看護学雑誌 49巻9号 (1985年9月)

特集 患者の求める退院指導のあり方

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 社会の高齢化に伴う各種慢性疾患の増加は,疾病構造を著しく変えた.入院患者は,完治して退院するとは限らず,むしろ疾患と共存しながら家庭や社会への復帰を目指すことが多くなり,その結果として,退院後に患者が社会復帰や自立をスムーズに行なえるよう,医療者側からの的確な退院指導が要請されている.

 退院指導は,医療者から患者へ‘与える’という面と,患者の医療者への要求に対し‘答える’という面を併せ持っており,医療者の独り善がりのものであってはならない.今回はそのことを踏まえて,事例や調査報告などを基に問題点を整理,患者にとって必要な退院指導とはどんなものかを考えてみた.

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はじめに

 施設内において長期療養を続けるよりも,在宅療養に切り替えて健康の回復に,患者の意欲,自立心を活用する方向に医療が変わってきている昨今,退院指導の必要性はより大きくなっている.そのため退院指導のあり方の論議も多いが,筆者らは常々,退院指導は当該疾患の生活指導にとどまることなく,患者の今後の健康生活全般に影響を与えるものにまで広げるべきであると主張している.

 すなわち施設内において加療生活を送ったことを,社会から隔絶されていたマイナスの期間としてのみ終わらせるのではなく,入院生活によって健康保持の知識を得,その知識が退院後の生活にプラスになるように指導する.殊に成人患者の場合には,当該成人期の特徴を踏まえた指導(成人病や退行性変化の予防等)が必要であると—

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はじめに

 本稿は,総合病院への入院経験者が退院後,どのような生活不安や治療上の悩みを持つかを明らかにする目的で行なった調査の報告である.

 急性疾患にくらべ,慢性疾患が増加しつつあると言われる今日,治療が退院と同時に完了する場合は少なく,むしろ,退院が生活における新たな闘病の開始であることが少なくない.したがって,退院後にも様々な不安を抱えながら生活する者は,決して少なくないと想像できる.

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はじめに

 人口の高齢化と,それに伴う疾病構造から,完全治癒ということは難しく,いくつかの機能障害を持ったまま疾病と共存し,そして医療行為の継続を必要としなければならないケースが増えている.そのために,日常的な身体ケアから,自己管理法,悪化の予防法等,退院前の看護婦の役割は大きい.

 当病棟においても,必要にせまられ,退院指導を行なった事例があるが,それらがどのように継続されているか,患者や家族の役に立っているかなど評価する必要を感じ,家庭訪問を行なった.今回その中から2事例を通して,今後の退院指導のあり方を考えてみたい.

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 近年,心疾患患者に対する外科的療法は,その診断と手術手技の進歩に伴い増加傾向にある.これは特に冠動脈疾患に著しい.

 大多数の先天性疾患の手術後の健康管理は短期間にとどまり,全く正常に近い生活が期待できるが,後天性疾患でも特に人工弁置換術では,弁自体の機能は著しく改善されても,長い間負担がかかっていた心筋の回復には長期間が必要であり,なかには健康人と同程度までの回復が望めない人もある.

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はじめに

 近年,社会情勢の変化により,家族に囲まれて暮らしたい,あるいは住み慣れた地域で生活したい,という患者の意思に反し,家庭や地域から分離された場所での生活を余儀なくされるケースが少なくない.

 私たちは,様々な問題や何らかの後遺症を抱えている患者が,社会の中でより人間的な生活へ復帰できるようにその条件を整えることも,臨床看護の役割であると考えている.

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はじめに

 脳卒中は1981年に死亡原因のトップの座を癌にゆずったというものの,その後も第2位を占め,毎年14万人以上の人が脳卒中で死亡している.近年の高血圧症等の危険因子に対する認識の高まりと人口の高齢化によって,脳出血の減少と高齢者の脳血栓の増加がある.リハビリテーションの対象となる脳卒中患者も高齢化が明らかで,それにつれて障害老人に共通する医学的リハビリテーションだけでは解決できない家族の受け入れが問題となることが多くなっている.

 特に脳卒中のリハビリテーションでは,治療法や補装具の進歩にもかかわらず,その回復には限界があり,様々な障害を残したまま家庭復帰せざるを得ない.このような患者の退院後の生活は,患者自身の意向よりも家族の意思が大きな決定力を持っている.奥川1)が述べているように,患者自身の障害受容や自己決定の原則,積極的な意味での自立に多くを望むことが困難で,家族の障害受容と家族に対するアプローチで家庭環境整備を行なうことがはるかに重要となる例が増えている.

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重篤な脳神経疾患により生命の危機に瀕した患者も,最近の医学の進歩に伴い,救命できることも多くなっている.しかし,患者によっては,救命しえても意識障害や精神機能障害,麻痺などの後遺症を残し,基本的なニードの充足を他者に依存しなくては生活できない場合も少なくない.

 当病棟では,後遺症が残ってもリハビリテーションによって状態の改善が期待できる場合は,リハビリテーション専門の病院への転院を勧めてきた.またその他の場合は,老人病院への転院か,自宅への退院を勧めてきた.特に,自宅への退院の場合,家族の不安感が強く,なかなか退院したがらないことが多いことから,日ごろから退院指導の大切さを感じていた.しかし,今までの退院指導を振り返ってみると,問題点がいろいろと出てきた.

ホスピスからのレポート 続・死にゆく人々のケア・9

家庭での死 柏木 哲夫
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はじめに

 できるなら自宅で死を迎えたい,と多くの人は望む.にもかかわらず,現在,日本人の70%近くの人が病院で死を迎えている.苦痛を伴いやすい癌による死亡者は,ほとんど(都市では90%)病院で死を迎える.

 ホスピスがスタートして1年と少しになるが,家庭で死を迎えた人は多くない.癌患者が家庭で死を迎えることは年々困難になってきている.

癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・9

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入院生活の毎日

 天気もよく暖かい4月下旬のある日,妻が病棟へ来るのを待って風呂へ入る.風呂場は約2坪くらいのかなり広いもので,シャワーを中心に使い,浴槽には腰から下だけつかる.前は自分で洗えるが背中などは無理なので洗ってもらう.

 裸の私の姿を改めて眺めて見ると,足腰を中心にゴソッと肉が落ち,やせたなあと自分でも感じているが妻も同じように感じているようだ.私は気づかなかったが,腰の下,尾てい骨のあたりは床ずれ一歩前だったようである.いつも痛いので円座を使用していたが,あの動けぬ苦難の日々に出来たものに相違ない.

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はじめに

 入院中の患者の中には,急性期の治療を終えて,慢性期を迎えたケースがある.退院許可が出ても引き続き何らかの医療的ケアを必要とする場合は,退院後の在宅療養が不安なため,退院をためらうケースがある.これらの患者にも訪問看護の支えがあれば,在宅療養が可能となる場合もある.

 武蔵野赤十字病院成人保健相談室では,昭和59年4月発足後,病棟,外来との連絡を密にし,入院中から退院後の在宅療養が可能になるよう,介護技術・社会資源活用についての指導,医師との連絡調整等を行ない,退院後は訪問看護により,在宅ケアの導入を行なった.そして安定した時期には,地域の訪問看護に移行してきた.

訪問看護 私たちの実践レポート・18

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余命3か月と診断されたAさんをめぐる介護と看護

訪問看護を始める

 Aさんは75歳の老婦人.昨年10月,胃癌で手術を受けました.転移がひどく,バイパス手術のみで,余命3か月と診断されました.Aさんは80歳になる夫と2人暮らしです.

 11月,家に帰ったAさんは,初冬の日差しを浴びて,居間から庭を眺めるのを日課として過ごしていました.訪ねてゆくと‘昨日,牛乳が1本飲めたのよ,スゴイでしょう’と自慢げな報告が返ってきます.入院中は食事はほとんど食べられず,手つかずの食事がいつも床頭台の上にあったものでした.

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 人間,だれしも安らかな死を望む.そのためかポックリ寺にお詣りする人が後を絶たないという.

 特に長期間ベッドに臥す老年の患者さんにとっては,安らかな死こそ最後の望みだろう.

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ケアの責任者を明確にすることで従来の看護方式を改善できるか

 患者の立場に立って,自分のケアについて責任を持ってくれるナースはどんな人が良いかを考えてみると,‘個人としての自分独自のニーズを最もよく知っていてくれる入であってほしい’と思うことであろう.

 従来からの機能別看護やチーム・ナーシングなどでは,ややもすると,患者が質の高い,安全なケアを保証してくれる専門職ナースと充分に接触することは難しかつたといえる.

ここまできた日本の医療・9

腎臓移植
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腎臓移植の歴史

 腎不全などにより,人工透析を受けざるを得ない患者は我が国で現在5万3017人(1983年12月).年々約5000人ほどの透析患者が増えている.透析を受けることによって確実に多くの患者は命が救われている.

 しかし,1回に5時間,週3回の透析に要する時間は患者にとってあまりにも大きな負担.また時間のことだけでなく,透析に要する費用も1人年間約800万円になり,患者自身も,食事制限,水分制限などの厳しい自己管理が必要となってくる.

CHECK IT UP 日常ケアを見直そう・45

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 ‘老人や慢性の病気の人は家で療養するのが一番いい’‘畳の上で死ぬのが最高だ’などといった言葉を最近耳にする機会が増えてきた.患者や家族の立場から,あるいは医療経済の面からも在宅療養の見直しがされている.しかし,実際に在宅でのケアに当たっている看護職はまだそう多くはない.その中で,訪問看護は数少ない在宅ケア実践のステージであると言えるだろう.訪問看護自体には十数年の歴史があるとはいえ,実践する地域や施設が全国的な広がりを持つようになってきたのはここ数年のことである.したがって,まだ充分な検討もなされておらず,その内容はまちまちであるが,今回は訪問看護を通してみた在宅ケアについて考えてみたい.

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 ‘Nurse as Social Force’(社会勢力としての看護婦)をメインテーマに,ICNの第18回大会がキエレイニ(ケニア)会長のもとで6月16-20日の5日間,イスラエルのテルアビブにて開催された.57の参加国,海外からの参加者が約2500名(うち日本からは112名)という数字は,前回のロサンゼルス大会,前々回の東京大会と比べると小ぶりの大会といえる.

 開会式の行なわれたメイン会場のMANN公会堂の入口では,入場者1人1人がバッグの中身まで調べられるものものしさ.アテネ空港でのTWA機のハイジャック事件の余波を受けて,日本からの参加者の約半数が足止めを受けて開会式に間に合わないというハプニングも重なり,平和な日本では想像もできない世界情勢の厳しい一面を,肌で感じさせられた.

痛みの臨床・17

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 最近アスピリンが癌性痛治療の中で見直されてきている.骨転移の痛みに対しては,モルヒネよりも効果が優れているとさえいわれるほどである.それは,最近になってアスピリンの作用機序である,プロスタグランディン(PG)合成抑制作用が発見され,骨転移局所においても骨吸収にはPGE2が関与して痛みを与えていることが分かってきたからである.

 このように,アスピリンが痛みの原因である局所に働く末梢性鎮痛薬であるのに対し,先回まで述べたモルヒネを中心とする麻薬性鎮痛薬は脳・脊髄における痛みの伝導路に働く中枢性鎮痛薬である.

ぼけの臨床・5

ぼけの症状[4] 井上 修
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 ぼけに伴って,言語にもいろいろ障害がみられる.今回は,これら言葉の症状について少し詳しく述べてみよう.

変革の中の医療 21世紀をめざして・6(最終回)

中間施設 岩崎 栄
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在宅ケアの前提としての中間施設

 中間施設とは,いまだ決まった定義があるわけではありませんが,老人問題と取り組む場合,欠かすことのできない課題なのです.

 ‘中間施設問題は老人問題である’とする基本的考えがあるならば,老人問題そのものへの姿勢がどんなものかを問われていることだということです.

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医療の現場で一番悩むことは

 病む人々,特に末期癌など回復の見込みのない病気と闘っている人に接する時,私たちが一番心を悩まされることは,病気について,病む人とどのように話し合ったらよいのだろうかという問題です.

 神奈川県のある公立病院に勤務している32歳の看護婦Kさんには,この問題に関して自分の心に今でも印象深く残っている患者さんがいます.

レポート アトランタで開かれた初のエイズ国際会議からのレポート・1

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九死に一生を得たそのあとで……

 2年前交通事故で頻死の重症を負った女性がいる.7度の大手術に耐え,友人,家族の励ましに支えられてようやく一命をとりとめた.そして8度言の手術.日常生活に戻れる望みをたくしたその手術も成功し,だれもが神の存在を信じた.事故から救われた彼女はしかし,現代の不治の病に侵されていた.手術時の輸血からAIDS(後天性免疫不全症候群,エイズ)に感染し,その体はあらゆるウイルスへの抵抗力を失っていった.

 人々のなす術なく彼女は息を引き取った.生きるための手術が死をもたらした.彼女になんの罪があるというのか…….人々は神を信じなくなった—エイズの死亡率は発病後2年で80%.患者数は1万人をこえた.

インフォメーション 新しいナーシングケアのために

サイクロスポリンA 柏原 英彦
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 病気やケガにより,欠損・障害・機能不全に陥った組織・臓器を,他人の健常なものと置換することを同種移植という.この際,最大の問題である拒絶反応を防止するためには,組織適合性(HLA)と免疫抑制剤が重要である.

 免疫抑制剤は,1950年代からアザチオプリンとステロイドが主役をなしてきたが,1978年にサイクロスポリンA(Cyclosporine A;CsA)が登場し,すべての移植分野で好成績を収め,‘移植時代の再来’を迎えている.

教育婦長

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緑の深い山の麓に抱かれるように建てられている永生病院がオープンしたのは昨年8月.看護部門の最高責任者に招かれた石谷さんは,県立中央病院を振り出しに,看護学校・高校衛生看護科の教務,整肢学園,精神病院,県の医務課と,臨床,教育,行政のすべてを綴してきた大ベテラン,教育理念も明確だ.「カンファレンスが必要になるな看護をしなければならないが,現状ではま無理,現在は申し送りでのチェックを徹底して,看護の目を養ってもらっている段階です.3年ぐらいたてばなんとかカッコウがつくようになるのでは………」

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 アメリカの元大統領ケネディは開発途上国援助のために,米国青年を2年間途上国に送り,奉仕させようとする平和部隊を創設した.それにならって日本でも,青年海外協力隊が生まれた.

 その青年海外協力隊の第47次隊員として,勤めを中断してインドに渡ったのが1972年.北インドのクララ・スウェイン病院の回復室で2年間働いた.

南の島での保健医療 インドネシアで保健婦として働いて・9

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 看護学校を外からみて残念に思うことは,彼らが自分たちで使える本がとても少ないということです.義務教育課程である小学校でも,自分の本は持たず,学校にある教科書を使うか,先生の話を書き取るやり方で勉強しているのが現状ですから,おして知るべしです.

 新カリでの第1期生を地域開発部門で引き受けるにあたり,彼らが看護をどのように学んだかを知りたいと思いましたが,なんと基本を教える本がないのです.看護の基本を学ばずして,彼らが卒業して後看護の向上を図ることができるであろうかと疑問を持ちました.

子供たちの痛み 指導相談科からのお便り・9

低出生体重児の親 中村 元子
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 出生体重が406gの超未熟児(日本最小)でも育つ時代になったが,入院期間が249日となると,親と子の絆が育まれる前に,医療関係者との絆が強くなってしまわぬかなどと私は考えてしまう.

 病院に入院する低出生体重児は,小さい上に背景も多彩である.奇形のある子供も珍しくない.家族の問題も多く,両親とも未成年であったり,未婚の母もいる.子供が入院中に離婚したり,父が蒸発したりすることもある.

基本情報

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看護学雑誌
49巻9号 (1985年9月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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