臨床検査 38巻3号 (1994年3月)

今月の主題 周術期の検査

巻頭言

外科手術と臨床検査 北島 政樹
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 外科手術を施行するに際して,緊急手術を除いては,患者の状態を術前に臨床検査成績を用いて評価することが重要であることはいうまでもない.近年,高齢化が進み,特にハイリスクの患者に対しても手術をすることが多くなっている状況からしてみればなおさらのことである.それゆえ,外科手術と術前評価の方法としての臨床検査は表裏一体と言っても過言ではない.

 しかし,臨床検査成績を有効に評価するためには外科手術侵襲に対する生体反応を理解しなければならない.特に近年ではインターロイキンやTNF(tumor necrosis factor)を中心としたサイトカインの動態に焦点が向けられていることは周知の事実であり,インターロイキンの受容体拮抗剤の臨床応用も近いと言われている.

総説

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 外科手術後には生体の呼吸,循環,代謝,内分泌,免疫など種々の機能に大きな変化がみられる.この変化は侵襲に対して生体の内部環境の恒常性を保つための反応で,生体反応と呼ばれる.従来生体反応は視床下部を中心とした神経内分泌反応としてとらえられてきた.しかし,最近エンドトキシン(サイトカインを誘導する)やサイトカインの投与によっても同じような生体反応が起こること,手術後には生体内でサイトカインの大きな変動が起こることが明らかにされた.生体反応はサイトカイン誘発反応として新しい視点から再検討されている.〔臨床検査38: 279-283,1994〕

耐術能検査

心機能検査 古梶 清和
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1.はじめに

 近年,医療技術の進歩に伴って高齢化社会を迎え,手術適応も拡大されて,より高齢者,ハイリスク患者に対し積極的に手術が行われるようになってきている.循環器系に障害を有する患者の一般外科手術も増加傾向にあるが,この際術前の耐術能としての心臓能評価は重要である.ここでは,循環器系疾患の有無が未知の非心臓手術患者の術前心機能検査について述べる.

肺機能検査 西尾 和三 , 川城 丈夫
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1.はじめに

 術前の患者の状態を把握することは,手術に対する危険性および術後の経過を判断するための重要な診療行為である.呼吸器疾患は心疾患と比較すると,手術そのもののリスクとなることは少ないが,手術後の呼吸器合併症はしばしば見られ,中には致命的となる場合もある.このような手術に伴う危険性は,患者の状態すなわち術前の呼吸器合併症の有無,肺機能障害の程度,喫煙習慣の有無,年齢,肥満度などと,手術のタイプの両方に依存している1)(表1).一般に,胸部および上腹部の手術で術後合併症の頻度が特に高く,また閉塞性換気障害を伴う症例は拘束性換気障害を伴うものに比べてリスクがより高いことが知られている2)

 最も広く用いられている検査項目は,%VC,FEV1.0,FEV1.0%,MVVなどであり,最近は血液ガス分析,肺血管抵抗測定なども行われるようになってきている3)(表2).以下にその概要を述べる(表3).

肝機能検査 山中 若樹 , 岡本 英三
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1.はじめに

 肝臓は500種類以上の機能を有する最大の消化器であり,また血行動態的にみても循環血液量の約1/4の血液を受ける臓器でもある.手術は大なり小なり肝機能に悪影響を及ぼす.例えば手術に付髄する輸血,麻酔,術後の薬物投与はウイルス肝炎の危険性,肝循環面,薬物代謝系への負担を増加させる.肝切除あるいは食道静脈瘤の手術ともなると,上記したことに肝実質の損失や肝血行動態への影響が加わる.

 本稿では肝機能検査の使い分け,読み方の注意点に触れ,それを踏まえたうえでおのおのの状況における検査の使い分けを述べる.

腎機能検査 出口 修宏
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1.はじめに

 術前のスクリーニングとしての腎機能検査は,患者に合併症などがない場合には比較的簡単な検査でよい.しかし,高齢者や既往歴に腎疾患などがある場合には慎重に行わなければならない.特に,泌尿器科的疾患で,腎臓に関連する手術をする場合には,術前の腎機能検査を十分に行う必要がある.いずれにせよ,術前の検査の意義は,麻酔などを含めて患者が手術に耐えられるかどうかを判定するとともに,予測される腎機能障害に対する対応策を立てることにある.

 本稿では,一般手術前のスクリーニングとしての腎機能検査について主に述べると同時に,腎摘出術などのネフロンの減少をきたす手術を施行する場合に必要な検査を列挙し参考とする(表1).

止血能検査 篠木 信敏 , 上林 純一
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1.はじめに

 出血は,外科の歴史が始まって以来,外科医を悩ませ続けており,手術に際しては止血機構の必要かつ十分な評価が必要である.止血機構は,血小板と血管壁が関与する一次止血機構,凝固反応が主役である二次止血機構,線溶系とさらにそれらの活性化を調節する制御系から構成される.この止血機構の生体内での役割は単に血栓の形成による失血の防止だけでなく,血液流動性の維持や組織修復など多くの重要な生体反応に関与している.生体にとって合目的な止血反応が破綻すると,出血異常,血栓症やそれに伴う臓器不全,創傷治癒の遅延などの重篤な病態が発症する.

 近年種々の新しい止血検査が開発されているが,もちろんそれらすべてが,術前検査として必要なわけではなく,不必要な検査は避けるべきである.以下に術前止血機構の評価法について述べる.

術中・術後検査

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 術中迅速細胞診は,より根治性の高い手術を行うために,腫瘍病変の組織型の推定やその広がりを判定する目的で行われる.組織診と併用する補助診断だけでなく,凍結切片が作製できない組織や組織診の対象となりえない液状検体では,迅速細胞診が効果的である.最近では,摘出範囲の決定や微小癌や早期癌の切除部位の決定のために術中迅速細胞診が行われている.さらに術後の治療方針の決定などにも応用されている.〔臨床検査38:301-305,1994〕

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 術中迅速組織診断時の凍結切片作製過程を要約すると,術中迅速組織診の臨床側からの依頼予約の受付,手術場からの組織片の提出,凍結用包埋ブロックの作製,包埋ブロックの凍結,薄切と切片の固定,迅速用HE染色およびパラフィン切片での確認の7項目が挙げられるが,今回,当施設での方法を具体的に述べる.〔臨床検査38:306-310,1994〕

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 術中迅速診断は,主として良性・悪性を判定することによって治療方針の変更・決定を適切にするために行われることが多いが,確定診断に足る組織が採取されたか否かの判定においても重要である.良性・悪性の判定困難な症例や,検体に脂肪組織が多いなどの理由で標本作製が困難な症例などがあり,ときには診断を誤ることもあるが,臨床医と病理医との信頼関係・コミュニケーションの保持によりほとんどの問題が解決されるであろう.〔臨床検査38:311-315,1994〕

術中エコー 大熊 潔 , 久 直史
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 肝・胆・膵領域の術中エコーは現在では広く行われており,特に肝臓外科では必須の検査法となっている.術中エコーには専用の探触子が用いられ,体表からの超音波検査に比べ高解像度の画像が得られ盲点も少ない.術前の画像診断の所見をより正確に把握し,また術前に不明であった病変を検索することにより,術式の決定に重要な役割を果たしている.〔臨床検査38:317-320,1994〕

細菌検査 中山 一誠 , 山地 恵美子
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 病原微生物の迅速診断に関しては,主に入院患者における重症感染症,菌血症,敗血症,髄膜炎,重症肺炎,膿胸などの疾患が対象であり,早期診断,適正治療が必要とされ,予後にも影響を与えるため迅速診断が要求される.そのためには,グラム染色,蛍光抗体法,DNAプローブ,PCR法,ガスクロマトグラフィーやHPLCによる細菌の代謝産物の検出などが有力な手段となる.いずれにしても,診療部門と検査部門の連携プレーが望ましい.〔臨床検査38: 321-326,1994〕

術後の血液・化学検査 桑島 実
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 手術侵襲に伴う血液・化学検査値の変動,および検査値変動からみた主な術後合併症について概説した.胃全摘術後,白血球,CRP,LD,血小板は増加し,総蛋白,アルブミン,コリンエステラーゼ,総コレステロールは傷害期に著減した.手術侵襲の程度に応じた検査値の変動範囲を知れば術後合併症の予知,予後の推定に役立つと考えられるが,これに関した系統的広範な臨床研究はいまだにみられず,今後の課題として残されている.〔臨床検査38:327-332, 1994〕

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 生体部分肝移植は,末期肝障害,特に先天性胆道閉鎖症の治療法として本邦で実績が上がっている.術中には,ドナー肝のバイアビリティを維持する目的でAKBRやドプラエコーによる肝血流モニター検査が有効である.術後は,ドナー肝の肝機能を管理するための肝機能検査,特にビリルビン肝逸脱酵素の推移,免疫抑制剤の血中濃度モニタ,拒絶免疫反応対策のための検査,感染症対策のための検査が計画的に実施されることの必要性に言及した.〔臨床検査38: 333-336, 1994〕

話題

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 肝臓のエネルギー代謝が劇的に変化していく肝切除,肝移植などの肝臓外科のみならず,救急医学領域においても動脈血中ケトン体比(AKBR)の臨床的意義が注目されるようになってきた.臨床において有用な治療指針となるAKBRが正確に測定されるために,Redox理論の概略を述べ,術前の肝予備能評価,術中および術後の患者管理を中心に,AKBR測定のポイントを概説する.〔臨床検査38:337-340,1994〕

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 エンドトキシンはエンドトキシンショックなどの重篤な生体反応を惹起する.これにはエンドトキシンがマクロファージや血管内皮細胞に作用し,サイトカインを産生することが重要である.エンドトキシンは最初にLPS結合蛋白(LBP)に結合し,次にマクロファージのmCD14に結合するか,LPS-sCD14結合物が血管内皮細胞に結合する.一方,sCD14はLPS-LBPのマクロファージへの結合を抑制する.sCD14はマクロファージや顆粒球から種々の炎症刺激で遊離すると考えられるが,特に多臓器不全では高値を示す.このことは,生体反応が亢進していること,エンドトキシンに対する生体の反応性がたかまっていることを意味しよう.〔臨床検査38: 341-344,1994〕

術後のMRSA腸炎 品川 長夫
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 術後MRSA腸炎は,胃切除術などの消化管手術後に多くみられる.術後2~5日から激烈な下痢で始まり,治療開始が遅れると敗血症にまで進行することがある重篤な疾患である.手術前に院内のMRSAが患者に定着し,手術侵襲,開腹による腸管麻痺さらに抗菌剤による腸内細菌叢の変動により,腸管内のMRSAが異常増殖し発症する.第3世代セフェム剤ばかりでなく,いかなる抗菌剤でも発症する点に注意すべきである.バンコマイシンの経口投与が有効である.〔臨床検査38:45-348,1994〕

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 ICUでの重症患者の集中治療が一般的になるにつれ,多臓器不全の発症率とそれにより死亡する患者数は増加している.これまでにmultiple organ fail-ureやsequential organ failureなどと呼ばれてきた病態に,新しい考え方と名称が提唱された.これには,敗血症性ショックの病態研究が著しく進歩したことによるところが大きい.multiple organ dysfunc-tion syndrome (MODS)と定義された病態のさらなる解明と,救命率の向上が期待される.〔臨床検査38: 349-352, 1994〕

ひと―ベノジェクトⅡリレー訪問

田中 昇
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 当BML病理・細胞診センター(Pathology and Cytology Laboratory; PCL)は,本年度年間病理検体20万件,細胞診検体45万件,電子顕微鏡検査月間100~120件,その他酵素抗体法,各種腫瘍のパラフィンブロックからのDAPI/HP染色を用いた紫外部顕微分光測光,cell sortingによるフローサイトメトリー解析など多くのルチン,研究用の症例を処理している.病理診断は認定病理医七十数名の先生がたにお願いしているが,検体増加に追いつかず,関西圏の病理医の先生がたにお願いしてエスアールエルと合弁で関西病理・細胞診センターを発足させて,一極集中から地域密着型のラボへの展開を図っている.

 細胞診は常勤・非常勤を合わせて約60名の細胞検査士と各専門分野別の細胞診指導医を擁し,精度管理態勢を整えている.サブスペシャリティの専門病理医も数多く,内部・外部のコンサルテーションのお役に立っている.当センターは,米国臨床病理医協会(College of American Pathol-ogists;CAP)のAcreditation Programの査察により認定された.

今月の表紙 臨床細菌検査

非溶血性A群レンサ球菌 猪狩 淳
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 レンサ球菌は,Brownにより血液寒天培地上の溶血態度によりα,β,γ溶血レンサ球菌と分類され,臨床材料から検出される溶血レンサ球菌は,Lancefieldの血清学的群別では,A,B,C,G群がある.このなかでもA群が最も頻度が高く,このA群のほとんどはβ溶血を示す.したがって,A群溶血レンサ球菌の検出は通常β溶血を指標として行われている.

 レンサ球菌の溶血性は種々の条件で変化するため,基礎培地にトリプチケースソイ寒天培地,ハートインフュージョン寒天培地,血液寒天培地を用い,好気,炭酸ガス,嫌気の各培養および混釈培養が行われるのが一般的である.しかし,このような培地,培養条件でもβ溶血を示さないレンサ球菌は,血液や髄液から検出された場合以外は臨床細菌検査室では詳細な同定をせず,α,γ溶血レンサ球菌とするのが一般的である.特に咽頭粘液,喀疲が材料の場合,口腔内常在菌であるα,γ溶血レンサ球菌とβ溶血を示さない溶血レンサ球菌との区別が集落性状からだけでは困難であり,詳細な検索が省略されているのが現状である.したがって,非溶血性A群レンサ球菌による気道感染症のわが国の報告例は少ない.外国ではCaburnら1)(1941),Colebrookら2)(1942),Jamesら3)(1971)の報告がある.

コーヒーブレイク

プライド 屋形 稔
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 JRが国鉄と呼ばれていたころ,国鉄をよくする新潟乗客の会の委員のようなものに選ばれたことがあった.年に2回ぐらい会があって利用中感じたことを何でもしゃべって国鉄サービスの改善に資するのであるが,3年ほど務めている間はあまり苦情の種がなかった.辞めた途端にあれこれ気づくことが多く驚いたが時遅しであった.その習性の名残りか,2年ほど前に車内の携帯電話のあまりの傍若無人さに腹が立って,JR東日本の新潟支社長に投書して改善を促したところていねいな返事が来た.デッキで使用して欲しいという車内放送を必ず流してくれるようになり,目にみえて過ごし良くなった.もちろん放送があっても平気で無視する人間は絶えない.

 外人が奇異に感じるらしいし私たちも呆れるのは,子供が列車内を走り回って騒いでいるのに母親は平然と顧みない風景があまりに多いことである.父親のほうは多少気にしたりするが,若い両親はなべて無頓着である.学校教育の欠陥もあるのか,日本人本来の公共環境に対するレセプターの欠如なのか原因ははっきりしない.

X 吉野 二男
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 ローマ数字で10はXと記します.少し以前の話になりますが,ある外国メーカーから,大型の自動化学分析機が発表されて○○○○.X型と名付けられたものがありました.これは改良に改良を重ねて,10番目の製品という意味であったようです.

 航空機の形式などにXとついているのは,研究開発中の試作機という意味ですが,このときにはエックスと呼ぶようです.この自動化機械は試作機ではありませんでした.にもかかわらず,使用者たちはエックス型と呼んだりしていてちょっと異様な感じでいました.

学会だより 第33回日本臨床化学会年会

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 私が大阪大学病院中央臨床検査部で臨床化学の分野の仕事に携ってから26年になりますが,当時のことを振り返ると,臨床化学検査のほとんどが用手的測定であり,わずかな項目のみがテクニコンのAutoAnalyzer (Basic type)で測定されていたことを思い出します.この年は渡辺富久子先生が大阪大学病院中央臨床検査部から神戸女子薬科大学に移られる年でもありました.

 また,当時本学会は"医化学シンポジウム"という名称で開催されており,非常にレベルの高い内容の学会で"病態代謝と分析技術の開発"が中心であったことを記憶しております.その後"臨床化学シンポジウム"という名称を経て,現在の日本臨床化学会と名実ともに変遷してきました.

学会だより 第25回日本小児感症学会総会

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 第25回日本小児感染症学会は東北大学加齢医学研究所発達病態部門(旧抗酸菌病研究所小児科)教授今野多助会長のもと,杜の都仙台市国際センターで1993年11月4~6日の3日間にわたって開催された.

 この学会は小児感染・免疫学研究会と小児ウイルス学研究会が合同で長年研究会を重ねていくうち,1988年に発展的に合併して日本小児科学会の分科会として発足した新しい学会である.会員数は小児科医,微生物の基礎の研究者を中心に約1,350名である.

学会だより 第35回日本臨床血液学会総会

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 第35回日本臨床血液学会総会が1993年11月10日から3日間,広島大学原爆放射能医学研究所臨床第一(内科)部門教授藏本淳会長のもとで広島市の平和公園の一角,国際会議場を中心に厚生年金会館,平和公園ビルの3会場で開催された.本学会は1959年6月に第1回臨床血液懇談会として開催されたのが始まりである.

 このような伝統を有する学会が,広島の地で開かれることは35年の歴史の中で初めてであり,学会に携わった一員として喜ばしく感じている.また全国津々浦々から多数の諸先生にご参加いただき約3,000名に達し,協力を賜った演者,座長の先生をはじめ,関係各位に御礼申しあげます.

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はじめに

 1987年に永年の努力の結果,鎖国の体制下秘密のベールに包まれていたアルバニア社会主義人民共和国(以下アルバニア)を訪問する機会を得た.その折にアルバニアの大学,病院を見学し,臨床検査ならびに臨床化学関係の人々と直接意見交換をし,さらに彼らの希望に沿って特別講義を行った1)

 今回は滞在中に,厚生省の責任者の1人でもあるTiranë(チラナ)大学のProf.Minga,およびSpitaliKlinik Nr.1の主要スタッフで,かつ当国の代表的臨床化学者であるDr.S.Buzoから聞き出した,そして彼らが咄々と語ってくれたアルバニアの医療の実態,および公衆衛生面での課題について,簡単に紹介しよう.

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1.はじめに

 簡易ピークフローメーターで測定されるピークフロー(PEF)は,気管支喘息患者の気道閉塞の客観的な指標として有用である.われわれは,すでに英国製ミニライト・ピークフローメーター,米国製アセス・ピークフローメーターの正確度および精密度について検討し,報告した1,2).しかし,常にPEFが300l/分以下を示すような患者や小児には,それらは必ずしも適当な機器とはいえない.そこで,今回は低流量用アセス・ピークフローメーター(低流量用アセスと略す)について検討を行い,以前に検討した改良型アセス・ピークフローメーター(標準品と略す)と比較してみることにした.

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 従来からリソソーム内pHが酸性であることは,ほとんどのリソソーム酵素の至適pHが酸性にあることから推察されてきた.これは,以前には,リソソームにpH指示薬を取り込ませてその色調で確認されてきた.しかし,この方法ではリソソームへの蓄積度が低く,色調の変化が見にくいために,リソソーム内pHは3~6といった幅広い報告がされていた.

 そこで感度が良く,かつ正確に生細胞のリソソーム内pHを測定する方法を開発する必要がある.今回,多数のpH蛍光色素の中からHPTS (8-hydroxy-1, 3, 6-pyrenetrisulfonate)を用いたのは,pHに依存して蛍光スペクトルが変化する数少ない物質の1つであり,しかもその範囲がpH4~8なのでリソソーム内pHの測定には最適であるからである1).pH変化に伴って蛍光強度が変化するHPTS溶液は,380 nmと450nmの蛍光強度の比により,pHの標準曲線が得られることは以前から知られている2).この理論を基礎にして検討した.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・15

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●検査結果の判定●

 染色体分析は,当院泌尿器科外来から無精子症として依頼された.末梢血検体からリンパ球を分離し,PHA添加72時間後カルノア固定標本にし,G分染(バンド)法を行った.その結果は,図1に示すように,核型は45,X[10]/46,Xyq―[40]のモザイク型の所見(45,X50細胞中10個.46,Xyq-50細胞中40個)を呈した.さらに,Q分染法では46,Xyq―核型においてY染色体長腕末端部に蛍光欠失の所見を示した(図2).

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 従来から,ドキソルビシン(アドリアマイシン)やビンクリスチンなど癌治療に幅広く使われている抗腫瘍剤に耐性となった腫瘍細胞は,他のアントラサイクリン系薬剤,ビンカアルカロイドばかりでなく構造や作用機序が異なる他の抗腫瘍剤に対しても広範な交差耐性,すなわち多剤耐性(MDR;multidrug resistance)形質を示すことが知られていたが,このMDR形質は細胞外への抗腫瘍剤の能動的排泄の亢進,すなわち細胞内薬剤保持能の低下によってもたらされることが明らかにされた.このようなMDR形質を示す細胞の膜には分子量170kDaの糖蛋白(P-glycoprotein; P-糖蛋白)の発現が認められ,このP-糖蛋白が細胞外への抗腫瘍剤排泄の能動的ポンプとして機能していることが示された.

 現在想定されているP-糖蛋白の構造1)を図1に示す.この糖蛋白は獲得耐1生化した細胞ばかりではなく,腎臓,副腎,大腸,膵臓などの正常組織の細胞にも発現が観察され,これら組織由来の悪性腫瘍が化学療法に抵抗性を示す(自然耐性)一因と考えられている.近年,このP-糖蛋白をコードする遺伝子がクローニングされ,MDR-1(mdr 1)と命名されたが,これにより腫瘍細胞におけるP―糖蛋白を介した多剤耐性形質の発現を遺伝子レベルで検出することが可能となった.

PNET 小野 健児 , 工藤 玄恵
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 PNETは,primitive neuroepithelial tumours(胎児型神経上皮性腫瘍)とprimitive neuro-ectodermal tumours(胎児型神経外胚葉性腫瘍)の2つの呼称の略語である.いずれも神経細胞やグリア細胞への分化を有する未熟な細胞からなる腫瘍群を指すが,発生学的にみると両者は使い分けられるべきである.なぜならば,neuroepith-elialは発生初期の神経管を被覆する上皮細胞組織由来を指すが,neuroectodermalはそれに神経堤由来の要素も含む.それゆえ,PNETを構成する腫瘍細胞が末梢神経やメラニン細胞への分化を伴う場合には,後者でないと都合が悪い.一般に"neuroectodermal"は間葉成分を除いた中枢神経組織を指す言葉である.ちなみに,中枢神経系腫瘍のWHO新分類(1993)1)(表1)におけるPNETはneuroectodermalの略である.

 また,PNETの診断名は当初,中枢神経系腫瘍に限定して用いられていたが,現在では末梢神経および軟部組織などに発生した,神経外胚葉由来と考えられている未熟な小円形細胞からなる腫瘍にも使用されている.むしろこちらのほうで,すでに確立された診断名として広く利用されているようにみえる.

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1.はじめに

 ME機器の発達は医学の近代化に大きく寄与しつつある.中でもレーザー光線は,基礎医学的には生体物質の分析,定量,計測に応用され,臨床的にはレーザーメスをはじめとして,凝固,形成,砕石,吻合などに幅広く用いられてきた.光の生体に及ぼす影響は計りしれないものがあり,レーザー光線の持つ種々の特性を利用して癌の診断,治療をも可能にした.

 悪性腫瘍に対するレーザー光の臨床応用には,レーザーの有する光収束性,高輝度性を利用した光エネルギーによる腫瘍焼灼法と,単色性を利用して光感受性物質の励起を促させて行う光線力学的療法がある.本稿では悪性腫瘍,特に肺癌を中心に,腫瘍親和性光感受性物質と低出力レーザーを用いた光線力学的診断治療法について解説する.

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 検疫所による輸入生鮮魚介類のコレラ菌検査は1970年から行われているが,検査の対象となる魚介類は年々質,量ともに増え続けている.このような輸入生鮮魚介類の増加に伴い検疫所では検査件数を毎年増やしているが,最近,分離例が減ってきている.このことは生産国での魚介類の取り扱い方法が改善されてきているためと思われる.しかし,まだ魚介類の危険性がまったくなくなったわけではない.そのため検疫所では今後ともわが国でのコレラ制圧のための活動を続けていく必要があるものと思われる.

質疑応答 臨床化学

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 Q エンザイムイムノアッセイ法によるHbA1C測定法の特徴をお教えてください.

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 Q 体位を変えると検査値が変わるようですが,その原因と変化の大きさについてお教えください.

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 Q 胃検診にペプシノゲン測定が導入されつつありますが,これを測定すれば,従来のX線透視は要らなくなるのでしょうか.

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 Q コレステロールの標準物質が(財)化学品検査協会で確立されたと聞きますが,それはどのようなものですか.また,その検査に及ぼす影響についても具体的にお教えください.

基本情報

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臨床検査
38巻3号 (1994年3月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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