看護学雑誌 45巻3号 (1981年3月)

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はじめに

 巷に泥酔者が多く見られる季節が訪れてきた。この季節になると,長年の飲酒習慣のある人が,忘年会・新年会等の回を重ねて飲み過ぎ,悪酔い・二日酔いで頭痛,嘔気,悪感,疲労感,不眠などの身体問題で,一般内科を受診する人が多くなる.

 上記のような患者が,一応内科治療を受け,症状が軽快し,その後しばらくは酒をひかえ(1-3か月間),節制することにより体調が良好となって,仕事も容易にできるようになる(つまり,飲酒できる体になったと錯覚をする).このような状態になると,何かがきっかけで,以前の悪症状を忘れたかのように,再び酒に親しんでくる.すると,今度は早期に酒量が増え,大量飲酒から連続飲酒になって会社を欠勤するようになり,身体問題(肝炎,肝硬変,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,糖尿病,高血圧,膵炎など),家族内トラブル,事故なども起こってくる.

飲酒習慣と病気 石井 裕正 , 宮本 京
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はじめに

 アルコール消費量の著しい増加と相まって,我が国ではアルコール中毒者およびその危険性のある大量飲酒者の数が年々増加の一途をたどっており,現在,その数は150万人以上と推定されている.それと同時に,肝臓をはじめとするアルコールによる臓器障害も著増している.このような患者を少しでも減らすためには,まず私たち医療従事者がアルコールによる病気についての正しい知識をもって患者を正しく指導する必要がある.

アルコール依存 斎藤 学 , 村上 雅昭
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‘薬物依存’と‘薬物中毒’はどう違うか

 ‘薬物依存’という言葉が1964年から使われているが,以前使われていた‘嗜癖’という言葉と厳密には同じでなく,ましていわゆる‘中毒’とは違う.従って,‘アルコール依存’というのは単に‘アルコール中毒’という言葉を置き換えただけと思われることもあるが,全く意味が違っている.

 ‘中毒’と‘依存’の決定的な違いは,前者はクスリが人に及ぼす影響であって,後者は人が自らクスリに向かっていることである.つまり,方向が違っている.

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はじめに

 今日は,日ごろ私の考えております,しかも最近問題意識を新たにしました“救命の看護過程”について,お話ししたいと思います.

 私たちの日常生活の周囲には諸々の危険が存在しています.増え続ける車,スピード,汚染する空気,そして食品添加物,母乳の中にまで農薬が証明されるなど,数えあげればきりがなく,危険でないものを数えるほうが早いのかもしれません.そのいずれもが,科学の進歩の成果や文明の産物でもあって,現代社会に生きる私たちとしては,これらの恩恵を受けずに生活することは困難な状況にあります.

外来ナーシング・カンファレンス・3 ライフプランニングセンタークリニックにて

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要領よいケースレポートの仕方

 日野原 第3回目のカンファレンスを始めましょう.

 松島 天○は○さん,72歳の女性です.肥満,高血圧,糖尿病をもち,それから子宮筋腫の手術を受けたことがあります.昔は自分で喫茶店などを経営して活躍していた人なんですが,今は子供たちがやっているので,日中はほとんどすることがなくて,1人で家の中で過ごしているということです.それから,胆石もある人で,この病気に対する不安の強い方だと思います.

いのちの現場で したたかに生きる看護婦を追って・3

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ナイフは畳に垂直に突き立っている.

 突き立ったナイフを間に六助さんと花村さんの目と目が一瞬見つめあった.六助さんの目が光っていた.花村さんには,六助さんの動作に若い日の彼の活気に満ちた一時期が凝縮されているかのように見えた.

ベッドサイドの看護

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四肢麻痺,脊髄損傷患者の褥創は極めて難治で,その治療,看護は非常に困難とされている.私たちはかつて経験したことのない脊髄損傷による巨大褥創患者に直面し,治療と看護が一体となって完治させた事例について,私たちの看護を通して経験したことを報告する.

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はじめに

 本事例は突然アテトーゼが出現し,自分で食器を持ち,食物を口の中に入れたり,咀しゃく,嚥下することができなくなり,食事介助を必要とした.また,症状に対する不安と羞恥心のため,他人との交流を拒み,自己の世界に閉じ込もり,抑うつ状態となり,回復への意欲を失っている状態であった.

 私たちはこのような患者に対して,病気に対する不安と羞恥心を除去し,不随意運動をおさえ,食事摂取が独りでできるよう援助することを目的に,この事例に取り組んだ.

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 現在,難病といわれる疾患のいくつかは,厚生省特定疾患の認定を受け,研究班にて研究されつつあるが,まだまだ未知の部分の多い疾患であることに変わりない.

 その中でも,筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,経過1-5年で,常に進行性に悪化し,死亡率がほぼ100%である.筋力の低下,萎縮により日常生活をすべて他人に依存しなければならず,また,筋肉痛や嚥下困難,構音障害,呼吸困難など大きな身体的苦痛のある疾患である.

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手術中のX線撮影用カセット挿入には,いまだに多くの問題がある.手術台の背板に工夫をしたものは,その上にマットレスや低体温用ブランケットを使用すると,患者とフィルムの距離が離れすぎるばかりでなく,異常陰影が写りやすい.マットレスの上にカセット挿人用特殊器具を置くと,マットレスのクッション効果は失われ,背板の屈曲あるいは反展ができない.

 私たちは,X線検査が必要な時,清潔な消毒布の上から,術者白らが患者を挙上し、介助者が消毒布の下からカセットを挿入できる簡単な布製バンドを作り,便利に使用しているので報告する.

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はじめに

 指先でぽいとほうり出された虫が,ひっくり返って足をモガモガさせ,やがてどうにか起き上がり,なんでもなかったようにゆるゆると動き出す.人間の生き方も,これと似た側面をもっているように思われる.私は,臨床実習をとおして,数多くの患者に接することにより,多くのことを考えさせられ,教えられた.

 私が臨床実習の中でいちばん苦労したのは,患者とのコミュニケーションをとることであった.‘対人関係というのは,単なるテクニックではない.根本は,相手の人間性を尊重するヒューマニスティックな真心と誠意である’と,ある本に書いてあった.思いやりのある看護に徹し,真心と誠意を持って接すれば,多少口べたでも,どのような患者との問にも,よい人間関係をつくることができると信じる.

素顔のナース

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寒稽古では一か月に千本の矢を射る厳しい修練がります。この厳しい稽古を乗り切ることが自分を成長させ,結果として良い看護に運元できると思います。仕事の合い間に弓を引くことで仕事への意欲をかきたてています。

バイタルサイン・12

体温[1]—体温と検温 岡安 大仁
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体温とは体の温度ではあるが,体のどこの温度を体温というのかは,確定しているわけではない.体の新陳代謝の結果つくられる温度の総決算は,血液の温度であろうから,心臓から出たばかりの大動脈の血液の温度が,体温の代表となるとの考えもある.また,体温調節は脳の視床下部にある体温中枢で行われるので,そこの温度こそ最良の代表であろうとの考えも成り立つ.しかし,これらはどちらにせよ,日常の臨床で直接測定できるものではない.

 これらに代わる方法として,口内温とか腋下温とか直腸温を測定するのである.これらの部位の温度を測って,真の体温を推定しようというわけである.これが検温である.

カラーアトラス 褥創・3

坐骨結節部の褥創―2 木村 哲彦
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 普通認める坐骨部褥創は,坐位を保持することにより持続する垂直方向への圧迫が原因となって局所(坐骨結節と座面とで挾まれる部分)に循環障害を生じた結果皮膚から皮下組織にかけて壊死を起こしたものである.これはおおむね200g/cm2以上の圧力が2時間以上続くと起こるものである.

 今回掲載する例は,同じく坐骨部分に生ずるものであるが,発生の原因を若干異にしており,坐骨結節と座面とで挾まれた部分に側方向,あるいは,その部分を軸にして捻れの力が加わった結果生じる歪みの力により,組織内に微細な外傷を与えた結果生じたものである.すなわち,組織内損傷によって生じた内出血が原因となり硬結を生じ,そのまま吸収されないと嚢様の変化を来して浸出物(性状は濾出液のこともある)を貯留する.むろん,いきなり血液を貯留する程度の血腫を形成してしまうことも度々である。この階段で冷罨法を施したり,穿刺をしたり,さらに感染を起こさぬよう,抗生物質を与え,局所のストレスを避けるため安静をとらせるよう極力努力をする.しかしながら数多くの例では感染を回避できず,化膿して自潰する結果となり,結果的には脂肪組織内あるいは脂肪組織下に至る深い創を露出し,1つのタイプ(粘液嚢炎型)の褥創の状態に至るのである.

マイ・オピニオン

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 私は最近,知人の入院を通して大切な教訓を得た.といってもさほど特殊なことではないが,考えさせられることなのである.

 知人I氏は,糖尿病と慢性腎炎の合併症で今は帰らぬ人であるが,1氏が終焉を迎えんとする時期のことである.最善の治療も効を奏さず,日に日に悪化し,ついに強度の全身浮腫や視力障害,尿毒症による意識障害を伴う状態になってしまったある日のこと,見舞った私に‘あれ食べてはいかん,これ食べてはいかんばかり言われていやになった’と訴えるのであった.I氏はまだ50歳代で,数年前に先立たれた夫の家業を受け継ぎ,適齢期の子女を持つことから回復意欲は人一倍強かったが,疾病からもうかがえるとおり食事制限がかなり大きく,極度に食欲も減退し衰弱もひどくなった.

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東京都立神経病院はパーキンソン病,重症筋無力症など各種の神経系難病の専門病院として1980年8月にオープンした.難病の専門医療機関としてはわが国で初の,そして現在唯一の病院である.この病院の前身は同じ敷地内にあり,1971年から神経難病への医療に取り組んできた都立府中病院神経内科で,それまで59床しかなかった神経内科病棟を拡大して300床(予定)の入院医療専門病院としたものである(外来はそのまま府中病院神経内科にあり.患者はこの外来を通して入院する).

 府中病院神経内科がこれまでの10年間,わが国の難病医療のパイオニアとして取り組んできたさまざまな活動と成果は,そのままこの神経病院に引き継がれ,より発展・充実化の方向が打ち出されている.1974年12月から始められている‘在宅診療’活動もその1つである.これは自宅で療養する難病患者の生活にそくして,入院医療に劣らない高いレベルの医療を提供することをめざして組識された診寮活動であり,医師(専門医)・PT・OT・STMSW(保健婦・福祉指導・心理技術)がチームを組んで患者宅を巡回訪問し,診療だけでなく看護指導・生活相談など,在宅療養上のあらゆる援助サービスをするというユニークなシステムである.

看護ミニ事典

心電図/心音図 森杉 昌彦
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心筋の収縮に先だって起こる活動電位の変動を,身体表面から取り出し,増幅してこれを記録したものが心電図である.人体の心拍動に由来する電流を数量的に正確に記録する方法を考案し,現在の心電計および心電図学の基を築いたのはオランダのヴィルレム・アイントーベンである(1901年).初めのころは,アイントーベンによる四肢の2点間の電位差を記録する双極肢誘導が用いられていたが,その後ウィルソンが単極誘導を考案し,更にゴールドバーガーの単極肢誘導(aV誘導〉を用いるようになって,現在の12誘導が標準となった.

くりにかるふぁーまころじー・3

アスコルビン酸 佐久 間昭
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船乗りにとって壊血病は恐ろしかった.中胚葉性の硬組織,膠組織,血管壁が侵され,傷は癒えず,出血は続き,死にいたる.1535年,J.カルチェの探険隊103名中100名はニューファウンドランド島付近で壊血病となり,インディアンに教えられたツガの木の煎じ薬で死をまぬがれたという.

 船医のJ.リンドは,今日,比較試験として知られる方法に準じて,1747年に抗壊血病効果を研究した.彼は12名の典型的な壊血病の船員を同じ船室に集め,同じ食事を与えたうえ,6組に分けて異なった“処方”の効果を比べた.リンゴ酒,海水,酢などの組は,はかばかしくなかったが,1日にオレンジ2個とレモン1個を与えられた組は1週間で仕事にもどることができた.

コンピュータを学ぶ人のために・3

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何が進歩したのか

 和田 コンピュータが発達した発達したっていうけど,本当に発達したと思いますか.

  佐藤 わからないです.

性の臨床・14

障害者と性 河野 友信
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1981年は国際障害者年です。健康であると,心身の欠陥に悩む人の苦しみをつい忘れがちですが,心身の障害で悩んでいる多種多様な人々に愛と援助の手を差し伸べようという,この国連の提唱する国際的なキャンペーンは有意義なことです.

 今回は国際障害者年にちなんで,精神障害者・身体障害者の性に焦点をあてたいと思います.

呼吸器病Q&A・12(最終回)

肺機能検査 岡安 大仁 , 福田 幸子
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肺機能検査はどのような患者を対象に行うか

 Q “呼吸器病Q&A”も,今回で最後となってしまいました.そこで,今日は呼吸器疾患の機能的な評価として日常使われる<肺機能検査>についてお話していただければと思います.

 まず,どのような患者について肺機能検査を行うわけですか.

滅菌と消毒・8

病棟での消毒・滅菌[1] 林 和枝
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患者が安全で快適な入院(療養)生活を送るために,病院内の環境は清潔であることが望まれる.しかし,ひと言に病院内の清潔保持といっても,非常に難しい.まず病院内の清潔を保つためには,環境の汚染となる原因を知り,それを除去する必要がある.その対策として,まず病棟における消毒・滅菌の問題を以下に記す.

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 聖路加看護大学在学中に,日本キリスト教海外医療協力会から派遣されて,ネパールで結核撲滅のために心血を注いだ岩村昇医師の話を度々聞くうちに,医療的に恵まれない外国で働きたいとの思いを持つようになった。助産婦になろうとは思ってもいなかったが、そのような国で働くには助産婦の資格を持っていた方が仕事がやりやすいと聞き,臨床を一年やって,すぐ助産婦学校に入学した。

 それからは海外で働くことを目標として、大学の疫学教室で学んだり、農村を知るために,長野県下伊那の村役場で二年九か月ほど保健婦として働いた。

ビバ!ラプラタ アルゼンチンの日系人とともに・3

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1か月が瞬く間に過ぎて

 アルゼンチンに行くまでの私は,自分でも驚くほどよく働いた.深夜勤務を専門にしながら,昼間は神奈川県の看護学校まで講議に出かけたり,休暇をやりくりしては,地方の助産婦たちの語りを集める仕事もした.あまり夢中で働きすぎたため,多少疲れてしまったようであった.

 のんびりした南米で,のんびり過ごすのもまた,私の人生にとって意義のあることだろうと,地球の反対側の国へと旅立ったのではあったが,診療所での生活は,出発前の目論見とは違って忙しいばかりであった.陽気な国で音楽を聴き,スポーツに興じる計画は,ほとんど達成されることなく,生活のほとんどは診療所内だった.

余白のつぶやき・20

ももえももえ べっしょ ちえこ
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山口百恵のさいごのリサイタルが迫っていた頃のこと,新宿駅の円柱に貼られていたポスターの文句「百恵も燃え」を見て,あ,やったなと思った。誰がこのコピイを書いたのか知らないけれど,たぶんその人は,言葉の音響性や影像性を重視する現代詩のエコール,とくに那珂太郎あたりをかなり読んでいる人だろう。

 那珂太郎には、題名からして彼の詩の方法をずばりとあらわしている,「詩集・音楽」があるが,その中に「繭」と題した言語実験の極点をさし示すような詩がある。ことさらな主題がある詩ではなく,作者自身の解説によると,「繭」という言葉そのものをモチーフとしたものらしい。サナギを包みこんでこもらせる繭の,あたたかい保護感覚や,音感としての「MAYU」などから,それは必然的に女性のイメージに繋がるので、詩人は,ほとんど無心に言葉を行かせながらそのイメージの結像を待っている感じだ。詩中に使われている「も」の字のくりかえしの、おどろくべき効果。

基本情報

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看護学雑誌
45巻3号 (1981年3月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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