癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・9
これを幸せと言わずして何と言えよう
吉見 之男
pp.1066-1068
発行日 1985年9月1日
Published Date 1985/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921195
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入院生活の毎日
天気もよく暖かい4月下旬のある日,妻が病棟へ来るのを待って風呂へ入る.風呂場は約2坪くらいのかなり広いもので,シャワーを中心に使い,浴槽には腰から下だけつかる.前は自分で洗えるが背中などは無理なので洗ってもらう.
裸の私の姿を改めて眺めて見ると,足腰を中心にゴソッと肉が落ち,やせたなあと自分でも感じているが妻も同じように感じているようだ.私は気づかなかったが,腰の下,尾てい骨のあたりは床ずれ一歩前だったようである.いつも痛いので円座を使用していたが,あの動けぬ苦難の日々に出来たものに相違ない.
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