看護学雑誌 57巻6号 (1993年6月)

特集 変容するケアの時代の法的・経済的枠組み

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増大する看護・介護ケアのニーズとサービス体系

 看護・介護の問題は,21世紀の高齢化社会を前に国民の大きな関心を集め,中高年層の間では寝たきり・ボケ恐怖症すら生まれているという.行政的にもこうした問題については,さまざまな取り組みがなされており,老人保健施設や老人訪問看護ステーションなど,新しい施設が次々と創設されている.そして,今回の医療法改正による療養型病床群の登場など,ケアを担う看護職はその背景と今後の方向をきちんと理解しておく必要があろう.

 しかし,寝たきり老人も65歳以上人口の5%程度であり,病院や特別養護老人ホームなどの収容施設に入院・入所している老人も同じく7%弱であり,老人の多くは地域・家族に支えられながら天寿を全している.看護・介護の問題は,需要の過大さばかりが強調されて,その具体的な施設・サービス体系の検証と今後のあり方について十分な検討がなされてこなかった.今こそ看護・介護の専門職の社会的な発言が求められている.

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医療法改正における問題の所在

医療費抑制政策の一環としての医療法改正

 1992年の通常国会で,それまで,4度にわたって継続審議になっていた「医療法」がついに改正されました.「医療法」は医療界の憲法とも位置づけられる法律であり,日本の医療の理念とビジョンを明示するべきものです.しかし,従来,そのような明確な医療のあり方については全く示されておらず,むしろ「医療施設法」と呼ぶ方がふさわしい法律でした.

 医療法の改正がなされた背景には,人口の急速な高齢化により疾病構造が大きく変化していること,医学技術の進歩により,病院機能が多様化していること,医療の受益主体である患者の権利が語られ始めるようになったこと,などがよくあげられています.しかし,その一方で,膨張する医療費をいかに抑さえるかという意図が徹底して貫かれているようにも思われます.つまり,政府は医療費を抑制するために,医療をより効率的に提供することを最大の目的に今回の「改正」を行なったと言うことができます.

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老人病院制度設立の背景

 近年,わが国の老年者人口は年々増加傾向にあり,老年人口比率も上昇している.この増加する老人の傷病は,脳卒中や心臓病などのように治りにくく,寝たきりの状態になりやすい慢性的疾患が占める割合が高い.そのため,長期療養を必要とする老人が増加し,老人の心身の特性にふさわしい医療と介護が受けられるような環境の整備が求められている.

 主として慢性疾患を持つ老人を診療している病院では,急性期に対応する治療よりも介護面を充実させたケアを求められる場合が多く,またそれにふさわしい医療が提供できる体制が必要だと考えられるようになった.職員配置数の点で,日常生活面での支援を行なう介護職員を置いて介護面を充実させる一方で,診療面では必要以上に投薬,注射,検査などが行なわれないようにすることが求められる.このような背景から,1983(昭和58)年2月の老人保健法の施行に伴い,創設されたのが老人病院の制度である.

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診療報酬点数と病院収入

 医療機関は,看護や治療などを行なうことで医業収入がある.その料金は,社会保険診療報酬および老人診療報酬において行為別などで細かく分類されて,全国一律に点数がつけられ,1点は10円である.その料金表は,「診療報酬点数表」と呼ばれている.

 看護関係の点数を例にあげると「在宅患者訪問看護・指導料」(保健婦または看護婦による場合)450点,「在宅療養指導料」100点,「基本看護料(I)」318点,「特2類看護加算」200点(入院30日以内),「特例許可老人病院入院医療管理料(I)」698点となっている.

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新職種制度化の意図

 近年,看護職と関わりをもつ新職種の制度化が進んだ.その意図は,量的対応と質的対応の2つの側面がある.しかも,これらを考える過程では必ず経済性がクロスされ,いかに安く(言い換えれば,有効に)目的を達成するかという視点が入る.というよりも,この経済性が優先されることの方が多いといっても過言ではないと思う.

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 高齢化が進むにつれて,地域保健活動へのニーズは増すばかりである.しかしその一方で,サービスを提供する体制,マンパワーは整っているとはいえない.

 にもかかわらず,現在,男性看護職に保健婦に相当する資格が認められておらず,地域での活動が限定されていることは,もはや時代にそぐわなくなってきている.

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はじめに

 排尿の自立は,日常生活の上で欠かすことのできない行為であり,特に高齢者が積極的に生きていくためには,排尿の自立が必要不可欠となる.失禁に対し,現在とられている一番多い方法はオムツであると思われるが,オムツは問題の根本解決を妨げるだけでなく,本人の回復意欲や尊厳を奪う結果となる.

 内田ら1)は,「何よりも老人の自立と尊厳を奪う失禁を予防するために努力がなされなくてはならない」と述べている.また老人リハビリテーション病棟では,オムツ外し*1)を実践し,数か月,中には1年以上もの取り組みで,車椅子でトイレを使用できるようになったという研究報告がある.

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 働く女性の共通かつ最大の悩みは家事との両立だろう.これに育児が加わると,さらに深刻だ.家事のほとんどは“手抜き”が許されるが,こと“育児”に限ってはそれができない.看護婦には夜勤があり,育児を理由にやむなく離職,というケースが多い.

 近頃では,託児施設を持つ病院は徐々に増えてきている.しかし,看護婦の3交代勤務に対応して,24時間体制で受け入れてくれるところはまだまだ少ない.しかも保育所となれば全国的にみても数えるほど.病院からすれば,場所の確保,保母の人件費など経営上の問題もあるのだろうが,子育て中の看護婦にとって,勤務中に子どもを誰に見てもらうかは切実な問題だ.

連載 カラーグラフ

第一線に飛び出した修士ナースたち

食事ウェ〜ブ12か月・3

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献立の違いからくる患者の不満をとう解消するか

 「あの人には味噌汁がつくのにどうして自分にはつかないの」

 「量が少なくておなかが空くからもっと増やして欲しい」

生体のメカニズム・18 [呼吸の生理・1]

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 私たちが生きているということは,言い換えるならば,私たちの体を構成している60-70兆個の細胞がそれぞれ生き生きと働いているということです.細胞が生き生きと働くためには,どの細胞も体の外から取り込んだ栄養物を,空気中から取り入れた酸素を使って燃やして,エネルギー(これをアデノシン三リン酸,ATPと言います)を作り出さなければなりません.今月号から3回にわたって,この酸素を体の中に取り込む仕組みについてお話しします.

褥瘡の治療と看護の実際・3

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はじめに

 褥瘡は脊髄損傷患者や寝たきり老人などでは容易に発生する.一度発生すると長い経過を取り,治りにくい合併症である.その治療は患者の理解と協力,看護婦の協力が欠かせない.とくに手術は後療法を含めて患者,看護婦の協力があってこそ良好な結果が得られる.

連載 海外レポート[カリフォルニアの病院で見たこと・考えたこと]・2

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 初めにアメリカにおける看護教育課程について記したい.アメリカでは州毎にそれぞれ医療法律が定められていて,看護婦の免許・名称・身分などについても一律というわけではないので,見学した病院のあるカリフォルニア州を基本にして紹介したい.

連載 [インタビュー]第一線に飛び出した修士ナースたち・6

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ホスピスで行なわれるケアとは

 井部 ホスピスでは,何か特別な看護ケアというのがあるのでしょうか.

 河 ないというのが3年たっての感想です.治療や検査に伴なういろいろな技術的なところがない分,基本的な看護ケアそのものが問われるのだと思います.それこそヘンダーソンの何項目というような看護ケア,食べたいものを食べたい時に食べてもらうとか,気分転換が必要な時にいろいろな方法を考えるとか,ごく基本的な生活をスムーズに気持ちよくしていただくためのケアですね.

連載 [ルポ]訪問看護はいま・15

デンマーク訪問記・1

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 今年1月下旬に,日本の現場の訪問看護婦15名でデンマークに出かけた.外国に行こうと思った動機は次のようなことだった.①日本では在宅ケアが本格的に取り組み始められた歴史はまだ浅い.デンマークではすでに数十年の歴史があり,公的に保障された整った国での訪問看護を見てみたいこと.②高齢者問題に国全体で本気で取り組んでいるところでの施設・在宅でのケアの仕組みや看護職の役割などを学びたいと思ったことだった.

 老人訪問看護ステーションは1年間(1993年3月まで)で全国に約170か所誕生した.このルポでもいくつかの施設を見学し,また私自身のステーション所長としての経験から,次の目標は何かを探ってきた.

連載 Good コミュニケーションをあなたに・6

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 面接をしてみても「患者が困っていることがよく分かった」と感じられないことがある.あるいは,患者の表情などから「十分に話を聞いてもらえた」という様子が伝わってこないことがある.このようにラポールを得ることがうまくいかない時には,どうしたらいいのだろうか.

 前回までは,患者の話をできるだけ妨げないようにしながら,患者の枠組みを理解するように努力することが大切だと強調してきた.しかし,話を患者にまかせたままでは,重要な情報が得られない場合もある.その場合には,直接的質問法までも使って情報の不備を補うことが必要になる.

連載 日々の看護ケアと生命倫理と・6

生命の重みと現実の間で 岡部 恵子
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 「日々の看護ケアと生命倫理と」.これが連載のテーマです.5回書いてきました.はてさて,テーマに沿った書き方になっているのかと気になってきました.どうぞ,沢山の事例をお持ちの皆様が,私の舌たらずのつぶやきを,現場で生かして下さるようお願いしたくなりました.

連載 私が癌看護に魅かれる理由・1【新連載】

自然治癒力を信じて 外京 ゆり
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発端

 故郷にいる父が,「左の腎臓に直径30ミリくらいの塊が見つかり,手術を勧められている」と電話をかけてきた.私は帰省し,主治医と会うことにした.

 CTやエコー写真で見る塊が良性であることを願いながら,主治医に,「手術をしないで,食事やセルフコントロールで自然退縮させられないでしょうか」と尋ねた.すると,この中堅の外科医は,「手術後の病理結果を待たなければ断定できないが,十分に悪性でもありうるし,第一この大きさのものがあれば,日本中のどんな医者でも切るでしょう」と答えた.

連載 でも、やっぱり歩きたい[直子の車椅子奮戦記]・18

大漁だえー♪ 滝野澤 直子
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直子トイレに行きたーい

 さて,今回は,㊙レポート,うんちの話である.テレちゃうなあ.

 私は3日に1度うんちをする.でもトイレじゃないの.いわゆる摘便.ベッドでしてもらいます.慣れるまでは,私って世界一悲しい女だって思いましたよ.だって元気な頃には,まさか自分がうんちを掘り出してもらう身になろうとは,これっぽっちも思わなかったですものね.

連載 プッツン看護婦物語・34

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 花子の病棟では、身重な看護婦に限って急変でばたばたしたり、結婚を控えた看護婦が、なぜかステルベンにつきまくるってジンクスがあるのよ。ホント、世の中って皮肉なもんだと思わない?

 病院ってさ、あまりおめでたくない場所なんだけど、慶びごとはあるし、人の面倒見てる立場の私たちも、いつ急変して死んじゃうかもしれないのよね〜。

基本情報

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看護学雑誌
57巻6号 (1993年6月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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