呼吸と循環 36巻4号 (1988年4月)

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 最近の動脈疾患の増加には著しいものがあり,それを反映して動脈瘤や閉塞性疾患を取扱った論文が非常に多くみられるようになった。

 だが,その定義や分類法となるとあいまいな点が多く,同一名称で内容・意味が違うと思われる「炎症性動脈瘤」などが安易に使用されているのに気づく。本邦には本邦特有の疾患もあり,傾向・頻度も異なるので,この辺で「取扱い規約」を作ってはどうかと思うが如何だろうか?

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はじめに

 新生児の肺の構造は,成人のそれとは著しく異なっている。これを他の臓器と比較してみると,例えば肝,腎,心臓では臓器の重量や容量は新生児と成人では大きく異なるが,基本となる解剖学的構築は同一である。ゆえに,これらの臓器では,新生児期の構造が成熟した段階のminiatureであるということができる。

 ヒトをはじめマウス,ラットなど大多数の哺乳動物では,生下時には肺胞は認められないか,ごく少数にすぎず,生後1〜2週間(マウス,ラット)あるいは1〜2年間(ヒト)の比較的短期間に肺胞が形成され,成熟肺に近い形態を呈する。ヒトでは生下時には湿肺重量1g当たり3mlの空気を含むが,8歳ではこれが8mlとなる。生下時と成人を比較すると容積は25倍となるが,湿肺重量は10倍にすぎない1)。このように年齢とともに容積-重量の比率が大きく変化することは肺という臓器に特異的である。

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はじめに

 Atrial standstill(AS)は一般的には心房筋の興奮性が電気的にも機械的にも消失した状態と定義され,心不全,血栓塞栓症,Adams-Stokes発作あるいは突然死などの重篤な合併症を高率に併発することから予後不良の疾患とされている。ASの症例報告は現在までに100を越えているが,その定義は年月とともに大きく変化しており初期の症例の中には現在の定義からはASといえないものも含まれている。ことに近年の電気生理学的検査の発達と普及によりASの病態の多様性が明らかとなり,従来のASの定義およびその分類にも再検討が必要となっている。本稿ではASの診断基準の変遷を振り返り,現在におけるASの概念を整理するとともにその臨床的意義について考察を加える。

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はじめに

 1987年,4月現在,4,000例以上の心移値がわが国を除く世界各国で行われ,Cyclosporine登場後,成績も1年生存率88%,4年生存率78%と安定してきた1)

 しかしrecipient-candidateに対しdonor心の数量的不足は明らかであり,心保存法は解決されねばならぬ大きい問題のひとつである。

 心移植にはcardioPlegiaによる心停止・心の摘出・保存・移植操作中のischemia・そして移植後のreper—fusionと,donor心にinjuryを及ぼす可能性がある2)少なくとも5つのstepが含まれる。心臓手術の現在のレベルへの到達・高い安全性の確保は過去の多くの成果に加え心筋保護法の確立によるところが大きく,またreperfusion injury (再灌流障害)のコントロール1は解決に向かって努力が重ねられているトピックスのひとつである3)。すなわち,心臓移植は心臓外科学が到達したひとつの究極点であるとともに,その操作には先人が解決してきた問題,また現在われわれが取り組まなければならない問題の多くが集約されている。

 このような認識から心保存法の現況を概観し,ついで心移植の各stepにおけるinjuryについて,これまでの多くの研究成果を再評価し,さらに現時点における問題点について,教室における成果もおりまぜながら述べる。

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はじめに

 種々の呼吸器疾患患者の診断に際し,内科医は胸部X線写真,気管支ファイバースコピー,臨床検査,身体所見,問診などを含め,さまざまな検索を行い確定診断を得ようとする。また治療に際しても,薬物療法,理学療法,放射線療法,呼吸管理などを含めて最大限の治療効果を得ようとする。しかし,このような場合に,内科医は患者の身体面にのみ心を奪われ,精神面には比較的関心がうすい場合が多い。各種肺疾患の治療に際し使用する薬剤が,さまざまな精神症状をひき起こすが,そのような薬剤としてはステロイドホルモン,気管支拡張薬,抗結核薬などがある1)。本稿では,これらの各種精神症状ならびに心因的要因とくに気管支喘息のそれについて簡単に述べてみたい。

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 大動脈冠状動脈バイパス術(以下ACバイパス術)は,虚血性心疾患の外科的療法として既に確立されている。本術式の主たる目的は,狭心痛の寛解,心機能の改善,延命効果や運動耐容量の増加などである。ACバイパス術後の社会復帰は,社会的および経済的条件が加味されているものの,現実社会における患者の運動耐容量をよく反映していると考えられる。社会復帰についての報告は,これまでに欧米では多数行われているが1〜8),本邦においてはいまだ少なく9〜11),社会復帰を阻害している因子についての検討は十分ではない。本論文では,本邦におけるACバイパス術後の社会復帰の現状と,社会復帰を規定している因子の分析を行うことを目的とした。

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 血圧には大きな日内変動があり,睡眠中は低く,覚醒時は体位や精神的,肉体的活動により大きく変動することが知られている1,2)。2週間から1カ月に1度の外来随時血圧の測定のみでは,患者本来の血圧がつかみにくく,高血圧症の正しい診断,ならびに降圧剤の効果判定が不十分かつ不正確であると考えられる。さらに降圧剤療法における睡眠中の血圧管理が増々必要になって来ている3)

 そこで我々は,外来患者100例に対して,携帯型血圧連続測定装置を借し出し,水銀血圧計における血圧値との相関性を検討するとともに,24時間の血圧日内変動を測定し,その実用性についても検討を加えた。

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 WPW症候群症例の手術を考える場合,副伝導路(いわゆるKent束)の正確な部位診断が必須であることはいうまでもない。最終的なpinpointの部位診断はもちろん術中の心表面マッピングによって決定されるが,術前よりある程度の正確な部位診断が下されていることが望ましい。

 本研究は体表面マッピングによる等電位図のパターン認識によって部位診断を行う方法を確立すべく動物実験を行ったものである。この結果副伝導路各部位により特有のマップパターンが得られ,診断法として有用であることがわかった。その実験方法論を含めて若干の考察を加え報告する。

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 静脈還流は主に末梢静脈圧と中心静脈圧の差により惹起されるものであるが,心機能,呼吸,腹圧,筋肉運動,姿勢,静脈弁なども重要な因子として知られている。中心静脈圧が上昇すると下肢の浮腫や肝腫大などが起こる。また深部静脈やリンパ管の閉塞によっても下肢の浮腫が発生するが,これらの原因を鑑別するためには大腿静脈の血流速度変化を観察することが有意義なことに気づき,臨床的に検討した結果,若干の新知見が得られたので報告する。

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 狭心痛は虚血性心疾患の主症状であるが,典型的な心筋梗塞の心電図変化を有しながら既往に胸痛のない症例や,運動負荷試験において心電図上明らかな虚血性変化を示すにもかかわらず狭心痛のない症例に遭遇する二とはまれではない。殊にホルター心電図による長時間心電図記録の発達は,全く胸痛のない一過性の心筋虚血,いわゆるsilent myocardial ischemiaがかなりの高頻度に存在することを示唆した1〜3)。しかし,乙の狭心痛の出現には,局所での虚血刺激の他,その伝導や中枢における疼痛に対する閾値等複雑な問題がからみあっており十分理解されているとはいいがたい4,5)。他方運動負荷201Tl心筋断層法(single photon emission CT, SPECT)は,一過性心筋虚血の有用な診断法として広く臨床応用されている6,7)。今回,我々は,冠動脈疾患(CAD)を対象に運動負荷(Ex)直後および3時間後の再分布(RD)時に201Tlによる心筋SPECTを撮影,Exによる胸痛の発生と心筋虚血の関連を検討した。

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 われわれは先に,特発性間質性肺炎において,喫煙者では非喫煙者に比して肺野の縮小が軽度で,全肺気量,静肺コンプライアンスも有意に高値を示すことを報告し1),喫煙は線維症肺の伸展性を増加させる方向に作用することを示唆した。喫煙は,ヒトの慢性肺気腫の原因として最重要視されているものであるが,喫煙のみで肺気腫を作製することは困難である2〜4)。しかし,喫煙がエラスターゼ気管内投与による肺気腫の共同因子として作用する可能性が示唆されており3),喫煙者の線維症肺では線維化のみならず気腫化も同時進行している可能性がある。

 われわれは,ブレオマイシン実験肺線維症モデルを用いて,喫煙が肺線維症発生にどのような影響を及ぼすかを検討し,ブレオマイシンが,タバコ煙曝露ハムスターに線維化のみならず気腫化をも惹起することを,その発生の機序についての文献的考察を加えて報告する。

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 エンドトキシン投与によるショック発生時の病態には、補体の活性化,白血球の凝集・沈着,線溶系の亢進,プロスタグランジンの活性化など種々のmediatorが関与しておりそれらが相々者に作用しながら悪循環を形成し不可逆性ショックへと進行するとされている。

 C1-inactivator (以下C1—INA)は生体内に存在し,凝固因子XII a,XI a,C1r,C1s,カリクレイン、ブラスミンなどの補体系,凝固線溶系,キニン・カリクレイン系にわたる多価阻害物質であり1),その内C1r,C1sに対しては唯一判明している阻害剤である2,3)。またHageman因子およびカリクレインに対する重要な阻害剤でもある4,11)。このC1-INAの欠乏症として軟部組織の浮腫を主症状とするhereditary angioneurotic edema (HANE)が知られている。

 C1-INAの作用機序はC1r,C1s,カリクレイン,Hageman因子,プラスミン等とsodium dodecyl sul-fate (SDS) stable complexを作るためと考えられている6,7)

 今回,我々は人血漿より抽出し製剤化したC1-INAをエンドトキシンショックモデルに使用し,その効果を険討したので若干の文献的考察を加世えて報告する。

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 冠動脈塞栓症は,Virchowによりはじめて報告されて以来,いくつかの報告をみるが,極めて稀な疾患である。その基礎疾患としては細菌性心内膜炎が最も多く,次いで左心系心腔内血栓が多い。しかし,文献的に心内膜炎に起因する冠動脈塞栓症に対する外科的治療の報告はほとんどない。今回われわれは,僧帽弁疣贅により冠動脈塞栓をきたした急性期心内膜炎の1例に僧帽弁置換術を行い救命したので,文献的考察を加えて報告する。

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 今回,我々は38歳,男子において,先天性大動脈二尖弁・大動脈弁逸脱症による,大動脈弁閉鎖不全症(以下ARと略す。)に対して大動脈弁置換術を施行し,良好な結果を得た。大動脈弁逸脱症によるARは比較的まれな疾患であり,その成因・診断・外科的治療等につき若干の文献的考察を加え報告する。

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 急性心筋梗塞急性期にタンポナーデのため手術を行った報告は,本邦でも散見される1,2)ものの比較的めずらしいものと思われる。これらは心破裂例であるが,本症例は肉眼的に心筋の断裂を認めずやや異なった様相を呈している。また,本症例は急性期の冠動脈造影にて狭窄病変を認めず,急性心筋硬塞としてもめずらしいものであった。

 そこで,本症例の概要を述べると共に,これらの点につき文献的考察を加えることとした。

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 Greenfield vena caval filterは,肺塞椎症を防止するために経静脈的に下大静脈に留置するフィルターで,下大静脈の開存性を保ちながら塞栓症を防止できるようデザインされている(図1)。我々は,急性および慢性肺塞栓症3例に,このフィルターを用いる機会をもったので,客症例の経過とフィルター留置手技に関する問題点につき報告する。

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 肺静脈は胸郭の中に存在し,また病変が生じる頻度も少ないため肺静脈疾患の病態は不明な点が多い。我々は縦隔腫瘍に伴う肺静脈血栓症の症例を経験したのでその成因および検査所見についての若干の考察を加えて報告する。

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 近年,虚血性心疾患の治療法として経皮的冠動脈形成術(PTCA)が広く行われるようになった1,2)。またそのSystemの改良や技術の向上により成功率が高まるにつれ適応は拡大されている。最近では多枝病変3),不安定狭心症4),vasospastic angina5)や急性心筋梗塞6)に対してもPTCAは行われるようになった。一方,大動脈—冠動脈バイパス術(ACバイパス術)後のグラフト狭窄に対しては従来再手術が施行されていたが,最近ではPTCAも試みられるようになり安全かつ有効な治療手段として評価されてきている7〜11)。今回著者らは,自家大伏在静脈片(SVG)によるACバイパス術後のグラフト狭窄に対しPTCAを反復施行した1例を経験したので報告する。

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基本情報

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呼吸と循環
36巻4号 (1988年4月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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