随筆
嵐山暮色
石原 隆良
1
1本誌編集室
pp.70-71
発行日 1959年2月15日
Published Date 1959/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910800
- 有料閲覧
- 文献概要
短い予定期間とぎつしりつまた旅程,文字どおり東奔西走を続けてやつとすべての仕事を終えた時は,もう滞京最後の日が暮れかかつていた。寸暇というにもあまりににも遅過ぎた。とはいえ,矢張りせつかく京都まで来ておきながらそのまま帰るのも残念だつたので,夕陽に映える金閣を大急ぎで訪れた後,再び車を走らせて嵐山に向つた。門限のない名所として嵐山を選んだわけである。
そもそも嵐山の何たるかも知らぬ私が,「たそがれの嵐山」等としやれてみようとは,まことに以て僭越な話かも知れないと思いながら,渡月橋の北のたもとで車をおりた。
Copyright © 1959, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.