レポート アトランタで開かれた初のエイズ国際会議からのレポート・1
安全なセックスとは何か—25種をこえる性的感染症(STD)のまん延におびえるアメリカ社会
池上 千寿子
1
1ハワイ大学性と社会太平洋研究所
pp.1074-1076
発行日 1985年9月1日
Published Date 1985/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921198
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九死に一生を得たそのあとで……
2年前交通事故で頻死の重症を負った女性がいる.7度の大手術に耐え,友人,家族の励ましに支えられてようやく一命をとりとめた.そして8度言の手術.日常生活に戻れる望みをたくしたその手術も成功し,だれもが神の存在を信じた.事故から救われた彼女はしかし,現代の不治の病に侵されていた.手術時の輸血からAIDS(後天性免疫不全症候群,エイズ)に感染し,その体はあらゆるウイルスへの抵抗力を失っていった.
人々のなす術なく彼女は息を引き取った.生きるための手術が死をもたらした.彼女になんの罪があるというのか…….人々は神を信じなくなった—エイズの死亡率は発病後2年で80%.患者数は1万人をこえた.
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