呼吸と循環 34巻9号 (1986年9月)

特集 PTAの適応と限界

PTAの沿革と基本事項 平松 京一
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はじめに

 血管造影検査はSeldinger法の開発以来現在に至るまで急速な発展をとげて来た。この間新しいカテーテルならびにその周辺装置が次々と開発され,また新しいカテーテル操作技術や薬理学的血管造影などが相次いで出現するに至って,非常に精度の高い診断が可能となって来た。多くの非侵襲性画像診断の出現にもかかわらず,依然としてカテーテル検査は種々の疾患に対する最終確定診断を下す上に必要であるばかりでなく,治療方針決定のため必要な情報を引き出すにあたって不可欠の診断法となることも少なくない。とくに血管自体の病変を画像上描出し,さらにこの治療方針を決定するためには血管造影を省略するわけにはいかない。

 経皮血管カテーテル法の手技を種々の疾患に対する治療に応用する試みは次々と実用化され,現在interventi—onal angiographyと呼ばれて,その臨床的な評価も確立している。とくに血管系の病変に対しては血管カテーテルが非常に密接にアプローチできるため,その応用が急速に広まって来た。すなわち狭窄性病変に対する経皮的血管形成術percutaneous transluminal angioplasty(PTA),血栓症に対する血栓溶解術thrombolysis,血管破綻による大出血に対するエンボリゼーション,血管内異物の除去,肺動脈塞栓症予防の下大静脈フィルター挿入などである。

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はじめに

 最近の虚血性心疾患の診断と治療には目をみはるものがある。

 PTCAは冠硬化症に対する新しい治療法である。1977年にGrüntzigが虚血性心疾患の患者に特殊なballoonを使って冠動脈狭窄病変の拡張に初めて成功した1,2)。虚血改善効果は著明であり虚血性心疾患の治療法の1つとして加わった3〜5)。経験の増加と熟練の器具の改良6)により成功率の上昇と合併症の減少がはかられ適応はますます広がった。

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はじめに

 経皮的血管拡張術(percutaneous transluminal angio—plasty:PTA)は,1964年にDotterとJudkins1)により末梢の動脈硬化性閉塞症の治療法として開発され,1974年Grüntzig2)は新しい拡張用バルーンカテーテルを考案し,1978年に腎動脈狭窄に起因する腎血管性高血圧症に対して,この拡張用バルーンカテーテルを使った経皮的腎動脈拡張術(percutaneous transluminal renalangioplasty-PTRA)を報告3)して以来,PTRAは他の領域におけるPTAと同様に,より安全に行えるようになり急速に発展・普及した。近年,長期成績についての報告4〜6)もみられるようになり,外科手術に代わりうる治療法として注目されている。本稿では,PTRAの適応,方法,成績ならびに合併症について限界にも言及しながら,症例を呈示して概説する。

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まえがき

 経皮的血管拡張術(percutaneous transluminal angio—plasty,PTA)は,現在,下肢動脈・冠状動脈・腎動脈をはじめとして,多くの動脈あるいは静脈の閉塞性疾患に対し,外科的治療法に替わるものとして広く施行されている。このPTAは1961年にDotterとJudkins1)が腸骨動脈および大腿動脈において施行したが,はじめは広くは受け入れられなかった。しかし,1974年にGrüntzig2)がballoon catheterによる方法を考案して以来,文字どおり世界中で施行されるようになり,次々と他の血管の拡張へと応用されてきている。

 このGrüntzigらによって改良されたballoon catheterによるPTAは成功率も高く,長期予後も外科的療法に劣らず,また侵襲が少ないという点できわめて優れているが,それでも施行不能症例や合併症などが皆無ではない。現在のPTAはそれなりに頂点に達しており,今以上にPTAの成績を向上させるためには新しい手法の導入が必要であり,またPTAの現状を上分理解しその適応と限界を把握することが次の飛躍のための準備として必要と思われる。ここでは末梢動脈の中でも腸骨大腿動脈系のPTAに焦点をしぼって,その適応と限界について検討する。

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はじめに

 Dotter1),Grüntzig2)によって開発されたPTAの技術は近年めざましい発展を遂げつつあるが,血管カテーテルを用いたこの技術は,動脈系のみならず,静脈系にも応用することができる。とりわけ本法は肝部下大静脈閉塞症の治療手段として極めて優れた方法といえる。

 本邦では,肝静脈の閉塞のみによるBudd-Chiarisyndromeはまれで,大部分の症例は肝部下大静脈の閉塞を伴っており,また欧米の症例に比して慢性の経過をとるのが特徴であるが,放置すると肝硬変,肝癌を高率に合併する予後不良の疾患である。X線学的に,肝部下大静脈閉塞症は,①膜様閉塞症,②区域閉塞症,に大別することができる。本疾患に対する外科的治療法として,直達手術,バイパス手術を含め,様々な術式が試みられているが,手術侵襲が大きく,術死する例も多く,必ずしも良好な成績とは言いがたい。一方,PTAの技術を応用すれば小さい侵襲で,経皮的カテーテル操作を行うことにより,膜様閉塞症のみならず,区域閉塞症に対しても容易に閉塞部を開通することができ,現在のところわれわれは重篤な合併症を経験していない。したがつて,PTAは本疾患に対する第一選択の治療法と言えるのではあるまいか。今回は,われわれが経験した肝部下大静脈閉塞症8例について,その治療手技,治療成績について述べてみたい。

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はじめに

 経皮的冠動脈形成術(PTCA)は,1977年にGrüntzigが初めて狭心症例に臨床応用し成功して以来,冠動脈の狭窄性病変に対する画期的な治療法として欧米を中心に急速に普及した。米国立心肺血液研究所(NHLBI)のPTCA登録症例数も増加の一途をたどり,1979年には6施設,205例であったのが,1984年の発表では105施設,3,079例になった1)。1984年の1年間に全米で施行されたPTCAの総数は,推定で85,000例に昇るともいわれる2)。米国心臓学会(AHA)年次大会において発表されたPTCA関連の演題数も1982年には24題であったのが,1985年10月には68題とほぼ3倍に増加し,近年,PTCAに対する関心が一段と高まっていることを物語っている。本邦においても1985年12月末までの集計3)で,PTCAを施行した施設は112に上り,このうち100例以上の症例を経験した施設は15を数えた。この集計によると施行症例数も累計5,670例に達し,その普及の速さには驚くべきものがある。器具の改良や技術の進歩に伴い成績も向上し4),適応となる対象も大幅に拡大されてきており,今後PTCAの有用性はますます高まっていくものと思われる。反面,当初適応とされなかった難度の高い症例に対して施行した場合の成功率の低さや危険性なども明らかにされつつあり,また追跡症例が増えるにつれ,再狭窄を生じる例が決して少なくないことが判明するなど,種々の問題点も論じられている。本稿では,現状におけるPTCAの問題点について言及すると共に,現在試みられつつある新しい手技も含めて,同法の今後の展望について述べてみたい。

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 一般に異なる疾患単位として考えられている肥大型心筋症(HCM)と拡張型心筋症(DCM),あるいはDCM類似の症例が混在した2家系を対象に,ASH(asymme—tric septal hypertrophy)とHLA(human leukocyteantigen)タイプに注目し分析した。なお発端者は,理学所見,臨床諸検査,心内膜心筋生検を含む心カテーテル検査で特定心筋疾患を除外し診断した2症例である。家族調査は,問診,理学所見,心電図,心エコー図およびHLA分析を用いた。

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 ファロー四徴症術後の右室機能については,多くの報告があり,右室ポンプ機能は安静時1)および運動負荷時2)においても異常であるとされている。しかし,これらは右室流出路をパッチを用いて修復したりあるいは大きな右室切開がなされている例における検討である。導管を用いて右室流出路を再建する手術においては,たとえ術直後の右室/左室収縮期圧比が同程度であっても,手術死亡は他のパッチ使用群に比して有意に高いと報告されている3,4)。一方,導管使用例においては術後遠隔期の安静時および運動負荷時の血行動態も正常ではないと言われている5,6)。しかしながら,弁つき導管にて右室流出路再建術後の右室機能に関する報告は認められない。

 著者らは導管を用いて右室流出路を再建したファロー四徴症術後例の右室容積,右室機能を求め,導管を用いずに修復した例のそれらと比較検討したので報告する。

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 慢性気管支炎,喘息および肺気腫などを代表とする末梢気道に病変を伴う慢性閉塞性肺疾患は,大気汚染や人口の高齢化あるいは喫煙などの影響により増加傾向にある。これらの疾患は症状出現までにかなりの時間が必要であり,息切れなどの症状を発して病院を訪れた時には小気管支,細気管支すなわちsmall airwayにすでに非可逆的な病変を生じていることが多い。したがってsmall airwayの閉塞状態が可逆的な早期の病変の際に,それを如何に検出するかが問題となるが,最近このsmall airwayの病変を早期に検出する方法の1つとしてclosing volumeの検査が普及し,ルーチン検査にとり入れられてきた。

 closing volumeは加齢に従いその値が上昇することが認められており,その標準値および予測式については年齢のみから検討している報告が多い1〜5)。今回,われわれは年齢のみならず,その他の生体情報因子(身長,体重,体表面積)との関係をも検討し,20歳から79歳にわたる健康成人を対象として統計学的検討をもとに,closing volume検査から得られる各パラメーターの標準値ならびに予測式を作成した。

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 肺高血圧症は,肺内ガス交換の障害を伴う肺疾患に基づくものと,原発性肺高血圧症(PPH)や肺栓塞症のように肺血管自体に問題のあるものに,大きく分類することができる。いずれの場合も,肺高血圧の存在は右室後負荷を増大させ,終局的には右室機能不全をもたらす結果となる1,2)。PPHや肺栓塞症はもちろん,慢性肺疾患においても肺高血圧の有無および程度は,その病態や予後と密接な関係があると言われている3)。肺高血圧症に対する血管拡張療法の試みは,その成立機序に肺血管収縮が強く関与しているという考えに基づくものであるが4),肺血管に対して特異的に作用するという薬剤はなく,これまでにいくつかの薬剤の効果が報告されてはいるが,血管拡張薬の系統的な研究は見られていない。今回われわれは,経口投与が可能な血管拡張薬を,作用部位の見地より動脈系と静脈系にわけ,肺高血圧症に対する適応を明らかにすることを目的として検討を試みたので,報告する。

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 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy,DCM)の予後は明らかに不良で,死亡例の約半数は突然死である1)。その機序については必ずしも明らかではないが,ほとんどが重篤な不整脈によるものと考えられている。

 本症の心筋には,変性,線維化および肥大などの病変を広範に認めるが,これらの心筋病変の広がりや程度によっては,刺激伝導系にも種々の障害を起こし得る2)

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 心筋梗塞の経過観察を行う際に,左室駆出率(Leftventricular ejection fruction:LVEF)は左室の収縮機能を示す指標の一つであり,その重症度や予後を判定する上で重要な情報を与える。従来より,LVEFは左室造影法から観血的に求められてきたが,近年,心エコー図法やRI心血管造影法(RCG)により非観血的に評価されるようになった。しかし,それらの方法は高価な機器を要し,高度な技術を要するために,広く一般臨床に応用されていない。それに対し,心電図は上記の検査法に比べ安価な機器であり,心臓の電気現象を容易に,かつ再現性よく反復して記録できることから,一般臨床の場で広く使用されている。それために,10数年前より心電図所見から心筋梗塞におけるLVEFを推測する試みがなされ,数種のcriteriaについて,その臨床的評価が行われてきた。近年,標準12誘導心電図(ECG)において,Palmeriら1)やWagnerら2)が作成したQRSscoring systemが注目され,そのQRS scoreとLVFEとの相関性についていくつかの追試が行われた。その中で,Youngら3)はQRS scoring systemは従来のcri—teriaより良い相関性を示し,臨床的に有用であるとされながらも実用上限界があることを指摘した。一方ベクトル心電図を用いた方法では,報告例が少なく,その臨床的評価について十分な検討がなされていない。ベクトル心電図は心臓の電気的現象を立体的かつ総括的に表現でき,LVEFのような左心全体としての心機能を示す指標について評価する際には,ECGより有利であると考えられる。したがって,Frank誘導ベクトル心電図(VCG)を用いたQRS scoring systemを作成することにより,LVEFに対する相関性をさらに向上させることが可能であると予想された。そこで,本研究ではVCGにおけるQRS波を眉いた各種パラメータとLVEFとの相関を求め,LVEFを最も良く反映するようにQRS scoring systemを作成し,その臨床的評価を検討することを主要な目的とした。

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 運動負荷心電図による冠動脈疾患の診断には,主としてST低下を基準とする方法が用いられておりその有用性は広く認められている。しかしながら肥大心,薬物投与による偽陽性,一枝病変における陽性率の低さなど問題点もあり,診断のsensitivity,specificityの向上のために,R波,U波の変化を加えての判定法などが試みられている。しかしながら,運動中のQ波に関する報告は少なく,その意味についても明確な一致した意見はない。そこで我々は,運動負荷によるQ波の変化を観察し,その臨床的有用性について検討した。

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 心拍数の日内変動は,身体活動状態に影響を受け,個人差および日差変動が大きい。しかし,安静時の心拍数は各個人特有の自律神経トーヌスを反映し,一定の日内変動を示すことが考えられる。本研究は,安静時自律神経トーヌスの日内変動をホルター心電図による時刻別最低心拍数変動により推定し,運動および加齢の自律神経トーヌスに及ぼす影響を検討したものである。

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 arrhythmogenic right ventricular dysplasia (ARVD)は右心室より発生するrecurrent VT,心血管造影による右心室の拡大および壁運動異常を呈する疾患で,現在まで約60例報告されているが,いまだ明確な家系内発生の報告はない。著者らは23歳男性のARVDを経験し,その伯父もARVDを認め,かつ突然死および不整脈の高度の集積性のある家系を経験した。本症と遺伝との関係は,本症が心筋症の一亜型である可能性もあり,心筋症の遺伝形式との類同性の面から考察されるべきである。また本症は比較的若年者に多いと考えられてきたが,本家系例では比較的高齢者の突然死が多く,ARVDと診断された発端者の伯父が現在(55歳)まで軽微な自覚症状のみで経過してきたことをあわせ考えると,高齢者の突然死にもARVDの関与が否定できず,本症は遺伝との関係も含めた検討を要するものと考えられる。

 1978年,Frankら1)が右心室心筋症に合併したrecur—rent ventricular tachycardiaの4例を報告し,この症候群をarrhythmogenic right ventricular dysplasia (ARVD)と名づけて以来,現在まで約60例の報告がなされているが,いまだ明確な家系内発生の報告はない。今回著者らは,23歳男性のARVDを経験し,その伯父にもARVDを認め,家系内に多くの突然死が存在した一家系を見出したので報告する。

基本情報

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呼吸と循環
34巻9号 (1986年9月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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