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はじめに
腹腔鏡下広汎子宮全摘術に関しては,これまでの歴史的背景をおさらいする必要がある.すなわち1980年代後半に子宮頸癌I/II期症例を対象に,子宮体部を温存し,将来の妊孕能温存を可能にした子宮頸部切断術に骨盤リンパ節郭清を併用する低侵襲手術1)が提唱され,以来,腹腔鏡下に行う術式が婦人科がん症例に積極的に行われるようになってきた.当初のlaparoscopy─assisted radical vaginal trachelectomy(LARVT)はフランスから欧州,カナダ,米国などに発展的に施行施設が拡大し,世界中で適応症例の検討がなされるようになってきている2~4).
そのような背景のなか,20世紀初頭盛んに行われた腟式広汎手術(VRH)5)と1990年代の腹腔鏡下骨盤リンパ節郭清を併用する低侵襲手術(LAVRH)も限られた施設ではあるが実施され,本格的に婦人科がんへの腹腔鏡下に行う低侵襲手術の応用の時代が到来した6).子宮摘出に関しては従来からの腹式(ARH),腟式(VRH)に加えて,さらに腹腔鏡下に行う手術が良性疾患を中心に盛んに行われるようになり,子宮体癌へのLAVHの応用の臨床試験7)も実施され,2006年のSGO,ASCO,IGCSなどで大々的に公表されその有用性が実証された.本来,子宮頸癌の摘出手術の主流は腹式広汎手術であり,子宮頸部切断術にも腹式に行う術式(LARAT)8)も発表され,現在応用施設がわが国も含め世界的にも拡大の様相である.
また,最も難題であった全腹腔鏡下広汎子宮摘出術(LRH)に関しても1990年代後半から試みられ,標準治療である腹式広汎手術との比較もされるようになっている9~16).このような歴史的変遷を経て,婦人科がん手術における低侵襲手術の応用は今後ますます盛んになると予想され,機能温存術式との併用も含め,症例の予後ならびにQOL改善に寄与するものと考える17).そこで,最も最近注目されている腹腔鏡下広汎子宮全摘術(LRH)について,その利点とともに安全性と根治性に関して考察する.
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