臨床婦人科産科 61巻6号 (2007年6月)

今月の臨床 子宮頸癌の治療─現状と展望

子宮頸癌の疫学と動向 岩坂 剛
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はじめに

 IARC(International Agency for Research on Cancer)によると,2000年における全世界の子宮頸癌罹患数は約47万人と推定され,そのうちの約半数の23万人以上が死亡している.一方,同じ臓器に発生する子宮体癌の罹患数は約19万人,死亡数は約4.5万人と推測されており,先進欧米諸国における分布と大きな相違を示している.世界的レベルでは,体癌対策より頸癌撲滅のほうが未だ優先課題となっている.

 本稿では,本邦における頸癌罹患状況を世界の事情と比較するとともに,疫学面での最近の動向について概説する.また,頸癌発症の原因と考えられているヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染の疫学と今後の活用について考察する.

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はじめに

 近年の初交年齢の低下や若年者の性行為の多様化により,子宮頸部病変の若年化傾向が顕著となってきた1, 2).また,集団検診や定期検診の普及に伴って進行頸癌が減少した反面,前癌病変や初期癌が増加し,子宮を温存する保存的治療の重要性が高まりつつある3~7).これらの頸部病変を見逃さないためには検診が最も重要で,病巣部の的確な細胞診,組織診が不可欠である.一方,平成16年の厚労省による頸がん検診対象年齢の20歳以上への変更と隔年検診の通達以後,検診体制や受診率に変化が生じている.本稿では,頸がん検診の現状とその問題点について,集団検診の実態や診断法を中心に概説する.

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はじめに

 パパニコロウにより子宮頸部病変の診断に細胞診が用いられたことに端を発し,CIN(cervical intraepithelial neoplasia : 子宮頸部上皮内新生物)に対する絶え間ない研究によりその自然史が徐々に解明されてきた.特にヒトパピローマウイルス(HPV)感染と子宮頸部病変の関連性についての研究は,HPVワクチンによるCIN発症予防の臨床応用までたどり着いた.その一方で,子宮頸部上皮内病変の取り扱い方は国際的に必ずしも一致していない.

 そこで本稿では,CINの診断と取り扱い方についての現状を整理し,わが国で行われた文部科学省特定領域研究「HPV感染と子宮頸部発がんに関するコホート研究」(研究代表者 : 吉川裕之)の中間解析から,CINの取り扱いの将来的な展望を述べていきたい.

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はじめに

 子宮頸癌では,がん検診の普及などにより,早期癌症例の割合が増加した.また,若年者子宮頸癌の増加が指摘され,根治性と機能温存を両立させた治療法への関心が高まりつつある.

 一方,子宮頸癌に対する治療法は欧米と本邦との間に差異がみられる.National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインでは,広汎子宮全摘出術の適応は臨床進行期Ia2期からIIa期症例であるのに対して1),本邦では一般にIIb期までを手術適応としている.放射線療法に関しても,欧米の照射法は低線量率で中央遮蔽を行わないのに対して,本邦では高線量率で中央遮蔽を行う.したがって,欧米のエビデンスをそのまま本邦に持ち込むことは困難である.

 Quality of life(QOL)に対する社会的要求が強い現状にあっては,治療の個別化が重要であり,治療法の十分な理解が求められる.本稿では,子宮頸癌治療法に関する最近の知見について進行期別に概説する.

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はじめに

 子宮頸癌取扱い規約(以下,規約)では,FIGOによる臨床進行期分類に関して「……CT, MRIなどによる検査結果は治療計画決定に使用するのは構わないが,進行期の決定に際しては,これらの結果に影響されてはならない」と明記している.したがって,本疾患についてCTやMRIを用いた画像診断を論じるのは,本筋からいえば付録の部分であり,殊に進行期診断というのはFIGOに背反している.われわれ画像診断医がステージングに触れる場合,規約とまったく同じようには表現できないという前提があり,それは特にIIIbやIVaに顕著に現れる.これらの乖離も含めて,画像診断の実際に触れてみたい.

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はじめに

 広汎子宮全摘術は本教室の第三代教授岡林秀一により確立され(岡林術式),その基本理念は子宮頸癌の浸潤様式を考慮し,子宮を支持している靱帯をできるだけ遠位部で切断して子宮を摘除することにある1).そのためには,子宮を支持している前部(膀胱子宮靱帯の前層と後層),中部(基靱帯),後部(仙骨子宮靱帯と直腸腟靱帯)の3つの靱帯を正確に分離する必要がある.基靱帯は,直腸側腔と膀胱側腔を開放することで明瞭となり,安全に処理することができる.膀胱子宮靱帯を前・後に剥離・切断することによって膀胱と尿管を腟管から分離させ,さらに膀胱子宮靱帯後層を切断すると,腟管を切断したいと思う位置まで剥離・切断することができる.また,リンパ節を系統的に郭清することにより,転移した病巣も含めて広範囲に病巣を切除することがこの術式の基本的な考え方である.今日まで,その基本は何ら変わっていないが,術中・術後の合併症を軽減するために種々の工夫がなされている.術後の合併症としては出血,膀胱腟瘻・尿管腟瘻,膀胱麻痺,骨盤死腔炎,肺塞栓症,リンパ嚢腫,リンパ浮腫,腸管閉塞などが挙げられるが,本稿では,出血回避と神経温存について主に述べる.

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はじめに

 若年の子宮頸癌患者の増加および晩婚化という社会的背景が重なり,妊孕能温存治療を希望されるケースが増えてきている.現在のところ妊孕能温存が希望される場合に,臨床進行期Ia1期までの微小浸潤扁平上皮癌に対しては子宮頸部円錐切除術の適応が広くコンセンサスとして得られている.しかしながら,Ia2期以上の扁平上皮癌および0期を超える腺癌に対しては,標準的治療として,骨盤リンパ節郭清術を含めた根治的な子宮の摘出術が行われている.近年,初期の浸潤子宮頸癌(臨床進行期Ia2期,Ib1期)を対象に,子宮頸部円錐切除術と広汎子宮全摘出術との中間的な術式として,子宮頸部を基靱帯を含めて摘出し,子宮体部を残すことにより妊孕能の温存をはかる広汎性子宮頸部摘出術(radical trachelectomy)が行われるようになってきた.最近では,その治療予後は広汎子宮全摘出術と遜色がないということが報告されている1).本稿では,本術式の歴史,治療成績および,近年報告され始めた産科的予後についても概説する.

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はじめに

 腹腔鏡下広汎子宮全摘術に関しては,これまでの歴史的背景をおさらいする必要がある.すなわち1980年代後半に子宮頸癌I/II期症例を対象に,子宮体部を温存し,将来の妊孕能温存を可能にした子宮頸部切断術に骨盤リンパ節郭清を併用する低侵襲手術1)が提唱され,以来,腹腔鏡下に行う術式が婦人科がん症例に積極的に行われるようになってきた.当初のlaparoscopy─assisted radical vaginal trachelectomy(LARVT)はフランスから欧州,カナダ,米国などに発展的に施行施設が拡大し,世界中で適応症例の検討がなされるようになってきている2~4)

 そのような背景のなか,20世紀初頭盛んに行われた腟式広汎手術(VRH)5)と1990年代の腹腔鏡下骨盤リンパ節郭清を併用する低侵襲手術(LAVRH)も限られた施設ではあるが実施され,本格的に婦人科がんへの腹腔鏡下に行う低侵襲手術の応用の時代が到来した6).子宮摘出に関しては従来からの腹式(ARH),腟式(VRH)に加えて,さらに腹腔鏡下に行う手術が良性疾患を中心に盛んに行われるようになり,子宮体癌へのLAVHの応用の臨床試験7)も実施され,2006年のSGO,ASCO,IGCSなどで大々的に公表されその有用性が実証された.本来,子宮頸癌の摘出手術の主流は腹式広汎手術であり,子宮頸部切断術にも腹式に行う術式(LARAT)8)も発表され,現在応用施設がわが国も含め世界的にも拡大の様相である.

 また,最も難題であった全腹腔鏡下広汎子宮摘出術(LRH)に関しても1990年代後半から試みられ,標準治療である腹式広汎手術との比較もされるようになっている9~16).このような歴史的変遷を経て,婦人科がん手術における低侵襲手術の応用は今後ますます盛んになると予想され,機能温存術式との併用も含め,症例の予後ならびにQOL改善に寄与するものと考える17).そこで,最も最近注目されている腹腔鏡下広汎子宮全摘術(LRH)について,その利点とともに安全性と根治性に関して考察する.

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はじめに─子宮頸癌治療における化学療法の位置づけ

 従来,頸癌で化学療法(化療)の対象は,進行例や再発例であり,これらに対しcisplatinが高い臨床的効果があることが確認され1),これをkey drugとした種々の併用療法が行われるようになった.その後,これらの治療成績を基盤として手術や放射線療法(照射)を行う前に施行する化療(neoadjuvant chemotherapy : NAC)や,化療同時併用放射線療法(concurrent chemoradiation : CCR)が提唱されるようになった.本稿では,これらとともに術後化療(adjuvant chemotherapy)の治療成績を概観し,頸癌治療における化療の意義について考察する.また,頸部腺癌の化療にも言及したい.

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はじめに

 本特集においてわれわれに課されたテーマは,「稀な子宮頸部悪性病変について臨床医が留意すべき病態についてまとめる」ということである.稀といってもきわめて稀なものになるとわれわれ自身の経験も少なく,わずか1~2例の経験でその腫瘍の全体像にかかわるようなことに言及することは危険である.そこで,ここでは比較的稀ではあるが,いずれもわれわれ自身少なくとも数例以上の経験があるすりガラス細胞癌,小細胞癌,そしていわゆる悪性腺腫について,治療や予防の今後を考えるためにという視点を持ちながら病理側からみた重要な点を述べてみたい.したがって,human papilloma virus(HPV)との関連についても触れる.ここに述べる腫瘍は比較的稀ではあるが,婦人科医ならばいつどこで患者に遭遇してもそう驚くにあたらない程度の頻度では発生しているはずであるので,病理側の考え,特に病理側の診断上のジレンマともいうべきことを知っておいてもらうことは意義のあることと思われる.

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はじめに

 ヒトパピローマウイルス(以下,HPV)が子宮頸癌の発がんに深く関与していることがわかって以来,この四半世紀の間HPVワクチンの研究が精力的に行われてきた.そして最近になって,ようやく初のHPVワクチンが製剤化され,昨年欧米で認可され,本邦への導入も間近となっている.しかし,現行のHPVワクチンはまだ多くの課題を抱えており,製剤化されたとはいえ,まだ第一歩を踏み出したばかりである.本稿では,現状のHPVワクチンの課題を挙げ,本邦における活用法と今後の展望を考えたい.

連載 産婦人科エコー 何を考えるか?・16

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 ここに示したのは,妊娠14週妊娠定期健診時に胎児腹腔内が大きな嚢胞に占拠されてみえるとして精検を依頼された症例である.この断面には大きな嚢胞(*印)の形成により膨隆した腹部と,それにより圧排された頭部(小矢印)で羊水腔内が占拠された状態の断層像がみられる.そこで問題となるのは腹腔内嚢胞像の発生原因であろう.

 本シリーズの2(60巻2号)で胎児下腹部骨盤腔内にみられた嚢胞像を紹介した.その例では,嚢胞の大きさが本例ほど大きくはなかったため,その発生部位と形態を認識でき,その結果から膀胱そのものであろうと推定することができた.今回の例は,すでに嚢胞が巨大化して占拠性となっているため,発生臓器を判定することは困難といってよい.しかし,詳細に観察することで,嚢胞像の骨盤腔腔内に入った部分に,後方に連続した小嚢胞部(矢印)を描出することができた.そこで,これらの嚢胞像は極端に拡張した膀胱と,それに連続した後部尿道の拡張像であろうと考えられた.後部尿道弁による膀胱出口部閉塞では膀胱への尿貯留が進行すると,下方の出口部方向には後部尿道の拡張が,あるいは上方の入口部方向には尿管の拡張がみられてよいことが知られている.以上より,本例は尿道閉塞による巨大膀胱と診断することができた.

連載 OBSTETRIC NEWS

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 子宮内で胎便を排出する胎児は約10~15%である.このなかで,口腔咽頭部と鼻咽頭の吸引を出生直後に行っても胎便吸引症候群(MAS)のために死亡する児は約4%である.MASが原因で呼吸不全,アシドーシス,胎児低酸素血症,持続する肺高血圧症が発症する.これらの続発症は胎便が胎児肺に吸引され,化学的肺炎が起こったときに発症する可能性がある.過去30年間,児の肩甲の娩出前にMASの率を減少させるためにDeLeeカテーテルによる気道吸引が行われてきた.この手技の利点に関しては最近10年間くらい論争があり,結論は出ていない.しかし,胎便による羊水汚染があった場合は,全例ルチーンに児娩出前にDeLeeカテーテルによる気道吸引を行うのが標準的医療とは断定できなくなっているのも事実である.今回は,この問題に関する最近の文献を紹介する.

連載 病院めぐり

松江市立病院 佐藤 宗保
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 松江市立病院は昭和24年に料亭「望湖楼」の建物を買収してそのまま病院とし,わずか30床の松江市民病院として誕生しました.当初は内科,外科,産婦人科,小児科,皮膚泌尿器科の5科でした.昭和31年に「松江市民病院」を「松江市立病院」と名称変更し,昭和34年には100床の当時としては珍しい鉄筋建設病棟を竣工しました.その後も何度か増改築を繰り返し,昭和54年には診療科16科,病床数476床の総合病院になりました.しかし,建築してから40年以上経ち老朽化が目立つようになり,平成17年8月に市街地の南のはずれ,小高い丘の上に新病院が建設されました.地下1階,地上8階,免震構造,電子カルテシステムを備え,緩和ケア病棟,救急病棟を持つ病床数470床,診療科27科の病院になり,常勤医は70名,研修医は10名です.

 松江市は島根県の県庁所在地で,人口は約20万人弱,宍道湖のほとりにある風光明媚な城下町です.旧病院は前身の名のごとく,湖に面した景観の素晴らしい病院で,7階の医局から朝にはシジミ取りの何十艘という小舟の眺めを,夕には日本一とされる宍道湖のきれいな夕日を楽しむことができ,心が洗われたものです.新病院も古墳に隣接し,宍道湖,そして湖沿いの市街地が一望でき,一般市民もこの眺めを求め8階の食堂にわざわざ食事に来るといいます.

浜田医療センター 小林 正幸
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 当院は明治31年に浜田衛戌病院として開設され,昭和20年には国立浜田病院,平成16年4月からは国立病院構浜田医療センターとなり,島根県西部地域の中核的医療機関として地域医療に貢献しています.また平成21年には新病院となり浜田駅北側に移転することが決まっており,現在その準備中です.新病院のコンセプトは病棟と外来の一体化であり,今までにない病院ができるものと思われます.当院は急性期病院としての体制が整備され,地域医療支援病院,救命救急センター,地域がん診療連携拠点病院,臨床研修指定病院,病院機能評価機構認定病院,へき地医療拠点病院などの施設認定を受けています.浜田医療センターは現在354床,診療科目は22科で,医師数は常勤医42名,非常勤医10数名です.

 ここまでの説明では充実した病院のようですが,現在,深刻な医師,看護師,助産師不足問題を抱えています.浜田市は島根県西部の日本海に面した町で,人口は合併により6万人余りとなりましたが,いわゆる日本海側の田舎の町で,気のきいた遊戯施設,百貨店などはありません(釣り,スキー,温泉などが好きな人にはよいところなのですが……).また,高次病院も,最も近い出雲の病院でも車で2時間かかります.学会で東京,大阪などに行くのも交通の便が悪く一苦労です.このような地方の病院を希望してくる医師は少なく,大学からの派遣に頼っているのが現状ですが,地方の大学の医師不足のあおり受けて徐々に医師の数も減少しています.

連載 Estrogen Series・74

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 今回は,前回に引き続いてWHI(Women's Health Initiative)からのデータをさらに詳細に分析したレポートをご紹介したい.対象となった人口は前回と同様の,過去に子宮摘出術を受けた女性10,739人で,その平均年齢は63.6歳である.これらの女性を二分し,一方には抱合型エストロゲン(conjugate equine estrogen : CEE)0.625mgを,他方には外見上同一のプラセボを投与し6.8年追跡した.この追跡は40か所のメディカルセンターで1993年に開始された.

 その結果,冠動脈疾患(心筋梗塞による死亡+非致死性冠動脈疾患の総数)の発生は,両群間で差異はみられなかった.しかし,年齢50~59歳のグループではCEE群における冠動脈疾患の減少がみられた(hazard ratio=0.63,95%信頼間隔0.36~1.08).しかし,統計的有意差はなかった.その原因はこの年齢層においては冠動脈疾患の発生率が0.21%と低率で,十分なpowerが得られなかったためである.

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症例

 患者:85歳

 主訴:全身倦怠感

 妊娠分娩歴:1経妊・1経産

 既往歴:高血圧,変形性脊椎症

 家族歴:数年前に同居の姉が原因不明の呼吸障害で死亡している.

 生活歴:風呂の二度炊きを行っていた.

 現病歴:2005年8月頃より食欲不振,発熱,倦怠が出現した.10月,肺炎を疑われ,前医(呼吸器内科)に入院,抗生物質投与にて解熱傾向がみられたが,精査にて胸・腹水,心嚢液の貯留と腹腔内の腫瘤を指摘された.10月中旬に当科に紹介され受診した.悪性卵巣腫瘍疑いにて7日後に入院となった.

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 卵管捻転は稀な疾患で,生殖年齢の女性に好発する.卵管および卵巣の不可逆的な障害を避けるために迅速な診断が望ましいが,特徴的な所見に乏しいため診断はしばしば遅れる.われわれは,16歳女児の卵管捻転の症例を経験したので報告する.患者は下腹部の疝痛で発症し,排尿時痛を伴っていた.次第に右下腹部痛となり発熱を認め,当院小児科に入院となった.腹部エコー検査にて下腹部に球形の嚢胞状の腫瘤を認め,婦人科疾患が疑われ当科に紹介された.傍卵巣嚢腫茎捻転の可能性が考えられ,緊急腹腔鏡下手術が施行された.右卵管が嚢胞状に腫大し2回捻転しており,炎症,壊死様所見を認めた.捻転解除後に保存手術を試みたが,観察後,卵管摘出術を施行した.卵管捻転の原因については不明である.

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編集後記 神崎 秀陽
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 周産期医療現場が大きく変化してきており,学会統計が示すように,全国の分娩取り扱い施設数の減少傾向が続いています.そして病院勤務の産婦人科医師数の減少には歯止めがかかりません.最近では,これまでなんとか維持されていた大都市圏でも問題が顕性化してきました.必然的に地域に残った病院での分娩数は増加していますので,勤務医師の負担はますます大きくなっています.医師の労働環境を改善しながら現在の周産期医療レベルを維持する方策として,分娩施設の集約化が行政や医療側から提唱されて一部で進行していますが,一般の意識とは大きなギャップがあります.さらに問題を複雑にしているのは,病院勤務医師と個人開業医師の間で,また医師と助産師の間でも利害と問題認識が必ずしも一致していないことです.行政も医師や助産師の不足が根底にあることを認識しているにもかかわらず対策は遅々として進んでいませんし,周産期医療を担う人材確保が非常に厳しい現状では打つ手がありません.

 他方,婦人科腫瘍の治療や生殖医療に関しては,治療方法・成績などの情報公開が個々の施設単位でも進んできていますので,地域によっては必然的に施設の集約化が起きると予想され,実際に大都市圏での不妊治療施設などには淘汰の兆しがあります.これら二領域の診療に関しては,患者側にある程度の時間的・空間的な余裕があるため集約化にはあまり問題はなく,治療成績の向上も期待できます.しかし2次,3次の周産期センター数が絶対的に不足しその連携にも課題が多い周産期医療では,個人の献身的な努力でなんとか維持されている各地域の施設を維持するための十分な支援を行い,同時に地域周産期センター(2次)を早急に確立する方策を強力に進めなければ,産婦人科医の世代交代が起きる近い将来に危機的な状況はさらに悪化するでしょう.

基本情報

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臨床婦人科産科
61巻6号 (2007年6月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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