Japanese
English
綜説
心保存の概念・現況と問題点
Cardiac preservation:Current status and unsolved problems
妹尾 嘉昌
1
,
坂東 興
1
,
寺本 滋
1
Yoshimasa Senoo
1
,
Ko Bando
1
,
Shigeru Teramoto
1
1岡山大学第二外科
12nd Department of Surgery, Okayama University Medical School
pp.371-382
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205231
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はじめに
1987年,4月現在,4,000例以上の心移値がわが国を除く世界各国で行われ,Cyclosporine登場後,成績も1年生存率88%,4年生存率78%と安定してきた1)。
しかしrecipient-candidateに対しdonor心の数量的不足は明らかであり,心保存法は解決されねばならぬ大きい問題のひとつである。
心移植にはcardioPlegiaによる心停止・心の摘出・保存・移植操作中のischemia・そして移植後のreper—fusionと,donor心にinjuryを及ぼす可能性がある2)少なくとも5つのstepが含まれる。心臓手術の現在のレベルへの到達・高い安全性の確保は過去の多くの成果に加え心筋保護法の確立によるところが大きく,またreperfusion injury (再灌流障害)のコントロール1は解決に向かって努力が重ねられているトピックスのひとつである3)。すなわち,心臓移植は心臓外科学が到達したひとつの究極点であるとともに,その操作には先人が解決してきた問題,また現在われわれが取り組まなければならない問題の多くが集約されている。
このような認識から心保存法の現況を概観し,ついで心移植の各stepにおけるinjuryについて,これまでの多くの研究成果を再評価し,さらに現時点における問題点について,教室における成果もおりまぜながら述べる。
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