看護学雑誌 23巻2号 (1959年2月)

女性の年
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 本年は皇太子御成婚の年です。裏がえして言えば正田美智子さんが皇太子妃になる年です。昨年は,皇太子妃の決定をめぐつて,ジヤーナリズムがいつせいに正田美智子ブームを作り出した年でした。正式発表までは,スクープをしないという申し合わせをして,抜けがけの功名をきそいがちなジヤーナリズムがそれを確実に守つたということは,まことに異例のことに属すると言えるでしよう。この問題をめぐつては小泉信三博士の各社歴訪の誠意が大きな役割を果したと言われています。そして,その急所は,皇太子妃となるべき正田美智子さんの人権を尊重しようということにあつたようです。その限りでは結構なことです。ひそかに,ニユースが伝わつても,あとを追いかけまわして,外出はおろか,庭先にも出られないというようなことはどうも感心したことではないからです。ジヤーナリズムが人間をスポイルすることの破壊力の大きさは大きいからです。

 ジヤーナリズムは,しかしながら,今度の場合には,良識を持つて啓蒙的な役割を果したということができましよう。一般庶民から将来の国母陛下が出るということは,たしかに画期的なことがらです。そして,そのことをめぐつて,ずい分と妨害や,批判のようなものがあつたことは事実でしよう。そのことをおそれる知識人もありました。しかし,ひとたび発表されてみると,世論は比較的健康に,明朗に,この挙を支持していたようです。

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 最近の統計によりますと日本人の平均寿命は男子で63.2年女子で67.6牛だそうです.健康で永生きできることは私たちの最大の希望の一つでしよう.ただ私たちが漫然と従来の衣食住の習慣を守つていて健康な生活を期待することはできません.国としての政策,地方公共団体の具体策,保健所,病院,医院そして私たち自身の共同作業において健康な明るい社会は作られます.

 厚生省では,創立20周年を記念して先ごろ三越で明るい生活展を開催しました.その一こまを先に12月号で御紹介しましたが,皆様の研究資料に,そして病院,学院,養成所等の展示会などの資料としての参考にもなると思いますので,展覧会場をカメラで一巡してみました.

冬山
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 冬山は人を魅了する.殊に狭まくるしい,雪の少い雑沓の都会に住む者にとつて雪はたまらない魅力だ.この白馬鑓の壮大な景色の中にたたずみ,スキーを楽しんでいる人々にこの清浄な空気を都会に持ちこんでもらいたい.

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 東京都をはじめ都市の周辺には今ぞくぞくとアパートがたてられている.若い世代にとつてもはや一軒の家を持つ事は夢にも等しい事になりつつある.これからの人々は,小さな部屋に上手に住む工夫を知らなければならない.これは寮生活をしている看護婦にとつても同様の事が云えるであろう.限られたひと間ないしふた間の小さな部屋を活用して能率的な住いにすると同時に限られた空間に沢山の夢をも盛り込まねばならないであろう.ようよう専門家によつてそれらの研究もすすめられて来たこの頃である.

 狭い部屋に住むにはまず今までの生活を捨てる事が大切である.例えば結婚して家庭を持つに当つては,タンス,洋ダンス三面鏡,茶箪笥と,従来通りの一式が揃えたくなるであろう.しかし,そうなつたら,のびのびと足もなげ出せなくなるであろう.規格にあつた家具を考えること,ムダを捨てる事がまず第1条件である.次には空間を利用して,美しい棚や戸棚をつることも考えられる.この為には今いろいろの種類の釘が工夫されて来ている.そして又万能の家具を整えることも必要であろう.昼間はイスに,夜はベットに等の働きをする家具も相当売り出されている.押し入れの整理ということも実に大切なことになつてくる.今までのように深い奥行きと高い棚はおよそ使いずらいしムダが多い.いくつかに仕切つて品物が重ならないように工夫するとこの唯一つのかくし場所も案外整頓出来るものである.

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 どのように医学が進んだ時代でも,“死との対決”という問題は看護の仕事につきまとつていきます。また,身体の機能の一部を失つた患者には勇気つけて生活の指導をすることも仕事になつてきます。生に見放された者を救うには,死との闘いに勝つた者をどう導くか,豊富な経験と看護倫理の面からお話しを伺いました。

講座

人工心肺装置と心臓外科 藤本 淳
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 人工心肺装置は心臓のポンプ作用と,肺の血液酸素添加作用の代りをするものである。この装置の発展の歴史を省りみると,人工代用臓器としての科学者の夢から始まり,心不全になつた際に心臓や肺臓の代りをするものとして研究されて来たのである。これが心臓外科の進歩と共に心臓を切開し,内部を直視しながら手術をする際の代用臓器としてとりあげられたのである。ここでは心不全等での代川臓器としての人工心肺装置の問題はさておき,心臓外科における人工心肺装置の応用という点に主眼をおいて述べたい。

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 慢性疾患の1つとして,また危険度の高い手術を要するものとして,心臓疾患の看護は最近ようやく研究が進められているが,特に心臓看護研究班を組織し,心臓血圧研究所のドクターと協力し臨床看護研究に成果を挙げている東京女子医大の同班にその解説をお願いした。

四肢の疼痛について 山田 惠美子
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 四肢の疼痛は,種々な先天的疾患,或いは後天的な外傷その他によつて起る整形外科的疾患が多く考えられますが,内科的疾患や,外科的疾患に続発する炎症による疼痛を訴える場合も少くありません。疼痛感覚は多くの場合,炎症その他異変ある時,疾病の起つた事を知らせる警鐘でもありますから,その疼痛の種類(微痛,激痛,鈍痛,刺す様な,切刺様痛,裂く様な,牽引痛,刳る様な,搏動痛,緊張痛,疝痛,自発痛,圧痛,放散痛等々)又随伴する症状に就いての訴えを上手に聞き届けることは,診断のよき参考資料となり,それによつて看護の方法も変るわけでありますから,細心の注意を払うことが大切です。

 この疼痛は原因が非常に広範囲に亘りますし,患者個人の感覚によつてまちまちであり,環境や心理的影響を受け易いものですから患者の性格,肉体的条件(何らかの疾患に罹つていたか,否か,性別,年令等)社会的な環境,背景を知り正確さを期する様にいたします。

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夜盲症と閃光メクラ

 附随事項 ビタミンAの軽度の欠乏症は種々様々に表明されて今日世界に拡がつています。この欠乏症に関連した初期の徴候の一つが夜盲症です。この症状が幾百年も前に認められていたラボラドアとニューファウンドランドに於ける通俗療法が肝油だつたのです。この国に於ては子供,大人の間にあるいろいろの程度の夜盲症が発見されています。それには定期の集団検査で弱い光線を使える器械を調節して,それを発見し,程度を測るのです。全体としては低収入階級に多い傾向があります。けれども幾らかは殆んどどのような階級にも見出されるのです。

 夜盲症と緊密な関連があり本質的には同一なものである閃光盲目は自動車の運転手がヘッドライトがキラキラして夜は運転出来ないと訴えたことで認められたのです。戦時中能力ある夜間パイロットはこの症状を特に検査されたのでした。そして予防としてビタミンAの充分な摂取が勧められたのです。

美しいヒフをつくる医学 美容の焦点・9

化粧品とヒフ 安田 利顕
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 私たちが化粧品について考えるとき,先ず頭にとめておかなければならないことは,化粧品の種類と,その正しい知識,殊に使い方であります。例えば,クリームにしても,コールド・クリーム,バニシング・クリーム,ハイゼニツク・クリーム(中性クリーム),栄養クリーム,クレンジング・クリームといろいろの名がありますが,夫々にちがつた使命をもつているのです。しかし,その1つ1つについて,ここで説明することは限られた紙数では不可能なことです。しかし,もう1つ,化粧品を区別する方法に,基礎化粧品とノーキヤツプ化粧品に分けるものがあります。

医学の話題

“唾の魔力”,他 X
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 聖書に,唾を泥でこねて盲人の眼に帳りつけ,シロアムの池で洗つたところ立所に眼が開いたという話がある。これは勿論キリストの尊い唾であつて俗人の唾にはかかる魔力はない。袂の“くそ”を唾で丸めて傷口にこすり込むと直ぐ治るというので祖母がよくやつてくれたが,汚いと思つただけでその霊験あらたかであつたかどうか忘れてしまつた。

 唾の成分は93%までが水で他にムチンと上皮細胞の一緒になつたもの,澱粉分解酵素であるプチアリン,カリウム塩を主とする無機物質等が主なるものだが,面白いものは最近有名になつた耳下腺ホルモンパロチン様物質と尿素とである。尿素と云えば勿論尿の主成分であり,唾の中にこれがあることは唾も排泄機構に関与していることを示すものである。

新看護学

胃疾患の病態生理(1) 阿部 正和
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 胃は生体にとつて必須の臓器ではない。しかし胃全剔出を行うと各種の障害が発生してくることもよく知られている。この意味で胃の働きを再検討する必要がある。

 胃の生理機能として重要なものは,食塊を均等な液状に近い物質(これを糜汁という)に変化させ,少量ずつこれを十二指腸に送ることである。これらの働きを大きく2つの機能に分ける。すなわち

ナースの作文

我が希望,他 近藤 末子
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 薄もやも晴れ始めた8時半つきさすようなサイレンの音に……上井出国富療の深い静寂の中で私達はあわただしく1日の活動に入る。もちろん晴れた日も,また低く黒雲に覆われ霧雨が烟る日も……。

 私達ナースは1日のほとんどを午前中にかけます。どのナースの顔を見ても柔和の中にも緊張した面持ちをしています。割り当つた仕事の分担も,その日その日によつてうまくできたりできなかつたりまして准看である自分はひどく劣等感を覚え毎日の勤務も心から疲れる思いです。このような悲しさは一部准看,いや,おおよそ看護婦である人みんなが経験しているかも知れません。こんな深い心の悩みを療養所をとりまく広い自然の環境がいつも力づけてくれるのです。

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 〈問〉 准看護婦3年以上の経験を有し,定時制高校を卒業すれば正看の国家試験受験の資格があるでしようか。また進学コース2年は経験年数に関係ありませんか。

 〔答〕 いわゆる正看の国家試験は3年課程看護婦学校養成所(高等看護学院)か,2年課程看護婦学校養成所(進学コース)を卒業しなければ受験資格はありません。ただ高等学校(全日制と定時制を問わず)を卒業していれば准看護婦としての3年間の実務を経験していなくても進学コースの学校に受験できます。また進学コースの学校では入学した時の条件に関係なく2年間在学しなければなりません。

随筆

嵐山暮色 石原 隆良
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 短い予定期間とぎつしりつまた旅程,文字どおり東奔西走を続けてやつとすべての仕事を終えた時は,もう滞京最後の日が暮れかかつていた。寸暇というにもあまりににも遅過ぎた。とはいえ,矢張りせつかく京都まで来ておきながらそのまま帰るのも残念だつたので,夕陽に映える金閣を大急ぎで訪れた後,再び車を走らせて嵐山に向つた。門限のない名所として嵐山を選んだわけである。

 そもそも嵐山の何たるかも知らぬ私が,「たそがれの嵐山」等としやれてみようとは,まことに以て僭越な話かも知れないと思いながら,渡月橋の北のたもとで車をおりた。

時の動き

世界,他 奥山 益朗
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 ◎東西の話し合いが進展すると患われた1958年も,結局は相変らずで終つてしまいました。ことしに入つての,まず第一の事件は1月27日から開かれるソ連共産党大会でしよう。こんど開かれるのは,第21回大会です。この前の第20回大会(1956年2月)には,有名なフルシチョフのスターリン批判がおこなわれました。こんどの大会の議題は1959年-1965年の7カ年の経済計画です。

 「アメリカに追いつき追い越す」のがソ連の願望でしようが,この計画によれば動力,化学,農業の画期的な発展と教育・住宅計画に力を入れています。

教養講座 世界史の女性像・13

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<19世紀の社会と女性>

 先月号につづいて19世紀から20世紀のはじめにかけてのヨーロッパ社会と,そこに生活した女性たちについておはなしいたします。前に申しましたように19世紀のヨーロッパ列強はそのすぐれた工業力に物をいわせ,まだ工業力の発展していなかつたアジア,アフリカなどの諸民族を圧迫しつづけていきました。しかしこういつた政策はこれらの国の勢力の衝突の原因ともなり,第一次世界大戦(1914〜18年〉を生むことになりました。(その後は工業力を最大限に発揮して来たアメリカ合衆国がヨーロッパとならんで世界の政治をうごかすようになります。)ところでヨーロッパ諸国の内部では工業の発展にともなう労働者,更に一般の市民などにのしかかつて来る重圧のために,社会生活上に激しい変化がまきおこつて行きました。女性のうごきもこのような社会めうごきと密接に関係して動いています。

 ところで19世紀は世界文学史め中で小説がもつとも発達した時代といわれています。この世紀のはじめフランスのバルザックによつてうち立てられた写実主義の精神は,フローペル,モーパッサン,ゾラなど自然主義作家とよばれる人々によつて更に展開されて行きました。

教養講座 小説の話・29

生活の詩 原 誠
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「私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊余の人間で,太物の行商入であつた。母は,九州の桜島の温泉宿の娘である。母は他国者と一緒になつたと云うので,鹿児島を追放されて父と落ちつき場所を求めたところは,山口県の下関と云う処であつた。私が生れたのはその下関の町である。—故郷に入れられなかつた両親を持つ私は,したがつて旅が古里であつた」—「放浪記」の冒頭に,林芙美子はこのように書いています。これをみても分りますが,彼女は決して幸福な環境に生れたのではありません。そればかりか,彼女の8歳のとき,父が芸者を家にいれたためイザコザがおこり,母は小さな芙美子をつれて家出してしまうというような不幸がおこりました。そして母の再婚。その相手はやはり行商人で,なかなかひとのいい男だつたようですが,しかし生活の貧しさはそれまでよりひどかつたのです。「旅が古里であつた」という芙美子は,「……人生いたるところに木賃宿ばかりめ思い出を持つて,私は美しい山河も知らないで,義父と母に連れられて,九州一円を転々として行商をしてまわつていた。」

 小学校へも,木賃宿からかよいました。4年のあいだに,7回も学校が変つたのです。そして12歳のときから学校をやめて,彼女も行商にでました。小学校も満足にでられないような不幸な環境にもかかわらず,彼女には少しもひねくれた,いじけたようなところはありませんでした。むしろ,のびのびとした楽天家だつたようです。

教養講座 美術の窓・9

ビザンチン芸術 中野 久夫
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芸術と自然と絵画

 日本に西洋絵画が導入されて,現代フランス画家と日本人画家があるいは裸婦,あるいは抽象絵画で優劣を競うまでに至つた時間的経過は,僅々5,60年の短かさである。

 このあわただしい文化現象のなかで,われわれは頭脳が混乱におちいることを努めて避けながら,カンバスと油絵具とに取組んで苦しんでかれらが戦つてきた,その対象は何か,ということを反省してみよう。

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幸いつかあらむ三十路の秋裕

 〔評〕季節感のあらわれた心理俳句。この句はそういう点で成功していますが,初心の方にすすめられません。嫌味になりやすいものです。

基本情報

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看護学雑誌
23巻2号 (1959年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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