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周産期医療現場が大きく変化してきており,学会統計が示すように,全国の分娩取り扱い施設数の減少傾向が続いています.そして病院勤務の産婦人科医師数の減少には歯止めがかかりません.最近では,これまでなんとか維持されていた大都市圏でも問題が顕性化してきました.必然的に地域に残った病院での分娩数は増加していますので,勤務医師の負担はますます大きくなっています.医師の労働環境を改善しながら現在の周産期医療レベルを維持する方策として,分娩施設の集約化が行政や医療側から提唱されて一部で進行していますが,一般の意識とは大きなギャップがあります.さらに問題を複雑にしているのは,病院勤務医師と個人開業医師の間で,また医師と助産師の間でも利害と問題認識が必ずしも一致していないことです.行政も医師や助産師の不足が根底にあることを認識しているにもかかわらず対策は遅々として進んでいませんし,周産期医療を担う人材確保が非常に厳しい現状では打つ手がありません.
他方,婦人科腫瘍の治療や生殖医療に関しては,治療方法・成績などの情報公開が個々の施設単位でも進んできていますので,地域によっては必然的に施設の集約化が起きると予想され,実際に大都市圏での不妊治療施設などには淘汰の兆しがあります.これら二領域の診療に関しては,患者側にある程度の時間的・空間的な余裕があるため集約化にはあまり問題はなく,治療成績の向上も期待できます.しかし2次,3次の周産期センター数が絶対的に不足しその連携にも課題が多い周産期医療では,個人の献身的な努力でなんとか維持されている各地域の施設を維持するための十分な支援を行い,同時に地域周産期センター(2次)を早急に確立する方策を強力に進めなければ,産婦人科医の世代交代が起きる近い将来に危機的な状況はさらに悪化するでしょう.
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