臨床外科 66巻9号 (2011年9月)

特集 下大静脈にかかわる病態を見直す

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 下大静脈を侵す病態は循環器系への影響のみならず,その還流領域の臓器機能にも大きな影響を与える.したがって,下大静脈を侵す疾患の病態を把握するには,様々な観点からの検討を行う必要がある.また,下大静脈を侵す疾患の治療に際しては,大血管に手術手技が及ぶため,出血などのリスクのみならず,血行遮断時の流入・流出双方への循環器系を中心とした影響を考慮して手術プランを立てていかなくてはならない.

 本特集は下大静脈に焦点を当て,その病態を俯瞰することによって,下大静脈へ手術手技が直接及ぶような外科手術を施行するうえでの問題点を理解できることを狙いとして企画した.

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【ポイント】

◆下大静脈変異は稀であり,多くの場合,自覚症状や身体異常所見を欠くため,カテーテル検査などで偶然発見される.

◆下大静脈奇静脈結合を伴う下大静脈欠損症の場合,治療操作で奇静脈を結紮することは致命的となる.

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【ポイント】

◆下大静脈は日常の画像診断では比較的注目することの少ない部位であり,それゆえ病変の見落としに注意が必要である.

◆CTで下大静脈の評価をする際には,撮像のタイミングが重要である.特に遅延相は必須である.

◆MRIでは造影剤を用いずに血管を評価する方法が複数存在する.

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【ポイント】

◆下大静脈に及ぶ腫瘍の診断にはCT,MRIが有用であり,下大静脈造影は血行動態や側副血行路の確認に優れる.

◆下大静脈造影が手術方針を決定することがある.

◆下大静脈からの選択的静脈造影によって術前シミュレーションが可能である.

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【ポイント】

◆下大静脈閉塞時の側副血行路は大きく4種類の経路と,そのほかに分けて考えると理解しやすい.

◆側副路として椎骨静脈叢が特に重要な役割を演じるが,左性腺静脈と左腎静脈の解剖学的特徴も理解しておく必要がある.

◆先天的な静脈奇形が偶然存在し,それが側副路となる可能性があることを認識しておく.

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【ポイント】

◆下大静脈閉塞による腎血流遮断では,腎虚血再灌流障害による腎機能障害が問題となる.

◆腎虚血再灌流障害とは,虚血再灌流で生じる活性酸素による腎臓の障害である.

◆手術操作で腎血流遮断を行う場合は,腎冷却などによる腎機能保護を考慮する.

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【ポイント】

◆深部静脈血栓症:左総腸骨静脈が骨盤内で圧迫される解剖学的位置関係から,左下肢に生じることが多い.その中枢側進展として下大静脈が閉塞する.

◆下大静脈腫瘍血栓:最も多いのは腎癌の下大静脈内進展で,ときに右心房に到達する.他臓器に転移がなければ手術適応であるが,下肢のうっ血は軽度にとどまることが多い.

◆慢性静脈不全:深部静脈血栓症の後遺症や静脈瘤の際に発症する.問題となる病態は腫脹ではなく皮膚の栄養障害であり,皮膚炎・湿疹や潰瘍を生じる.

〔治療方針〕

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【ポイント】

◆外科手術を前提とした患者における下大静脈血栓症においては,抗凝固療法の困難性や術中操作による血栓遊離からの肺塞栓死をきたしうる.

◆術式に応じて最適な下大静脈フィルター(一時型,選択型,永久型)を適切な位置(腎静脈上下)に留置すべく担当医と十分に相談することが重要である.

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【ポイント】

◆Budd-Chiari症候群の病態の本質は肝静脈(HVs)血の流出障害である.

◆Budd-Chiari症候群の治療は可及的に閉塞下大静脈(IVC)と閉塞HVsを再開通させることである.

◆Budd-Chiari症候群の外科治療において体外循環の補助手段は必須である.

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【ポイント】

◆原発性下大静脈腫瘍では平滑筋肉腫が最も多い.

◆続発性下大静脈腫瘍には,ほかの腫瘍が腫瘍栓として下大静脈内に進展した腫瘍や,ほかの腫瘍が下大静脈に直接浸潤した腫瘍などがある.

◆治療は,原発性腫瘍の場合は外科的切除が最良であり,続発性腫瘍の場合は原発巣に応じた治療方針となる.

◆手術は,下大静脈遮断下に腫瘍摘出を行い,血行再建を行う.

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【ポイント】

◆下大静脈腫瘍栓(Vv3)の存在はoncologic emergencyと捉え,迅速な対応をしなくてはならない.

◆他臓器転移がなく肉眼的に癌の遺残のない手術が可能であれば,Vv3でも比較的良好な予後が期待できる.

◆手術のみでは早期再発は必発であるため,手術と周術期の化学療法などの集学的治療を安全に低侵襲に行う必要がある.

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【ポイント】

◆患者の状態や病期(特に腫瘍栓の高さ)を正確に評価し,手術療法を中心とした治療戦略を立てる.

◆手術のポイントは,根治切除,肺動脈塞栓予防,循環動態維持,出血と臓器虚血をいかに抑えるか,である.

◆術中・術後リスクが高いので,患者・家族に対し十分にインフォームド・コンセントしておく必要がある.

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【ポイント】

◆悪性腫瘍の肝部下大静脈への浸潤がどの範囲にあるかを術前に精査し,治療戦略を決定することが重要である.

◆血行遮断の方法を下大静脈の浸潤範囲によって,部分遮断のみかtotal hepatic vascular exclusionが必要かを決定する.

◆下大静脈切除後の再建法には切除範囲によって単純縫合閉鎖,パッチ再建,ePTFEグラフトまたは自家静脈による置換,非再建がある.

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【ポイント】

◆下大静脈クランプは静脈還流の減少によって急激に心拍出量が減少する.

◆PulseCOは,1心拍ごとに動脈圧波形から連続的に心拍出量を測定できる低侵襲心拍出量測定機器である.

◆本稿では,PulseCO systemから得られたパラメータを参考とした下大静脈クランプ時の術中麻酔管理について紹介する.

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【ポイント】

◆下大静脈・右房進展腫瘍の手術は各専門家によるチーム医療を必要とする領域であり,術中の経食道エコーによる画像情報を共有することが円滑なチームワークを可能にする.

◆腫瘍の形態や位置によって術中に外科手技や補助手段を変更する場合があるため,いくつかの選択肢を準備しておくことが肝要である.

◆経食道エコーによる術中モニタリングは肺動脈塞栓や大量出血などの危機管理が必要とされる場面で早期診断と迅速な対応を可能にする.

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はじめに

 内視鏡的粘膜下剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)の開発によって,より高い癌の完全切除率を得ることが可能となった.高い治療効果を得るには,より精度の高い内視鏡診断が求められるようになり,内視鏡機器は飛躍的な進歩を遂げている.特に,内視鏡画像の高画素化および拡大機能に加え,デジタル法や光デジタル法を代表とする画像強調法によって内視鏡イメージングは急速に向上している.

 デジタル法の1つであるflexible spectral imaging color enhancement(FICE)は2005年に三宅洋一教授(千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター)と故 神津照雄教授(千葉大学医学部光学診療部),フジノン株式会社(現 富士フイルム株式会社)によって共同開発された,分光推定画像を使用した画像強調内視鏡(image-enhanced endoscopy:IEE)である.今後,内視鏡の検査にFICEを併用することで,生検やルゴール散布などによる被検者への負担を最小限にとどめるとともに,より緻密な内視鏡診断(存在診断,範囲診断)が可能になるものと期待される.

 本稿では,このFICEによる上部消化管内視鏡検査における現状について述べる.

読めばわかるさ…減量外科 難敵「肥満関連疾患」に外科医が挑む方法・15

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 今は梅雨の真っ最中.蒸し暑い毎日が続いていますが,皆さま,元気ですかーっ! 元気があれば汗も出る.元気があれば節電できる.

 …というわけで,今回もヨロシクお願いします!

病院めぐり

済生会唐津病院外科 山懸 基維
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 当院は九州の北西部に位置する佐賀県唐津市にあります.平成18年に近隣の東松浦郡の8町と合併し,人口13万人あまりの現在の市となりました.唐津焼,唐津くんち,呼子の活イカなどは全国的にも名前が知られています.開設は昭和9年で,「済生会唐津診療所」として内科,小児科の2科でスタートし,外科は8年後の昭和17年に済生会創立30周年記念事業の一環として開設されました.昭和40~58年は人員不足で休診していましたが,昭和59年に再開されたのちは着実に発展の歩を緩めず現在に至っています.佐賀県北部医療圏の基幹病院の1つとして,当地域の急性期医療の一翼を担っています.

 外科は九州大学大学院消化器・総合外科の関連施設であり,現行の人員は院長を含め7名全員が同医局の出身者です.消化器外科指導医2名,肝胆膵外科高度技能指導医1名,心臓血管外科専門医2名を擁し,ほかに呼吸器外科医1名が在籍しています.加えて,週2回,乳腺専門の外科医を同医局から派遣してもらっています.施設認定は,日本外科学会外科専門医制度修練施設,日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設,心臓血管外科専門医認定機構関連施設,日本がん治療認定医機構認定研修施設,日本乳癌学会関連施設,日本消化器内視鏡学会指導施設を受けています.

ラパロスキルアップジム「あしたのために…」・その⑦

“鉗子・後編” 内田 一徳
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剝離鉗子は剝離を行うものなり.

把持鉗子は把持を行うものなり.

機能を理解し,用途に応じた鉗子を選ぶべし.

実は先月号のコピペなり.

交見室

外科と麻酔 出口 浩之
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 麻酔科医が病院からどんどん去っていき,手術症例を制限せざるを得なくなったというニュースは,最近はあまり聞かれなくなった.実際に充足しているのかどうかは知る由もないが,一部ではフリーター麻酔科医の病院常勤医への回帰も始まったとの噂も耳に入る.ただ,これも事の子細は明らかではない.今回は,公表してもよいのか,あるいは非難されることも覚悟のうえ,外科医である私の日常業務の一端を披露する.

 大学を卒業して医師となってすでに30年が経過したが,このうち麻酔業務に携わらなかったのは研修医1年目のみで,以後,今日に至るまで通常の業務として麻酔業務を行ってきた.昭和50年代後半,研修医2年目の病院でのことだが,現在50歳以上の方々には十分に理解していただけると思うが,当時は麻酔科常勤医が勤務する病院は現在に比べてはるかに少なく,よほど重い合併症がない限り中小病院においては同僚の外科医が麻酔を行い,ほかの者で手術を行う時代であった.

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要旨

症例は51歳,女性.39歳時に左乳癌のため胸筋温存乳房切除術を受けた.組織型は浸潤性乳管癌,硬癌で,進行度はStage Ⅰ(T1,N0,M0)であった.再発の徴候はなかったが,術後11年目にイレウス症状で入院し開腹手術を受けた.回腸末端より90~96cmまで,132~138cmまで,154cmの3か所に腸管壁の肥厚,内腔の狭窄を認めた.2か所で小腸部分切除を施行し,1か所で狭窄形成を施行した.病理診断で乳癌の小腸転移と診断された.術後ホルモン療法を行い,術後3年間生存した.乳癌消化管転移症例でも,生検やQOL改善目的であれば手術適応がある場合があると考えられた.

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要旨

患者は83歳,女性で,主訴は左乳房のしこりであった.乳癌の術前ステージングの目的でPET-CT検査を施行したところ,左乳房以外に骨盤内腸管に集積を認めた.腹部造影CT検査で径4cmほどの石灰化腫瘤を骨盤内に認めた.乳癌根治術と同時に腹腔鏡補助下に手術を施行した.腫瘍はトライツ靱帯から25cm肛門側に存在して壁外発育していたが周囲への浸潤を認めず,容易に腹腔外へ脱転された.部分切除後に端々吻合した.病理所見では腫瘤径は4cmで,紡錘形細胞が索状に増殖し,核分裂像は目立たなかった.免疫染色ではKIT,S-100,αSMA,vimentinが陽性で,CD34は陰性であった.以上から小腸原発GISTと診断した.GISTの存在診断にPET-CT検査は有用であった.

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要旨

患者は63歳の女性で,イレウスの診断で入院した.腹部CT検査で上部空腸に腫瘍性病変が疑われ,小腸造影およびダブルバルーン小腸内視鏡検査でトライツ靱帯を越えてすぐの空腸に亜全周性の隆起性病変を認めた.生検の結果は高~中分化型腺癌であった.原発性空腸癌の診断で開腹手術を施行し,術後は再発なく経過している.小腸悪性腫瘍は全消化管腫瘍の0.3~1%と頻度が低く,ほかの消化管腫瘍に比べて症状の発現が遅いため,進行例で診断されることが少なくない.腹部手術歴のない上部消化管での腸閉塞患者では,小腸腫瘍も念頭に入れたうえで小腸造影検査や小腸内視鏡検査を施行することで早期診断・手術が可能となり,生命予後の改善につながると考えられた.

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要旨

患者は59歳,女性.左乳房の痛みを主訴に2008年12月に来院した.左の乳房全体に著明な発赤と浮腫を認め,炎症性乳癌と診断した.術前化学療法を施行したが効果判定はSDであり,局所コントロールを目的として乳房切除術を予定した.術前検査で行った採血では肝胆道系酵素の上昇を認めたものの,画像検査では明らかな異常所見は認められなかった.3週間後の採血ではビリルビンの著明な上昇,CT検査ではびまん性の肝転移,腹水の貯留を認めた.すでに肝不全の状態であり,初診から10か月間という短期間で永眠した.死後に行った肝臓の針生検の結果,肝組織の大部分は腫瘍に置換されている状態であった.

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要旨

患者は90歳,女性.20年前に左上腕骨骨折でプレート固定の既往があった.3か月前に左肩の痛みが出現し,他院の精査でプレート破損と腋窩動脈の仮性動脈瘤を指摘された.腕神経叢麻痺で運動障害があった.同院でステント留置が施行されたが瘤は治癒しなかった.腫脹と疼痛の増強があって当科を紹介された.CTで腋窩動脈周囲に14×10cmの仮性動脈瘤を認めた.これに対してステント中枢の健常腋窩動脈と末梢の上腕動脈を自家静脈でバイパスし,中間部位の動脈の結紮を行った.上肢の麻痺は残存した.血管内治療で効果が得られない末梢仮性動脈瘤については高齢者であっても通常の手術を検討すべきである.

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要旨

患者は58歳,女性.知的障害のため施設に入所中であった.2009年1月の健康診断の採血で肝機能異常を指摘された.精査のため腹部超音波と腹部CTを行ったところ,肝内胆管の著しい拡張と左右肝管から総胆管に及ぶ10.2×8.7cmの巨大結石を認め,総胆管径は最大で9.9cmであった.しかし,自覚症状を認めず,腹部理学所見も異常を認めなかった.来院時の血液検査では肝胆道系酵素は正常値であった.ERCPで総胆管から左右肝管にかけて巨大透亮像を認めたが,膵胆管合流異常は認めなかった.巨大総胆管結石症の診断で総胆管切石,胆管切除,肝管-空腸吻合術を施行した.結石はビリルビン結石で,切除胆管の病理検査では悪性所見は認めなかった.自覚所見,他覚所見に乏しい,これほど巨大な総胆管結石の報告は検索しえた限りではみられなかった.

1200字通信・30

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 最近は,単に忙しいというだけではなしに,嬉しいことより辛いことのほうが多いような気がして,疲れが澱のように溜まることになっています.そんなとき,美味しい料理やお酒をいただくと,単純なものでまた頑張ろうと思えるから不思議です.病院の近くにあるそうした元気をいただけるお店で,最近あったちょっと嬉しいお話をご紹介したいと思います.

 そのお店は数年前の開店以来のお気に入りで,時間を見つけては通っています.お店はカウンターだけで,御亭主が一人ですべてを賄っておられ,テキパキと働く姿を見ながらの食事は,その仕事ぶりが隠し味となって眼にも口にも美味で,時には一人で,またあるときには仲間や家族と行っています.

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 スタッフと症例に恵まれた一部のハイボリュームセンターの外科医は,専門領域の手術を極め,さらに新術式を開発すれば当然高い評価を受ける.しかし,本邦の最前線の病院で地域医療を担う外科医の評価は異なる.著者である永井先生が,実臨床で内視鏡外科医に求められるものは何か,実際の達成目標をどこに設置すべきか,これらの疑問を明示した解説付きのDVD第2作が完成した.消化器外科医が習得すべき内視鏡手術のすべてを網羅している.第一線の病院で数々の修羅場をくぐり抜けて,丹精して築き上げてきた著者自身の実践的で手抜きのない手技が,どの術式においても一貫して行われ,説得力がある.

 永井先生は,要点を明確に伝えるが,不必要な言葉は吐かない.納得できないことは決して引き下がらない.これは私が先生に初めてお会いしたときの印象で,今もまったく変わらない.スタンスがブレない.

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 旧北海道大学医学部第一外科講座,現北海道大学大学院消化器外科・一般外科学講座の1年先輩である上泉洋先生により『イレウスチューブ―基本と操作テクニック』の第2版が出版されました.内容は,本文は第1章から第18章におよび,途中にTeaTimeとして上泉先生の豊富な臨床経験によるエピソードや,研修医制度への意見なども述べられています.

 上泉先生は,教室に入局後,岩見沢市立総合病院をはじめとして北海道内の基幹病院で活躍され,その臨床医としての能力は非常に高く評価されています.この著書はその優れた臨床医としての経験から生まれた多くのノウハウを盛り込んだ一冊です.

昨日の患者

三度の生還 中川 国利
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 生還とは,死の淵から生きて戻ることとされている.生涯において三度の生還を果たした,ある人生を紹介する.

 K先生は80歳代後半で,私の小学校時代の恩師である.たまたま施行したCT検査で肺癌と診断された.しかしながら,高齢なため手術は過大侵襲とされ,放射線療法を受けることになった.他施設で放射線治療を受ける先生を年末に見舞った.そして,先生の歩んで来た人生を拝聴した.

ひとやすみ・76

学会における親子関係 中川 国利
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 外科医は,臨床に従事しつつ日々の臨床での知見を学会で発表する.その発表の場では,単に学問的な活動が行われるだけではなく,微笑ましい親子関係を垣間見ることもある.

 当院の初期研修医が,受け持った患者さんの症例報告をした.つつがなく発表を終えた研修医に感想を聞くと,「普段は息子の私に無関心の父親が会場にいることに気づき,非常に緊張しました」とのことであった.産婦人科医として開業を営む父親が,わざわざ休業して息子の初発表を聞き,そして息子に声をかけることなく退室していた.

勤務医コラム・28

リキドーばあさん 中島 公洋
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 患者はAさん,80歳女性.左結腸癌を切除してもうすぐ4年になる.ss,n1だったが,幸い再発していない.2か月に1回外来に通っている.つかまると話が長くなるので,できるだけ避けるようにしているが,主治医なのでそうもいかない.今日も外来でつかまった.

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次号予告

原稿募集 「臨床外科」交見室

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あとがき 宮崎 勝
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 本号の特集テーマは「下大静脈にかかわる病態を見直す」です.様々な病態および疾患における下大静脈にかかわる問題点を異なる視点から捉えていただくことで,また,全体を通読することによって下大静脈と様々な病態のかかわりを浮き彫りにし,理解できることを期待しています.臨床解剖についての論文を筆頭に,診断上の問題,外科治療上の問題をそれぞれの分野の専門医から病態を中心に執筆していただきました.本号1冊で,下大静脈と疾患,および最新治療とのかかわりを系統的に理解しうる内容になっていると思われます.

 日頃,臨床外科医がその診療に忙殺され,様々な疾患を持った患者さんを前にして,なかなか解剖書や生理生化学書を振り返る時間を作ることが難しい現況において,1冊の雑誌の特集に,臨床医にすぐ役立つ観点で病態の要点をコンパクトに書いてあるものはきわめて役立つものです.外科臨床医が患者さんを前にしてつねに,病態を見直しつつ診断や治療を考えていく癖を持つことはきわめて大切な姿勢です.新たな病態の発見や,新たな治療手段の開発といったクリエィティブな研究などもこのような姿勢から生まれてくるものです.その意味では,若い臨床外科医の方々には,患者さんを診るときに,つねに様々な病態の関わりを想起したうえで診療にあたることを習慣づけていってもらいたいと思います.本誌は,われわれ編集委員の企画する特集が,そのように臨床医の育成・教育に役立っていくような存在でありたいと願っています.

基本情報

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臨床外科
66巻9号 (2011年9月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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