看護学雑誌 23巻1号 (1959年1月)

「風立ちぬ」に寄せて
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 「風立ちぬ,いざ生きめやも」というポール・ヴアレリーの「海辺の墓地」の一節を基調とした堀辰雄の「風立ちぬ」は,発表後ますます多くの読者を獲得しているようです。作者の堀辰雄は,とうに逝去したのですが,この作者は,死後ますます多くの読者を,その魂の周辺に惹きつけているようです。それは,作者自身が病身であつたということへの単なる同情だけではありません。ただ病者であるからということだけで,世の人の同情が得られるとしたら,この世には,あまりにもその同情を必要とする人が多過ぎるでしよう。

 堀辰雄の文学が若い世代の人たちにも愛し続けられるのは,病者の特徴とでも言えるような微妙な心理を掘り下げたきめのこまかい文学作品を創造したからにほかなりません。「風立ちぬ」は,その堀文学の中でも,最も深刻な作品です。そこでは,世の人たちが世間的な幸福をあきらめてしまうところからスタートして,一種の風変りな愛情をあたため合つているからです。主人公は,その愛する許嫁—病身の愛人を,サナトリウムに送つてゆき,そこで一緒に生活しながら,自分の創作の仕事をしようとするのです。不幸にして,その許嫁はその療養所では2番目ぐらいに重症であり,しかも,もつとも重症とされていた患者は死去するのですから,その次の運命は……といつたような世間的な意昧では全く打ちのめされた境遇にあるような人物の設定のされ方をしています。

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 災害発生時やその他救急な場合に,私達は手元にある物品,またはそれに工夫をして迅速に患者を安全にいかにしてその苦痛を少なく救出するかを考えなければならない.粗架を利用しての運搬の方法は昔からたびたび行われたが,その正しい利用法について,また徒手運搬の方法について知つておくことは必要なことである.患者を運搬する場合には一般に動揺をできるだけ少なくし運搬中も充分なる観察をおこたらず,患者も看護婦もエネルギーの消耗を最少限にすることが大切です.

Nursing Study・40

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 新しい看護技術は必ずしも複雑精巧な器械を伴うものだけではありません。日常使いなれている簡単なものも工夫1つでより正確で,より能率的な仕事ができるものです。その1つとして看護の基本的な仕事である検温,投薬,また授乳の器具について発表してもらいます。

講座

新点数表と基準看護 永井 好望
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1.新点数表の特色

 昭和33年10月1日から社会保険医療に要した費用の支払い方法とその額を定めた点数表が改訂されました。

 旧点数表は,15年以上も前の昭和18年2月にできたもので,医学の進歩や社会の進展にともなつて陳旧化し,種々の欠点があつたのを,30数回にわたる改正によつておぎなつて来たものです。

腰痛の訴えの看護 新藤 信子
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はしがき

 「腰がいたい」との訴えは,風邪を引いたということと同様,病院の内,外,を問わずよく耳にする言葉である。そして一般に腰痛といえば,すぐ坐骨神経痛か婦人科疾患というように考えられがちである。だから,他の病気が原因なのに,何ヵ月も神経痛や婦人科疾患の素人療法を行い,よくよく症状を重くしてから病院を訪ずれる者が少なくない。あるいはこれに反して単なる疲労だつたり,ヒステリー性の症状だつたりすることもあるので,その治療,看護に当る者は,腰痛についての知識をよく把握して最も適切な処置を行い得ろよう必掛けなければならない。

色彩の心理学 木村 俊夫
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 ナースのユニホームはなぜ白いのか。夜の街を彩どるネオンはなぜ赤なのか。それには相当の理由もあろうが,白がもたらす清潔感や,赤色で刺激的な感じを強調させるということもその理由の1つだろう。色彩は人間に思わぬ喜びも与え,また思わぬいたずらもしているようだ。そこで心理学的に“色”について説明していただくことにした。

カンセリングの要点〔2〕 岡崎 昇
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 私は先に“カンセリングの問題の中心は人であつて表明されている問題ではない”即ち人を苦しめ混乱させている問題それ自体にあるのではなくて,問題を感じ問題としている人が問題なのである。従つてカンセリングは問題解決による社会的順応を目的とするのではなくして,患者自身が自己自身に適応する心理的健康さを目標とするのである。即ちカンセリングは対症療法よりも根本的治療による人格転換を意味しているという事を述べた。更にカンセリングの理論を助けている人格形成に関する相互作用の理論を述べた。しかしロジヤーズ博士も言つているように,人の成長の可能性に関する理論は,実際の臨床活動から生まれたものである。またこの仮設的な理論は,カンセリングを助け深めるものであるという事を述べた。

 カンセリングは1つの方法を用いているが一般に考えられているように技術ではない。カンセリングの方法の中心は,先ず第1,2人の人の間に起る1つの特殊な関係の過程であるという事を強調しておいた。ここでは,この特殊な関係に関する仮説とその方法について述べる事にしよう。

アルコールの話 室岡 治義
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 アルコールはある人々にはすでに生活必需品となつている—酒として。しかし,病院ではもちろん薬用として,更に工業用として現在の産業に欠くべからざるものとなつている。アルコールのすべてをここに採りあげた。

美しいヒフをつくる医学 美容の焦点・9

小ジワ—予防と手当 安田 利顕
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 正月そうそうから小ジワの話でもなかろうにという気もします。しかし,古いことばに「1年の計は正月にあり」というのがあります。古くさいことばだと思われるかも知れませんが,小ジワの予防の心掛けをあらわすには,よいことばです。

 というのは,小ジワができるのは,一寸した油断からです。そこで,もしも小ジワができないようにするには,どうしたらよいのかと聞かれたら私は,小ジワを予防できるのも,そうでないのも全くあなたの心のもちようによると答えることにしています。つまり,1,2カ月先のことでなくて,1年先のことまでも考えて肌の手当をしなければ,小ジワは予防できません。そこで,正月そうそう小ジワの話を書くことも,気分を新たにして肌の手当に注意する気持を起して貰うためには,役立つことかと思います。

ナースの作文

看護の職業化,他 清水 琴子
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 看護婦は職業の一種であつても,看護婦が職業化してしまつては!!とはつとする。学生時代,実習に出て何だか,看護婦気質?とでもいいたいような,何か,いいようのない,“くさみ”を感じた。そういう時,看護婦気質という匂いを持ちたい—と思つていたのに,近ごろは何だか,その看護婦気質のくさみが,私の白衣に,キヤツプについてしまつたみたいで,とてもたまらない気持になる。

 勤務している時,勤務し終つた時,今したことが,今日したことが,外からみれば,普通であり,また見方によつては親切だとみるかも知れない。しかし,その底は逃げ道の1つでしかなかつたり,実際にはこうしなければいけないが,現状として,何々だから仕方がない。——なんて努力もしないで自己弁解したりする。ズルさも1年数カ月で身についてしまつた。

投書

准看護婦の意見 大塚 きみえ
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 11月号を読み投書させていただきます。

 内容は毎号何よりの参考資料としまして実際で生かしておりますが,今回はその内容を少し離れまして最もきらいな「あとがき」の部分を私は重要視してしまいました。そこを読むなり,“ああうれしい”と洩らさずにはいられなかつたのです。といいますのは,おわかりでございましようが,この私が准看護婦だからなのです。

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医学看護学用語
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(上は英語・下はドイツ語)

消化器系及び腹部

 alimentary system and abdomen

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 私たち冬の下着を少ない数で清潔に温く着るにはどうしたらよいでしようか。最近は暖房設備がよくなり,上着類も厚地で温かいものが多くなつたので,下着をたくさん重ねて寒さを防ぐということは非常に少なくなりました。特に洋服の美しい線を表わすための下着がやかましくいわれ,下着は薄着にするというのが歓迎されている。

 下着の材料も綿や毛だけに限らず,薄くて保温性のある化繊類の進出が目立ち,値段が比較的に安いこと,汚れの落ちやすいことがよろこばれています。

カクテルの話
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 カクテルは従来生のまゝ(ストレート)で飲んでいた洋酒を風味豊かにするため,いろいろ混合して飲むのが目的で,各人の好み,考案によつて種々異つたものがつくられています。最近は女性の会合でもお茶の会にとつてかわつてカクテル・パーティーが盛んになつてきたようです。また家庭生活でも洋酒を飲む機会は多くなつてきました。それで,日本で作られ簡単に手に入るような洋酒を使つて作るカクテルを御紹介しましよう。

 普通,カクテルはシエーカーを使つて振盪して作るものと,グラス(ミキシング・グラス)を使つてバー・スプンで攪拌して作る方法の2とおりがありますが,攪拌して作る方が簡単でやさしいので,こゝではそれを主にして説明します。

随筆

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 或る日の病院日誌に添えてこんな事を書いてある。『病院の芝生も,向うの元MPの芝生も,諸君の知る如く,同じ時に,同じ場所から,持つて来て植えた芝生である。

 病院の芝生は,諸君の日頃の絶えざる手入れによつて,此のように青々と,キレイに庭の内外を飾つている。

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 私は昨年看護婦国家試験に台格しまして,現在,病院に動務しております。将来,出身地に帰つて養護教員になりたいと思いますがどのようにしたらよいかお知らせ下さい。

新看護学

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 膵臓疾患は比較的多いことが報告されているが,膵臓を触知することは決して容易でないために,その診断はきわめてむずかしい。実際に剖検にさいして膵臓の肉眼的,又は顕微鏡的病変がみられるのに,生前臨床的に膵臓疾患の診断がつけられなかつたという例はかなり多い。

膵臓疾患の看護 永井 敏枝
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 私達が臨床に於て膵臓疾患の患者に接する時,はじめから病名が確定している場合よりも膵臓疾患ということまでわかつて,膵臓のどこがどのようになつているのか即ち,膵臓壊死,膵臓浮腫,出血性膵臓炎又は膵臓膿瘍(癌を含む)であるかの確定は入院し経過をみてから診断され,或いは他の疾患の疑いで経過中に膵臓疾恵の診断を下されることの多いのを経験いたします。これは阿部先生もいわれていますように膵臓疾患の診断がむずかしいことを意味していると思われます。即ち1)位置の上から触診がむずかしいと同時に胃の膨満や鼓腸を伴うことから一層触診をむずかしくしている。2)特有な自覚症状が少ない,3)機能検査法も膵臓疾患があつても必ずしも個有のものでなく又成績も必ず陽性とは限らない等の原因があるわけです。従つて看護の第一として診断がより正確により早く行われるように看護婦が助力することであります。これには病態生理を理解し,症状の観察が正しく細まかく行われ,正確に医師に報告されなければなりません。起り得る症状は病態生理でのべられているから要約して観察の要点をあげてみます。

教養講座 世界史の女性像・12

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 19世紀のヨーロッパ,それは現代のヨーロッパ人には,二度とかえらない良かつた時代として,彼等のおもいでの中に生きている時代といえましよう。この世紀はヨーロッパ,特に西ヨーロッパの国々が地球上のあらゆる場所で支配権を握つていた時代だつたのです。

 工業力を発展させ資本主義を完成させた西ヨーロッパの諸国はアジア,アフリカに侵入して植民地を作つて行きました。私たちがごく最近まで,或いは現在でも,知らされていたアジア,アフリカの姿は,ヨーロッパの眼鏡を通して見たもの,つまりヨーロッパがアジア,アフリカの人々に向けた軽蔑,ひとりよがりの解釈そのままであつたことが,最近著しく反省されていることは申すまでもないことでしよう。

教養講座 小説の話・28

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 林芙美子が死んでから,まる7年たちました。死んだのは昭和26年の夏だつたのです。が,彼女の作品は,7年後の今になつても,いよいよ多くの読者を獲得するばかりで,いつこうにその人気はおとろえません。その点太宰治の文学的人気と似かよつたところがあります。文学的人気というよりも,それは人間的な人気といつたほうがいいかもしれません。

 林芙美子と太宰治と,この2人に共通していえることは,人間の弱さ,生きてゆくことの悲しさを,どちらも悲痛な心情をもつてうたいあげていたという点です。一方は女性,一方は男性,そして林芙美子が貧しい流浪の家庭から生まれたのに対して,太宰治は,名門の地主,政治家の家に生まれたというちがいはありますが,人間存在のかなし世界を,それぞれの立場からほりさげていつた,その作業の過程は,ひじように似かよつていたのです。太宰治が自殺したとき,その報せをきいて,林芙美子は,もう生きてゆくのが耐えられなくなつたと述懐していました。人間の宿命をそこにみたのでしよう。そして彼女自身の死も,まことにはかなく,悲しいものでした。昭和26年の6月28日に,「主婦之友」に連載予定の原稿の仕事で街にでて,食家を済まして家にかえり,その夜11時すぎに床にはいつてから間もなく苦悶しはじめ,胃のなかのものを吐瀉すると同時に,呼吸がやんでしまつたのです。純徳院芙蓉清美大姉というのが彼女め戒名。49歳でした。

教養講座 美術の窓・8

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〈西洋画の摂取から交流へ〉

 19世紀の画家,ドラクロア,アングル,ミレー,クールペエ,マネー,ルノアールはそれぞれこの世紀を代表する画家であり,それはみなフランス出身である。またかれらのあとを継いで20世紀の絵画の源泉となつたセザンヌもゴーギヤンも,ゴツホもフランス人である。

 セザンヌからピカソやブラツクが属している立体派が派生し,ゴツホとゴーギヤンから,マチスやドランやヴラマンクの属している野獣派が出て,いまやフランスはルネツサンス時代のイタリアのような芸術のメツカとなつている。

時の動き

平穏だつた1958年,他 奥山 益朗
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 1958年もいよいよ余すところわずかになりました。大波小波はありましたが,別に津波とはならず,まずまず平穏に1959年を迎えられそうです。

 毎年新聞などでは,「ことしの10大ニユース」などを募集しますが,ことしのトツプ・ニユースは何といつても中東をめぐる危機でした。イラクの革命,レバノンの内乱と米英の出兵はあわや戦争1歩前という様相を示しましたが,幸いに国連緊急総会の決議で,まずまず平和を守ることができました。

医学の話題

第5回国際胸部医学会,他 T
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 去る9月7日から11日まで,5日間にわたつて有楽町の読売ホールで開かれた第5回国際胸部医学会はその名の通り国際色ゆたかに盛大にその幕を閉じた。

 出席者はアメリカ胸部医学会国際委員会々長のバイカル博士,ドイツ・ケルン大学々長のクニツビング博士をはじめ500人余りの外国の学者をまじえて1000人を越すほどであつた。

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薄化粧鏡に秋の風聴けり

 〔評〕さわやかな中にうすらさびしい感じがよく出ています。

基本情報

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看護学雑誌
23巻1号 (1959年1月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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