学生の眼
初めての基礎実習で学んだこと—重症患者の観察とケアを通して
箭内 順子
1
1神奈川県立病院付属看護専門学校第1科
pp.189-194
発行日 1981年2月1日
Published Date 1981/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922715
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はじめに
これまでの学習の積み上げと技術実習を踏まえて,私は初めての病院実習(基礎実習)を行った.2週間の実習の目的は‘対象の援助を行うための第1段階として,患者の基本的欲求を把握し,看護援助の必要性を判断し援助する’というものであった今回初めて患者を私独りで受け持ち,同じく内科病棟で実習するグループ員の経験からも学ぶことを通し,今後私たちが看護をしていく中で最も直接的な対象となる患者の多様性を把握すること,また入院や闘病生活などが患者にもたらす変化を理解することが目標でもあった.
私が受け持った患者は,肺癌からの全身的骨転移という,一般状態も予後も不良の重症な患者であった.日に日に募っていく疼痛と衰弱の中で,残された時間をいかに充実させていくか,1日1日をいかに安楽に過ごしていくかという点で,課題の余りに大きい患者であり,現在の私の力量や技術ではどうにもならないことばかりだった,ひとつひとつのケアにナースの力を借りて,なんとか実習を終えたが,どれだけ目標に近づけたかを考えると不安である.しかし,持てるものは少ないけれど,なんとか少しでも安楽にと思う気持ちで患者に接し,私自身が学んだことは多い.
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