今月の臨床 子宮頸癌の治療─現状と展望
広汎子宮全摘術における術後障害軽減の工夫
高倉 賢二
1
,
樋口 壽宏
1
,
藤井 信吾
1
1京都大学大学院医学研究科器官外科学・婦人科学産科学
pp.807-811
発行日 2007年6月10日
Published Date 2007/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101384
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はじめに
広汎子宮全摘術は本教室の第三代教授岡林秀一により確立され(岡林術式),その基本理念は子宮頸癌の浸潤様式を考慮し,子宮を支持している靱帯をできるだけ遠位部で切断して子宮を摘除することにある1).そのためには,子宮を支持している前部(膀胱子宮靱帯の前層と後層),中部(基靱帯),後部(仙骨子宮靱帯と直腸腟靱帯)の3つの靱帯を正確に分離する必要がある.基靱帯は,直腸側腔と膀胱側腔を開放することで明瞭となり,安全に処理することができる.膀胱子宮靱帯を前・後に剥離・切断することによって膀胱と尿管を腟管から分離させ,さらに膀胱子宮靱帯後層を切断すると,腟管を切断したいと思う位置まで剥離・切断することができる.また,リンパ節を系統的に郭清することにより,転移した病巣も含めて広範囲に病巣を切除することがこの術式の基本的な考え方である.今日まで,その基本は何ら変わっていないが,術中・術後の合併症を軽減するために種々の工夫がなされている.術後の合併症としては出血,膀胱腟瘻・尿管腟瘻,膀胱麻痺,骨盤死腔炎,肺塞栓症,リンパ嚢腫,リンパ浮腫,腸管閉塞などが挙げられるが,本稿では,出血回避と神経温存について主に述べる.
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