連載 産婦人科エコー 何を考えるか?・16
胎児の各部にみられる嚢胞像
竹内 久彌
1
1愛和病院画像診断部
pp.777-779
発行日 2007年6月10日
Published Date 2007/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101378
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ここに示したのは,妊娠14週妊娠定期健診時に胎児腹腔内が大きな嚢胞に占拠されてみえるとして精検を依頼された症例である.この断面には大きな嚢胞(*印)の形成により膨隆した腹部と,それにより圧排された頭部(小矢印)で羊水腔内が占拠された状態の断層像がみられる.そこで問題となるのは腹腔内嚢胞像の発生原因であろう.
本シリーズの2(60巻2号)で胎児下腹部骨盤腔内にみられた嚢胞像を紹介した.その例では,嚢胞の大きさが本例ほど大きくはなかったため,その発生部位と形態を認識でき,その結果から膀胱そのものであろうと推定することができた.今回の例は,すでに嚢胞が巨大化して占拠性となっているため,発生臓器を判定することは困難といってよい.しかし,詳細に観察することで,嚢胞像の骨盤腔腔内に入った部分に,後方に連続した小嚢胞部(矢印)を描出することができた.そこで,これらの嚢胞像は極端に拡張した膀胱と,それに連続した後部尿道の拡張像であろうと考えられた.後部尿道弁による膀胱出口部閉塞では膀胱への尿貯留が進行すると,下方の出口部方向には後部尿道の拡張が,あるいは上方の入口部方向には尿管の拡張がみられてよいことが知られている.以上より,本例は尿道閉塞による巨大膀胱と診断することができた.
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