHPはK-ras遺伝子変異をしばしば伴うが腺腫や癌との関連は不明である.MPHPはまれでありMVHPや腺腫に再生性変化が加わったものと考えられている.なお,過形成/鋸歯状ポリポーシスは癌化の高危険群と認識しておく必要がある.

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要旨 非腫瘍性病変である過誤腫は比較的まれな疾患であり,その病態については不明な点が多く,病変の診断に際し鑑別に苦慮する症例も存在する.若年性ポリープは直腸およびS状結腸に好発し,有茎性の強い発赤調で,びらんを伴い,上皮は剝離することが多い.表面構造は,開大した類円形,管状,星芒状など多彩なpit patternが疎に観察される.鑑別疾患として炎症性筋腺管ポリープがあるが,臨床症状や内視鏡所見も若年性ポリープと類似しており,鑑別が困難である.Peutz-Jeghers型ポリープはS状結腸に好発し,有茎性または亜有茎性の発赤調から白色調を呈する.表面構造は,類円形,管状,星芒状など多彩なpit patternが観察され,散在性に小型の蕾状や脳回状のやや腺開口部が開大したpitが認められた.鑑別疾患として,腺腫は通常観察および拡大観察においても類似した所見を呈することが多い.hamartomatous inverted polypは横行結腸から肛門側に存在し,正常粘膜で覆われた隆起性病変で有茎性または粘膜下腫瘍様形態を示す.拡大観察では軽度開大したI型の均一なpit patternが観察される.鑑別疾患として,粘膜下腫瘍様形態を示す病変やcolonic muco-submucosal elongated polypが挙げられる.自験例での検討を含め臨床像や内視鏡所見について概説したが,過誤腫は多彩な内視鏡像を呈することを認識しておく必要がある.

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要旨 大腸の過誤腫性ポリープである若年性ポリープとPeutz-Jeghers型ポリープについて,臨床病理学的に検討した.ポリポーシス症例は除き,若年性ポリープ56症例60病変,Peutz-Jeghers型ポリープは4症例4病変を対象とした.臨床病理学的な特徴は,いずれのポリープともこれまでの報告と同様であった.病理組織学的には,Peutz-Jeghers型ポリープに比べ,若年性ポリープはinflammatory myoglandular polyp,炎症性ポリープ,mucosal prolapse syndromeなどの鑑別すべき病変が多く,組織学的な特徴を的確にとらえて診断することが必要である.

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要旨 広義の炎症性ポリープには炎症性疾患を背景に形成されたポリープと炎症細胞浸潤や肉芽組織によって構成されるポリープが含まれる.本稿では,炎症性腸疾患に伴う炎症性ポリープ,肉芽性ポリープ,化膿性肉芽腫,若年性ポリープ,inflammatory myoglandular polyp,inflammatory cloacogenic polyp,inflammatory fibroid polypにつき,それぞれの概念,病理組織学的特徴,内視鏡所見について述べた.特に若年性ポリープ,inflammatory myoglandular polypは過去の報告では混同されている可能性があり,資料の見直しが必要と考えられる.

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要旨 非腫瘍性大腸ポリープは,過形成性,過誤腫性,炎症性などに分類される.炎症性大腸ポリープは,炎症性腸疾患を背景粘膜に有する狭義の炎症性ポリープと,背景に炎症性腸疾患がないが病変自体に炎症性変化がみられる広義の意味での炎症性ポリープが存在する.本稿では,両者を炎症性ポリープとして取り扱った.日常診断上問題となる広義の炎症性ポリープの頻度は,内視鏡的に摘除されたポリープの内4.2%と,頻度的には少ない病変であった.狭義の炎症性ポリープと広義の炎症性ポリープの各種典型病変を,その組織像を中心に解説した.また,粘膜および腸管壁自体には炎症性変化がないものの,周囲臓器の炎症性変化に伴いポリープ病変が出現する疾患もみられ,その病変についても解説した.炎症性ポリープの病理診断の際には,組織学的特徴を熟知していることはもちろんであるが,病変の分布や大きさ,経時的な推移,憩室や他疾患の有無などの臨床情報も極めて重要である.

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要旨 囊胞状に拡張した腺管や炎症性間質を特徴とする弧発性の非腫瘍性大腸ポリープの診断は,内視鏡的にも病理組織学的にも混乱している部分があると思われる.本学附属病院および関連施設で内視鏡切除により得られた弧発性の炎症性間質を認める大腸ポリープ77例〔IMGP(inflammatory myoglandular polyp)36例,弧発性若年性ポリープ10例,“いわゆる弧発性炎症性ポリープ”31例〕を対象とした.IMGPは,病理組織学的には過形成性腺管と囊胞状に拡張する腺管,炎症性間質,ポリープ基部の平滑筋の挙手状増生が特徴的な所見であった.一方若年性ポリープ,“いわゆる弧発性炎症性ポリープ”には,上記の所見のうち,過形成性腺管,ポリープ基部の平滑筋の挙手状増生はほとんどみられなかった.粘液形質は,いずれのポリープにも胃型形質を含む例が多く,腺管単位でp53過剰発現の頻度には差異は指摘できなかった.IMGPは,臨床病理学的のみならず病理組織学的にも他のポリープとは異なった特徴を有しているポリープと考えられた.

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要旨 非腫瘍性大腸ポリポーシスは腫瘍性病変に比して頻度は低いが,多彩な疾患が含まれる.遺伝性ポリポーシスと非遺伝性ポリポーシスに大別され,それぞれ特徴的な形態や分布をとるため,内視鏡所見が診断の決め手となることが多い.非腫瘍性大腸ポリポーシスは大腸以外の消化管や消化管外臓器に病変が生じたり,消化管ポリープが腸重積や腫瘍を合併したりする場合があるため,患者を検査・診療する前にあらかじめその疾患に精通しておく必要がある.

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要旨 大腸の過形成性ポリープ(hyperplastic polyp ; HP)は元来,非腫瘍性ポリープとして取り扱われてきたが,近年,臨床病理学的,分子生物学的な多方面からの検討により,鋸歯状腺腫との関連が指摘されている.当センターにおいて,右側結腸に存在するHPで,拡大内視鏡観察後に内視鏡的切除を行った44病変をMVHP(microvesicular HP)群,GCHP(goblet-cell rich HP)群,MPHP(mucin-poor HP)群に亜分類し,その臨床病理学的,分子生物学的特徴について検討した.その結果,MVHP群の一部では存在部位やpit pattern,遺伝子背景においてSSA/P(sessile serrated adenoma)と相似性を示し,SSA/Pへ発育進展する可能性が示唆された.一方で矛盾点も存在し,また他のHPについてはまだまだ不明な点も多く,さらなる症例の蓄積とtranslational researchを通じた検討が望まれた.

グラフ

cap polyposis 赤松 泰次
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概念・病態

 cap polyposisは,1985年にSt. Mark's Hospitalの病理医であったWilliamsら1)によってはじめて報告された,特徴的な臨床所見,内視鏡所見,病理組織所見を有する比較的まれな大腸の慢性炎症性疾患である.従来,大腸の運動機能異常に伴う慢性的な機械的刺激が原因で,直腸粘膜脱症候群との異同が問題視されてきた2).しかし近年,H. pylori(Helicobacter pylori)除菌療法によって劇的に治癒した症例が報告され3)4),H. pylori感染との因果関係が示唆されているが,その機序については不明である.病変部にはH. pyloriは存在せず4),H. pylori感染に伴う何らかの炎症性サイトカインの関与が示唆されており4),特発性血小板減少症と同様にH. pylori感染症による胃外病変の可能性がある.

 発症年齢はさまざまで好発年齢はなく,男性に比べて女性が多い2)5).臨床症状は粘液下痢や粘血便を主訴とする患者が多く,下腹部痛やテネスムスを訴える場合もある5).病勢とほぼ一致して病変部より蛋白漏出を来し,しばしば低蛋白血症を認める2)5).一般に,CRPや血沈値といった炎症反応は陰性である.病変部を内視鏡的あるいは外科的に切除するといったんは軽快するものの比較的短期間に再発することが多い5)

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概念・病態

 大腸において観察されるポリープにおいて,真武ら1)は,肉眼的には正常粘膜で覆われ,病理組織学的には粘膜下層が静脈とリンパ管拡張を伴う浮腫状の上皮結合組織を呈する細長いポリープをCMSEP(colonic muco-submucosal elongated polyp)と呼称することを提唱した.本稿ではCMSEPの臨床,内視鏡および病理組織学的所見について述べる.

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概念・病態

 IFP(inflammatory fibroid polyp)は消化管の粘膜下に発生する良性の疾患である.1920年にKonjetzny1)が,消化管に発生する原因不明の好酸球浸潤を伴う肉芽腫性病変を,polypoid fibromaとして報告したのが最初である.その後,さまざまな名称で報告されてきたが,1953年にHelwigら2)が好酸球浸潤のみにとらわれず炎症反応の反応性増殖の結果としてポリープ,隆起型を呈するものを“inflammatory fibroid polyp”と命名し,以降この名称が広く用いられている.

 成因は,反応性の炎症性ポリープ様病変とする炎症説が最も有力で,現在では非腫瘍性ポリープの中に分類されている.近年,血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRA)遺伝子の機能獲得性突然変異の関与が示唆されている3)

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概念・病態

 pyogenic granulomaは1897年にPancetら1)により初めて報告されたポリープであり,膿原性肉芽腫,化膿性肉芽腫,肉芽組織型血管腫(granulation tissue type hemangioma),lobular capillary hemangioma2)~4)などと呼称される.pyogenic granulomaは皮膚に多くみられ,消化管では口唇,歯肉,舌など,次いで食道の報告が多い.その他,小腸の報告は散見されるが,大腸の報告はまれである.大腸のpyogenic granulomaは,血便や貧血を契機に発見されることが多い.

 病理組織学的には,表層は毛細血管の増生と拡張が著明で炎症細胞浸潤を伴った肉芽腫性の病変であり,基底部は毛細血管内皮細胞の増殖が小葉状構造を示す(Fig. 1).病変の時期によっても病理組織像が異なり,幼若なうちは毛細血管の拡張と増生が著明で柔軟性に富むが,慢性化すると線維化組織に変化していくと言われている.また,pyogenic granulomaの表面の白苔は,炎症細胞浸潤を伴った肉芽組織の過剰増殖が生じた血管の炎症性の滲出物とされる5)~11)

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概念・病態

 inflammatory myoglandular polypは1992年,Nakamuraら1)により提唱された非腫瘍性炎症性の大腸ポリープである.明確な原因は不明であるが,微小な過形成性病変に慢性の刺激が加わって病変が形成されると思われる.発症は若年者から高齢者まで報告があるが,平均年齢は50歳代で男性に多い.発見の契機は便潜血陽性と血便が半数を占め,出血が主な症状である.過去に癌化の報告はない.発生部位は直腸から左側結腸がほとんどであるが,回腸末端2)や上行結腸3)の報告もある.病理学的には,炎症性肉芽組織様の粘膜固有層内に囊胞状拡張を伴う過形成腺管と粘膜筋板由来の平滑筋の放射状増生がみられる.病理学的詳細は別稿,菅井論文を参照いただきたい.

肉芽ポリープ 大瀬良 省三 , 池松 弘朗
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概念・病態

 肉芽は,創傷治癒の過程で,組織の欠損部に線維化組織の修復が形成される病態である.肉芽ポリープは,被覆上皮・腺管構造を有さない,肉芽組織の増生から成る非腫瘍性の隆起性病変と定義され,肉芽組織が異常増殖し,粘膜上に突出したものと考えられている.通常,外界との接触に乏しい大腸内で,肉芽組織のみで形成されるポリープが生じることはまれである.

 内視鏡切除後の粘膜に発生したり,腸管切除後の吻合部に自動吻合器の針や縫合糸などが原因で発生したりすることが多く,これらの病歴がないかを確認することが必要である.

inverted hyperplastic polyp 松下 弘雄
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概念・病態

 IHP(inverted hyperplastic polyp)とは,粘膜下層側に発育進展するhyperplastic polypの特殊型として1985年にSobin1)により命名,報告された.病理学的特徴は鋸歯像構造の呈する過形成性ポリープの腺管が粘膜筋板を押し下げるように粘膜下層に向かって増殖している像や標本によっては粘膜下層に過形成性ポリープの腺管構造を認めるとされている.

 IHPの報告例は少なく,本邦報告例も医学中央雑誌で検索した限りでは論文は数編あるのみで,発生頻度など,疫学的特徴を述べるのは困難である.Sobin1)は女性で右側結腸に多く,すべて無茎性または平坦であり,有茎性ポリープの形態ではなかったと報告した.富樫ら2)の3例報告では男性2例,女性1例であり,すべて右側結腸で無茎性であった.一方Rhondaら3)は男女差はなくS状結腸,直腸に多い,山際ら4)も左側結腸から直腸に多いとし,ほとんどが有茎性であったと報告した.

隆起型mucosal prolapse syndrome 小澤 俊文
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概念・病態

 直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome of the rectum ; MPSR)とは,排便時間が長い人や排便時にいきむ習慣をもつ人(strainner)に生じることが多い,顕在または潜在性の直腸粘膜のずれに伴う粘膜の虚血や過形成性変化の結果として,直腸の前壁を主体に隆起や潰瘍,発赤を形成する症候群とされる1)

 呼称の歴史的変遷は,1830年にCruveilhierが直腸の慢性潰瘍として最初に記載したことに始まる.1969年にMadigan,Morsonらが直腸の前壁を主体とした非特異的孤立性潰瘍68例の臨床病理学的検討を報告し,孤立性直腸潰瘍(solitary ulcer of the rectum)として認知されるようになった.以後,直腸孤立性潰瘍症候群(solitary ulcer syndrome of the rectum ; SUS)や,限局性深在囊胞性大腸炎(localized colitis cystica profunda ; CCP)といった報告もなされたが,患者背景や病態概念,病理組織学的な類似性などから同一範疇の疾患と考えられるようになった.1983年にdu Boulayら2)により,粘膜脱が深く関与していると提唱され,現在の呼称に至った.

Coffee Break

見る 7.確証バイアス 長廻 紘
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 ものごとには必ず反対側がある.見るとは,見られることでもある.何かを見るとき,逆に自分もその何かに見られていることがわからなければ本当に見たとは言えない.世の中は,見ると見られると両方向.見るだけ見られるだけという一方的なことはない.見るもの(自己)があれば,見られるもの(他己)がある.すなわち,見るときには相手があり,その相手は同時にこちらを見ている.「人は花を見,花は人を見る」ときのように,相手と一体になったときにのみ,本当に“見”が成立する.目の前の花を見るとき,真に花を「この花」として観るためには,花と一体にならなければ見たことにならない.自己が動くとき,他己も動く.一体になったときには花が何かを語りかけてくる.そうでなければ花を目の前にしても,夢を見ているようなものである(如夢相似).

 人は,トウンダのように自分が見たいようにしか見ない,見たいようにしか見ることができない(「胃と腸」48巻2号掲載).同じように,他者は自分が見せたいようにしか見せてくれない.人のどこを,何を,あなたは見ていますか.そのように他の人もあなたを見ていますよ.根が,太くて深い根がある人間かどうか他人は見ている.金庫だけ見ている泥棒は捕まりやすいが,金庫を見ている自分を見ている眼があるとなかなか捕まらない.天知る,地知る,人知る,われ知る.密室で何かをしても,必ず誰かに見られている.悪事千里を走る.「天網恢恢,疎にして漏らさず『老子』」.

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要旨 患者は82歳,女性.肛門痛と排便時出血を契機に受診し,肛門2時方向に腫瘤を触知した.内視鏡検査では,肛門管に白色調分葉状腫瘍を認め,直腸下部には前壁を中心に広範な壁肥厚と粘膜発赤,地割れ様の上皮欠損がみられた.NBI併用拡大観察では,肛門管腫瘍および直腸の上皮欠損部に異常血管が観察され,生検では扁平上皮癌の所見であった.子宮頸癌への放射線治療歴があり,直腸切断術を施行した.肛門管の分葉状腫瘍は周囲に上皮内癌成分を伴う扁平上皮癌で,口側直腸粘膜下へ広範に浸潤していた.直腸では,腫瘍の管腔側への上方浸潤により多巣性に上皮欠損と腫瘍の露出が認められた.癌細胞の形態や免疫染色所見から,腫瘍原性ヒトパピローマウイルス感染との関連が示唆された.

消化管組織病理入門講座・3

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 はじめに

 本稿では,最初に小腸および大腸粘膜の正常組織構造について述べ,次に感染性腸炎の病理組織像について述べる.正常組織構造については,粘膜生検組織の病理組織学的診断を行うにあたって念頭に置かなければならない点に触れながら,ヘマトキシリン・エオジン(hematoxylin and eosin ; HE)染色標本の所見を主体に概説したい.感染性腸炎のうち,肉芽腫を呈するものや偽膜性腸炎*1などに関しては他稿で触れられるため,それら以外で診断に有用な粘膜生検組織所見が認められるものを中心に概説する.

早期胃癌研究会

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 2013年2月の早期胃癌研究会は2013年2月20日(水)に笹川記念会館国際会議場で開催された.司会は小野裕之(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)と大川清孝(大阪市立十三市民病院消化器内科),病理は海崎泰治(福井県立病院臨床病理科)が担当した.また,画像診断教育レクチャーは長浜隆司(早期胃癌検診協会)が「消化管疾患 : 診断と鑑別の進め方─胃びまん性疾患の診断と鑑別─」と題して行った.

学会印象記

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 第85回日本消化器内視鏡学会総会は,春間賢会長(川崎医科大学消化管内科学教授)主催のもと,「科学する内視鏡~あなたには何が見え,何をみますか?~」をテーマに2013年5月10日~12日の3日間,国立京都国際会館で開催された.筆者も3日間,本学会に参加し,多くの知見と感動を得たので,その印象を報告したい.

 まず,主題のテーマが春間会長らしい多岐にわたる内容であったことが今回の内視鏡学会の特徴である.特別パネルディスカッション「心も技術も豊かな内視鏡診療とは?─診療技術の改革と開発を求めて」やシンポジウム8「実地医家における内視鏡診療の現状と課題」といったテーマはグローバルな視点に立った春間会長らしいテーマである.また,パネルディスカッション6「小児における内視鏡診療の現況」といった小児内視鏡を主題に取り入れた学会は筆者の記憶の中にはなく,初めての企画と思われる.さらに胃炎の主題が2つというのも本学会の特徴であったが,2013年2月末にHelicobacter pylori胃炎の診断・治療の保険適用が認められたことを考えるとまさにタイムリーな企画である.

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欧文目次

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 本書は,感染性腸炎に関するあらゆる知識・情報が特徴的な内視鏡像とともに解説されたアトラス的実践書である.4年前に発刊された初版が好評であったことから今回改訂版の出版に至ったわけであるが,初版で掲載された項目の改訂にとどまらず,疾患の項目数と症例数が大幅に増え,さらに充実した内容となっている.

 本書の編集を担当した大川清孝,清水誠治の両氏は,消化管,特に下部消化管疾患の診療ではわが国を代表するエキスパートである.両氏が主宰する「感染性腸炎の内視鏡像を勉強する会」という研究会で十分な時間をかけて検討された1例1例の症例が本書の骨子となっている.今回の改訂版では,この研究会で検討されなかった珍しい症例や疾患についても研究会メンバー以外の専門家によって執筆されており,まさに“A to Z”という表題にふさわしい感染性腸炎の実践書としてできあがっている.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

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 膵腫瘍診療の難しさは,手術難度が高いこと以外に,外科切除の侵襲が大きく,術後合併症がしばしば致命的となるため,良悪性の見極め,術式の選択,年齢や合併症を考慮した手術適応が正確でなければならない点にある.IPMNやMCNはこのような点において,以前より多くの議論が展開されてきた代表的な膵腫瘍であり,診療指針の策定は世界中の膵疾患診療の臨床現場から強く求められていた.

 このような背景から2006年に当時の世界的コンセンサスとして「IPMN/MCN国際診療ガイドライン」が公表されたが,多くの課題を残した内容であった.日本膵臓学会前理事長の田中雅夫氏を座長とする国際膵臓学会ワーキンググループは,その後集積された多数の知見に基づいて改訂作業を進め,2011年末に改訂2012年版が公表された.本書はその日本語訳と解説書であるが,原著とほぼ同時に翻訳版が出版されたことは,わが国におけるIPMN/MCN診療に大きく貢献するものと期待される.

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 早期胃癌研究会では,毎月原則として5例の症例が提示され,臨床所見,病理所見ともに毎回詳細な症例検討が行われている.2003年より,年間に提示された症例の中から最も優れた症例に最優秀症例賞が贈られることになった.

 10回目の表彰となる早期胃癌研究会2012年最優秀症例賞は,松山赤十字病院胃腸センター・河内修司氏の発表した「蛋白漏出性胃腸症を合併したcollagenous gastroenterocolitisの1例」に贈られた.2013年3月13日(水),笹川記念会館で行われた早期胃癌研究会の席上で,その表彰式が行われた.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 田中 信治
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 今回,「非腫瘍性大腸ポリープのすべて」という主題を取り上げた.大腸ポリープとは大腸内の管腔内に突出した隆起性病変の総称で,種々の肉眼形態や組織像を呈する病変を含む.上皮性腫瘍では腺腫,癌,カルチノイド,非上皮性腫瘍では脂肪腫,リンパ管腫などが多い.大腸内視鏡検査で発見されるポリープの約95は腺腫で,その一部が癌化する.それ故,日常診療では大多数を占める腺腫と早期癌に注意が注がれ,出血や腸閉塞などの臨床症状を呈さない限り,非腫瘍性ポリープに注意が注がれることは少なく,貴重な症例も闇から闇へ消えていき系統的に整理されていないことが多い.

 “非腫瘍性大腸ポリープ”としては,主にPeutz-Jeghers型ポリープ,若年性ポリープ,炎症性ポリープ,inflammatory myoglandular polypなどが挙げられるが,“非腫瘍性大腸ポリープ”についての臨床病理学的な特徴を示した特集は,これまで「胃と腸」では組まれたことがない.一方,近年の内視鏡診断学の進歩はめざましく,光学式内視鏡から高画素電子内視鏡の時代になり,さらに拡大観察によるpit pattern診断に加えて,画像強調観察が一般化しており,最近のポリープの内視鏡画像は過去の成書を凌駕するものになっている.

次号予告

基本情報

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胃と腸
48巻8号 (2013年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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