Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「八十五年ぶりの帰還 アイヌ遺骨杵臼コタンへ」—学問に伏在する暴力性と対峙する研究倫理の確立と内面化が求められる
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.711
発行日 2019年7月10日
Published Date 2019/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201703
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2019年3月23日に札幌で「サーミの血」(監督・脚本/アマンダ・シェーネル)の上映会が催された.サーミとは,ノルウェー,スウェーデン,フィンランドの北部とロシアのコラ半島で暮らす先住民族である.本作の舞台は,1930年代のスウェーデン.サーミの少女エレ・マリャは,寄宿学校の教師から「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げられる.他の人種より劣った民族として差別されており,劇中エレらは,目的の説明もないまま,研究者によってコンパス状の器具による頭部全体の測定,全裸写真の撮影といった屈辱的な扱いを受ける.翻って日本はどうだろうか.このような話に無縁だと言い切れるか?
本イベントでは,「サーミの血」に呼応する形で,25分の短編ドキュメンタリー「八十五年ぶりの帰還 アイヌ遺骨杵臼コタンへ」(監督/藤野知明)が上映された.惹句には,「1931年,北海道大学の研究者が形質人類学の研究目的で浦河町の墓地からアイヌの遺骨を持ち去った.先祖の遺骨は故郷のコタンに取り戻せたか?」とある.
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